SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第85話 「監獄の奥底」

「ふぃ~…。」

「…Ah~。久しぶりだな。ヒーロー?」

「アークスだ。」

薄暗い監獄のもっとも億。日の光どころか蝋燭の光さえも少ない他の者たちから完全に隔離された人物の真横でタバコを吸うオキ。そしてその隣には腕を完全に拘束され、万歳状態でがっちり拘束された男が一人、オキにタバコを咥えさせてもらっていた。

「うまいか旦那?」

「まぁ…な。ところで、何しにきやがったイレギュラー? もう俺には会わなかったんじゃないのか?」 

HAHAHAと笑いながら煙を吐くPoHにオキはある疑問をぶつけた。

「ま、いくつか聞きたいことがあってな。伝えることもあるし。」

「あ?」

PoHの近くに蝋燭台を近づけ、顔をのぞいた。

「まぁまずは伝えることだ。…明日、俺たちは100層の扉を開ける。言っている意味は分かるな?」

PoHはニヤニヤと口元をゆがませ始めた。

「OK? そうすりゃ俺もここからおさらばってわけだ。」

オキが目を細めた。相変わらずこの男は何を考えているのかわからない。彼の犯した罪は決して許される行為ではない。だが、裁くのはスレアの人だ。ディアベル達にも聞いたが、彼らの事は出来る限り話すが、間違いなく罪に問われることは難しいと言っていた。

彼らが罪を自ら自白しない限り、捕まることは少ないだろうと。

理由は簡単だ。ここがSAO、バーチャル世界であり、萱場の起こした事件のせいで錯乱状態にあった、と言えば逃げれるからだ。

他にも逃げ道はある。一個や二個ではない。ディアベル達が考え付くだけでもかなりあるらしい。素人考えでその状態だ。犯罪者からすればもっと思いつくだろう、とディアベルは悔しそうに言っていた。

とはいえ、オキ達の行動もあり自首しそうな者が多いらしい。口から出まかせなのか、違うのかは彼らの口ぶりからわかるそうだ。

どうやら償わないとオキ達が再び現実の、外の世界でも追いかけてくるとかいう話が広まっているらしい。

「旦那は…逃げそうだな。」

ぽそりとオキがつぶやいた。

「あー?」

聞こえたのか聞こえてないのか。相変わらずニヤニヤと口元をゆがませているだけだった。

「ともかく明日でこの世界も終わりだ。最後までしっかり繋がってろ。そのあとは…俺たちには関係ない。ただし…!」

オキは彼の淀んだ目を睨み付けた。

「俺の仲間たちや大事な人を傷つけるやつは、ナニモノであっても許さない。それだけは覚えておけ。」

「…バケモノ、でもか?」

「当たり前だ。」

オキとPoHはしばらくにらみ続け、オキがため息をついてその場の空気が変わった。

「はぁ…。まぁいいや。本当に言いたかったのは別件だし。…いくつか質問があるといったな。こっちが本命だ。」

オキは蝋燭台を持って、少しだけ離れた。聞きたいこと。それはある男との接触の有無だ。

「長身でイケメン、釣り目で細目、体つきはがっちりしていて、耳が尖っている男に会わなかったか?」

「さぁな…。殺した奴は何人もいるからなぁ…。ククク。」

肩を揺らしながら笑うPoH。オキからすれば冗談では済まない。

「バカ言え。ただの人間が殺せるわけねーよ。そいつは俺達が殺した男だ。…正確には、とどめを刺したのはレギアスの旦那だけど。」

あの男は真っ二つに切られた。創世器『世果』で。

「おめぇさんが殺したなら、なぜ俺に出会っていると思う。」

PoHは縛られた手を少し動かした。器用な奴だ。

「あの力を持っているのはあいつだけだからだ。質問を変えよう。どこかで誰かに変な丸っこい何かとかよくわからない物とかもらってないか?」

オキはじっとPoHの目を見た。PoHもオキの眼を見ている。

「…ふん。そんなものねーよ。あったとしても教えられるかってんだ。」

オキは笑うPoHの顔を睨み付けたままだ。一度口を開き、言おうとした言葉を吐き出そうとしたが、結局飲み込んだ。

「そうかい。そーかい。あっちのお前は飲み込まれて俺に殺されたが…こっちのお前はどうかな。」

何を言いたいのかわかっていないのか不思議そうな顔をするPoH。

「ま、元気でな。今度はまっとうに生きろよ。」

PoHへと最後のあいさつをする。もう会うこともないだろう。

「はは…HAHAHA。また会おうぜ。イレギュラー…。」

暗くなる牢獄に男の声が響いた。

「もう二度と会いたくねーよ。」

ボソリとつぶやいたオキはシリカのもとへと向かっていった。

「そうかい。あの男がそんなこと。」

黒鉄球を後にし、シリカとサーシャのところにいたキバオウに挨拶をしに向かった。そのついでに先ほどのPoHとの会話を共有した。

「フィリアを襲ったコピーのPoHが個別で手に入れたと予想する。本体のあいつはダーカー因子は持ってない。」

「ってことは、あのホロウエリアに何かあったか、いたかと考えるのが普通だろう。」

ふとシリカを見ると、子供たちの前で武器を構えて何やらポーズをしている。

「何やってんだ? シリカ。」

「あ、えっと…。」

「リーダーさんだ!」

「リーダーさん! 武器かまえてー!」

「ほんものだー!」

いきなり子供たちに囲まれてしまったオキは目を見開き、驚きから戻ってこれなかった。

それを見たキバオウは先ほどまでの険しい顔から優しい顔になって子供たちの頭を撫でた。

「こらこら。オキはんたちがこまっとるやろ。すまんのう。以前キリトはんたちが来た時に二刀流の姿を見てから、来る人来る人に武器をかまえさせるんが好きになってもうた。」

たははと頭をかきながら苦笑するキバオウ。

「すみません。こら。いつもいってるでしょ? みなさん困ってるでしょ。」

ぷんすかと少し怒り気味のエプロン姿のお姉さん、サーシャだ。

SAO開始時から小さな子供たちを1層でまとめてお世話している保母さんであり、その姿を見て涙したキバオウが全面的にバックアップしている。

ちなみにアルゴの噂では彼彼女は付き合っている可能性が高いとみているらしい。

「ははは。いいってことよ。そうだな…うっし。こういうときくらいいいいだろ。

キィィン…

手に光を集め、相棒を具現化させた。

「オキはん…それ、エルデトロス。」

「綺麗…。キバオウから聞いてはいたけど…。」

「離れてな。…はぁ!」

オキは子供たちを離れさせ、地面に座らせた。直後に持っていたエルデトロスを振り回した。

「わー!」

「すごーい!」

両腕を振り回し、グルグルと回るエルデトロス。時には空中へワイヤーを伸ばし、地面に叩きつけたり、最後にかっこよくピーズを決めた。

 

パチパチパチ!

 

「かっこー!」

「わーい!」

子供たちも満足したようだ。オキはエルデトロスを粒子に変えて消した。

「さすがやなオキはん。いつもてもすごいおもうわ。」

「それが・・・話に聞いた武器。綺麗で、勇ましく、そして私でもわかります。その、つよい生命力を。」

サーシャもどうやらエルデトロスの中に眠る『ガル・グリフォン』の力を感じたようだ。

「かっこよかったですよ! オキさん!」

「きゅる!」

シリカは笑顔で近づき、ピナも楽しそうにクルクル飛び回っている。

「さってっと、キバオウやサーシャさんにも挨拶できたし、次に行くか。」

「オキはん。明日、たのむで。」

「お気をつけて。よろしくお願いいたします。」

二人と子供たちが手を振るのを背中で受け、二人は次の層へと進んだ。

 

 




みなさまごきげんよう。
毎度ながらすみません『時間が足りません!』
体が5個ぐらいほしい。何もかも時間が足りない。
さすが年度末だぜ! ちくしょう!
前後で終わらせるつもりがまさかの前中後になるという困った。
皆様にはお待たせしてもうしわけない。

次回には必ず・・・。ではまたお会いしましょう。

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