SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第77話 「二本のアギト」

「3…2…1…」

カウントダウンが0になる直前に二人が同時に動いた。

「0」

ガキン!

0となった瞬間、お互いのカタナをぶつけ合った。真正面からのぶつかり合い。

ガン! ギギン! キンキン!

左右上下の猛攻。一発一発が本気で打ち合っている。

「はあああぁぁぁ!」

一瞬後ろに下がったハヤマが力を貯める。その次に来る攻撃を予測し、アインスは脚に力を入れた。

「『カンランキキョウ』!」

周囲360°の居合い切りがアインスを襲う。だが、斬撃が来る前にすでに空中へと飛んでいた。

「ふん。」

上空から一気に降下、直後に切り上げる『ゲッカザクロ』を放つ。

キィン!

「ちぃ!」

ハヤマはアギトで防御し、地面を蹴った。

「『グレンテッセン』!」

一瞬でアインスの背後を取った。背中へアギトの一撃が入ると誰もが思う。だが、ソレは防がれた。

ガキン!

後ろ目に顔を、体をほぼ動かさず、ソコに剣戟が飛んでくると分かっていないとできない防御。

アインスはオロチアギトを背中側に構え、防御した。

「「「おおおお!」」」

その行為に観衆は声を上げる。

『いやぁ流石アインスはんやなぁ。』

『せやな。グレンテッセンは瞬時に相手の後ろを取ってから強力な斬りを居合いでぶっぱなす技。何度も見ている隊長だからこそソコに来るとわかるから出来る防ぎ方だな。さぁてハヤマんはどうやってそんな隊長とやりあうかな?』

実況のキバオウに解説のオキが盛り上げる。

防御されたハヤマはすぐさま距離を取った。

「さすが隊長・・・普通の攻撃じゃ防がれるか。」

「なに。これくらいなら君にもできるだろう?」

フっとお互いに笑い合う。そして。

ギン!

再び瞬時に近づきあい、激しい斬りあいが始まる。

斬りつけ、弾き、その勢いを利用して。

『にしてもや。アインスはんのカタナはともかく、ハヤマのカタナは錆びとんのやけど、アレ大丈夫なん? 折れへんの?』

『ああ。大丈夫さ。ここで少し補足説明しようか。ハヤマんのカタナ、アギト。そして隊長のカタナ、オロチアギト。二つは親子のようなカタナさ。』

オロチアギト。四天と呼ばれる四本のカタナの一本。銀河を駆け巡っていれば、どこかで聞くその名前。

名だたる名匠が鍛え上げた四本のカタナ『四天』。『ヤシャ』『カムイ』『サンゲ』と、『オロチアギト』の名が古典に残されている。

『ハヤマんがもってるのはその贋作だが、アギトの名を持つ中でも屈指の作品。錆びててもその切れ味が落ちることはない。逆に切れ味よすぎるじゃじゃ馬のようなカタナだ。』

『そしてその相手が・・・アインスはんの。』

『そう。その元となった本家本元。オロチアギトってんだから。いやぁ、面白い戦いだよ? これ。銀河中にいる四天ファンからすれば、是非がでも見たい戦いだろうねぇ。』

おお~と周囲のプレイヤー達が声を漏らす。

一人だけ、クスリと微笑みポソリと呟いた女性がいた。

「でも、その逸話は…ね。知らない方がいいかしら。」

背中の巨大な羽をゆっくり動かし、二人を見つめるはシンキだ。

『四天』の裏の逸話。本当の出土を知っているのは今やただ一人になってしまった。いや、アインスもどこかでしったのかもしれない。彼もどこかしら知っている節がある。

「ほんと。退屈しないわ。あーでも、やっぱり勝てばよかったかしら。」

「シンキさーん! 飲み物かって来ましたよー!」

リーファ達が手を振りながらこちらに向かってきた。

「どうかしたの?」

シノンが顔を覗いた。どうやら顔に出ていたらしい。私らしくない。

「ううん。なんでもないわ。」

微笑みを返し、二人の頭を撫でるシンキの顔をみてリーファ、シノンは首をかしげる。

「だぁぁぁ!」

左右への動きからアインスの側面へ突きを放つハヤマ。アインスはその攻撃を剣先でズラシ、掠めるようにカウンターを行った。

「っな!?」

同じく突きで返されたハヤマはすぐさま距離を取る為に後方へ下がる。直後にアインスの行動に目を見開いた。

ドクン…ドクン…

『カタコン!? 決めるきか!? だが、それでは…!』

『カタコンってぇと、確かシンキはんと戦ったときにだした、必殺技のようなもんやったな?』

カタナコンバットの『何人たりとも触れることを許さない動き』が出来るのは長くても20秒。

短くすることは意図的に可能だが、長くなることは絶対にない。それ以上やれば、フォトンが暴走し最悪死に至る可能性があるからだ。そもそもそれ以上やるメリットがない。20秒まで全力で攻撃。そのときに貯めたフォトンの量が放った際に最も適切量であり、簡単に言えば最も攻撃力のでるタイミングが20秒なのだ。

それをアインスは先に開放した。その間無敵になることはできるが、ハヤマがこの直後に使用するとどうなるか。

『隊長が使い終わった直後に、ハヤマがフィニッシュをかませば・・・少なくとも今のHPでは一発でギリギリ削りきれちまうだろう。そうするとハヤマの勝ちになる。』

『あせったんやろか。』

『いや、それはない。隊長に限ってそんな事は・・・。』

普段から冷静な彼だ。あせって攻撃を仕掛けるという事はしない。ならば何かしらの勝算でもあるというのだろうか。

「いきなり使ってきたね! ならばこちらも!」

流れるようにハヤマもカタナコンバットを開放する。その差、約2秒。この2秒で勝負が決まるだろう。

カタコンを発動した瞬間にアインスがハヤマへと猛攻を仕掛ける。身軽となったカタコン発動中の動きは何度も見てきている。ハヤマでも何とかしのぐことは可能だ。

ガン!

空中でアインスの回し蹴りが入る。ソレをアギトで防御。二人とも勢いで一度離れてしまった。

「っくぅ!」

カタコン発動中のけりだ。生半可な威力ではない。

「まだまだぁ!」

ハヤマが突っ込む。

3、2、1…。

アインスが最後のフィニッシュを放つ。

キィン!

だが、それはハヤマの体には今や効かない。直後にハヤマもフィニッシュの体勢に入った。

「おぉぉわぁぁりぃぃだぁぁぁ!」

キィン!

逃げ切ることは出来ない距離。上空だろうが、地下だろうが、周囲前後左右上下。360°の球全てが攻撃範囲となる。

いくら隊長でも、防御すら貫通するこの攻撃を受ければ・・・。

「予想通りだ。」

「・・・はぁ!?」

アインスがハヤマへと向いている。HPは予想していた量より1/3残っていた。

あまりの予想外の展開にハヤマはアインスを見たまま攻撃したままの体勢で固まってしまっている。

アインスは上段で構えていたオロチアギトを、一瞬溜め、一気に振り下ろした。

斬!

斬撃が縦に飛び、ハヤマへと襲い掛かる。

「ばか・・・な!」

『アインス、WIN!』

「『オロチアギト・オーバーロード』。こっちでも、使えてよかった。」

アインスの勝利によって終わった準決勝。その結果の一部始終をオキが見ていた。

『隊長がカタコン発動後に入れた、蹴り。あそこが基点となってる。カタコンは先ほど説明したとおり、20秒後のフィニッシュが一番いい攻撃を放つ。先に使ったほうが負ける。だが、使われてから相手側もすぐに使わないと、終わるまで待ってるんじゃ、20秒間無敵のチート状態を喰らうことになる。だからハヤマんもすぐにカタコンを発動した。ここまでOK?』

キバオウを初め、皆が頷いた。

『そして隊長が放ったけり。このとき、ハヤマんは気付いてないだろう。だって吹き飛ばされてんだから。このとき隊長は、ハンターの技【マッシブハンター】を発動している。』

「マッシブ!? ・・・そりゃ硬いはずだよ。」

ハヤマが立ち上がりながらオキの解説を聞いて理解した。

マッシブハンター。ハンターが使うことの出来る技の一つ。自らの身体を強靭と化し、半端な攻撃ではびくともしない状態へとなる守りの技。ブレイバーであるアインスはサブにハンターを置いている事によりそれを可能としている。

『マッシブの効果は長くて45秒。カタコンと同時に発動していたとしても更に倍の時間発動できるが・・・隊長はハヤマんの気付かないうちにマッシブを使った。』

「ワザとカタコンを使用させ、マッシブで耐えた後に、一発でしとめる。そのために取っておいた大技だ。」

オロチアギトに溜めたフォトンを真正面に斬り放つ大技。これまたシンキが教えた技だ。

「はぁ・・・負けたか。」

「楽しかった。またいつかやろう。」

アインスが笑顔でハヤマに手を差し伸べる。

「ああ。わかったよ。次は負けねーかんな。」

「ふふふ。楽しみにしているよ。・・・さて。」

一瞬目を瞑り、ある一点を見たアインス。その先には今まで解説で座っていた男が立ち上がり

応援をかけたシリカに数秒抱きついてから、アインスへと向かってくる姿があった。

「・・・勝てよ。バカリーダー。」

「あーよ。ゆっくり休んでろカタナバカ。満足そうな顔しやがって。」

パン!

お互いにニヤリと笑い、頭上で手をたたきあった。

「待っていたよ。オキ君。君とこうして戦う時を。」

「ああ。俺も隊長とはやってみたかったんだ。こいつでな。剣でも、槍でも、なんでもない。コイツと一緒にやりたかった。」

ワイヤードランス『エルデトロス』。アインスの最高の相棒が『オロチアギト』であれば、オキの最高の相棒が『ソレ』だ。

「今にも暴れ出しそうに見えるな。」

バチバチと鳴り響く刃。今にも斬りかかって来そうな風を纏う装飾。それをみたアインスが自らの相棒を構えた。

「ふん。隊長のオロチだって、今にも噛み付いてきそうじゃねーの。」

お互いに距離を取る。そしてカウントダウンが始まった。

『さぁさぁ泣いても笑ってもこれが最後や! 第一回! アインクラッド闘技大会! 決勝戦! おっぱじめるでぇぇぇ!』

3!

2!

1!

『かいしやぁぁぁあ!』

多くのプレイヤー達の声援とキバオウの開始の合図と同時に二人が走る。

「おおお!」

「だぁぁぁ!」

ガキン!

1本のカタナと2対の武器が火花を散らし、会場を振るわせた。




皆様ごきげんよう。
ようやく終わりを迎えようとしている闘技大会!
SAO編も何とか年末年始あたりで終わるかもしれない!?
・・・ないな。SAO編最後の部分は壮大な戦闘連発しますんで・・・。

さて、PSO2ではネッキー緊急が半分となりましたな。ようやくほぼS安定まで持っていくことが出来るようになったミケ主催、私まとめの固定メンバー。いやはや、此処までくるのが長かった。
どうやれば今のメンバーでSを取らせることができるかと頭を痛めました。
後はファミ通で手に入れたトリガーを連発で使うだけですな。(しかしガンスラは出るのだろうか

ではまた次回にお会いいたしましょう。

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