小池メンマのラーメン日誌   作:◯岳◯

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20話 : 曇天、雪降る荒野にて

 

 

~ 再不斬 ~

 

 

――――冷たい。顔に、氷の粒が落ちた。気づけば、曇り空が見える。背中も冷たいし、全身が冷えている。どうやら気絶しちまってたようだ。さっきもらったとんでもない一撃のせいだろう。三半規管がイカれてるのか、頭がくらくらして立ち上がれやしねえ。

 

「ぐ、は………」

 

全身を打ち付けたせいか、呼吸も一苦労だ。吸って吐くだけでお花畑が見えやがる。怪我の状況を確認すると、肋骨が数本イってるらしい。着地………ああ、着地できたのか。でも結局は転けちまったようで、その時に背中を打ち付けたらしくじんじんとした痛みが走っている。着地した時に足も痛めたらしいし、あの時刀を持ってた方の腕も痛え。文字通り半死半生といったところか。

 

だけど、生きている。

 

「………」

 

それがなんだというのか。もう一度対峙して、何になるのか。あの化物、思い出しただけで震えが止まらなくなるってのに。予想はしていた。覚悟もしていた。だが、正直予想外に過ぎた。

 

いかに化物といえど、あれだけの攻撃―――絶対に防げないタイミングだったはずだ。これ以上ない攻撃だった。破壊の弾幕は波となって、四方八方を埋め尽くしていた。威力も十分過ぎる、並の忍びなら百回は殺せる程に。

 

だが、あの野郎。この程度か、という声が聞こえたと同時、奴の掌から飛び出した黒い球体が、何もかも吸い尽くしやがった。忍術も、飛び道具も、カカシの野郎が繰り出した瞳術も、全部ひとつ所に集められた。

 

驚きの声をあげるまもなく、次の瞬間俺は宙に舞っていた。思い出せば他の奴らも同じだったようで、全員が訳の分からないうちに黒い球体へと引き寄せられていって、訳の解らない内に吹き飛ばされた。

 

そして――――朦朧とした意識の中。それでも吹き飛ばされたここで、何とか着地できたようだ。

 

「………冷えるな」

 

空を見る。横を見る。そこには、懐かしい白が見えた。体温を奪ってくれたようだが、頭も冷えた。今ならばもう少しマシな戦いが出来るはずだ。

 

「悪手だったな………」

 

あの時の状況を思い出し、舌打ちをする。いかな挑発を受けようとも、俺達は冷静に対処するべきだった。外に出るべきだったのだ。距離を取りつつ戦うべきだった。あんな閉鎖空間で、あんな能力をもつ相手に適うはずがない。

 

―――と、過ぎちまったことを嘆いてもうどうにもならねえ。気づけるだけ冷静になれて僥倖だと思うべきだろう。ここには居ない他の奴らも、そうであればいい。

 

しかし、どうなったんだ。何処に跳んでいった?

 

まさか、死んではいな………………いや、まて。そもそも、だ。

 

何故俺は外に居る?

 

「……」

 

嫌な予感がする。まだ酔っていたようだ。雪が見えること、それ自体が異常なものだと気づくべきだった。そんなことがあるのかとも思う。

 

痛む身体を無理やりに起こして、周囲を見回した。見れば、白い雪原の上に、大小無数の岩が転がっていた。それだけではない。木の破片も散らばっているようだ。

だが、木の表面は綺麗………調度品の成れの果てか? ………となると、確定か。

 

そうして、見上げた先に。

 

石垣の土台の上にそびえ立っているはずの城は、"綺麗に吹き飛んでいた"。

 

「………」

 

言葉もないとは、こういうことを言うのだろう。いつだったか、馬鹿が馬鹿でかい風の塊を砂の化物に打ち出していた時以来だ、こんな馬鹿げた気分になるのは。よくよく見れば、城を覆っていたはずの十尾とやらの姿もない。

 

つまりは……俺達も城も十尾も、化物も。あいつが斥力とやらで全部吹き飛ばした、と。

(………これが輪廻眼。究極の血継限界か)

 

気づけばため息がこぼれ出していた。懐かしい諦めの気持ちが胸を占める。

 

今まで、実力で俺より上回る敵は、数多く居た。だけどどうにかして、勝ってきた。だけど今回のあいつは、もうそんなレベルに居ないようだ。

 

下忍試験の、あの日より今まで。途中、挫折しそうになりながらも、諦めずに死に物狂いになって、ここまで来た。不本意ながらも背に腹は代えられないと、四代目火影とあの野郎と共に、鍛えに鍛えた。実力は格段に上がって、鬼鮫の野郎と互角にやりあえるまでになった。

 

なのに、これだ。訳の分からない、仙人とやらが出てきて、数合もたずにこうして吹き飛ばされ、ぶっ飛ばされて寝っ転がらされている。だが無理もねえか、と納得する気持ちもあった。なんせあの五影も全員、吹っ飛ばされているのだ。これが俺だけなら悪態もついただろうが、ここまでくるといっそ清々しい。

 

俺では、あいつには勝てないだろう。いや、忍者ではあいつに勝てない。既存の忍術全てを駆使しても、あいつを打倒することは適わない。

 

勝てるとならば、あの化物をも上回る、馬鹿者。イカれた術を思いついて、それを札にして控えている、あの金髪トリオだけだろう。

 

――――だが。だけど、よ。

 

「く、っ………ッ!」

 

痛みに声がこぼれる。だけど、立ち上がることは止めない。ここで、寝ていては駄目だと。その想いを膝に込めて、俺は立ち上がった。見上げれば、曇天。その下にひらひらと舞う、雪の礫達が居た。

 

(……そういえばあの時も、こんな風に降っていたか)

 

ふと思い出す。今の俺が始まった瞬間を。明確な道が見えた、あの時のこと、出会った一人のガキのこと。あれは、鬼鮫の野郎にたたきのめされ、忍びの世界の頂点を知り、自信を無くしかけていた時だった。今代の水影を打倒し、あの糞みたいな時代をぶっ壊して、里を真っ当な形にすると。そんな野望も、捨てかけていた時だ。

 

俺は、一人のガキと橋の上で出会った。

 

ガキは言った。くたびれ、今にも死にそうなガキは、それでも言った。

 

『お兄ちゃんも、ボクとおんなじ目をしてる』と。

 

一目見ただけ。それだけで、正鵠を射ぬかれた。あるいは率直な感想だったのか。だけどそれは、ごまかしようのない、何よりも認めたくなく、眼を背けようとしていた事実だった。

 

そうだ。負けることに言い訳をつけ、負けることを許容していたのだ、あの時の俺は。俺は気付きたくなくて。でも怒ることも出来なかった。何より俺がそのことを認めていたからかもしれない。

 

―――重荷を、捨てたかったのかもしれん。あの時、改めてそのガキを見た時に考えた言葉。それは、恐らく事実だったのだろう。

 

ああいうガキを無くすために、登りつめて。そして、水影を殺すんじゃなかったのか。そのための決意の証として、才能も無く、力も無く、いずれ任務に使い潰されてすぐに死ぬような、同期の奴らを殺したんんじゃないのかと?

 

いつしか重荷には重荷でしかなく、自らを支える信念足り得なくなっていた。その重さに嫌気がさして、抱いた想いも忘れようとしていたからか。糞のような故郷、笑わないガキ共、才能に縋る忍び共、戦でしか自らの誇りを見いだせない年寄り。

 

何もかもがうんざりで、だから全部ぶっ壊して、もっと、もっと。何か、別の、もっと良い何かに。だがあの頃の俺は、その気持ちを忘れて、力だけを求めていた。

 

それを想い出させた、いや想い出させてくれた少女と。共に過ごし、修行して、そしてまた強くなった。本当に強くなれた気がした。忘れていた気持ちを想い出させてくれた。

 

(まあ……カカシには、負けたけどよ)

 

四代目に聞けば、あいつも大切な誰かのために戦っているらしい。同じチームで任務をこなし、その果てに失った戦友。好きだったくノ一を失い、そいつらの遺志を守って、カカシも強くなったらしい。死者の念を背負うあいつも、譲れないものがあるということ。

 

「………負けて、られるかよ」

 

動くたびに信念が軋む。痛覚の金槌が、脊髄を叩いた。激痛の針が諦めろと告げてくる。だが、止まらない。止まれない。止まることは許さねえ。守るべき存在を守ろうと、負けられない想いを背に背負いながらも、それを力にして。今頃、また挑むべく立ち上がっているはずだ。

 

なら尚更、負けられねえ。何より、六道仙人と名乗るあいつには、負けられねえ。言っていることは至極真っ当だ。世界の為にという理屈も、一見すれば正しいとも思える。だけど、俺が俺であるからして、認められないことが一つだけある。他の五影連中も、あるいは忍者ならば誰でも同じことを考えるはずだ。

 

そして、もう一つ。許せないことがあった。

 

――――母を殺されたと。父親を殺したと、泣いていたあいつを。儚く笑って諦めることしか知らなかった、かつての少女を。俺のもの、俺の血だから誇れと言わなければ、自信でさえも見出すことができなかったあいつ。

 

今も悪夢にうなされ、夜中に飛び起きて。心配しないてと、何でもないと、無理に笑って誤魔化す白を。

 

あの涙を生み出した原因を作り、そして今間違いだから消そうとしている、あの野郎を。

 

「一発でもいい………殴らなきゃ気がすまねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崩壊した城の、正面にある雪原。長門はそこで、一人立っていた。暁のマントを再び身につけながら、先ほど自分が吹き飛ばした者たちが生きているかどうか、輪廻眼で探り始める。

 

「………一応は、生きているか」

 

だが手応えはあったと、長門はひとりごちる。城を見れば分かるように、先に放った引力に対する反作用、そして神羅天征を重ねた一撃は人を殺すには十分すぎる程の威力があった。

 

「防いだ者もいたようだったが………」

 

斥力を開放した時の光景を思い出し、呟きながらペインを周囲のチャクラを探った。だが感じられるチャクラはいずれも少なく、皆かなりの深手を負っているようだと判断する。事実、五影と護衛、死んではいないがもうまともに戦えはしまい状態に陥っていた。

 

「全ては、予定通り」

 

戦況を把握したペインは、状況を次の工程へと進めることに決めた。印を組み、輪廻眼の遠視で国境にある宿場町や、途中にある罠を仕掛けた場所を観察する。見えた光景は思い通りで、宿場町に忍者の姿は無く、皆こちらに向かっている途中。その大半も、ゼツと協力して仕掛けた大小種類様々な罠にかかり、戦闘不能に陥っている。

 

「しかし、残っている者は残っているか」

 

護衛に付いてきた者はいずれも手練。だが、その手練をも封殺する罠の数々をこらしていたペインは、そうして残った者を観察し、こんなものかと呟いた。

 

大小数々の罠、畜生道が保有する特別な妖魔も混じえた常では見られぬ罠の逸品。あるいは、小国ならば落とせる程のものをこらしていたのだ。その罠の嵐のを抜けて、目の前に堂々を姿を現した者も居た。

 

「ようこそ」

 

大仰に手を拡げ、ペインは苦境を突破してきた者に、賞賛の声をかける。

 

「ようこそ、こなくそ………お前は誰だよ、何ようだ♪」

 

「お前の敵だ。八尾の人柱力」

 

九尾に継ぐ力を持つ、八尾の尾獣を保持する人柱力で、その力を完全にコントロールできる雲隠れの英雄。それは歴代の忍びの中でも、最高に近い力を持つことを意味するが、ペインは余裕を崩さない。

 

「随分気分、調子が良いようだ♪」

 

「いや、お前ほどではないが………っと。もう一人、あの中を抜けてきたか」

 

キラービーの、後ろ。肩で息をしながらも、罠の網を抜けてきた人物――――女性が、口を開いた。

 

 

「再不斬さんは、どこですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方。遠くからそれを見ていた一行。サスケ達網の一行は、目の前で起こった出来事が信じられず、放心状態にあった。

 

「あれぐらいはやるだろうと、予想はしていたが………」

 

実際に目の前でやられると強烈だな、とサスケは城のあった場所を睨みつける。

 

「いや、よぉ………って、いやいやいや嘘だろ!? 誰かつっこめよ、なんなんだあのバケモンは?!」

 

唯一長門のスペックを知らなかった香燐が、悲鳴じみた声をあげる。

 

「これが、あいつの本当の………本気って訳か」

 

一方、仇の本当の実力を知ったアジサイは、拳をわななかせながらじっと長門の方を睨みつけていた。その眼光は凄まじく、今にも飛び出していきそう。実際に飛び出していく寸前で、その直前にシンに止められていたが。

 

「ちょ、待てって、落ち着けよアジサイ!」

 

「放せ、シン! あいつは、今までアタシをおちょくってたんだ! アタシは本気だってのに、あっちは本気も出さずに………っ!」

 

「だからってここでかかっていっても死んじまうだけだって!

 

シンの怒声。その指摘は正しく、アジサイの身体は他の皆と同じように、恐怖に震えていた。それは圧倒的な破壊に対する、畏怖であった。

 

「だが、生きてはいるな。相当の深手を負ったようだが、まだ死んではいない。流石は五影と言いたい所だが………」

 

イタチは散らばった五影達を遠視した後、彼等の状況を認識する。イタチも、影達の姿は知らされていた。皆実力高く、頂点に立つに相応しい力を持っている忍びだった。

 

だが、今は見る影もない。まず土影は老体がたたったのか、その場から動けないでいるようだ。仰向けに寝転がりながら、隣に居る巨体の男とくノ一に対し、必死に呼びかけている。雷影は仰向けに寝転がっていた。完全に気絶している。先の一戦で受けた傷は完治していなかったと聞く、今の一撃で完全にノックダウン状態だ。傷口が開いたのではなかろうか。もう一人、金髪の護衛の忍びは雷影の近くでうつ伏せに転がっていた。唯一、褐色の肌の護衛は動けるようで、何とか起き上がろうとしている。

 

水影は大樹を背もたれにして、その場で顔を伏せている。その前には、眼帯を付けている男がうつ伏せに転がっているようだ。とっさにあの眼帯をつけた男が盾になったのだろうか。しかし、それにも関わらず水影は気絶したままだ。しかしそれは無理もないことだとイタチは頷く。女性の身体は基本的に柔らかいもので、あのような衝撃波に耐えられるように出来ていない。屈強な男の体躯でぎりぎり持ちこたえられるような一撃、女性ならばひとたまりもないだろう。

 

事実、シズネは完全に気絶していた。火影、綱手姫は自分で治癒したのかまだ動けるようだが。必死にシズネに呼びかけ、掌仙術を使い始めた。

 

残る二人はどうなったのか、イタチはチャクラを探ろうとする。しかしそれは、サスケの声によって遮られた。

 

「兄さん、あれ………!」

 

切羽詰った声で、サスケが指し示した方向。そこは先にペインが立っていた広場の、中央。そこには、白ともう一人の姿があった。それは見るからに、異様なチャクラで、サスケはそれがただ者ではないことを察知していた。

 

「あれは………八尾の人柱力!」

 

「あれが……」

 

兄、イタチの言葉に驚くサスケ。

 

そんな傍観者をよそに、視線の先では決戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの罠の網を抜けてきたか………大したものだ」

 

褒めているような言葉。そこに感心の意は含まれておらず、忍者達にとっては皮肉に聞こていた。

 

「よく言いますね、アレほど広範囲にばらまいておいて………それよりも」

 

「ああ、鬼人か? 知らんよ。ボロ雑巾になった影達は今迎えに行っているが」

 

「迎えに………十尾ですか」

 

視界の端。蠢く黒を見た白が、顔を歪める。

 

「今は、だが………取り敢えず殺すつもりはない。約束があるのでな」

 

「約束………?」

 

「お前には関係ないことだ………いや、あるといえばあるのか」

 

「戯言を………そちらの都合に付き合うつもありはありません。もう一度聞きます、再不斬さんはどこですか?」

 

結構な量の殺気をこめながら、白が問う。しかし、ペインはそれもそよ風程度にしか感じ無かったのか、軽く肩をすくめながら答えを返した。

 

「知らんよ。そこらに居るだろうから、探せば見つかる………出来れば、だが」

 

長門の挑発。白は激昂しそうになったが、その寸前でキラービーが口を挟んだ。

 

「………ブラザーもかよ、影達もかよ♪」

 

「ああ、一人残らずな……そして二人、更に増えることになる」

 

長門は懐から黒い、針のような刀を取り出した。そうして、空気が一片する。戦場の空気へと加速していく。

 

「落ち着けよ、シスター♪」

 

「何を………いえ、すみません。あのまま突っ込んでいったら、まずいことになっていましたね」

 

「………」

 

「え、どうしました?」

 

黙るキラービーに、白が問う。キラービーは少し黙った後、少し笑いながら。白の疑問に答えた。

 

「いや、素直だなと………俺が人柱力と知っているのか♪」

 

「え、今知りましたけどそれが何か………?」

 

「………ノープロブレム、ん、礼はいらない、一人はツライし、こいつ強い、おまけに無頼♪」

 

「それでは共闘をお願いします」

 

場違いなラップ調の言葉に白は頬を引きつらせながらも、その申し出を受け入れた。

 

『っておい、ビー! うぜーラップしている場合じゃねえぞ、こいつ並じゃねえ!』

 

「分かってるよ、いざとなったら頼むぜ相棒!」

 

「………来ます!」

 

 

白&キラービー対、ペイン。

 

 

ここにまた、絶望的な戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シズネ、くそ………大丈夫か!」

 

「つ、なで、様………?」

 

「く、意識はあるようだな………今は喋るな、すぐに手当を………」

 

と、綱手は掌仙術でシズネの傷を癒していく。

 

(肋骨骨折、全身打撲………くそ、腎臓も破裂してやがる!)

 

だが吹き飛んでいないのであの時よりはマシか、と綱手は治療を続けた。流石の医療忍術の第一人者である綱手の掌仙術は見事なもので、シズネの傷はみるみる内に塞がっていく。

 

「すみません、こんな時に………」

 

「言うな。お前は死なせんぞ、絶対に!」

 

綱手はシズネの言いたいことを理解しながら、それでも言うなと口を塞ぐ。里の指導者、火影の立場にある綱手としては。このような事態に陥った場合、本当は一刻も早く自分だけでも安全な場所へ逃げるべきなのだ。

 

「お前の言いたいことは分かるつもりだ………しかし、私はもう二度と…………」

 

ダンのように。目の前で、助けられる誰かを死なせたりはしないと、綱手は言う。

そこで、シズネははっとした。先ほどの綱手の言葉を、思い出していたのだ。

 

(そうか、おじさまも腎臓を………)

 

シズネは、自分の叔父であるダンが死んだ時の状態を思い出していた。人づてに聞いたのだが、叔父は敵の攻撃により腎臓自体を吹き飛ばされていたため、綱手様の腕をもっても、治療することが出来ない状態に陥っていたのだと。

 

「死なせんぞ………絶対に死なせん。二度と、私の目の前で死なせるものか!」

 

「綱手様………! しかし、貴方は火影の――――」

 

役割があるのですから、と叫ぶその前に。背後から、男の声がかかった。

 

「その役割は、オレに任せてもらいましょうか」

 

「な、カカシ!? お前も大丈夫なのか?」

 

振り返った綱手は、治療を続けながら背後に居たカカシに声をかける。カカシは、笑ってその問いに答えた。

 

「ええ、何とか。咄嗟に衝撃波を瞳術でかき消しましたから」

 

「………嘘を言うな。お前も酷い怪我をしているじゃないか!」

 

綱手はカカシの身体を見て、その怪我の度合いを一目で看破していた。カカシはその言語に、苦笑を返しながら首を横に振った。

 

「流石に綱手様ですね………それならば余計に、死なせる訳にはいけませんよ」

 

「何を………カカシ、お前まさか………!?」

 

「カカシ、上忍………まさか、やめてください!」

 

驚いた声で、綱手が。息も絶え絶えに、シズネが。カカシを止めようと、声をかける。

カカシは、先ほどと同じ。笑顔のままで、首を横に振った。

 

「シズネさんは綱手様の補佐です。綱手様のことを一番よく分かっている。今の里にとって、誰よりも必要な人材です。ここで死なせる訳にはいきません」

 

「それはお前も同じだろう! 四代目との約束を、忘れた訳ではあるまい!」

 

「だからこそ、ですよ火影様。俺には今、出来ることがあります。そしてこの身体は生きて、動いている――――それならば、迷う余地はありません。火影は木の葉の象徴です、木の葉隠れそのもの。それを失う訳にはいきません。そう、オレよりも、です」

 

そう告げるカカシの全身からは、いつになく力強いチャクラが迸っていた。

 

「里の規律も、そしてオレの意地も――――今は、全て同じ方向を向いています」

 

「カカシ!」

 

「時間がありません………」

 

カカシはそう言うと、眼前を指し示した。その先には、十尾の塊があった。それはどんどん大きくなりながら、カカシ達のもとへと近付いている。

 

「オレが時間稼ぎをします……だから、綱手様はシズネさんを連れて逃げください」

 

告げると、返答を聞く前に走りだした。カカシは、見捨てろとは言わない。火影らしからぬ対処を諌めることもしない。

 

ただ笑い―――守るべき存在だと、改めて思うだけであった。

 

 

「仲間を大切にしない奴は、最低のクズだ……………そうだよな」

 

 

オビト、と。

 

リン、と。

 

 

ボロボロのカカシは、笑みを浮かべながら走る速度を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄のぶつかり合う音。長門、キラービーの二人の前で、鉄がぶつかっては弾かれ、またその繰り返し。

 

「はっ!」

 

「ふんっ!」

 

両者とも同じ、刀に雷遁のチャクラを流した剣で斬り合っていた。並の鉄ならば切り裂く斬撃の応酬。雷光の軌跡が両者の間で踊り、ぶつかり合う度に火花を散らし、一呼吸もまたず紡がれる。互いに全力、その斬撃には一切の遊びもなかった。

 

片や尾獣のチャクラ、人外のチャクラによる肉体活性。片や半ば変質した妖魔の肉体、人外のチャクラを交えた規格外の膂力、もっとも崇高な眼。

 

一秒に2つの斬撃が交換され、絶え間ない音の演舞を奏でていた。まるで太鼓の連打のように、鉄の打たれる音が鳴り響く。

 

「―――」

 

「――――」

 

そこから、二人の動きが変わる。様子見から、本来の動きへと移行したのだ。

 

太刀筋には、両者の特性が現れていた。キラービーは大胆な動きで複数の刀を身体の各所で操り、相手には読みにくい奇抜な太刀筋を繰り出している。長門は不規則な動きをその都度見切り、雷光の反射速度でもって二刀を繰り出す。ある時は刀を盾にして、キラービーの猛攻を防いでいた。

 

両者どちらが優勢というわけでもない、その攻防は全くの互角であった。白はそんな二人の攻防をじっと見ながら割って入る隙を狙っているが、下手に手を出せばキラービーに当たってしまう可能性があるため、迂闊には手を出せない。

 

――――そして、刀を交わし合うこと十分とすこし。形勢は徐々にだが、長門の方へと傾いていた。

 

「どうした、息が上がっているぞ!」

 

「くっ、はっ、とっ!?」

 

頬を掠めた斬撃に、キラービーが焦りの声をあげる。しかし声にならない。息が切れているのだ。その要因は、体力。片や二刀片や全身を使った八刀にあった。

 

全身を稼動させるキラービーの剣術は確かに優れているが、体力の消耗が激しいという欠点もある。しかも目の前の人物が人物なので、いつもより余計に体力を消耗せざるを得ない。城を吹き飛ばした術を警戒しているのもあり、体力の消耗もまた激しい。

 

片や長門の身体は正真正銘人外の肉体で、その体力は無尽蔵に近い。時間が経つにつれ、形勢が傾いていくのは自明の理であった。

 

『ビー、このままじゃジリ貧だぞ!』

 

(分かってるよ、バーロー!)

 

キラービーは心の中で叫びながら、八尾を一部だけ具現化しようとする。

 

「させるか!」

 

だがそのチャクラの流れを読まれ、具現化する寸前にこれでもかという程の斬撃を叩き込まれた。キラービーはたまらず守勢に回る。だが完全には防ぎきれず、身体に幾筋かの赤い帯を刻まれた。

 

「嫌な眼してるなこのやろー!」

 

不利を悟ったキラービーは大きく飛び退いた。

 

『ビー、様子見なんて探ってる場合じゃねーぞ』

 

「OK、了解、全開だ!」

 

そして着地の直後、内にある尾獣のチャクラを引き出した。

 

「ヨッ、と!」

 

引き出された尾獣のチャクラが、キラービーの身体の周りに集まる。人形のサイズに収まるまで圧縮されたチャクラはやがてその色を黒に変えた。

 

「尾獣化――――じゃないな」

 

大したものだ、と長門は両手を前にだした。

 

「行くぜェ!」

 

地面が爆発する程の踏み込みにより、走りだしたキラービー。そのまま、腕を長門の首を狩る勢いで、思いっきり振り抜いた。長門は先読みをして、その場から跳躍。キラービーによる必殺の一撃、"雷犂熱刀"が虚しく空を切る。

 

「っ、チャクラが!?」

 

交差した瞬間、消えていったチャクラの行先を目視したキラービーが驚きの声をあげた。

 

「返すぞ!」

 

餓鬼道の能力でチャクラを吸い取ったペインは、そのチャクラを還元することなく、そのまま斥力によって手元で圧縮。莫大なチャクラを砲弾に見立て、そのままキラービーの元へと放った。

 

(やばいぜ、けばい♪)

 

キラービーはその不意の一撃を見て避けきることは出来ないと判断し、そのまま受け止めようと手にチャクラを集中した。

 

「させません!」

 

そこに、乙女の氷壁が立ちふさがる。

 

――――氷遁・千年氷壁。

 

白はキラービーの前に踊り出ると、一気に練り上げたチャクラで足元の雪に触れ、自らの性質変化と物質変換を混ざり合わせて結合。千年は続くであろう堅牢極まる氷の壁が現れ、砲弾を弾いた。しかしチャクラ砲弾の威力も強力であり、氷壁の前に止められはすれど、辺りに破壊をまき散らした。舞い上がった雪が散らばり、チャクラ砲弾の余熱と混ざり合い、その場に白い煙が発生した。

 

「助かったぜ……ありがとうよ」

 

「いえ、あまり役に立てていないようですし、これぐらいは」

 

「そんなこと無い、仕方ない♪ アンタもやるね、お茶でもどう♪」

 

「あはは、遠慮しておきます」

 

「oh、残念♪」

 

「それよりも、どうしましょうか。正直打つ手なしなんですが」

 

そもそも五影が無理な相手を自分がどうにか出来るのか、と白は不安になる。

 

「それでも逃げないアンタは偉い」

 

「自分に正直なだけです。何とかすり抜けるかして、助力を請いたいのですが………」

 

「ああ確かに、このままじゃチトまずいな」

 

口調をわずかに変えたキラービーは、口に手をあて考え出す。そこに、八尾の尾獣の声が入った。

 

『ビー………分かったぞ。あいつはあいつだ、ほら、あの声の持ち主だ』

 

「………“殺す”と言った、あの野郎?」

 

『ああ。ユギトをやったのも恐らくこいつだ』

 

「そうか………」

 

キラービーは八尾の言葉を聞いて少し硬直したが、煙が晴れるといつもの調子に戻っていた。

 

「高速の守り手か………なるほど、厄介だな」

 

知ってはいたが、と長門は無表情のまま、舌打ちをする。

 

「それほどでもありませんが………知っていた?」

 

「あるつてでな。いや何、大したものだ、誇っていいと思うぞ。だが………お前は人柱力を恐れないのだな」

 

「………はい?」

 

何を言っているのか、と訝しげな顔をする白。構わず、長門は続けた。

 

「知っての通り、今お前が背後に守っている男は八尾の人柱力なのだが………怖くはないのか?」

 

「それがどうした、ですよ」

 

笑い、自信を持って答える白。

 

「それに………自分がされた事を、他人にしようとは思いません。辛さも理不尽さも、知っていますから」

 

それを聞いた長門は笑い、キラービーは静かに驚きを示していた。

 

「それに何となくだけど、この人は信じられるような、そんな気がするんです。なら、一度信じてみるというのもアリではないでしょうか」

 

「忍者らしからぬ思考だと思うが…………痛みを知っているから、か。忍者がお前のような者ばかりであればな」

 

今は言うべき時ではないと、長門は黙って、一歩下がった。裾から刀を出し、両手に持って構えた。動じ、それまでも桁外れだったチャクラが、更に増加していく。天井など知らないというように、高く、強く。

 

白はその圧力に圧され、後ろに一歩下がる。

 

「任せろ、行かせろ、後ろに下がってろ♪」

 

キラービーはそんな白の肩を軽く掴み、後ろに下がらせる。

 

「しかし………」

 

「心配すんな、気にすんな♪ 何よりこいつは、あいつの怨敵♪」

 

いつものラップ調の言葉。しかし、次の言葉は違った。

 

「ありがとよ、期待に答えてみるぜ」

 

先ほどとは違う、真剣な声。キラービーのチャクラも、大きくなっていった。

 

「oh、行くぜ相棒、このまま進もう、様子見終わりの超猛進!」

 

吠える声と共に。

 

 

「ウィィィィィィィーーー!」

 

 

キラービーは尾獣化し、八尾の尾獣へとその姿を変えた。余波で衝撃波が発生し、近くにいた二人を巻き込む。落着された地面があまりの重量によって砕け、そこらじゅうに散らばる。地響きが、あたり一体に鳴り響いた。

 

「くっ、これが………!」

 

白は離れながら、それを見た。

 

「今代の八尾の尾獣か…………!」

 

長門も少し離れた場所から、しかし正面でそれを見た。雄叫びを以て現れたるは――――蛸の牛鬼。桁外れのチャクラを持つ、八本の尾のようなものを持つ怪物。

 

そして、八尾の人柱力の姿があった。

 

「尾というよりは足だが………言ってる場合でもないか」

 

長門は刀を捨てながら、じっと八尾を見据えた。あるいはこいつを出す必要があるかもしれんと、足で地面を数回叩いた。そのまま腰を落とす。

 

『「いくぜ!」』

 

手加減一切不要と、キラービーは初撃から仕留めにかかる。大きく後方へ跳躍し、チャクラを全力で練り、チャクラ球を飲み込んだ。

 

口から、煙が流れる。そして、次の瞬間だ。

 

『「オラァ!」』

 

気合の怒号と共に、超超高密度に高められた黒色の砲弾が長門へと放たれた。長門は餓鬼道の力を使い、それを吸収しようとしたが――――

 

(流石にこれは吸収しきれないか!)

 

その全てを吸いきれず。吸収しきれなかった砲弾が衣を貫き、近場の地面に着弾する。

 

砲弾は地面を豪快にめくり、土と岩が爆発にさらされ、宙に舞った。長門もその爆風にあおられ、同じく宙に舞った。

 

そこに、更なる追撃が重ねられる。キラービーは八尾の足を駆使しながら、そこら中にある岩塊を投げつけた。人一人を潰すには十分過ぎるほどに巨大な岩が、長門のもとへ殺到する。

 

「風遁・風神烈破!」

 

長門はそれを真空の竜巻で迎撃する。それはいつかの戦いで見せた巨大な風の奔流。

岩をも砕く真空の刃が、襲い来る岩塊を礫へと変えていった。そして、竜巻が収まった後。

 

そこには、腰を落とし何かを抱えている長門の姿があった。

 

「風遁―――」

 

『ビー!』

 

(了解!)

 

八尾は目の前に移るチャクラと、敵の抱え込む風の塊から何の攻撃が来るのかを察し、相棒に告げた。それに応じ、キラービーは3本の足を防御に回した。

 

「風神砲弾!」

 

直後、風の砲弾が放たれた。形態変化で極限まで圧縮された風の塊が、八尾の足に直撃する。着弾と同時に圧縮は解かれ、真空の大鎌となって八尾の足をきれいにすっぱりと切り裂いた。

 

『「痛えな馬鹿やろ―この野郎!」』

 

だが八尾の足は何度でも生え変わる。キラービーは生え変わった足も含めた、八本全てを持って長門へと襲いかかった。だが長門には届かない。長門は寸前まで迫った足を巧みに躱しながら、"地面を手で叩いていく"。

 

仕上げに、キラービーに向かって叫んだ。

 

「どうした、動きが鈍いぞ! こんなものか!」

 

「うるせー、喰らえ馬鹿やろーこのヤロー!」

 

挑発を受けたキラービーはそれでも動じず、だが全力の攻撃に出た。自分が操れる八本の足を同時に動かし、八方向全てから攻撃を仕掛けたのだ。

 

「くっ!」

 

これは逃げ場が無いと長門は判断し、その場から大きく後方へと跳躍した。全ては避けきれず、腕の一本が長門の全身を打ち据え、遠くへ吹き飛ばした。

 

「チャンスだ、行くぜ相棒!」

 

キラービーはそれを好機と判断し、防げなかった最初の一撃、チャクラの砲弾で以て爆砕すべく、八尾のチャクラを口元に集中した。

 

全身からかき集められたチャクラが、八尾の顔の前に集結され、圧縮されていく。高圧縮されたチャクラは、そのあまりの密度に黒くなり、漆黒の球体へとその姿を変えていく。

それは、最初の一撃と比べれば3倍にもなる程の量だった。遠目から見れば、まるで虚空じみた黒い穴のよう。

 

だが―――集められた、瞬間に。

 

『―――っ! ビー、待て!』

 

集められた砲弾が、砲身――――口内へと含まれる、直前に。起き上がった長門は、キラービーの方を見ながらほくそ笑み、走りだした。

 

(前に………!?)

 

その行動を、キラービーは怪しむ。しかし、この砲弾は防げないはずだ。全身全力をこめたこの一撃であれば、敵がいかな防御をとろうと突き破れる。それだけの自信が籠められた一撃。

 

だけど。口の中へと、チャクラの砲弾が飲み込まれる、その寸前、"上を向いた"その瞬間、長門の柏手の音が鳴り響き――――

 

遠くで見ていた白が、まずいと呟き、助けに入ろうとする。"地面の中から出てきた"、巨大な筒を破壊しようとする。

 

しかし、あまりにも距離が離れすぎていた。

 

妨害されなかった“それ”は弾け、大爆発を引き起こした。爆圧と炎と衝撃波と、その他もろもろを周囲にまき散らしていく。

 

八尾は直下、死角から襲ってきた爆発に身をひるませて――――

 

 

「が、しまっ………!?」

 

チャクラの塊を圧縮する、そのコントロールを失い――――チャクラは、破壊の意志をもって宙で四散した。

 

先ほどとは規模の違う爆発が、八尾の前で炸裂した。

 

『「があああああああああああああああっ!!??」』

 

足も顔も身体も、口内も。爆発に全身が焼かれ嬲られ、キラービーと八尾は激痛に身悶えた。苦しみに、唸り、天を仰ぎ―――――――そこに、敵の姿をみつけた。

 

キラービーが見た長門は空に浮かび、両手を天につきだしていた。

 

そして、右手にチャクラを込めていた。

 

里一つは吹き飛ばせるだろう、それだけのチャクラを、その手に装填していたのだ。

 

激痛に薄れる意識の中、キラービーは見た。長門が勝利を確信した笑みを浮かべているのを。

 

 

「神羅、天征!」

 

 

振り下ろされた、掌打と共に。

 

八尾の全身を覆える程に巨大な不可視の槌が、八尾へと振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ、何!?」

 

森の中、国境を少し越えた場所。突如襲ってきた口寄せの獣を相手にしていたキリハ達は、周囲に突然広がった強風にあおられた。風に煽られ、砂が飛び散る。口寄せの獣はその風圧をまともに受け、転けた。忍び達は顔をかばいながら、その風が来た方向を見る。

 

そこには、人が居た。人間が、空に舞っていた。

 

「あれは………暁の衣!」

 

火影の護衛部隊の一員である、日向一族の者が叫んだ。

 

「キラービー様の姿は見えていたけど………やはり暁と戦われていたのか!」

 

雲隠れの上忍、サムイが叫ぶ。弟子である雲隠れの忍者、カルイとオモイは、再び立ち上がりその方向をじっと見る。

 

「おい、キラービー様………立ち上がってこないぞ?」

 

「まさか………暁の奴は生きているってのに!」

 

やられたのか、という言葉。その言葉は、忍び達に動揺を引き起こしていた。吹き飛ばされた城の、その時の光景も、忍び達の中に焦りの種として植えこまれていた。ひょっとすれば、五影も人柱力も倒されたのではないか。ダメージを与えても与えても倒れない、目の前の獣の異様さと強さ。そして張り巡らされた罠の規模、その精度と。

 

影達をも圧倒したかもしれない、敵。その未知の敵は、未知故にその大きさが肥大化されていった。やがてそれは恐怖となって忍び達の心を襲う。

 

弱気が、心を犯していく。自分の戦意を保つだけで、精いっぱいになって。

 

だから、気づけなかった。罠に仕掛けられていた、チャクラを吸い取る術。抜けた筈の罠、時限式の術が、ゼツの胞子の術が。知らぬうちに追いつかれて、その菌が今まさに周囲にばらまかれていることを、察知できなかった。

 

 

――――そして、気づいた時にはもう遅かった。

 

 

 





あとがき

原作で、白が死んだ後に再不斬が弱くなった理由って、カカシに追いつけなくなった理由を自分なりに解釈しました。

白の言葉の通り、再不斬は心底守りたいものが無くなったから、弱くなったと。

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