SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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99層の攻略を開始します。


第81話 「3本の塔」

闘技大会、並びにミスコンと大盛り上がりに大はしゃぎだった先日とうって変わり、重々しい空気となっていたオラクル騎士団ギルド拠点の会議室。99層の攻略を進めるべく、攻略会議を開いていた。

「では、まとめに入ろう。」

ディアベルが指揮をし、アスナが書記を行っていた。黒板には1つの大きな名前を囲むように3つのボスの名、それぞれの特徴、予想される動きが書かれていた。

「オキ君。たのむ。」

「あーよ。」

オキが立ち上がりそれぞれのボスのイラストを睨み付ける。そして、黒板を背にして、卓上に手をついた。

「ディアベル、アスナお疲れ様。席に戻ってくれ。では諸君。初めからもう一度、認識を合わせよう。…99層の情報がそろった。今回のボスの名前は『ザ・ゲート・キーパー』。4本脚の2本腕。両手に剣。90層から出始めた重装巨大エネミーの最高ランクだろうな。中には戦ったやつもいるだろう。弱点無し。動き遅し。耐久高、攻撃力高のガチタン型…だったか? クライン」

「ああ。ありゃガチタンだ。」

口で笑いつつも眼は笑っていないクラインが答えた。いつもは軽口を吐く彼が吐かないというのがどれだけ相手が強力な相手かを物語っている。

「ゲート・キーパー…。門の番人。門の神。守護神。いろいろ意味がある。」

「最後の扉を守るやつだ。相当な力を持っていると思っていだろう。」

リンド、ディアベルが唸るようにつぶやいた。

「こいつを倒せばとうとう目的地100層。99層突破後は一度99層の街、『最後の街』にて準備。一日おいてから100層へ突撃。ヒースクリフ、いや茅場を倒す。流れはそんな感じだ。ここまでOK?」

オキの確認で卓に座る全員がうなずいた。

「よし。ここはいつも通りやればいい。エネミーも知らない種類ではなさそうだからな。油断せず、いつも通りやればいけるだろう。問題はだ…。」

オキが黒板に描かれた3体の名前を指で示した。

「こいつらだ。…それぞれが3つの塔のてっぺんにいるらしい。この3つの塔を攻略、てっぺんにあるスイッチを押してようやくこの『ゲート・キーパー』と戦える。俺たちアークスの敵である『巨躯(エルダー)』、『若人(アプレンティス)』、そして『敗者(ルーサー)』。それぞれが『力の塔』『美の塔』『知の塔』にいる。どれがどこにいるかまではNPCからの情報にはなかったが…。まぁ俺らからすれば分かりやすくてよろし。」

『力の塔』に『巨躯』。『美の塔』に『若人』。『知の塔』に『敗者』が陣取っているのは明白だ。

「3つの部隊に分けてそれぞれを攻略、のちに合流し、最後の迷宮区を数で突破。エリアボス『ザ・ゲート・キーパー』をたたく。OK?」

「OKズドン。」

「こまっちゃん、それ知ってる人少ないから…。」

コマチのボケにハヤマが突っ込む。

「OKズドン! です!」

「ユイちゃんも真似しないでいいから!」

まさかのユイが笑顔で真似をする。ついそれに突っ込みを入れたハヤマだが、その姿につい笑みがこぼれる。

「ははは。…さて諸君。問題はこの3体の敵の状態だ。キリト。」

「ああ。NPCからの情報だと『3つの塔には闇を統べた3人の魔人が住み着いている』 らしい。」

キリトが言ったのは『魔人』という言葉。NPCの情報が正しければ『人』なのだ。

「つまり、人型だ。ヒューナル形態でくる可能性が高い。」

「ちょっとまって? 闘争バカや負け野郎はいいとしても…。」

ハヤマがあることに気づいた。

「そうね。そうよね。【若人】だけはどんな相手か知らないわ?」

シンキもいつもより真剣な顔でオキを見る。普段から常にこうであればありがたいのだが。まぁ無理だろうと思ってしまうオキだった。

そんな雑念を吹き飛ばし、情報を黒板へと記した。

「【巨躯】【敗者】に関しては戦ったものもいる。1年前ではあるが、記憶には新しい方だろう。動きを思い出し、勝ち戦としよう。問題は【若人】だ。タケヤ。」

「うっす。アプレンティスって奴は魅了攻撃を仕掛けてくるらしいです。」

「あとあと、二本の小剣で戦ってくるって情報もあるよ。」

タケヤ、それに続きツバキもNPCからの情報を共有した。

「魅了をしてくるってことは…。相手は女性? 男性?」

「女だ。」

レンの疑問にコマチが答えた。

「ならば、女性陣で組むのがよかろう。」

オールドが進言した。オキも勿論そのつもりだ。

「ああ。よって、振り分けはこうだ。」

【若人】討伐にシンキ、そして魅了耐性を持つミケを筆頭に女性メンバーで固めた。主にオラクル騎士団と怪物兵団。

【巨躯】討伐にハヤマ、コマチを筆頭。こちらはディアベルやリンド率いるアインクラッド解放軍とドラゴンナイツ・ブリゲードの面々。

そして【敗者】討伐。

「俺、隊長を筆頭。キリト、クラインをメインとしたオラクル騎士団メインの男性メンバーで構成。」

「いいんじゃない?」

センターもカタカタとお面を揺らしながら同意した。

「…センター。何かが落ちてきそうだから鳴らすのやめなさい。」

カタカタカタッ

大きな瞳の付いた不気味な仮面の音が小さく会議室に鳴り響いた。

「ゴホン。後方待機部隊として今回もさっちゃんとこの『闇夜の黒猫団』メンバー筆頭に、カモメのとこの『カモメの海兵さん』、ネモのとこの『ゆらり探検隊』、『ラピュセル』『プレシャス・プリンセス』等、数多くの小中規模ギルドが名をあげてくれた。他にも個別でも支援をしてくれると言ってくれた者も多い。皆が期待している。…が、構える必要もない。いつも通りやってれば負けることは絶対にない。あとは成り行きだ。ここまできたお前らなら間違いなく超えられる。進むぞ。」

「「「おおおお!!!」」」

全員の声を合わせ、気合を入れた。

99層のフィールドダンジョンは拠点街『最後の街』の中心部にある巨大な塔の中にある。

塔への門を開くと、中は空洞となっており、その中心に迷宮区の塔が天井まで伸びており、それを囲むように小さな塔が3本建っていた。

「ここが迷宮区への入り口か。」

「バリアで通行不可。やはり3本の塔を攻略するしかないようだな。」

キリト、ディアベルがそれぞれの塔をグルリと見渡した。

「ほな、予定通りワイらがここを守ってるで。なんかあったらすぐに連絡するんやで。」

キバオウ率いる解放軍とドラゴンナイツ・ブリゲイド連合チームは迷宮区への扉の前に陣取った。

彼らは3方向に分かれたチームの中にいる伝達者と逐次情報を共有し、どのような状況でも、すぐ動けるように待機しておくメンバーだ。

「キバオウ。3方向同時攻略作戦の要でもある。油断はするなよ。」

「オキはん、わーってるって。ここは今はエネミーがとらんけど…もしかしたら攻略後や、下手したらあんさんらが塔に入った瞬間からエネミーがわくかもしれん。油断はせぇへんよ。」

カチャリと自分の片手剣を地面に突き立て、どっしりと構えるキバオウを見てオキは安心した。

「よし! いくぞ者ども! 攻略かいしだ!」

「「「おおおおお!」」」

声を張り上げ、塔へと向かう面々。アークスメンバーはお互いに目で合図しあい、コクリとうなずき合った。

【知の塔、攻略組】

「エネミーが全くいないな。」

「ああ。罠も…ない。」

索敵スキルで索敵しても何も引っかからない。恐ろしい程に静かだ。

「隊長。」

ゆっくり進むメンバー。オキとアインスを先頭に進んでいる。オキは後ろをちまちまと見ていた。

「なんだい?」

「…ここ、任せていい? 殿行ってくるわ。」

オキが立ち止った瞬間、アインスも立ち止った。

「何を言う。わたしが行こう。オキ君の索敵スキルの方が上だ。わたしより罠やエネミーの索敵能力がある君が残った方がいい。」

「…あいよ。何かあっても後ろは頼んだよ。」

「っふ。任せろ。」

アインスは鼻で笑い、微笑んだ後攻略メンバーの一番後ろに陣取り後方を警戒した。

塔は狭い通路が入り乱れ、迷路のようになっていた。だが、オキクラスの索敵スキル能力ならある程度最低限ではあるが答えがわかるようになっている。

ここの攻略もそこまで難しくはない。

「…ついちゃったよ。」

オキの目の前には巨大な扉。 ボスクラスが潜む大扉が目の前に立ちふさがった。

「オキ君。」

「隊長、とうとうご対面だ。」

「…ああ。」

後方警戒は意味をなさなかったが、それが一番いい。誰一人として傷つかず、アイテム消費も全くしてないのだから。

「オキさん。皆状態は完璧だそうだ。いつでも行けるぜ。」

「サンキュ、キリト。みんな…いけるな?」

オキの号令に皆が頷いた。

「レン。他の塔はどうなってる。」

「はい。キバオウさんからの情報ではほかの塔も同様の状態だそうです。エネミーなし、罠なし。曲がりくねった迷路上になってはいるそうですが、攻略は可能。…追加情報です。これよりほかの塔、力、美。それぞれ攻略開始するそうです。こちらも開始をお伝えしておきます。」

「頼む。よし! ほかの塔に負けないよう、いくぞ!」

「「「おおお!」」」

ゴゴゴゴゴ!

大きな音を立てて、扉を開き、中へと入ったオキたちは素早く散開。オキ、アインスを中心に指示通りの布陣を構えた。

「…ほう。客人とは珍しい。もてなしのコーヒーでもと言いたいところだが、生憎切らしていてね。」

普段のボス部屋。何も変化はない。一つだけ違うのは部屋の端に大きな椅子とすでに座っている男が一人。

「ルーサー…。」

オキがぼそりと名前をつぶやいた。それに気づいた『ルーサー』は不思議そうな目でオキを見た。

「おや、君とはどこかで…会ったことが?」

「いや、『お前』とは初対面だ。」

「そうかい? 何やら…懐かしい。そんな気分になるんだがね。…まぁいい。ここに来たということは、大いなる門を開くためだろう? わかっているさ。何せ僕は知の塔の守護者。君たちも、そのつもりなんだろう? さぁはじめようではないか。」

ルーサーの姿をした男は微笑み、宙から細剣を取り出し、握った。かつてのフォトナーであるルーサーの姿をした男を…オキは睨み付けた。

エネミー 【敗者】討伐戦。開始。

【力の塔 攻略組】

ゴォン!

床が揺れ、音が部屋いっぱいに響き渡る。

「振りはでかい! 隙を付け! 深く突っ込みすぎるな!」

ハヤマの指示で黒き姿をした大男との戦いはすでに始まっていた。

「脆弱!」

地面を蹴って飛び上がった【巨躯】。人型とはいえ、一般人男性の体躯の1.5~2倍はある巨体である。

ズズン!

「あっぶねぇ。プレスされるとこだった。」

ハヤマが【巨躯】をにらんだ。

「フッフッフ…。」

目を光らせ、不気味な微笑みを浮かべる【巨躯】。HPはまだまだ残っている。

【美の塔 攻略組】

「ふふふ。ほほほほ!」

高らかに笑う【若人】。

「うーん。オキちゃん見間違えたんじゃない?」

「ミケは見てないからしらないのだー。」

首をかしげるシンキとミケ。オキの情報では『【若人】は可愛い女の子でツンデレ要素入ってそうなお姉さん』だと言っていた。

しかし、シンキやミケの目の前にいる自らを美の象徴だと言って、明らかにこちらを見下している女性は、褐色肌で女の子というより…。

「ともかくこのBBAを倒してしまってかまわないのだ?」

「誰がババアですって!?」

ミケの言葉に反応して【若人】が睨み付ける。褐色肌の女性。人によっては美女というかもしれないだろうが、オキの趣味嗜好を知っているシンキはオキの情報とは違った相手だと即座に見破る。

『…もし、私の考えが正しければ間違いなくこいつは…。』

「BBAは死すべし! 慈悲はないのだ!」

「あ、ミケちゃん! ちょっと!」

シンキが一瞬という時間で相手の正体を見破ろうとした時にミケの声とアスナの声が響いた。

ミケが【若人】に対して飛び上がったのである。

ギン! ギン!

「フフフ。わたしの美がわからないなんて…。わからせてあげるわ!」

【若人】の眼が光り輝く。

「おー?」

「ミケちゃん!?」

「きゃあ!?」

「まぶしっ!?」

真っ赤な光があたりを包んだ。モロに光をかぶったミケは自分の体を少しだけ見た。

「ミケさん!? 大丈夫ですか!?」

シリカがミケに声をかける。ミケは大きく手を振って笑顔で振り向いた。

「だーいじょうぶなのだー! BBA死ねなのだ!」

「!?」

ミケのSSが【若人]にクリティカルヒットした。予想外のことだったのか【若人】驚いた顔をしている。

「馬鹿な! 何故私の魅了が効かない!」

「そんなのミケはへっちゃらなのだー!」

「いいわね! 皆! 続くわよ!」

シンキの掛け声で全員が活気づく。

「くそ! 私は…私は【若人】だぞ! ひれ伏せ!」

【若人】はそれを見て激怒し、自らの武器であるダガーを振り上げ、ミケ達に襲いかかった。

 

3本の塔内で戦闘が開始されたことを確認したキバオウはそれぞれの塔の頂辺を心配層に見上げた。

「皆、無理するんやないで…。」

その場にいた皆が同じことを考えていた。




みなさまごきげんよう。
99層の攻略が開始されました。
相手はダークファルスの人型形態。まぁアークス達なら問題ないでしょう(たぶん

さて、活動報告の方に短編作品の予告編を上げました。もしよければご覧ください。
SAO編が終わり次第作成に取り掛かる予定です。

では次回にまたお会いいたしましょう。




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