SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第76話 「二刀流VS神槍」

「つ、つぇぇ…。」

アインスとクラインの試合。同じ刀同士なのに、こうも違うのかと改めて思ったクライン。

「太刀筋はいい。仕方あるまい。経験の差だ。君は充分強い。」

武器を収め、疲れきり座り込んだクラインにてを差し伸べるアインスはニコリと微笑んだ。

アインスとクラインの勝負。結果が見えきっていた勝負。だが、思った以上にクラインは善戦した。

特に、下から切り上げると見せかけたフェイントをいれ、アインスの右肩へクリティカルに突き攻撃を入れた動作は熟練者でも見抜けぬ綺麗な動きだった。ハヤマ、オキですら声を上げ、アインスは称賛を与えた。

直後、左手に持ち替えたアインスにあっさり負けてしまったのはクラインらしいとサラが言う。

「全く、調子に乗ったわね。ま、あいつらしいっちゃアイツらしいんだけど。ここまでいったのは、予想外だったわ。」

「ほめてやんねーとな。頭でも撫でてやったら?」

オキがニヤニヤしながらサラに言った。

「う、うっさい! そそそ、ソレくらい当たり前でしょ! いくら現実の世界と違うとはいえ、あんた達と少しでも互角に戦えたんだから。」

顔を真っ赤にしながら、クラインに近づき恥ずかしそうに頭を撫でていた。ものすごく雑だったが。

ソレに対し、クラインはこれ以上内ほどデレッデレな顔をしてすぐにサラからはたかれていた。

「さて、待ってたよ。」

「ああ。俺の力を試すときが来た。よろしく頼む。オキさん。」

コロシアムの真ん中で対峙するはオキとキリト。

『さあさあ! この大会も残すところあとわずか! 準決勝! 第一試合! おっぱじめるでぇ!』

キバオウの声がコロシアムに響き渡り、喝采が上がる。

『方や、銀河の先の先から来る我らが救世主。宇宙人はおったんや! 最近ハーレムを築く色男! ワイも少しは恩恵にあずかりたい! アークス、オキはん!』

「お前も意外と人気あるだろキバオウ。」

実はファンが多いキバオウ。気付いていないのは本人だけである。

『方や、プレイヤー側最強の男。イレギュラーにどこまでついていく!? 二本の剣で家族を守る! 美人な嫁はんワイもほしい! 二刀流、黒の剣士! キリトはん!』

「「パパー! (お父さーん)! 頑張ってー!」

「キリト君ファイトー!」

「あ、あはは。」

『家族の声援も熱い! 羨ましいで! このやろー!』

家族に応援され手を振るキリト。他にもキリトを応援する声は多い。

「よくぞ此処までたどり着いた。俺は嬉しいぞ。お前が此処まで強くなってな。さぁ、楽しもうぜ。」

「ああ。お手柔らかにな!」

二人が構える。オキはキリトの武器に合わせて『魔槍ゲイボルク』を装備していた。

「あれ、グングニルじゃなくていいの?」

キリトが目を細める。

「ばか。早く終わったら面白くないだろう? それに、おれはアッチよりコッチノが好きなんだ。」

「ふーん。」

カウントダウンが、0になる。

「おおおおお!」

キリトが最初に動いた。オキへと素早く近づく。同時にキリトが何かを投げた。

「ふん。」

オキがソレを弾く。直後にキリトが二本の剣で切りかかった。

「でやあぁぁぁ!」

ギンギン!

槍をくるくると振り回し、払う。

「本気なんだな。いいだろう。」

気迫、動きをみて最初からフルスロットルだと判断したオキは、ワイヤーを服の袖から伸ばし、キリトを攻撃する。

「っ!?」

投げナイフと同じく攻撃力は微量とはいえ、オキの操るワイヤー「ウィップ」は予測不可能な動きをする。一度肩をはじかれすぐさま後ろに下がったキリトはオキに近づくのをためらった。

「ふん。紅い棘は茨のごとくってなぁ!」

戸惑いの隙をついてオキが地面を蹴って上から攻撃してきた。

「ぐぅ!」

ガキン!

黒と白の二本の剣がクロスされ、紅い魔槍を受け止める。

「おらおらどうした! よいしょっとぉ!」

突きに振り回し、さらにはワイヤーを使ってのけん制。キリトは守りに徹するほかなかった。だが…

「流石オキさん…だね!」

「む!」

キリトの剣が光る。構え、光らせ、放つスピードはオキの予測を超えていた。

瞬時に危険と判断したオキは既に地面を蹴って後方へ下がる。オキのいた場所に二本の剣が横なぎに払われた。

「こっからだよ!」

「…やべ。」

SSの終わり際から次なるSSが繰り出される。突進力のある突き属性のSSでオキとの距離をつめた。

「おおおお!」

さらにつなげる。16連撃からなる素早い剣捌きの『ナイトメア・レイン』。今度はオキが防御に徹した。

『っち。弾かれそうだぜ。』

ギギギギン!

SSの終わりを耐えるオキ。目を細め、一振り一振りを見抜いた。

キリトの天性の瞬発力から繰り出される『J・S(ジャスト・アタック)』によるSS連発。あのヒースクリフを出し抜いた技だ。

ギィィン!

攻撃の猛攻に耐えれず、オキの槍がわずかに防御の軸から外れる。

「しまっ!?」

「そこだああああ!」

さらにつなげるキリト。放つは奥義『ジ・イクリプス』。のはずだった。

「させるかよ!」

一瞬の隙。SSとSSの間に出来る1秒か、満たない程の隙をつきオキはキリトの体にワイヤーを巻きつけ、引っ張った。

「っな!?」

「だぁりゃ!」

引っ張った勢いと飛んだ力でキリトへ飛び蹴りをかます。

「っが!?」

「っとと。」

けりにより、SSを強制解除されたキリトは後ろにふらつき、オキは少し距離を置いた。

「その心臓…。」

距離を置いたオキは怯んだキリトに向かって槍を中腰に構えた。

「貰い受ける!」

直後、地面を蹴ってキリトへと接近、胸部へと槍を突き刺した。

「ゲイ…! なに!?」

勢い良く突き刺したはずの槍から大きな金属の音が響いた。

ガキン!

「グ…うう…。」

十字にクロスさせた剣で胸部を守ったのだ。

「ちぃぃ! 『火尖鎗』!」

槍に炎を纏わせ槍の先端から炎の刃が伸び、縦と横に大きく振り回すユニークスキル『神槍』のSSを放ち、後ろに下がりながら距離をとった。

「あつっ! 火炎属性!?」

オキの放ったSSは高確率で相手に燃焼の状態異常を与える。キリトの体は炎を纏った。

「あち! あち! 結晶!」

すぐにアイテム欄を開き、結晶を使おうとしたときだった。

「おお。これはあついのだなー。」

「…え?」

「は?」

キリトの後ろに一匹の猫が素早く降り立つ。その姿にキリト、オキはもちろん周囲は唖然とした。

「み、ミケ?」

ミケがキリトの後ろで燃えているではないか。オキは嫌な予感がした。

「やっべぇ…これ逃げた方がいいな。」

そういって後ずさりした直後だった。

「オキも燃えるのだー!」

猛スピードでオキを追いかけ始めた。

「やっぱりかぁぁぁぁ!」

炎を纏ったミケはオキ目掛け、コロシアム内を走り回った。

「いや確かによぉ! 惑星アムドの火山地帯では、よく燃えては回りにばら撒いてたけどよ! ここでもやるかおまえぇぇ!」

「炎見たら我慢できなかったのだなー! 覚悟するのだー!」

すばしっこさではミケのが早い。もう少しで捕まるというところでオキが何かを思い出したのかクルリと反転。すぐさま槍を構えた。

「だーもう! あっちで遊んでろ! 『トライデント』!」

槍の先端から飛び出た水の刃で、三回のほぼ同時突きと三回目の突きの直後そのまま振り上げる水の属性を持つ『神槍』スキルの一つ。

ミケの体に当たらないよう攻撃を放ち、そのまま三回目の突きでミケのフードに槍を引っ掛けてお空へと投げた。

「にゃあああぁぁぁ!」

「ぜぇ…はぁ…ちくしょう。精神的に疲れた…。」

オキはテクテクと歩いて実況席へと向かった。

「おい。キバオウ。マイクかせ。」

「お? おお。ええけど。」

ぽいと投げられたマイクを受け取りオキは唖然としている観衆に謝った。

『いや、お騒がせしたスマン。特に問題ねーからこれから再開すっぞ!』

「「「おおおおお!」」」

「返す。」

「お、おお!?」

投げ返したオキはキリトのほうへと向かった。相変わらずポカンとしている。

「火は消えたようだな。」

「え? ああ。結晶を使わせてもらったよ。…いつでもいいよ。」

「おーけー。」

キリトが構えなおし、それにあわせてオキも腰を低く下ろし、槍を構えた。

「おおおお!」

「だぁぁぁ!」

二人が一気に近づいていく。このまま討ち合いを経て、勝負がつくと誰もが思っていた。

「はずだったぁ! ってなぁ!」

オキが急に止まり、顔に手を当てた。直後キリトはもちろん、その技を知っている人以外全員が思いもよらぬところからでる技に度肝を抜いた。

「『ヴァサビィ・シャクティ!(別名:真の英雄は眼で殺す技)』」

オキの放った技は武器からではなく、なんと目からビームを放ったのだ。

「なん…だと…!? ッガ!?」

あまりの唐突で予想もしない攻撃に防御、回避すら忘れモロに食らってしまうキリト。

「ちょっぴり…本気だ。」

動きの止まったキリトに対し、オキは紅い槍を上空へと蹴り上げた。

蹴り上げた槍を追いかけるようにオキも上空へとジャンプ。

「蹴り穿つ…『ゲイ・ボルク・オルタナティブ』!」

オーバーヘッドで下方へと蹴り下ろした槍は紅いオーラをまとって一直線にキリトへと落下、突き刺さった。

『WIN! オキ!』

その一撃によりオキの勝負が決まった。

「っと…。いやぁとってて良かったあのSS」

降りてきたオキはキリトに近寄った。

「もはやSSとは…。」

苦笑気味になるキリト。

「あれ、あまり強くない上に貫通技とは言え距離もあるわけではないし、なにより立ち止まって真正面のみに攻撃する技だから普通にほかの技使ったほうがいいんだよねぇ。だからいままで一回試してやめたかな。しってるのはシリカたちだけだし。まぁ、ひるませるにはいいかなって。」

「あ、あはは…。」

「でも強かったぜ。楽しかった。ありがとな。」

「ああ。これからもその力、頼らせてもらうぜ。オキさん。」

二人の握手によりコロシアムは喝采を上げた。

それと同時に立ち上がったふたりがいた。

「さて、いきますか。隊長。」

「ああ。楽しもうじゃないか。」

ハヤマ、アインス。双方気合をいれ、出陣。

カタナ使いの戦いが今ここに始まろうとしていた。




みなさまごきげんよう。
そろそろコロシアムも終盤。準決勝の一つが終わりました。
あと2試合で終わりですね。お楽しみに。

しかしPSO2はネッキー緊急困りましたねぇ。
なかなか難しいクエストです。期間も短いですしね。
なんとかオービットは揃えたいところ・・・。

では次回にまたお会いしましょう。

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