SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第82話 「3つの力」

「おらぁぁ!」

「その解は見えている。」

オキのグングニルと【敗者】の持つ小剣がぶつかり合う。

「ふん。」

「そうはいかない。」

キィン!

アインスが横から隙をついたと思いきや、【敗者】の眼が赤く光り、周囲に雑魚敵は湧いて出た。

「む。どけ、邪魔だ。」

「僕の盾となれ。」

ソルダ・カピタをはじめとするダーカー種がワラっと出現した。

「…ダーカー因子反応なし。問題ないな。おら野郎ども! 仕事だぞ!」

「あいさーリーダー!」

「うっしゃぁ!」

タケヤ達やクラインたちが沸いた雑魚へと攻撃を仕掛ける。

「さっと倒せよ! こいつが爆破させるかもしれんからな!」

【敗者】への攻撃をしつつ、周囲への指示を忘れないオキ。アインスも怪物兵団メンバーとの連携を怠らない。

「ふふふ…はははは!」

知の塔、【敗者】戦はまだ始まったばかり。

「おおおお!」

「ヒューナルじゃないお前は弱い。」

ガッ! ゴン!

お互いの拳をぶつけ合いながら【巨躯】の動きを止めるコマチ。

「やあああ!」

「せやぁぁ!」

その隙をついてハヤマやディアベル達が側面を攻撃する。

ガキン!

「…!」

「まだまだ足りぬ! もっと吐き出せ! もっとだ!」

「っへ、上等!」

【巨躯】の上から振り上げられ、巨大な槌と同様の破壊力を持つ拳がコマチへと降り注いだ。

だが、それを軽いステップで横に回避。あいた体へと思い切りストレートを喰らわせる。

「ぐぅぅ…。ふはは…いいぞ! いいぞ!!」

一瞬ひるんだと思ったがすぐに腕を広げ、周囲にいたメンバーを引きはがした。

「ち…。このドMが。」

「我々の防御すらも打ち抜くパワー。さすがだな…。」

ディアベル、リンドが肩で息をしながら【巨躯】を見る。

「リンド。まだいけるな? 一度後ろに下がってもいいのだぞ。」

「っは。何を言うディアベル。貴様こそ肩で息してるぜ。」

お互いにニヤっと笑い、再び【巨躯】へと立ち向かった。

力の塔【巨躯】討伐戦。順調に進む。

「くぅぅ!」

「にゃーにゃ!」

ミケの怒涛の勢いで迫ってくる短剣のラッシュに苦汁をなめる【若人】。

「こっちも忘れないで?」

「っぐ!? こ、このぉ!」

「おっと!」

「離れて! みんな!」

シンキの曲刀が側面から【若人】へと喰らい付く。その直後に【若人】は両手に持っている小剣を円状に振り回し、上空へと飛びあがった。

「私を、誰だと思っている!」

カカカカ!

大量の小剣が降り注ぎ、真下にいたミケやシンキに襲い掛かった。

「BBA。」

「BBAね。」

「むきー!」

ミケとシンキの返答に怒り狂う【若人】。完全に二人にペースを持って行かれている様子を見て、改めて二人のすごさに圧倒するしかないプレイヤーたちだった。

迷宮区入り口前。キバオウ達は各塔の状況を確認していた。

「力の塔、状況問題なし。HPバー後一本です。」

「美の塔ですが、ミケ、シンキペアによりHPあと少し。」

「知の塔。雑魚多数出現中。しかし現状問題なし。HPバー後1本。」

それぞれの塔の状況はどれも問題なし。このままいけば早ければあと数分で終わる。キバオウはいつ何時に何が起きてもいいようにしながらも、問題なく事が進んでいることに安心した。

「ええ感じやな。このまま無事に進めばええんやけど。」

「そうですね…。祈るしかないのでしょうか。」

キバオウの言葉にこたえるよう解放軍メンバー一人が、ぼそりとつぶやいた。キバオウはそれを見て笑顔で答えた。

「大丈夫や。あの人らはそう簡単に負けへん。心配せんでもええんやで。」

「キバオウさんも…っすよ。」

キバオウの顔は汗びっしょりとなっていた。かなりの緊張状態となっている証拠だ。言われて初めてキバオウはそれに気づき、袖で拭った。

「大丈夫や。あの人たちが負けることない…。せや、負けることないんや。いつも通り蹂躙しとるやろ。」

「ええ…。そうですね。」

周りにいたメンバーもキバオウの自分に言い聞かせてるような言葉にうなずくしかなかった。

キバオウの予想通り、その10分もたたないうちに、美の塔の【若人】戦がそろそろ終わりを迎えようとしていた。

「ぐぅぅうう!」

終始ミケ、シンキペアにペースを乱され続けた【若人】はHPがもうすぐそこをつく状態だった。

「ああああ!」

「SSエフェクト!? 下がって! シンキさん! ミケさん!」

シノンが大きく弓を引き、ミケ、シンキが上空へと逃げたことを確認し、【若人】へと攻撃した。強く光った一本の矢が上空へとはなたれ、急速に【若人】へと落下。途端に多数の小さな矢へと別れ、【若人】へと降り注いだ。

「ポイボス・カタストロフェ!」

「人間の分際でぇぇぇ!」

矢を切り落とし、身を守る【若人】へと『エアハイカー』のスキルで上空待機していたシンキが曲刀を振り下ろした。

「ふふふ。哀れね。」

ガキン!

2本の小剣がクロスし、シンキの曲刀を受け止めた。

「この…! 私を…! 美の象徴である私を…! 貴様たち人間が…勝つというのか!」

【若人】の言葉にシンキは鼻で笑った。

「美の象徴? あなたが? っは。笑えない冗談ね。それに、仮にあなたが美の象徴で、それで勝とうとしたのなら大間違いよ。だって…。」

「…!?」

斬!

「にゃにゃにゃ!」

天井に張り付いていたミケが頭上から小剣を【若人】に振り下ろした。

「自由の象徴がいるんだもの。あなたなんかに負けないわ。」

「この…私が! 【若人】がぁぁぁぁ!」

パキン!

叫びが消えるころには、結晶となり砕け散った破片も小さく見えなくなっていた。

「ミケの勝利なのだー! アスナー! 何か食わせろなのだ。」

「はいはい。」

苦笑しながらもアスナはアイテム欄から握り飯を取り出し、ミケへと渡した。

「あぐあぐ! うまいのだ!」

「ふふふ。ほんと、自由な猫だこと。」

微笑むシンキにプレイヤーたち。美の塔、【若人】戦は勝利となった

「おおお!」

「甘っちょろすぎるんだよぉ!」

【巨躯】のパワーのある拳に対し、真正面から同じく拳でぶち当たっていたコマチが突然切れた。

ガキン!

 

「こんな偽物が【巨躯】なわけねーだろうが!」

下から振り上げた拳が【巨躯】の胸元にぶち込まれる。

「ぐぅぅ!?」

「おら、さっさと普段の大きさに戻りやがれ。ってな。はやまん。やれ。」

「おう! いくぜふるぼっこ!」

よろけた隙を突いてコマチの後方から素早く【巨躯】の体に張り付きSAを放った。

「一ノ太刀…一閃!」

「ふぅぅぅ!! …ふっふっふ。良き…良き闘争であったぞ。」

 

パキン!

 

黒い渦を出しながら【巨躯】の人型は結晶となり消えていった。

「ふん…。燃焼不良か。」

「真正面から殴り合ってて言う言葉ではないな…。」

「ああ。さすがコマチというところか。」

タバコに火を点け、不満そうな顔をするコマチに対し、ディアベル、リンドは苦笑気味だった。

力の塔。【巨躯】討伐戦完了。

 

 

 

「ふふふ。君は…なかなかどうして…。」

「うっせ。しゃべんな。おめーの顔は見飽きてんだよ。」

彼が今持っているのは槍。【敗者】は持っている武器を変えてきていた。

多種にわたる武器を変えてきた【敗者】。その武器種の動きを知っており、かつ対応ができる状態にしておくのがこの知の塔の戦い方というのだろうか。

だが、オキ達はそのどの武器にも対応ができる。なにも問題なく削りきっていた。

「おらぁ!」

オキが槍を【敗者】の胸につきさそうとした。だが、【敗者】はそれをさせまいとおなじく槍でうけとめた。

「ぐぐぐ…。」

「…僕はあまりこういうのは得意ではないのだがね…。君を見てると…何かが湧き出てきそうだよ!」

つばぜり合いとなった状態。オキは近くで見える【敗者】の顔を睨みつけた。

「…しね【敗者】。てめーは死んだんだ。二度と俺の前に…!」

 

ガキン!

 

「!!」

オキは槍を下から蹴り上げ、【敗者】の胴体をガラ空きにした。蹴り上げた槍は空中高く登って行き、そして落ちてきた。

「面ぁみせんな。隊長、とどめ。」

「うむ!」

クルクルと回転してくるやりめがけて、突進してきたアインスが柄の下、一点をカタナで突き、槍ごと【敗者】の体を貫いた。

「ぐぅうう! くくく…ははは! 全く君たちは相変わらず…。」

「…もう二度と会うことはないだろ。眠れ。ルーサー…。」

その言葉を聞きながら、『ルーサー』はニヤリと口を歪めた。

「本当にその解は正しいのかな?」

「…あ?」

 

パキン!

 

結晶となった【敗者】は消え去っていった。

「今のは…ルーサー?」

「…わからん。だが、それでも我々の勝利だ。さっさとスイッチを押して戻ろう。」

アインスがオキの肩をポンと叩き、王座の近くにあった巨大なスイッチと思われる棒を操作した。

 

ガコン! ゴゴゴゴ!

 

「オキさん。外から連絡です。街への扉が閉まったそうです。代わりに迷宮区への扉が開いたと。」

「なに? 急いで戻ろう。」

「うっす。」

レン、タケヤを始め、プレイヤー達はオキの後に続き王座の間を後にした。

 

 




みなさまごきげんよう。
年が明け、忙しくなる毎日。今回も夜中にギリギリになってようやく完成しました。
ああ、日中に時間が欲しい。

PSO2もあまりプレイできてない状態。うーんそろそろコレクトファイルを進めないといけないんだけどなぁ。

さて、3つの塔を攻略したオキ達。立ちふさがるは門番『ザ・ゲート・キーパー』。
そして、皆が過ごす最後の夜。
かれらをまつ頂上には何があるのか。何が待っているのか。
次回をお楽しみに。

では次回またお会い致しましょう。

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