オキ対アインスの決勝戦闘開始から約10分経過した。
お互いに少しずつHPを削りつつ戦っており、アインスがほんの少しだけ優位となっていた。
「そりゃ!」
オキの左手側のエルデトロスがアインス目掛けて空中を走る。
「ふん。」
アインスはオロチアギトでソレを弾いた。
その動作の直後に右腕を一気に自分の後方へと引っ張るオキ。
ブン!
アインスの後ろからもう一本のエルデトロスが襲い掛かる。
「あまい。」
避けると同時にオキへと走るアインス。オキは武器を手元へ戻し、上段からのアインスの攻撃を防いだ。
「やっぱ・・・簡単にはいかせてくれないねぇ。」
「なにをいう。君にその言葉をそのまま返そう。」
ガキン!
1本と2対の武器が火花を散らして離れ、猛烈なラッシュ攻撃を始める。
ガンガンキンギン! ギギギギ!
小さなキズがHPバーを削りあう。
「どーっせい!」
オキが上空へと右手側を伸ばし、左手側でオロチアギトを防ぎつつ、一気に落とした。
ドン!
地面へ突き刺さるエルデトロス。アインスの姿は無い。
「よっと!」
突き刺さった左手側を引っこ抜きつつ、右手側をすぐさま自分の側面へ伸ばし、正面へなぎ払った。
その先にはアインスが脚に力をいれ、こちらへと今にも飛んできそうな姿だ。
「これならどうだ!」
左手のエルデトロスを上から弧を描くようにアインスへと振り下ろす。
「ちっ。」
後方か、それとも彼の左手側か。
「・・・前だ。」
後方に下がれば伸ばされる上、さらに距離で不利になる。空いている左手側は罠だ。右手側と上空の二対が一気に向かってくるだろう。上空は問題外だ。ならば、前に出るしかあるまい。アインスは一瞬のうちにソレを判断し、彼の方へと突進した。
「なに! ちぃ!」
その行動に、一瞬驚いたがすぐさまワイヤーを自由自在に操り、アインスへと攻撃をする。
オキは上空で弧を描いている左手側のワイヤーを引きつつ、腕を後ろへと引っ張る。
さらに右手側もワイヤーを一気に引き手元へ戻した。そして
「ふん!」
一回転横に回転しながら勢いをつけ、戻したワイヤーをアインスの真正面に、引っ張って数倍以上のスピードで落とした方も戻した勢いでもう一度伸ばす。
アインスは片方を弾き、片方を避け、距離を取った。
「そぉりゃ!」
「・・・!」
アインスの目が少しだけ細くなる。オキがクロス状に腕を交差させ、ワイヤーを伸ばした。その先の刃は空中を縦横無尽に駆け回る。
アインスはいつどこから飛んできてもいいように、オキの周囲を走った。
「・・・そこぉ!」
一度両腕を上に振り上げたオキは、アインス目掛け、一気に振り下ろした。
ドドドドド!
上空を駆け回っていたエルデトロスが猛スピードで地面へと落ちては上がり、絨毯爆撃のように地面へと落ちていく。
まるで何本もの同じ武器がほぼ同時に、雨のように降ってくる感覚だ。
アインスはそれを黙って避ける。だが、数が多すぎる。
ザシュ…
「・・・!」
左腕へと入る。それをみたオキはニヤリと口を歪ませる。
「ふん。」
だが何事もなかったかのごとく、エルデトロスの雨を縫ってオロチアギトの一突きをアインスはオキへ飛ばす。
「っ!」
あまりの素早さ。あまりに的確。その攻撃はオキの肩へと目掛け飛んだ。
ザシュ!
同じく傷が入る。しかもオキのほうがキズは深く見えた。
「ち!」
舌打ちしたオキは、アインスから距離をとるためにエルデトロスを戻しながら後ろに下がった。
「・・・。」
「・・・。」
お互いににらみ合う。
『あんた。どっからきたんだ?』
『俺か? 俺はラグオルって場所から来た。』
『へぇ。聞いた事ない場所だな。』
出会いは唐突だった。別の、遥か遠くより来た同じくダーク・ファルスと戦ったという男。
巨大な化物と共に、こっちへ飛ばされてきた者。
お互いに仲間として、強者として、競い合った。
『いつかは、戦ってみたいものだ。』
『何言ってんの。俺なんかが隊長にかなうわけないっしょ。』
二人で笑い合う。そんなことはない。君は強い。そう言われたとき、嬉しかった。
『待たせたな!』
『隊長!』
巻き込んだ今回の件。しょっぱなからピンチを救ってくれた。あんたには感謝してる。そういえば、ルーサー追っかけてた時も遅刻したっけ。
『目を覚ませ。』
『なにしやがる! アインス!』
頭に血が上って何も考えずに進もうとした俺を止めてくれたっけ。
「楽しかった。君に、感謝する。」
アインスのオロチアギトから光がうっすらと放たれる。
「何言ってんの。いままで散々世話になってきたじゃない。お互い様だろ。」
オキも自分の持つエルデトロスにフォトンを流す。風が強くなり、雷が強く走り出す。
お互いに次で最後。最大の攻撃を放つつもりなのは喋らなくてもわかっていた。
HPはお互いに少ない。これで決まるだろう。
「隊長。いやアインス。ありがとう。ここまでついてきてくれて。そしてこれから迷惑をかけると思うがもよろしく頼む。」
「ははは。それはこちらも同じだ。こんな斬ることしか能がない男とともに歩んでくれて。こちらこそ。」
お互いの貯めた力が最大となった瞬間だった。
「はぁぁぁ!」
「おぉぉぉ!」
至近距離まで走る。アインスは上段から振り下ろし、オキは体をひねってエルデトロスごと縦回転しながらアインスへと二対を振り下ろす。
ガキン!
「ヘブンリー!」
「あまい!」
オキがアインスをつかもうとした瞬間に二対の刃を弾いた。オキはそのままの勢いで上空へとジャンプ。直後に真下にいるアインスへと急降下した。
「でぁぁぁ!」
「ふん!」
オキはアインスへと、アインスはオキへとお互いの武器を突き先端同士がぶつかりあった。
キィィン!
会場に甲高い音と、波状の風がなびいた。
「ふぅぅ!」
「・・・。」
オキはクルクルと回転しながら後方へ。アインスはソレを見ながらオキを追いかけた。
ズシャ!
「ワイルドゥってなぁ!」
PA、ワイルドラウンド。両腕を素早く、前後に振り前方後方へと壁上の斬撃を飛ばす。
オキはアインスがおってきている事を確認し、地面に着地後アインスが攻撃範囲内でオロチアギトを横薙ぎに不労としている完璧なタイミングで攻撃を放った。
「!」
ギギギギ!
アインスは素早く停止。ワイルドラウンドの全ての攻撃を防いだ。
「ふん。」
キンキン!
ワイルドラウンドが終わった直後にオキへ二振りの斬撃。PAサクラエンド。
だが、すでにオキは後方へステップ。すぐさま攻撃を再開しようと踏ん張っていた。
アインスは素早く前へ足に力を入れる。
『はやい!』
オキの予想よりも反応がはやい。さらにアインスはグレンテッセンによりオキの後方へと移動した。
「・・・。」
「まずっ!」
キィィン!
振り返りざまにエルデトロスでガード。すぐさま距離をとる為にアインスとは逆の方へと走った。
しかしアインスもそれについていく。
「いい感じにあったまってきたぜ。」
「・・・ああ。 そうだな。」
戦いが終わる。二人はお互いに感じ取った。
後ろから追ってくるアインスへとクルリと反転、オキは二対の刃を上空へと振り上げた。
「吹き荒れろ暴風。鳴り響け雷鳴! ・・・くらいやがれ!」
アインスはそれを見た瞬間にその場へで止まる。
「・・・!」
『雷 公 鞭 !!』
オキが振り上げたエルデトロスから強力な雷と暴風の二本の柱が現れ、それをオキはアインスへと振り下ろした。
ゴゴゴゴ!
アインスはオロチアギトを鞘へと収め、居合の構えをした。
「来たれ我が刃、我が四天の武、これこの通り……。」
アインスの周囲にうっすらと現れた3本の刃。アインスが持つオロチアギトを含む4本の四天の刀がアインスを取り囲む。
「…塵芥になるがいい。」
アインスの目が一瞬だけ光ったように見えた。一気に振り出される一振りの、四天とアインスの力のこもった居合い切り。
『四 天 招 雷 !!』
ガギギギギ!
お互いの最大級の力がぶつかり合い、そして
ゴォォォ!
行き場を失った力は上空へと一緒に重なり合いながら飛んでいった。
土煙の舞い上がった戦場。それを切ったのはオキだった。
「やっぱりなぁ! かまえてるとおもったぜ!」
オキが飛びついた先にはすでにその場所からくると予想していたアインスが居合の構えをして待っていた。
ガキン!
だが、一振りが早かったのはオキ。アインスは鞘で受け止めるしかなかった。
「おわりだぁぁぁ!」
すでにふた振り目をふり下ろそうとするオキ。アインスの持ち方は一度鞘から抜いてから振り下ろすしかない状態。防御したところでオキに攻撃することはできない。
「…とおもったのだろう?」
アインスの腕が動いた。
斬!
オキの腕が飛ぶ。
「な…。」
アインスは素早く『逆手』に持ち替え、オロチアギトを抜いた。
「…ふむ。これは。」
目を細めたアインスは自分の左腕に首を向けた。
「あーあ。勝てなかったなぁ。」
オキの残った方の腕。もう一方のエルデトロスがアインスの腕を切り落としていたのだ。
『ド、ドロー!!!!』
キバオウの声が会場の第一声を張り上げ、直後に会場全体から歓声が上がった。
『まさかのドロー! さすがのワイも予想できんかった! えらい熱い戦いを見せてくれた二人に大きな称賛あびせぇや!』
「ふむ。まさかこうなるとはね。」
「だぁぁ! まさか逆手になるなんてなぁ。くやしいのう。」
その場に寝っころがりながらポーションを飲むオキ。その隣に座り込むアインスも一緒に飲んだ。
「いや、さすがというべきか。予想以上だった。…楽しかった。ありがとう。」
「にしし。おう。俺もだ。サンキュ、たーいちょ。」
お互いの残ったほう握りこぶしをコツンとぶつけ合った。
第一回、最初にして最後のSAO内アインクラッド杯は二人の優勝者で幕を閉じた。
みなさまごきげんよう。
いやぁ長かった。アインクラッド杯完!
最後の隊長とのやり取り。居合い抜き状態から逆手抜きに帰る描写は、かのビートたけしさん演じる『座頭市』のラストから持ってきた、私の中でカタナを使う最もカッコイイやり取りNo1に位置する描写。隊長にして欲しかった!
というわけで、ようやく攻略を進めます。
次回は99層攻略。最後の大ボス達が待ち構えています。お楽しみに。
ところで、FGO第7章を現在疾走中なのですが、いやなかなかヤバイ。やはりさすが最終章スケールも敵もでかぁい!(説明不要)
年末に最終決戦があるそうで、7章クリアしないと参加できないとか。がんばります。
ではまた次回にてお会いしましょう。