SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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あけましておめでとうございます!
遅くなりましたが新年の挨拶とさせてください。
これからも、よろしくお願いいたします。
それではどうぞ。


第80話 「10人の女神たち」

『それじゃあまずはアスナはんからいってみよか。まずはこちらから彼女の紹介を一回いれるで。』

キバオウがガサガサと羊皮紙を懐から取り出し、読み上げた。

『チーム、オラクル騎士団メンバーで閃光のアスナの名前で各地に知れわたっとるはずや。誰にでも優しく、微笑む姿にどんな男、女性であっても見とれたはずやで。ワイも最初はそうやった。』

「もう…。」

顔を真っ赤にするアスナに対し、キバオウの言葉に会場は笑いに包まれる。

『料理の腕も間違いなくアインクラッド内最高やろう。そんなアスナはんの相方といえば、おなじみ、同オラクル騎士団メンバーであり、最強の剣士として名高い男。キリトはん! ワイは羨ましいでぇ。こんなごっつ綺麗な女性に選ばれたんや。なぁ。』

「お、俺!?」

いきなり名指しで呼ばれ驚くキリト。

『ここらで質問行ってみよか! そんなアスナはんに質問や。ぶっちゃけキリトはんの事はどうおもっとる? 簡単でええで。』

「っちょ! ええ!? ここでいうの!?」

シンと静まる会場を見渡したアスナは少しだけ唸り、覚悟を決めたのか凛とした顔つきでマイクを取った。

「あ~…もう! わかったわよ! 正直に言えばいいのね? もちろん大好きよ! 愛してるわ! あたりまえじゃない!」

「「「おおおーーー!」」」

「いいぞーー!」

「かわいいいーーー!」

「いいなぁ。俺もあんなかわいい嫁さんほしい…。」

「憧れるなぁ…。」

会場は一気に盛り上がり、アスナとキリトは顔を真っ赤にしていた。

『おっほー! まさかここまではっきりと言うとは思わなかったで。うんうん。ええでー。ワイもそない言ってくれる嫁さん募集中やで!』

ドっと笑いが会場をつつむ。

『せやな。順番に…とおもったがそれじゃ面白くない。じゃあ…リーファはん!』

「ええ!? いきなり私!?」

急に順番を飛ばされ驚くリーファ。

『リーファはんと言えば、シンキはんと一緒におって、76層でみんなと合流したメンバーやな。オキはんからの情報ではあのアホ。アルベリヒの起こした強制介入事件によって、別のゲームから飛ばされた不運の子やと聞いとる。こないなデスゲームにいきなり放り込まれたんや。怖かったやろう。せやけど彼女は強かった。腕もそうやけど心も強い。ワイなら間違いなくくじけとるやろうな。とまぁそんなリーファはんやけど、出会った当時から妖精と言われとる。そんなリーファはんに質問や。」

「は、はい!」

『もし、リーファはんが男になった時に、この9人の女性のなかで結婚を申し込むとしたら…誰を選ぶ? さぁいってみよう!』

「え…ええ!? みなさんの中で…一人をって…。うーん…。うーん。」

『やっぱ、難しいか? ええで。悩みぃ。ワイだって悩むで。悩んでる間に審査員のほうにきいてみよか。ヒロカはんならどうする?』

「わたし? そうねぇ。みんなかわいいから選べって方が難しい。でもそうだな。わたしなら…シリカちゃんかな。」

ヒロカはオキを見ながらそう言った。

『おお!? その理由を聞いてもいいえか? あと、たとえ話やでオキはん。そない睨み付けんでもええやろ。』

「わーってるよ。」

「ふふふ。まぁオキの気持ちもよくわかる。理由はだな。やっぱり守ってあげたいって思いからだな。わたしもそういうの、好きだもの。」

『なるほどなぁ。さて、そろそろ決まったかな?』

リーファの方を向いたキバオウはリーファにマイクを渡した。

「えっと…えっと。いろいろ考えたんだけど…。やっぱりアスナさん…かな。」

「「「おおお!?」」」

会場がどよめき始める。

「わ、わたし!?」

『ほほー。これはアスナはん点数たかいでぇ。理由もきいてええか?』

「その、やっぱりかっこいいっていうか…。それでも女の私から見ても綺麗で、かわいいところもあるなって。おにいちゃ…じゃなかった。キリト君が選んだのもわかるなって。」

小さくなりつつもしっかりと理由をいう姿に会場は大盛り上がり。

『なるほどなー。ええなぁ。ええなぁ。うんうん。なんかこうこっちまでドキドキしてくるで! さて、続いていってみよか。そうやなぁ。そんなリーファはんと一緒に初めからおったいうシンキはん、いってみよか? このメンバーやとワイ、シンキはん一番オキニやねん。』

「ふふふ。」

にっこりとほほ笑みながら会場にウィンクを投げるシンキの姿は男性女性関係なく魅了する。

「シンキー、あまり本気出すなよ。ここにいる全員落とす気か?」

「わかってるわよ。でも、ちょっとだけ。ね?」

オキからの忠告も聞いてるのか聞いてないのか。

『相変わらず何もかもがエロい姉さんやで。ワイそんなとこ大好き。さてさて、シンキはんはオキはんと一緒のイレギュラーズの一人や。戦闘能力はもちろん、そのセンスやらは先の闘技大会で皆も見たはずや。あれでまだ本気やないって聞いたんやけど…ホンマ?』

「さぁどうかしら。一言言わせてもらえれば…正直、もう一度やりあいたいわぁ。ねぇハヤマちゃん? 今度は、あっちで。」

エロい顔でいうシンキ。ふつうの人間なら間違いなく心を落とされているだろうが、『あっち』の意味を知っているハヤマからすれば御免こうむる話である。

「だが断る!」

「ああん。いけず。…でもいつか、ね?」

今度はオキの方をみる。

「わかったわかった。また今度な。お前のアレはこの世界ごと吹き飛ばす可能性あるんだもん。まだ、ダメ。いつかな!」

「はーい。」

『世界吹き飛ばすって…。あーでもオキはんのいうことやったらちょっと考えるかもなぁ。ワイ、ちょっとみたいわ。んーあまり長いことシンキの姉さんみてるとワイ我慢できなくなりそうやからここで一旦次!』

会場を定期的に笑わせながら次々と質問をしていくキバオウと審査員たち。

ここで第一審査が終了。一度着替えてもらい、次は一人ひとり順番にでてくる審査をお願いした。

『第2審査』

『さてさて。続いて第2審査や。質問やらでだいぶ盛り上がったこの会場。まだまだいけるやろう? さぁ気になる審査内容は…。さぁ一人目カモン!』

出てきたのはアルゴ。なんとメイド服姿である。これには会場の皆も驚きの声を上げた。

「ううう…。たしか、オキに運ぶんだったよナ。」

『この審査では一人ひとりにランダムで指定された相手に対して料理をだし、一口食べさせるという審査や

料理の腕を競う…というのが定番やけど、どう考えてもアスナはん一人勝ちやろうし、スキルでどうにかなるこの世界じゃちょっと面白くないからな。すこしアレンジしたで。どや! この内容!』

「いいぞー!」

「もっとやれー!」

「俺も審査員なりてーー!」

なかなかの盛況である。会場のメンバーは大盛り上がりだ。

「ほう。なかなか似合ってるじゃん。かわいいと思うよ。」

「うううう、うるさイ! えっと、食べさせるっテ…エッとエット…く、食エ!」

アルゴが持ってきたのは一口サイズの小さな小さなケーキだ。さすがに10人いるため普通の料理では多すぎるうえ、食べないのももったいないということで、ケーキを人数分作っておいたのだ。なお、作ったのはフィーアやサラ含めアスナを除くアインクラッド内部で料理スキル高ランクのメンバーである。

アルゴはフォークにケーキを刺してオキの口の前に運んだ。しかし彼女の眼は混乱状態である。なかなか見れない光景なのでオキは少しだけ意地悪をした。

「アルゴ姉。こっちこっち。はいあーん。」

「あ…う…エッと…ン…。」

躊躇したり迷ったりしながらも結局オキの口まで運んだアルゴ。

「ん。うまいよ。サンキュ。」

「う…あぅ…お、覚えてローーー!」

混乱が極度に達したのか顔を真っ赤にしたままステージの裏へと走って行った。

「やべぇ。超面白れぇ。」

「かわいい。」

親指を立てあいながらにこりと笑うオキとヒロカ。

『あのクールでさばさば系のアルゴの姉さんも、結局やっぱり乙女やったいうことやな。姉さんかわいい。ほい次や。』

次に出てきたのはリズベットだ。

『お? これはさっきのロングスカートとちょっとちゃうな。』

「そりゃそうだ。今回の為にいろんな服作った。すべてはオキたちのおかげ。素材いっぱいもらったもの。作るの楽しかった。今回はそれぞれに合わせた。一つとして同じデザインはない。」

ドヤっとした顔を見せるヒロカ。先ほどのアルゴのメイド服はロングスカートだったが、こちらは少しだけ短くなっている。

『リズベットはんは誰になったんかな?』

「私はディアベルさんね。」

「わたしか。」

ディアベルの前にある机に持ってきたお皿を置き、丁寧にケーキをフォークの上に乗せた。

「はい、どーぞ。」

「ん、うむ。」

ゆっくりと口に運ばされ、ケーキを食べるディアベル。

「ん。んまい。ありがとうリズベット君。このような美少女に食べさせてもらえるのは光栄だ。」

「ふぇ!? び、美少女だなんて…。べべべ、別に仕方なくやってるわけだし。ほ、ほら。いつもお世話になってるのはうちらだし!? というか、あなたたちはもっと武器を大事に扱ってほしいっていうか…私の作った武器を使ってくれてるわけで…。あーもうこれでおしまい! いいわね!?」

『ええでー。ええでー。ディアベルはんどうやった?』

「なかなか体験できない事をしてもらった。しかしあれだな。昔は憧れていたこの行為も、いざされてみると恥ずかしいものだ。」

「とかいいつつ平常通りの顔色なんですけど!? てか戻っていい? すっごいはずいんだけど!」

『OKや! いやー。この中にも世話になったんおる思うけど、リズベットはんもあれやから、その、なぁ。こうやって見るとやっぱ乙女なんやなって…。』

「どういう意味よ!」

コーン!

『あいったー!』

ステージの幕からどこから持ってきたのか、どこにあったのかリズベットのセリフの後にフライパンが飛び、キバオウの頭に直撃した。

「だめだこりゃ。」

「つぎいってみよー。」

オキとヒロカによって次のメンバーが出てきた。

「ふふふ。次はわたし。」

リズベットよりスカートが短くなり、より胸を強調する形のデザインとなったメイド服を着て出てきたのはストレアだ。

「ほう。これはまた目のやり場にこまるな。」

「ドイツのディアンドルって民族衣装をモデルにして作ってみたの。なかなかエロいっしょ。ストレアちゃーん。ちょっとステージをくるっとあるいてみて。これ、私の自信作。」

「はーい。」

ケーキの皿を持ったストレアはまるでモデルのような歩き方でステージを一周。その後、キリトの前に立った。

「俺か…。」

「うん。はい、おとーさん。あーん。」

「う…あ、あーん。」

目の前にストレアの巨大な胸部装甲が。しかもそれを強調するかのように見える胸元が大きく開いたメイド服を着ているとなるとキリトもいくら娘と思っているとはいえ、タジタジである。

「おいし?」

「あ、ああ。ありがと。…ふぅ。」

変な汗がでそうなキリト。

「どうどう? この服。わたし、気に入っちゃった。」

「ああ。かわいいと思うよ。」

「えへへ。ありがと。おとーさん。」

にこりと微笑むストレア。その姿にキリトも微笑む。

『うんうん。父と娘の涙の姿やな。ワイ、こういうシーン弱いねん。』

「キバオウ頭大丈夫かー?」

『正直…痛いっす。ワイ涙でそう。でも、そんなのは置いといて、次でてきてやー!』

ストレアがバイバイと手を振りながらステージを後にしたのちに、反対から出てきたのは小さなメイドさん。ユイだ。

「よいしょ。よいしょ。」

落とさないように気を付けながらゆっくりと歩く姿にその場の全員がほっこりとした顔になっていた。

「あー! やっぱりかわいいー! いろいろと着せたかったんだけど、やっぱりこれかなってメイド服にしてみた。ロングスカートにあまりフリルのついてないエプロン。そしてカチューシャではなく、キャップ。うーん。完璧。」

ヒロカのテンションが最高潮になっている。オキもその微笑ましさに口元が緩んでいる。

『ユイちゃんかわええなぁ。さて、ユイちゃんは誰にもっていくのかな?』

「キバオウさんです!」

『ワイ!? あれ? ワイの名前とかいれとったか?』

想定外のことにキバオウが驚いている姿をよそに、ユイは関係なくフォークにケーキを乗せ、キバオウへと運んだ。

「はい。キバオウさん。あーんです。」

『あ、あーん。』

もぐもぐと小さなケーキを食べるキバオウ。

「羨ましいぞー!」

「かわれー!」

「ひっこめー!」

「いいなー!」

会場のあちこちからキバオウへのヤジが飛び交う。

「おいしいですか?」

『うん…うん。ありがとなユイちゃん。ええ子やなぁ。ごっつええ子や。』

頭を優しくなでて涙ぐんでるキバオウ。

「パパー! どうですかー! メイドさんです!」

「うん。かわいいよ。似合ってる。」

「えへへー。」

「きゃー! お持ち帰りしたーい。ユイちゃんユイちゃん。真ん中にたってくるって回ってみて。」

ヒロカの眼がキラキラ輝いている。

「えっと、ここに立って…こうですか?」

くるりと回転し、ロングのスカートがふわりとなびく。その姿に会場の皆もにんまり。

『ありがとなぁ。ユイちゃん。はい! 皆拍手や!』

「失礼しました! です!」

会場の皆に手を振りながら一礼して退場するユイに拍手喝采。大人気である。

『さてさて、お次は? おおっとこいつはまぶしい! あかん! 直視したいのに直視できへん!』

「おいヒロカ。やりすぎとちゃうか?」

オキがヒロカをジト目で見る。

「うーん。ちょっとはっちゃけすぎたかなー。でも、ほら。本人は似合ってるでしょ?」

『エロい! えろいでシンキの姉さん!』

「ふふふ。どう? オキちゃん。隊長ちゃん。」

先ほどのストレアの着ていたメイド服並に胸を強調しながらこちらはもはや服と言えるのかわからないほどの短さのスカートにおなかの空いたへそだしスタイル。

「ふむ。もう少し着込んだ方がいいぞ。おなかを冷やす。」

「さすが隊長。的確すぎる。いやしかし、まぁ普段着からすればもう少し露出あるもんなぁ。そう考えると変わらんか?」

『慣れとるメンバーの言葉はちゃうな…。ワイ羨ましいのか、悲しいのかわからへん。』

シンキが立ったのはアインスの席のまえだ。

「お? 俺の番か。」

「そうよー。はい、たいちょーちゃん。あーん。」

シンキは頬杖をついて、より胸元が見える位置に陣取り、隊長の口元へケーキを運んだ。

「あむ。ふむ。確かに…これはおいしいな。よき腕をしている。とても美味しいケーキだ。」

普通に食べる隊長。

「それだけー? …まぁいっか。それもまた隊長ちゃんらしいわ。」

「ん? なんか、悪いことしたかな? ああ。いや、あまり見ると悪いと思ってね。いくら綺麗だからって嫁入り前の身体をジロジロと、夫でもない男が見るものではないだろう。」

「ふふふ。でもちゃんと綺麗って言ってくれて、ありがと。」

「子供ではないのだ。撫でないでほしい。」

シンキはアインスの頭を優しくなでた。払おうとしないアインスだが、少しだけ恥ずかしそうだ。

「あら、私からすれば皆子供よ。ふふふ。」

「ははは。君の言葉はそのままの意味があるから恐ろしいよ。」

『なんか…よーわからんけど。ご馳走様でした。』

夫婦メンバーであるシリカやアスナなど、その他メンバーも恥ずかしながらとはいえ、きちんと依頼されたことを行った。

ちなみにキバオウの名前をひっそりと入れたのはオキである。いつも司会だけやってもらっている彼に少しくらい、いい思いをと入れたのだが、選ばれたのはユイの時だけだった。彼は不運なのか幸運なのか。

『最終審査』

『さぁさぁ残すところ、最後の審査や。最後は皆にドキドキしてもらう内容やで。さぁ全員カモン!』

ステージの端からゆっくりと10人の美女、美少女が現れた。純白のドレス。紅、蒼、碧と多色にわたるドレス姿。その姿は誰が見てもウェディングドレスである。

「なお、新作のもよう。」

「オキに頼まれてまた作った。」

お互いに親指を立ててご満悦。キュートなものからセクシーなものまで多種にわたるドレス姿の女性10名がステージに並んだ。

「みなさん綺麗ですー! ママー! パパー! どうですかー!?」

ユイがトテトテと走って二人に見せに走る。

「…。」

キリトがじっとユイを見つめる。

「キリト? どうした?」

オキがキリトの様子がおかしいことに気づき、声をかけた直後、彼の眼から涙が落ちた。

「キリト!?」

「あ、いや。なんか、その…。娘のいる父親の気持ちがわかったというか…。」

「おやじか!」

どうやら嫁入りする姿を想像したらしい。キリト。齢16にして娘の嫁入り姿に涙する。

『いやーかわいらしいなぁ。ほかのみなもごっつええでぇ。さて、最後の審査といこうか!』

「「「おおおおー!」」」

『最後の審査はな? 水着がええって言ったんやけど、オキはんが動じてもダメっていうからな?』

「そらそうだ。うちのが間違いなくR18に引っかかる水着なのかなんなのかわからんもん着てくるからな。いろいろあかん。」

オキがジト目でシンキを睨む。

「えー? 別に普通じゃない? 紐とか半透明とか、貝殻とか言わないから。」

「それお前の持ってる水着の原点だろうが!」

『なんかよーわからんけど、ワイごっつみたい。とはいえ、ドレスもええな! ドキドキしてきそう! そして今回の審査内容は…なんとプロポーズや!』

「「「おおおおお!?」」」

「っちょ! プロポーズ!?」

「またむちゃくちゃな…。」

「あの…えっと…。」

驚くリズベットにあきれるシノン。混乱しているシリカなど、花嫁たちもいきなりの内容で驚いている。

『安心せい。プロポーズの相手はヒロカはんにやってもらうことになっとる。その上セリフもヒロカはんが作ってくれる。それを読めばいいだけや。ただし、できるだけ雰囲気は…つくってな? ああ、アスナはん、ユイちゃん、ストレアはんはキリトはんに。シリカはんはオキはんに相手してもらうことになっとる。』

「安心していいのか悪いのか…。」

ほっとしたような、しないような感じのアスナ。

『さて、今回もランダムで順番いくでぇ! まずはっと…。』 

キバオウはどこからか持ってこられた大きな箱の中にてをつっこみ、一枚の紙を取り出した。

『おお!? まずは…フィリアはんや!』

キバオウの取り出した紙にはフィリアの名前が書かれていた。

「わたし!?」

オレンジ色のロングドレス姿のフィリアにスポットライトが当たる。スカート部にスリットが入っており、隙間から綺麗な足が見え隠れしていた。

「オキ。ちょっとカモン。」

ヒロカに呼ばれ、オキもステージの真ん中に立つ。

「どうよ。この新作。感想は?」

ドヤ顔でオキに新作のドレスの感想を聞いてくるヒロカ。

「これはまた…綺麗なもんだ。」

「あ…えっと…。ありがと。」

照れる二人にヒロカは満足だった。そしてふと我に返るオキ。

「…。あれ。これ俺ここにいる必要は?」

「あるわよー。ふふん。こうしてこうして。でーきたっと。はいフィリアちゃん。これよんで。」

ヒロカがさらさらっと羊皮紙に何かを書いていた。

「じゃあ俺は審査席に…。」

「もういいじゃない。一緒にいてあげなさいな。ね? みんなもそう思う?」

「「「いええええぃぃぃ!」」」

会場の皆は肯定の声を上げた。オキとフィリアの関係を知っているからこそである。

「お前らなぁ…。」

「えーっと? …これ読むの!? 恥ずかしいんだけど…心の準備が…。」

フィリアはオキをちらちら見ながら読む練習を頭の中でしているようだ。

「どーせするんでしょ? だったら今のうちに練習しときなさい。はいスタート!」

会場が暗くなり、フィリアとヒロカ、そしてなぜかオキも一緒にスポットライトを浴びる。

「…その。えっと…。わたしは! …あなたの背中をずっと見てきました。あの日、あなたに助けられなければ…私は。あれからずっと、見ていました。…好きです。ずっと一緒に、そばにいてください…。」

「…OK!」

ヒロカの声を合図にステージのライトがもとに戻る。

「「「おおおおおお!!!!」

会場から歓声と拍手喝采が起きた。ヒロカは満足そうな顔をしており、フィリアは顔が真っ赤だ。

「あーもう! すっごい恥ずかしいんだけど! なに? これ、公開処刑!?」

「あなたの場合はそうかもね。どう? オキ。満足した?」

ヒロカがにやけた顔でオキを見ている。なぜこちらをみる。俺だってはずい。超はずい。なぜかさっきの言葉は俺を見て言ってたんだが。まぁそういうことだよな? うん。わかってる。でも恥ずかしい。

「いや、どうって言われてもなぁ。あーもう。ほら、次行くぞ次! キバオウ! 次引け次! 時間押してんぞ!」

『お? おお!? まぁそういうんやったら…。ほいフィリアはんええなぁ。ごっつ本気に聞こえたでえ! ワイ心にズっキューンきてもうたわ。え? 表現がふるい? うっさいわ! さぁ次や次! …ん? ほーう? オキはん戻らんでええで。ステージにカムバックや!』

「えー? あ…。」

キバオウが手にしたのはシリカの名が書かれた紙。そりゃそうだ。シリカの相手は俺がしなければ。いや本当はフィリアも…いや、何も言うまい。

さっきのはヒロカが気をきかせてくれたのだ。SAOの終わる前に、けりは自分でつけなければ。ある決意を胸に秘めつつ、シリカの前に立ったオキ。

「あの…えっと。」

「綺麗だな。以前のドレスよりも。」

「えへへ。ありがとうございます。」

限りなく白に近い薄い桃色のドレス。以前の大量のフリル付きに加え、今度は背中が大きく開いた少しセクシーさを出したドレスだ。

「んー。シリカちゃんは…こうしてこうして…いや、こっちのセリフの方が…。」

「あ、ヒロカさん。」

「ん? なに? もう少しでできるから…。」

「それ、いりません。」

シリカの突然の言葉にヒロカの眼が一瞬点になる。そしてすぐにその意味を理解した。

「…ああ。そういうこと。わかった。ごめんね。気が利かなくて。どうぞ。はいライトアップ!」

急にステージは暗くなり、シリカとオキだけがライトアップされる。

「私は…私の言葉で…言いたいんです。」

「「「おおおー!」」」

シリカの言葉に会場がざわついたが、すぐに静まり返った。

「オキさん。わたしは…。以前も言ったように、このゲーム開始してからすぐ、不安でいっぱいでした。怖かった。目の前が真っ暗になっていました。でも…あなたが照らしてくれた。わたしの手を引いて、暗かった道から…明るい場所へ一緒に歩いてくれた。とても、嬉しかったです。もう少しで、このSAOも終わります。あなたは、遠く、遠く星の彼方にいる人。会えるかどうかも分からない。遠く離れた方。でもそんなあなたを、ずっと好きでいていいですか? ずっと…愛していても、いいですか?」

真剣な顔。恥ずかしそうに顔を真っ赤にしつつも、

「…シリカ。俺は必ず…会いに行く。必ず、お前を連れ去りにいくから…待ってろ。」

「はい!」

「「「おおおおおお!!!」」」

会場からの大喝采がおき、ライトがもとに戻る。

「いやー。さすがだねシリカちゃん。わたし聞いてて恥ずかしいわ。」

ヒロカの半分髪の毛で隠れた顔が少しだけ赤い。

『さすが大本命。奥さんの力はちがうねー! いいよー。ワイえもん見させてもろた。さぁどんどんいくでぇ。』

キバオウが次に引いた紙にはアルゴの名前がのっていた。

『おお? 姉さーん。出番やでぇ。アルゴの姉さんカモン!』

「お、俺っち!?」

普段のフード姿とうって変わり、ひげをうまく使うべく猫耳型のヴェールを付け、純白のドレスを着たアルゴがステージの真ん中までおどおどしながら歩いてきた。

「あーんもうやっぱりかわいいー! はい、みんなも! 姉さんかわいいー!」

「「「かわいいーーー!!!」」」

会場からヒロカの合図とともにアルゴへのかわいい宣言。

「な…なな…ニャアアアアア!!」

あまりの恥ずかしさが極度を超えたのか、限界を突破したアルゴはすぐさまステージから逃げて行った。

『姉さーん! 姉さーーーん! …えー。大変申し訳ありませんが…姉さんは最終審査なしということでいきますハイ。姉さんかわいいから仕方ないね。』

「うるさーーーーイ!」

ステージの裏からアルゴの大きな声が飛んできたが、多分もう遅いだろう。あのアルゴのかわいさの姿はプレイヤーたちの眼にはっきりと記憶されたのだから。

『…次! …おお!? 次はシノンはんやな。』

「わたしね。」

蒼色のドレスを身にまとい、すらりとした身体によく似合うというのがオキの感想だ。

「どう? ウェディングドレスを着てみて。体験したことないと思うけど?」

「どうといわれても…。まぁ悪くない…かな。」

少しだけ自分の姿を改めて確認するシノンは少しだけいつもより嬉しそうだ。

「じゃあこれ、お願いね。」

「はいはいわかったわよ。もうあきらめたわ。」

ヒロカからセリフの書かれた羊皮紙を受け取り、ライトアップされる。

「…先輩。あの…私、ずっとずっと先輩のそばに居たい。あなたの支えになりたい。愛してます…。先輩。」

「ん! OK!」

「「「ふううぅぅぅぅ!」」」

ノリノリの会場から声が上がる。

「なんで、先輩相手なの。」

ジト目でヒロカに聞くシノン。

「そりゃシノンってなんか後輩っぽいから? なんか合いそうだったからそういうシチュにしてみた。うん抜群の破壊力だったよ。おねーさん満足。」

「…そう。」

気疲れしたように元の場所に帰っていくシノン。

『後輩パターンもええもんやなぁ。ワイも学生時代はブイブイ言わせとったもんや…。あ? そんなことあらへんて!? うっさいわ! さぁ次行くで! 次は…。おお? シンキはんやな。これは見ものやで!』

「ふーん。ワタシ、ね。」

シンキのドレスはまさにセクシーなドレス。真っ赤に燃え盛るかのごとく真紅の色。大きく空いた胸元に広く見える肩。なにより目を見張るのは大きく空いたスカートの前。もはや見せているも同様である。一応下はレオタードなので下着ではないが、エロい。

「うーん。私としてもやりすぎたかな。どう? 着心地。」

「ええ。悪くないわ。ふふふ。」

「じゃあ、えっとここをこうして…うーん。シンキさんは難しい。…そうね。こうしてこうだ。じゃあこれをお願い。」

ヒロカがセリフの書かれた羊皮紙をシンキに渡す。

「ふーん。」

「なんか嫌な予感がする…。」

ライトアップされ、ヒロカとシンキのみが光り輝く。その姿を見ながらシンキの気味の悪いぐらいの微笑みをみてオキが嫌な予感が的中したことをその直後に知る。

「…ふふふ。」

「…え? …!? んーーーーーっ!?」

なんとシンキは彼女の首に手を回し、抱きついた後にその場でヒロカにキスをしたのだ。

「んー! んーーー! んむ!? んーーーー!!」

『あ、あの…シンキはん…?』

「…ふふふ。ごちそうさま♪」

「…あ、う…。」

オキは頭を抱え、周囲は呆然。ヒロカは昇天している状態となった。

「いいわね。満足。」

『あ、えっと…ヒロカはーーーん!』

しばらくの間、ヒロカは昇天したままだった。オキは知っている。彼女を知る者は知っている。彼女の技術は異常だと。何人もの美少女美女、美少年等いくつかの犠牲者が物語っていた事を知っている。

「はぁ・・・。えーっと。ヒロカは一時退場。時間ねーから次行くぞ次。ああなったらもうだめだ。しばらく戻ってこん。」

オキの指揮によりイベントをなんとか続行。残るメンバーの審査も完了した。

『えー。途中多数のハプニングがありましたが…。』

「お嫁にいけないお嫁にいけないお嫁にいけない…。」

「どうどう。」

頭を抱えるヒロカを慰めるオキ。

『無事審査完了したでーーー! 最後にランダム抽選で決まった100人の会場の皆からの点数も合計した! その結果が…これやぁ!』

ステージに書かれた数字。トップ3が書き出された。

『第3位 アルゴ』

「お、俺っち!?」

『姉さん可愛い。』

「「「かわいいーーー!」」」

「うるさーーーーーイ!」

3位はアルゴだった。普段からのギャップによりかわいいを連発せざるえない状態を見せてくれたので人気が一気に上がったのだ。とはいえ今後のSAO終わるまでの彼女の苦悩は誰もまだ知らない。

『第2位 シンキ』

「あら、わたしー? ふーん。ま、いっか。」

『シンキはんは男性プレイヤーの心を鷲掴みにしておるからな。まぁ当然っちゃ当然やろう。』

「最後は誰だ?」

「シンキをおいこしての1位か。すごいぞ。」

コマチとハヤマはその結果に驚いている。心身の黄金率とも言われる彼女を追い抜いたのは誰か。

『第1位 ユイ』

「わたしですか!? やりましたよ! ママ! パパ!」

『エロイ姉さんを追い抜いたのはかわいい娘さんやった! その可愛らしい姿に誰も彼もが心を鷲掴みにしたんや。優勝おめでとう! ミス・アインクラッドはユイちゃんや! そして、ユイちゃんを含めた10人の女神たちに大きな拍手を!』

「「「わあああああぁぁぁぁ!」」」

会場の皆も大盛り上がり。ユイは綺麗な花の髪飾りを、審査委員長であるオキに乗せてもらった。

「わぷ!」

「ははは。ちょっと大きかったかな。でも似合ってるよ。」

「ありがとうございます! みなさん!」

小さな小さな少女の大きな眩しい笑顔でミス・アインクラッド・コンテストの幕が下りた。

 

 

-------------------------------

 

 

一方その頃…オラクル騎士団ギルド拠点の一室にて…。

「ぬくぬく暖かいのだ。ごろごろ。」

「すやすや。」

「すーすー。」

ミケはこたつで丸くなり、双子に囲まれ、夢の中。




改めてあけまして、おめでとうございます。
今年もソードアークス・オンラインをよろしくい願い致します。
長い冬休みが明け、着手した今回。肉付け段階でここまで長くなるとは思いもしませんでした。
本当はもっと別の内容になる部分がいくつかあったのですが、書いてる最中にコレジャナイ感が出たので一旦白紙に…。
書き上がってよかったですハイ。

これでようやく本当に攻略を進めます。
長い長い1層からなる攻略も最終面を迎えます。
最後までお楽しみください。

さて、別件ですが年末にあるソシャゲで2016年最後を飾る大戦がありましたね。
ええ、FGOの人類史焼却阻止の最終決戦。
わたしも参加し、リアルタイムであのカルデアマスター'sによる(ひどい)戦いを共に行いました。もっかい復活してくださいバルバトスさん。心臓足りません。
無事に最終決戦を終わり、現在我がカルデアは次の戦いに向けて戦力増強中であります。
このあとどうなるか、たのしみですね。

では次回にまたお会い致しましょう。

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