情報の共有を終わらせたオキ達はそれぞれの動きに入った。
「俺とクロ、シノン、そしてギャレットの旦那は試合の中から。ドレイクの姐さん、教授は外から調査。クロ、さっきも言ったが…。」
「わかってる。能力は使わない。」
オキ達アークスの心身だけでも彼らスレアの人間と比較すらならない圧倒的な差がある。
特殊な能力を持つクロがそのすべてを発揮したならば、チートと騒がれるだろう。できる限りそれは避けなければならない。
「予選の内容は説明した通りだ。いいな?」
「問題ない。マスターも油断しすぎないようにね。」
拳同士を打ち合い、ニヤリと口をゆがませる。
BoBの予選はブロックごとにランダムで選出された参加者が1対1のサシで勝負する。
この会場内にいれば勝手に転送され、30秒の待機部屋へと移動。その後半径数十メートルほどのフィールドに飛ばされ、対決するというシステムになっている。
フィールドに飛ばされたプレイヤーはお互いの距離が10mほど離れ、相手がどこにいるかわからない状態でスタートする。
後はお互いがどったんばったん、大暴れして倒されたら負け。打ち勝った方が次へと進出。そして最後の一人となったものがブロック代表となり、決勝へと進むことが出来る。
「おっと。そろそろ俺か。ペルソナの旦那。負けんじゃねーぞ。」
「あんたもな。」
まず飛ばされたのはギャレットだ。周りにいる同じチームのメンバーから応援を貰いながら転送されていった。周りを見渡すと同じように飛ばされていったプレイヤーが何人かいる。
「あれ、マスター。」
「ん? どうした。」
周囲を見渡したクロが疑問を持った。
「ここには参加者と応援者がいるんだよね。ブロックは結構あるって言ってたけど、見渡した限りの人数じゃ計算が合わないんだけど。」
「ああ。ここ以外にも会場があるからな。そっから飛ばされる奴らもいる。このさらに下とか上とか。」
「ふーん。そうだったんだ。」
会場の壁に大きなモニターがいくつも映っている。その中では数多くのプレイヤー達が銃を撃ち合ったり、爆発物を使ったりと何とか勝ちあがろうと奮闘している姿が見られた。
「あ、ギャレットがいた。」
「ん? どこだ?」
「あそこ。右から二番目の…。」
クロがギャレットが映っているモニターを見つけた。オキもクロの説明で見つけることが出来た。
ギャレットが扱うはウィンチェスターライフル。オキの持つトンプソン同様、他のプレイヤー達が扱う近代の銃より古い銃だ。
「へぇ。」
クロが一言もらした。
「いい動きするだろ?」
「悪くない。」
オキが肩入れするのもわかる気がしたクロは、彼の余裕ある動きをじっと見た。
「相手方、旦那とやりあうにはちと腕と度胸がたりねーな。旦那は弾の飛び交う中を鼻歌交じりに歩く男だ。旦那が相手をロックしたら、もう勝つことはできない。」
「でもマスターは勝つんでしょ?」
オキはクロの言葉にクククと笑った。
「そりゃ当り前さ。腐ってもアークス。一般人にゃ負けられねぇな。相手が魔人や化け物っていうなら話は別だがよ。」
結果、ギャレットは一回戦目を勝ち抜いた。
「ん? 次は俺か。クロ。負けんじゃーねぞ。負けたらトマトな。」
「なんでさ!」
笑いながら転送したオキ。
「さって…準備はっと。」
念のため自分の装備をもう一度確認する。トンプソン、OK。弾薬十分に。グレネードにM29マグナム。すべて問題なし。
「始めますかね。」
30秒のインターバル後、オキは再度転送。森の中だった。
「森のフィールドか。」
木に背をついてその場にしゃがみ込んだ。
「どれ…。」
オキは目をつむり集中する。ピタリと止まったオキの耳には自分の呼吸の音と小さな風の音。そして
カサ
目を見開いてそのかすかな音の方角へとトンプソンを乱射した。
「そこだ!」
タタタタタタタ!
シカゴタイプと呼ばれる由来ともなった独特の音が鳴り響く。
「ばかな! なぜばれた!」
迷彩服を着た男が乱射された草むらから飛び出しながらM16A1を乱射してきた。
「ばかめ。その行動は予測済みだ。」
「しまっ…!」
ドォォオン!
オキの投げたグレネードが男の目の前で炸裂する。オキは必ずそちらに飛び出してくるだろうと予測した場所へトンプソンを乱射した後に予めグレネードを転がしていた。
「まず一勝と。」
爆発した煙を見ながら口元をゆがませるオキ。
モニターでその様子を見ていたクロは当たり前の出来事ではあるが少し誇らしげになっていた。
「…あれ。次は僕の出番か。」
クロの目の前に案内の表示が浮かび上がり、強制転送される。
転送された場所は四方を真っ白な壁で覆った小さな部屋。出口も窓もない。
表示されているのは秒数だけ。後20秒足らずで0になる。これが戦闘開始の合図だろう。
クロは腰にさげているホルスターをちらりと見た。白と黒に輝く銃。先日手に入れた金額全てをつぎ込み、改造に改造を重ねた『DE.50AEカスタム』。6インチバレルから10インチへとのばされた化け物銃だ。クロの小さな手には有り余る代物。
だが、アークスからすればこれでも小さい。普段はもっと大きなツインマシンガンを握っている時もある。
カウントダウンが0となり再び強制転移。オキ同様森のフィールドだ。
クロは姿勢を低くして周囲を見渡した。音もならない。風で揺れる木々の音だけが響いている。
相手が動かない可能性もある。
「っふ!」
クロは音もなく木の上へと飛び移った。木の上を歩くというのも何ら問題はない。むしろヴァーチャル世界なのによくここまで思い通りに動けるものだと感心までした。
木と木の間を移動し始めたクロの音に驚いたのか、相手がうろたえ周囲にスナイパーライフルをぐるぐると回している姿をとらえることが出来た。
「仕留める。」
上からの奇襲。あいてもまさか上から来るなんて思ってもみなかっただろう。それもそうだ。『そのような戦い方をする者はいままでにいなかったのだから』。
「なに!?」
クロの気配を察知した男はスナイパーライフルをクロへと向けるが、クロは向けられたライフルを足でけり上げ、片腕を伸ばし眉間へと狙いを定めた。
ドォン!
零距離での射撃。デザートイーグルの咆哮。かつては史上最強のハンドガンとも言われた未だに人気の高いマグナム銃。
その威力をもろに喰らった男はそのまま勢いよく吹き飛び、ノイズとなって消えて行った。
「ふん。あっけない。」
クロ、なにも問題なく1勝を手にする。
「へぇさすがアークス。負けてられないわね。」
クロの活躍する姿を見ていたシノンは自らも名乗りを上げたからにはと気合を入れ、転送されていった。
その後も4人は何事もなく予選を走り抜ける。東西のマフィアとして有名な二人とヘカートをわが身のように扱うシノンは勿論だが、オキの連れてきた見知らぬ少女があまりにもアクロバティックな動きでプレイヤー達をばったばったと倒していく姿に観戦者たちは目を奪われた。
「なんだあの嬢ちゃん!」
「すげぇぞ。なんだ今の動き! 見えたか?」
「くそ。スカートなら完璧だった。」
「さすが
「つーか、かわいくね?」
注目されている事には気づいていないクロ。
予選が先に終わったオキは先ほどの会場で飲み物を飲んでいた。
「ぷっはー! やっぱコーラにタバコはうまい! …あん? あいつはたしか。」
オキが見つけたのは一人の男。先ほどシノンと一緒にいたシュピーゲルとかいう男だ。
「おい。あんた。さっきシノンと一緒にいた奴だろ?」
「え? うわぁ!? ドド…
いきなり声をかけられ驚いたという反応だった。
「そんな驚かなくてもいいだろうに。ワイちょっと悲しい。」
「あ、えっと…ごめんなさい。そんなつもりはなかったんです。」
おどおどとするシュピーゲルを隣に座らせた。
「お前さん、たしか…。」
「シュピーゲルです。シノンさんとはリアルで知り合いで…。」
「あぁ。なるほどな。」
どうやら彼は外の世界で、銃について詳しかった彼にシノンが話しかけたのがきっかけだったそうだ。
ある銃を探していたシノンだったが、数か月前まで寝たきりとなっていた。そうSAO事件だ。
シノンはあるメディカルカプセルを使用中にあのバグ事件(75層)にてSAOとつながってしまい、巻き込まれた。
そこから半年以上彼は彼女の無事を祈ったという。
「ふーん。あのシノンにねぇ。」
「あの…つかぬ事をお聞きしますが。オキさんはシノンさんと一体どういうご関係なのでしょうか…。あ、いや気に障ったならごめんなさい…。」
あたふたとする彼をみてオキは少し微笑んだ。
「ばーか。そんなこと思うか。そうだなぁ。シノンとは…死線を潜り抜けた仲、かな。」
「え? 死線って…。まさか!」
「しー。黙っていてくれよ。」
オキはウィンクしてシュピーゲルの近くに口を寄せて小さな声で囁いた。
「そう。俺はSAOの生還者。シノンと一緒にアインクラッドを走り回った、その攻略組メンバーの一人さ。」
オキはコーラを一気にのみ、再度タバコに火をつけた。
みなさまごきげんよう。
GWは帰省後に湯布院(九州)へ旅行してました。
そんな大自然を堪能しながらもFGOにてCCCコラボ開始!
いや、すごかったですわ。ほんとにイベントかよっていう内容。先ほど(執筆後)に全てのミッションとクエストを終わらせてきました。
ボリューミーな内容でしたね。これイベントじゃねーだろ。
さて、1週間以上家を離れていた関係でPSO2がすこし出遅れ気味に。ゼイネスコレクトは現在全力で取りに行ってます。まずダブセとパルチとワイヤー、そしてアサルト。
期間もながーいのでまずはメインである4本をと思ってます。ついでにタリス。
ファレグさんとの決闘ですが、どうも私の腕が下手過ぎて下手過ぎて。
第1形態は被ダメ0で行けるようになったのですが、第2形態になるとどうしても被弾する。
やっぱ下手くそだなわたし。
「あれ倒せない奴がぷぷぷw」とか言わないでね・・・。
時間差攻撃にがてっすわ。
(ちなみにうちの魔神はしっかり全ての職で倒してました。さすが魔神。ぱねぇ)
ま、ゆったりやりますかねぇ。
ではまた次回にお会いしましょう。