小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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2話 : 出会って別れて

いいか。ラーメンにはなあ、煮詰まったラーメンにはなあ………っ!

 

男の夢と書いてロマンと呼ぶ結晶が詰まってるんだよっ!

 

 

          ~小池メンマ風雲伝、「ラーメン、その意味」より抜粋~

 

 

 

 

 

~ ~ ~ ~

 

 

 

 

とある修行中のこと。いかにも怪しい銀髪マスクの人が店にやって来た。

 

巷――――といっても心の中の局所的な世間――――で噂になっている変態だ。心の中のマダオが興奮していたけど、無視した。

 

「いらっしゃい」

 

新顔の俺を見て、カカシさんは何やら驚いている模様。取りあえず注文を聞いたけど、その後のカカシさんは、テウチさんと何やら話しているよう。

 

さりげなーく耳を傾け、会話の内容を聞き取った。

 

………話の内容を要約すると、どうもテウチ師匠はナルト、というか俺が行方不明になった事で落ち込んでいるらしいとの事。

 

そういえば、記憶の底に、このラーメン屋に来たことがあるような光景が………。

時々ですが、落ち込んでいるような、曇った表情を浮かべていたのを思い出した。

あの顔は、俺が原因だったのか。

 

………でも、まあ、取りあえずは放っておこう。

 

今は何も言えないし。言える状況にもない。ラーメンを食べ終わったカカシさんは、テウチさんに一言二言残して、去っていった。

 

 

「今度、先生のもう1人の忘れ形見………娘さんの方を連れて、またきますから」

 

と言葉を残して。

 

 

 

 

 

………な、なんだってー!?

 

 

 

 

 

『あれ、言ってなかったっけ』

 

「聞いてねえよ!?」

 

なんでも俺とその娘は双子で。俺から見れば、妹になるらしい。なんじゃそりゃ。

 

名前は波風キリハ。父譲りの金髪碧眼の可愛い娘(マダオ談)だという。

ていうかお前赤ん坊の頃に一度見たきりじゃないのか?

 

 

………まあいいか。放っておこう。面倒くさいし。

 

縁があれば会うだろうし、というか次に来ると言っているし。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

来た、見た、負けた。成るほど、確かに顔立ちは整っていると言えた。

 

俺みたいに猫のヒゲのようなものが付いていない、正統派美少女?

少女版の波風ミナトといった感じ。そう例えると、妙に癪に障る。

 

『可愛いでしょ』

 

「……まあ、確かに」

 

『手出すなよ』

 

「妹だろ!?」

 

「………ん?」

 

俺の叫びを聞いて、不思議そうな表情を浮かべる少女。

 

やべえ、今の聞かれてた?

 

「えっと……妹、ですか?」

 

「あ、ああ。俺、妹がいてさ。ちょっと、今思い出しちゃってさ」

 

キュウっていうんだ、と誤魔化しの嘘をいうと、心の中のキューちゃんが暴れ出した。すんません。後で油揚げ食べますから、というと暴れるのは収まった。

 

現金な童女だ。

 

「へえ、メンマおめえ妹がいたのか。初耳だぞ? というか、ここの所毎日朝から夜まで働いているようだが、顔みせねえでいいのか?」

 

「はい。妹は………今は、心の中にいますから」

 

俺がぼかすようにしんみりとした表情で呟くと、渋い顔をして悪かったと謝る親父さん。

 

 

(うう、良心が疼く)

 

『アホ』

 

『ボケ』

 

心の中から、親父とキューちゃんに突っ込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

次の日は、3人組の親子連れが来た。特徴的な3人組だな。

 

というか、分かりやすい! 間違いなく猪鹿蝶トリオだ。名乗られなくてもわかった。

親の方はどこか暗い顔をしているな。あー、もしかして俺の事か?

 

食べ終わった後。帰り際、子供を外に出してから、俺にある話をした。

四代目の忘れ形見(九尾云々とは言わなかった)の息子の方の捜索を続けているが、一向に見つからないと。

 

九尾が顕現していないので生きている筈、とあたりを付けているとか。

初めて見る俺にも、見かけたら連絡をくれ、と頼んでくる。

 

……すいません、物理的に不可能だと思われる。鏡がない限り。

 

容姿を訪ねたら昨日見たあの少女と同じ特徴で、金髪碧眼だという。

 

年は7才くらいとの事。

 

あーそうですね、分かってるというか毎日見てるので。

 

その人は~もしかしてこ~んな顔をしてますか~、とのっぺらぼうなノリで変化を解きたい衝動に駆られたが、どう考えてもやっかいごとになりそうなので自重した。

 

『当たり前だろう』

 

ですよねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

その次の日、上忍らしき人がきた。

 

しばらくして、仕草で分かった。上忍レベルではないだろう。そのレベルに達すると、強さをを隠すのも上手いので。ということは、特上か。

 

あれ? この顔の傷は……この人って3代目の側近じゃなかったっけ?

すわ正体がばれたのか、と思ったが全然そんな事はなかった。

 

飯を食いにきただけらしい。その特別上忍の人はため息をついている。

何か気になるので、ちょっと聞いてみた。

 

「お客さん、随分不景気なため息ですね。何かあったんですか?」

 

「ああ……」

 

と急に事情を話し出す上忍の人。何でも、3代目の調子が良くないらしい。うずまきナルトがどうのこうの言っていた。またか。また俺の事情が絡んでやがるのか。

 

面倒臭いなあ。火影なんだからすっぱりと割り切ればいいのに。まあ、思うところはあるんだろうけど、それで火影の仕事にまで影響が出るようじゃあ、駄目だと思う。つーか駄目駄目でしょう里のトップなのに。分かってたけど甘いなあ。

 

まあ、それが短所であり、長所にでもなっているんだろうけど。

 

………と思いつつも、そのまま言ったら「無礼もの!」と怒られそうなので、言わないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一日の仕事が終わった後、俺は里はずれの森の中にいた。一人で修行をしている時、少し考える。昨日、今日に会った人達の話を聞いて、どんな状況になっているか。

 

(三代目、大丈夫かなあ。実力の低下が進んだら不味いんだけど。あの変態蛇どうすんのって話しになるし)

 

木の葉崩しはどうするんだろう。

 

『………木の葉崩し?』

 

(ああ、三忍の一人、蛇の字が音の里立ち上げて攻めてくんだよ。砂と一緒に)

 

『へー、そうなの』

 

淡泊である。冷たいもんである。見限ったか?とも思うが、お互いに突っ込まない。

マダオはマダオでも割と気の利くマダオである。

 

(うーん、猿の爺様がそんな様子じゃあ………成るかもな。木の葉崩し)

 

象徴が負けたとなっちゃあ、木の葉の力も権威もがた落ちになるだろう。

 

その後の事を想像してた。

 

 

 

………拒絶感で胸がいっぱいになった。

 

ホモ蛇が権勢を振る舞う世界なんて嫌過ぎる。

 

 

断固、却下である。というか、どう考えても平和な世界に成りそうにない。蛇のオカマとか生理的に駄目だし。

 

また乱世の時代に逆戻り?忍界大戦?心底面倒臭いです。

 

それに、治安が荒れちゃあ、気持ちよくラーメン作れないじゃないか。

食べる人あっての、ラーメン屋なのに。

 

『………結局、自分の都合に帰結するんだね』

 

当たり前だろ、今更。さあ、どうするかなあ――――

 

 

『あ』

 

(ん?)

 

 

声に剣呑なものを感じたのと、飛び上がったのは同時。

 

間もなくこちらに近づいてくる気配を感知。状況把握のために、先人に尋ねた。

 

(………数は多くないな。後方から?)

 

『里の方からだね』

 

振り返り、注意深く、探る。そこで、分かった事が一つ。

 

(ん?)

 

6時の方向に気配ということは、里からこちらの方角に、向かってくるということ。

 

『まあ………暗部じゃないね』

 

それは、そうだろう。殺している気配と、殺せていない気配を感じる。気配の主は、誰かを連れて里の外に出ようとしているのだ。暗部ならば有り得ない行動。

 

気配の質から、おそらくは子供を連れている、と推測する。

 

(血継限界の拉致か)

 

狙いは読めた。木の葉の貴重すぎる術を盗みにきたのか。

 

『それで、どうするの?』

 

「殺せるなら殺す」

 

イレギュラーは御免だ。手の届く範囲なら、手を出す。決意を言葉に出して、俺は行動へと移した。

 

取りあえず、待ち伏せしてみる。だが、相手は自分がいる場所の少し手前で足を止めた。

 

「………何者だ?」

 

ちょっとはやるみたいで、気配を隠しているのに気づかれた。言葉に応えるかのように、相手の正面に姿を現す。そして苦無を構え、嘲るように笑い、答える。

 

 

「知る必要など無いだろう。今からお前は死ぬのだから」

 

「ふ………ほざけッ!」

 

 

叫びと共に、相手は一気に距離を詰めてきた。かなり早い。

 

そのまま、斬光が一閃。俺の身体が切り裂かれた。

 

「ふん、口ほどにもない。手間をかけよって………!?」

 

言葉は半ばで途切れる。もう次の言葉を吐くことはないだろう。永遠に。

一瞬である。俺の影分身が傷を受け、消えるまでの一瞬。

 

その一瞬で、敵の背後に回り、クナイで一突きしたのだ。脾臓を貫いた手応えがあった

、即死だろう。

 

断末魔さえ上げさせない。そんな不様は犯さない。

 

可能な限り静かに、そして迅速に。それが忍者の業、殺しの鉄則だ。

 

 

「………あー、やだやだ」

 

 

クナイを振り、血を払う。最初のアレは影分身の囮。上忍でも、トップクラス以下の力量だと、面白いほどに引っかかる。

 

分かりやすい方に意識を集中させて、気配を殺したもう一体が影から必殺の一撃。

無音にして、無情。忍者本来の殺り方である。

 

 

『お見事だね』

 

「嬉しくねえなあ。さーて、攫われたのは誰かな…………!?」

 

 

 

………うん。白い眼って、いいなー♪ ホワイトアンドホワ『落ち着けい』

 

 

はっ?

 

俺は今何を?

 

「だれ、です、か?」

 

薬で眠らされていたのだろう。ようやく目覚めた少女は、おびえた表情でこちらを見ている。その姿を見て、俺は頭を抱えた。

 

 

『白眼! 日向の子だね。年から察するに………ヒアシさんとこの娘かな』

 

おおふナンテコッタイ。

 

『戦わなきゃ、現実と』

 

「嫌な言葉で突っ込むな。あー、大丈夫か?」

 

取りあえず、気の毒な程におびえている少女に声をかける。なるべく柔らかい声で話しかけたのが功を奏したのか。幾分か安心したヒナタ嬢は、安堵のため息をはいて座り込んだ。

 

(………どうしようか)

 

迷っている時だ。また背後から強烈な気配を感じた。距離は離れているが、ここまで気配を届かせられるというと、並の忍びではないだろう。

 

何か忍者として間違っている気がしないでもないが、それはそれだ。

 

(暗部ではない。腕は相当立ちそうな気配だけど………)

 

というか勝ち目薄くないか。聞くと、マダオは何でもないように言った。

 

『うん、もしかしなくても日向家当主だから』

 

「さようなら、お嬢さん」

 

マダオの言葉に頷き、一礼。即座に神速でそこから遠ざかる。白眼に柔拳、回天とか……滅茶苦茶関わり合いになりたくない手合いだ。ああいうのは。

 

『きっと、娘馬鹿になってるだろうからねー』

 

「お前が言うな」

 

 

 

 

 

 

 

 

取りあえず全速力で逃げ切った。

 

「旅の時にも思ったけど………何でこうなるのかな」

 

『運命じゃないかな』

 

「あーあー聞きたくない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくは騒ぎになりましたが、またもガン無視です。

そんな事よりも、ラーメンだ。

 

(あー、癒される)

 

「こら、目の前の作業に集中しろ」

 

「はい、すいません」

 

戦いと違って、客にラーメン出してると癒されるんだよねー。昔を思い出して。それに、美味しいとか言ってもらえるともう最高。あ、テウチさんの腕によるものが大きいけど、俺もそれを助けているのは確か。

 

 

(いつか絶対、自分の店を持とう)

 

 

戦いなんて真っ平さ、という思いは深く、夢への決意は深く。

 

それでも、その日の深夜。

 

(おうち………またかよ?)

 

『また、だね』

 

今度は二組。どちらも分散しているため、各個撃破しなければならない。

 

(暗部は何やってんだ!?)

 

『もしかしたらだけど、うずまきナルトの捜索で忙しいのかもね』

 

あ、そう言うことか。危険度で言えばS級だもんね、九尾。四代目火影でも歯が立たないくらいだしー。強さで言えばSS付けてもいいくらいかもね。何という人間災害。

 

『そうじゃろうそうじゃろう!』

 

いや、褒めてないから。愚痴をこぼしながら、全速で標的の元へと向かう。尻ぬぐいは嫌だが、此処で見逃せば後味悪いのも事実。

 

仕方ないっちゃあ、仕方ないし。

 

『損な性分だね』

 

「損得で子供見殺すのはなー。それに俺ってば、生粋の忍びでもないから」

 

あくまでラーメン屋目指してます、自分。さて、どうするか。といっても、影分身しかないんですけどね。

 

昨日と同じ遣り取り。

 

 

そして背後から、サク、サク。

 

 

了。

 

 

木の葉に来てから、螺旋丸みたいな目立つ術は控えている。ていうか死体検分とかされたら滅茶苦茶ばれそうだし。今日の侵入者は、昨日のヒナタ嬢の時より腕は落ちているので、1人あたりの戦闘時間は少なかった。

 

ただ伏兵の数が多く、少し手間取ってしまった。

 

(また、随分と多いこと………)

 

数の利は相手にあり。つまりは、殺す以外に選択肢がない。

逃すという選択肢は、この場においてはありえない。

 

気絶させるというのも、無い。まだ、木の葉側にばれる訳にはいかないから。やな気分になります。何で殺すのか、なんて。考えてる内に気配を感知しました。

 

(取りあえず、逃げるか)

 

そうこうしてる内でした。薬から覚醒した子供に、顔を見られてしまいました。

あれ、ちょと前ラーメン屋で見たような。

 

「………あ、あの………おじさん?」

 

(おじさんはやめてー。せめておにいさんにしてー。っていうか、奈良シカマルと山中いの?)

 

先日見た二人です。チョウジがいないのは重かったせいか。金髪娘こと山中いの嬢はじっと、こちらを見ている。まあ戦闘用の変化なんで、見られても構わないんですがね。

 

あ、シカマル君も起きそうな感じ。じゃあ、行くか。ベストは、顔も見られないうちに去ることだったけど、まあ仕方ない。これも縁だと思い込もう。

 

正体がバレることはない。戦闘用に使っている姿はまた違うから。変化の術の応用なんですけどねー。金髪に碧眼で、背は170cmぐらい。ベースは本来のナルトのままで、20歳ぐらいに見えるような姿をしている。もちろん万が一を考え、口元はマスクで隠しているけど。

 

ちなみに、ラーメン作ってる時の小池メンマの姿は、黒髪茶眼の平凡な容姿だ。

 

こっちはあくまで囮用なので、小池の方のカモフラージュになるよう、目立つ姿にしてみた。

 

変装のあれこれはさておいて、いの嬢は現状を把握したのか、俺にお礼を言ってきました。

 

「あ、ありがとうございます」

 

もしかすると、俺を味方―――木の葉の暗部か何かだと思っているのかも。

まあ、成り行きなんで気にしないで、と伝えてその場を去った。

 

ぼかして逃げた方が良い。零す情報は少ないに越したことはない。

後方から怖い人達が近づいてるしね。

 

 

全速で退避。そして、その場を離れながらため息を吐いた。

 

『損な性分だね』

 

「かもな」

 

先をある程度知っている分、見過ごすことができない。木の葉に来たことは失敗だったかも。

 

(………まあ、悪いことは無かったし。立ち回り次第で、なるようになるか)

 

 

といいつつも、不器用なんで全て上手くいくとも思えない。

まあ、いざとなったら逃げればいいか。

 

歴戦の忍者――――三代目火影とか大蛇丸――――相手に完勝は無理で辛勝も難しいだろうけど、逃げ足だけなら自信があるし。

 

 

 


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