SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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SAO事件後、惑星スレアとの友好も深まりつつあり、良好な関係を築き上げる中、オキはある人物を探していた。


第3章 ~ガンゲイル・オンライン~
第94話 「ガンゲイル・オンライン」


オラクル船団。その一つ、惑星スレアに一番近いシップ内にてオキはある人物を探していた。

「この辺にいるはずなんだが…。ああ、いたいた。おーい。」

「マスター? 何か用?」

銀髪ショートに幼いながらも整った顔の少女、クロノス。彼女がオキの探していた人物だ。

「拉致。問答無用。来い。お前の力がいる。」

「え?」

ムンズと首根っこをつかまれ、そのままずるずるとキャンプシップへ乗り込まされ、気が付けば、惑星スレアへと向かっていた。

「なんでー!?」

クロ。本日も理不尽なマスター命令にて拉致される。

「まったく。準備位させてよ。」

「スマソ。時間が無くてな。えっと…こっちだ。」

惑星スレアに降り立った二人は都心の街角を歩いていた。オキはスーツにコートを羽織った姿。

クロはオキから与えられた濃い藍色のジャケット風の上着に、黒色のワンピースを着ている。すらっとした足がスカートから出ており、健康的でセクシーだ。出っ張るところがないのが少々残念だとオキが言ったらクロは無言で叩いた。

「ところでマスター。」

「んー?」

クロが自分の着ている服を見ながらオキに質問を投げた。

「なんでこんな服持ってんの?」

「…内緒。おっと、ここだ。入るぞ。」

オキの案内で到着したのは都心にある喫茶店だった。

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「2.先客がいるはずだ。えーっと…。」

オキが店員の奥、店内をキョロキョロと見渡した時に手を振った一人の男性がいた。

「おーい。こっちだ。」

「ああ。いたいた。」

オキが店内に入り、クロも一緒に入る。少しだけ周囲を見渡していた。

彼女はこういう店がはじめてなのだ。

「お待たせ。遅れちゃったかな?」

「いいや。時間ぴったりだ。さすがアークスだね。そちらの方は…。」

スーツ姿の中年男性。少しやせ形で、顔はさわやかに笑顔を作っているが、クロは内心『胡散臭い』と思った。

「クロノス。俺の仲間だ。今回の件、彼女を連れて行く。」

「ということは…受けてくれるんだね!?」

男性がすごくうれしそうにしていた。

「お水とおしぼりです。メニューが決まりましたらまたお呼び下さい。」

ウェイトレスが入ってきた二人にお冷とおしぼりを持ってきた。オキは軽く頭を下げて水を半分ほど飲んだ。

「ぷはー。あ、この水うまいな。クロ、好きなの頼んでいいぞ。このおっさんが会計してくれるって。」

「そう? ならケーキセット。アイスティとチョコケーキで。」

「おれもセットと単品でチーズケーキ。アイスコーヒーとショート。」

二人がメニューを開いてささっと頼んだ。それを男性は軽く笑いながらウェイトレスに頼んだ。

キン…シュボ

「ふぅ。紹介するわ。菊岡 誠二郎。えーっと…なんつったっけ。部署。長くて覚えてねーんだわ。」

「総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二分室。通信ネットワーク内仮想空間管理課、通称『仮想課』。SAOでの事件後に彼と知り合ったのがきっかけです。どうぞよろしく。」

長いと突っ込むオキに、クロノスへと握手を求める菊岡だが、クロは彼の手を細めで見つめるだけだった。

「あ、あはは。握手は…ダメなようだね。いや失敬。」

「すまん。警戒してるようだ。おっさん、胡散臭いんだもん。」

煙を吐きながらオキは笑っていた。クロはなぜこの場に呼ばれているのかいまだに理解が出来ていなかった。

「本題は後で。まずはおっさんのおすすめと言っていたこの店のケーキ。食べてみよーぜ。そんな難しい顔せんとな。」

「わかった。」

オキはクロの肩をばんばんたたき、暫くSAOの話をしていたオキと菊岡の様子をクロは見ていた。

「いやうまかったー。」

「…美味しかった。」

その言葉を聞いて菊岡は満足そうだった。

「いや、そういってくれてうれしいよ。アークス…でもこちらの味は合うんだね。」

「まぁな。食うもんが若干違うだけで、味の好みは一緒のようだし。今度シリカでも連れてくるか…。」

ボソリとつぶやくオキの方を見てクロは目で合図した。早く本題、っと。

「ああ。すまん。すまん。さて本題だ。おっさん。あれ、クロに見せてあげて。」

「ああ。少し待っていてくれ。」

菊岡はカバンからノートパソコンを取り出し、一つの動画を見せた。

「…これは?」

「これはガンゲイルオンライン、通称GGOと呼ばれる。銃を使って人対人、つまり対人戦をするVRゲームだ。簡単に言えば、レンジャーとガンナーがチーム組んでお互いを撃ち合う仮想空間でのゲームだ。」

フーンと興味なさそうにアイスティを飲むクロ。

「で、そのGGOの第2回大会でまーいろいろきたねぇ手を使って優勝したっていうのがコイツ。」

動画の中の名札に『ゼクシード』と書かれており、得意げに何かをしゃべっている。

「で、このシーン。」

動画の中でゼクシードと呼ばれる男が急に胸を押さえて悶え始めた。

「これ、VR世界の中でこの男にこの場で銃を撃とうが切ろうが本体であるこいつは何も起きない。だが…。」

動画の中で倒れ、その男はピクリとも動かなくなった。そして動画はそこで途絶えている。

「こいつ、死んだでしょ。VRとかそんなの関係なしに。」

クロの目には彼の生命の時間が止まった事が映った。それが動画越しでも分かった。

「さすがクロ。その後、この放送をしていた関係者が彼の家に行くと、心臓麻痺で死んでいたんだと。今のところの原因は…これ。」

オキが小さくコンソールを開き、クロへと転送した。

「死…銃?」

「デスガン。そう呼ぶそうだ。」

「デスガン…。」

デスガン。巷ではそう呼ばれていた。むしろ本人がそう呼んでほしいのかもしれない。

ゼクシード死亡後、別の場所で、同じゲーム内で同じように心臓麻痺で死亡する事件がもう一件発生した。

GGO内最大級のチーム。その会合中にリーダーである男が死んだのだ。

その時に目撃されたのがスカルマスクに真っ黒なマントをかぶった大きな人物。そして目撃者からの口からは

『我…デス…ガン…。死を…司る…モノ』

と聞こえたそうだ。声もボイスチェンジャーか何かで変えていたのか人ならざる声だったそうだ。

殺人事件として捜査を開始した『仮想課』だったが、情報は少なく手詰まり状態。そこで仮想課である彼、菊岡はSAO事件で知り合い、行動力、情報収集能力、戦闘能力すべてを兼ね揃えたオキに依頼してきたのだ。

「本来なら我々だけで捜査しなければならないとはわかってるんだが、ここまで行き詰ってしまってはどうしようもなくてね。アークスの上位の方々にも許可をいただいて、彼に極秘捜査を依頼したのさ。」

「で、ウルクからは…。」

『友好の為に…頑張ってね☆』

あー、とクロノスの彼女のテヘペロする顔が目に浮かんだ。

「ま、別に面白そうだし、何より俺もこのゲームやってるし。ついでに信用が出来て、銃の扱いがうちのメンバー内で一番うまいやつってことでクロを引っ張ってきたってわけ。」

なるほどとつぶやいたクロは彼がある情報をさらっと言ったことに気づいた。

「あれ…やってる?」

「行くぞ。GGOに。なーに、装備と金ならわんさと貯めてるから。」

クロの目が点になっているにも関わらず、オキはクロノスをGGOへと連れて行った。

風の吹く荒野。砂の交じった風がコートを叩く。

岩だらけの場所でくつろぎながらタバコを吸う男が一人。

「ほんとにここ通るんだろうな?」

別の岩陰から出てきた一人の髭面の男が、タバコを吸っているコートに身を包んだハット某の男を睨み付けた。

『間違いない。私の情報が正しければ必ずここを通るはずだ!』

「だとよ。なんだ? 俺とうちの相棒を信じないのか?」

へらへらと笑いながら無線から聞こえた幼さの残る声の主の情報を信じるオキ。

「きたぞ!」

見張りをしていた迷彩柄のバンダナを頭に巻いた男がスコープを覗きながら周囲に合図を投げた。

「そーら。おいでなすった! ナビ。」

『任せといて! すぐに敵の情報を投げるよ。』

「旦那。」

更に別のヘルメットを深くかぶった男がオキの方を見て、目で合図してきた。

「あーよ。まかされたぜ。作戦通りだ。俺が真正面で壁をはるから、回り込んで挟み撃ちにしろ。」

こくりと頷き、ヘルメットの男が周囲に合図を送る。オキは岩の影からゆっくりと静かに進んだ。

それを後方で動く男たち。目標は真正面、下方に見える、固まって動く6名の兵士。

「…ナビ。情報をくれ。」

『ちょーっとまってねぇ…。んー。5人の情報はこれ。小中型マシンガン、グレネード、予備でハンドガン。典型的な軽装備型の装備だね。ただ…。』

声がこもった。オキにも見える。5人の兵士は真ん中にいるグラサンを付けた大男を囲んで何かから守って歩くように進んでいる。しかもかなり慎重にだ。

『あいつの装備が読み取れない。誰かが対ハックスキル持ってる。しかも高レベル。』

「もしくは高レアのソレ系の装備か。ま、どちらにしろクライアントからは突っ込んで死ねとオーダーだ。」

ニヤリと笑い自分の持っている大きな機関銃をを握りしめた。

『だが、死ぬつもりはないんだろう?』

「へへ。もちよ。…合図だ。いくぞ!」

遠くからの銃撃の音。その直後に一番前を歩いていた男の頭に一発の弾丸が突き刺さった。

それが合図。オキはタバコに火を付け、くわえたまま岩から飛び出し銀色に光り輝くボディ、木製のストック。そして何より目が行く丸型のドラムマガジン。トンプソンM1921。トミーガン。シカゴタイプライターと呼ばれたマシンガン。しかも100発の弾丸を入れたドラムマガジンを使い、オキ専用に改造されたモノだ。そのトンプソンの銃口が火を噴いた。

ガガガガガ!

「ぐあ!」

「っち! 待ち伏せか!」

「ひゃははは!」

笑い、岩を下りながらトンプソンを乱射。1人を蜂の巣にし、更に近づくために乱射を続ける。

二人を殺され、さすがに無抵抗ではいられない兵士たちは囲んでいた男の真正面から外れ、横へと散開。持っているマシンガンをオキへと向けた。

「白のコートにハット帽、銀色のシカゴタイプ…。『首領(ドン)・ペルソナ』か!」

グラサンの大男が羽織っていた大きなロングコートをバサリと脱ぎ捨てると、その中からは巨大な銃、6本のバレルが顔を出した。

キュィィィイ…

音を立てながら回転しだす6本のバレル。

「ちぃ…!」

『オキ! 逃げろ! そいつらはゆっくり歩いてたんじゃない! そうするしかなかったんだ!』

グ゛オオオォォォォォ!!!

大きな音と強力に輝くマズルフラッシュが周囲に響きわたった。

「まじかよ!」

ガトリングガンの咆哮が周囲に広がった。間一髪岩の影に隠れたオキだが、その岩も大口径且つ超回転しながら吐き出る弾丸に岩も削られていく。

『やばいやばいやばい! どうすれば…。』

ナビも焦っている。向こうでも何とかできないかを考えてはくれているのだろうが、オキは今の状況を冷静に整理した。

「…っふ。」

飛び込んだ逆の方から飛び出たオキはトンプソンの弾丸をすべて吐き出す。

ガキキキ!!

「! っちぃ!!!」

狙ったのは大男ではなく、ガトリングガンそのもの。壊れはしなかったものの一瞬停止する。

「だんなぁ! 今だ!」

「あいよおお!! 突撃!」

別の岩陰から10名ほどの男たちが顔を出し、自らの武器で大男ごと、兵士へと銃をフルバーストした。

「こしゃくなぁぁぁぁ!」

グォォォォォォォ!

再びガトリングガンが吠える。薙ぎ払われる岩肌はすぐに貫通し、その先に隠れていた者達をえぐって行った。

「ははははは!」

高らかに笑う大男だが、遠めに何かが飛んでくるのを見た。

「グレネード…! ちぃぃぃぃ!」

投げたと思われる男に向かってゆっくりとガトリングガンの弾の放射線を向ける。本体は重い。しかも撃ちながらだ。

ゆっくりと向かう放射線。だが飛んでくるグレネードには何とか間に合いそうだ。そもそも届きそうにもない。

男は、っふと笑った。

「ところがギッチョン!」

ガゥン!!!

一発のでかい銃声が鳴り響いた。次の瞬間、遠くにあったグレネードに火花が小さく光り、こちらへと一直線に飛んできた。

「っな!?」

銃の音の先を見た大男は、見た。オキが大きなリボルバー式のハンドガンでこちらを狙っているのを。

「チェックメイトってな。」

ガゥン!

再び銃声が鳴り響き、ちょうど大男の頭上に飛ばされたグレネードはオキのリボルバーの弾丸によって安全ピンを抜かれる。

ピン…

「さいなら。」

逃げようとした大男だったが、ガトリングガンの超重量過多制限により走るどころか歩くスピードすらも制限されている。守るすべもなく、大男はグレネードの爆炎に飲み込まれた。

「ふう…。一丁上がり。ナビ、帰るぞ。 報酬は頂きだな。」

『うん! コーヒー、用意して待ってるぞ!』

オキは少女の待つ自分のチームの拠点へと転移した。




みなさまごきげんよう。
祝! 新章突入!
みなさまは番外編を見ていただきましたか?
少々宣伝と違う内容(特に後半も終盤)となりましたが、蛇足になりつつあったので没にしてしまいましたが、もしよろしければと思います。

さて、SAO編が終わり、惑星スレアとの有効も深まる中起きたガンゲイル・オンライン内での事件。原作をご存知の方はご存知でしょう。
こちわもかなり改変してアークスであるオキ、クロノス、通称クロが大暴れ致します。
本当はリサちゃんとかNPC勢も出してあげたかったのですが、私では彼女たちのものすごいキャラ性能を扱い切る自信がありませんでしたので没といたしました。
いつかは書いてみたいものです。(かくとはいってない)

PSO2でもようやくEP4が終わりました。クゥちゃんかわいい。この一言で終わりました。
他? 知らない子ですね。
EP4も書く予定です。その時は大きく改変して皆様にお見せできると思いますので、生暖かい目でお楽しみいただければと思います。

ではまた次回にお会い致しましょう。

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