SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第73話 「正義と誠」

センターとクラインの対決はセンターの優勢だった。

スピードで勝る上にパワーもある。苦戦モードになっていたクラインはより一層負け越しになっていた。

「クソっ・・・。」

「ふむ。」

 

ガキン!

 

センターが斧を振り上げて、クラインのカタナを弾く。

「まず!?」

「でやぁ!」

センターの蹴りが入り、クラインは後方へと吹き飛ばされた。

「ぐうう・・・。」

「クラインさん。あなたは、何のために戦いますか?」

センターが口を開いた。クラインがセンターの目を見る。真剣な眼差しだ。

「強い相手と戦いたい。アイテムが欲しい。お金が欲しい。モテたい。いろいろあります。そんな中で、あなたは、なんのために戦っていますか?」

「そりゃぁ・・・。」

クラインがチラリと自分の後ろを見る。心配そうにこちらを見ている少女が一瞬だけ自分の目にはいる。

「仲間を・・・愛するものを守りたい。そういう方が多いですね。ここの方々は。オキさんがいい例です。あの人は力がある。だから守れる。ではあなたは? 力がありますか?」

センターが地面をけってクラインに近づく。いきなりの急接近。クラインは武器を弾いて逃げるしかできなかった。

「いや、無いな。力はない。じゃなけりゃこうして…苦戦なんかしない。」

 

ガキン!

 

センターの斧が上から振り下ろされる。なんとかそれを防ぐクライン。

「そうでしょうね。あなたは、プレイヤーの中では力はある方でしょう。それはレベルを見ればわかります。ですが、私も、あなたも、外に出れば一般人。あの人たちとはちがう無力の人間です。そんなあなたは『どうやって戦いますか?』」

 

ギギギギ

 

武器同士が火花を散らす。

「何が言いたい…。センター。」

「分かっているはずです。理解しているはずです! でないと、また泣かせますよ!」

 

ガキン!

 

斧の重量差に任せてクラインの武器を弾く。これ以上攻撃を喰らえばクラインは負けだ。

クラインは一瞬、センターの目を見る。何が言いたいのか。力とは何か。戦うとはどういう意味か。

 

ザン!

 

地面に斧が突き刺さる。振り下ろされる寸前でクラインが避けたのだ。

「俺は…俺は大事な女性の為に…サラの為に、戦う。それが何の為になるかなんてわからねぇ。でも、俺が強くなくっちゃあいつは…泣いちまう。だから…そうだよな。何にでも強くなくっちゃ、ダメだよな。こんなところでくじけてちゃ、ダメだよな!」

クラインは何かを察したようにセンターを見た。

その顔はなにか吹っ切れたような、清々しい顔となっていた。

「ありがとよセンター。俺は迷っていたようだな。こんな事で怖気付いてたら、ダメだよな。」

笑顔でセンターに笑うクライン。

センターはそれを聞いて武器を下ろした。

「ふふふ。それでいいのです。では、僕はこれで。あぁ、あなたの勝ちでいいですよ。僕は満足しましたから。」

センターはクラインに勝利を渡した。

『WIN! クライン!』

オキの声が会場に響く。

「まてよ! どうしてこんな事を…」

「どうして? 僕はオキさんから言われただけですよ。本気でクラインを鍛えてやってくれっと。あなたは強い。ですが、心はまだ弱い。それがあの人と僕の見解でした。あなたは、サラさんに選ばれました。これからを生きていく以上、あなたは強くなくてはならない。その強さの意味を…はき違えないよう…。」

ニコリとほほえみ去っていくセンター。

その奥ではオキがクラインを見ていた。

「なるほど。あの人の差金だったのか。こりゃ、今後本気で怖気づいてられねーな。」

クラインは頭を書きながら、歩いた。センターと、オキに心から感謝しながら。

 

「すまんな。こういうやり方じゃねーと、発破かけれねーと思ったからよ。」

オキが帰ってきたセンターに飲み物を渡す。

「いえ、久々に私も本気を出せて楽しかったですよ。本当のことを言えば、あなたと戦いたかったですが。」

センターがオキを見た。その目は本気で言っているように見える。

「はん。どいつもこいつも戦闘狂が。」

「あなたに言われたくないですよ。」

クククと笑い、顎でキバオウに合図をする。

「唐突はやり取りやったが、トーナメント第1戦。最後の試合や! 

仲間を信じ、自らの力を信じ、静かに語る背中に男は魅せる! 鬼の隊長! アインス!」

「ふむ。ようやくか。」

ゆっくりと戦いの場に出るアインスは心なしか楽しそうだ。

「対するは…現代に蘇りし誠の正義! 目指すは目の前の強敵! なるか下克上! イケメンサワヤカ副隊長! ソウジ!」

「待ちました。この時を…。」

ソウジが見るは前を歩くアインスの背中。

初めて出会った時からその強さに憧れた。何度も見たその動き。自分にはない力。目標としては完璧だった。

「さぁ。楽しませてくれ。」

アインスがゆっくりと振り向く。その目を見た瞬間、ゾワリとした冷たいものが背筋を走った。

「隊長。僕はここまであなたの背中を見て走ってきました。ですが、届かぬ夢。あなたと僕はちがう。ですが、こうして戦えることを…感謝します。」

「ああ。ソウジとは何度もともに戦ってきた。何度も語り合った。私も、君と戦えて光栄に思う。」

アインスが片手に持つ刀を構えた。

「だからこそ、わたしは本気で君と戦おう。君が望むのであれば。私も望む。その力、見せてくれ。」

中段に構えたアインスのもう片方の手が、ゆっくりと刀へと引き寄せられる。

『隊長、ガチかよ!』

『オキはん。毎度ながらやけど、どういう意味や?』

ソウジも目の位置と同じ高さに、地面と平行にしたカタナを構える。

『オラクルのカタナの持ち方は居合、抜刀。だから基本的に片手もちになる。だが、いま隊長は両手持ちだ。オラクル流ではなく、彼の出身であるラグオル流のな。いままでは片手で持って、もうかたっぽで支える程度だった隊長ががっしりと握ってやがる。』

『つまりは…ガチ?』

『ガチ。』

オキの言葉にコロシアムの全員がアインスに注目する。

「この持ち方をするのは、いつ以来だろうか。」

「ご期待に添えれるよう、善処します。」

冷や汗がたらりと頬を伝う。

すでに戦闘開始の表示が出ている。だが、二人共動かない。

数十秒たっただろうか。ソウジが先に動いた。

「ふぅ!」

「…。」

それに合わせるようにアインスも地面を蹴った。

 

ガキン!

 

二人が重なり、直後に離れる。

『どっちや! どっちがくらった!?』

キバオウが身を乗り出してマイクを持つ。目を細めたオキが静かに言った。

「まじで火が付いたな。隊長。」

最初の一撃は、ソウジがアインスに小さな傷を負わせていた。アインスもソウジに傷を負わせている。

「ほう。」

「…う。」

ゆっくりと振り向いたアインスはそのままもう一度地面を蹴った。

「あああああ!」

ソウジもそれに応えるべく鋭い突きを放った。

「面白い。やはり、面白い!」

アインスの口元が歪み、ソウジへと切り込んだ。

 

 




みなさまごきげんよう。
ペルソナ5が落ち着き、ご無沙汰になっていたPSO2も徐々に復帰している今日この頃。
さて、少しずつですが進めていこうと思うこのSAO。
もうしわけない。時間があまり取れないために以前並に書く事ができません。ご理解とご了承をお願いします。
年明ければ元に戻せそう…。
できればSAO編は年度末までに終わらせたいな。

では次回またお会いしましょう。

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