センターとクラインの対決はセンターの優勢だった。
スピードで勝る上にパワーもある。苦戦モードになっていたクラインはより一層負け越しになっていた。
「クソっ・・・。」
「ふむ。」
ガキン!
センターが斧を振り上げて、クラインのカタナを弾く。
「まず!?」
「でやぁ!」
センターの蹴りが入り、クラインは後方へと吹き飛ばされた。
「ぐうう・・・。」
「クラインさん。あなたは、何のために戦いますか?」
センターが口を開いた。クラインがセンターの目を見る。真剣な眼差しだ。
「強い相手と戦いたい。アイテムが欲しい。お金が欲しい。モテたい。いろいろあります。そんな中で、あなたは、なんのために戦っていますか?」
「そりゃぁ・・・。」
クラインがチラリと自分の後ろを見る。心配そうにこちらを見ている少女が一瞬だけ自分の目にはいる。
「仲間を・・・愛するものを守りたい。そういう方が多いですね。ここの方々は。オキさんがいい例です。あの人は力がある。だから守れる。ではあなたは? 力がありますか?」
センターが地面をけってクラインに近づく。いきなりの急接近。クラインは武器を弾いて逃げるしかできなかった。
「いや、無いな。力はない。じゃなけりゃこうして…苦戦なんかしない。」
ガキン!
センターの斧が上から振り下ろされる。なんとかそれを防ぐクライン。
「そうでしょうね。あなたは、プレイヤーの中では力はある方でしょう。それはレベルを見ればわかります。ですが、私も、あなたも、外に出れば一般人。あの人たちとはちがう無力の人間です。そんなあなたは『どうやって戦いますか?』」
ギギギギ
武器同士が火花を散らす。
「何が言いたい…。センター。」
「分かっているはずです。理解しているはずです! でないと、また泣かせますよ!」
ガキン!
斧の重量差に任せてクラインの武器を弾く。これ以上攻撃を喰らえばクラインは負けだ。
クラインは一瞬、センターの目を見る。何が言いたいのか。力とは何か。戦うとはどういう意味か。
ザン!
地面に斧が突き刺さる。振り下ろされる寸前でクラインが避けたのだ。
「俺は…俺は大事な女性の為に…サラの為に、戦う。それが何の為になるかなんてわからねぇ。でも、俺が強くなくっちゃあいつは…泣いちまう。だから…そうだよな。何にでも強くなくっちゃ、ダメだよな。こんなところでくじけてちゃ、ダメだよな!」
クラインは何かを察したようにセンターを見た。
その顔はなにか吹っ切れたような、清々しい顔となっていた。
「ありがとよセンター。俺は迷っていたようだな。こんな事で怖気付いてたら、ダメだよな。」
笑顔でセンターに笑うクライン。
センターはそれを聞いて武器を下ろした。
「ふふふ。それでいいのです。では、僕はこれで。あぁ、あなたの勝ちでいいですよ。僕は満足しましたから。」
センターはクラインに勝利を渡した。
『WIN! クライン!』
オキの声が会場に響く。
「まてよ! どうしてこんな事を…」
「どうして? 僕はオキさんから言われただけですよ。本気でクラインを鍛えてやってくれっと。あなたは強い。ですが、心はまだ弱い。それがあの人と僕の見解でした。あなたは、サラさんに選ばれました。これからを生きていく以上、あなたは強くなくてはならない。その強さの意味を…はき違えないよう…。」
ニコリとほほえみ去っていくセンター。
その奥ではオキがクラインを見ていた。
「なるほど。あの人の差金だったのか。こりゃ、今後本気で怖気づいてられねーな。」
クラインは頭を書きながら、歩いた。センターと、オキに心から感謝しながら。
「すまんな。こういうやり方じゃねーと、発破かけれねーと思ったからよ。」
オキが帰ってきたセンターに飲み物を渡す。
「いえ、久々に私も本気を出せて楽しかったですよ。本当のことを言えば、あなたと戦いたかったですが。」
センターがオキを見た。その目は本気で言っているように見える。
「はん。どいつもこいつも戦闘狂が。」
「あなたに言われたくないですよ。」
クククと笑い、顎でキバオウに合図をする。
「唐突はやり取りやったが、トーナメント第1戦。最後の試合や!
仲間を信じ、自らの力を信じ、静かに語る背中に男は魅せる! 鬼の隊長! アインス!」
「ふむ。ようやくか。」
ゆっくりと戦いの場に出るアインスは心なしか楽しそうだ。
「対するは…現代に蘇りし誠の正義! 目指すは目の前の強敵! なるか下克上! イケメンサワヤカ副隊長! ソウジ!」
「待ちました。この時を…。」
ソウジが見るは前を歩くアインスの背中。
初めて出会った時からその強さに憧れた。何度も見たその動き。自分にはない力。目標としては完璧だった。
「さぁ。楽しませてくれ。」
アインスがゆっくりと振り向く。その目を見た瞬間、ゾワリとした冷たいものが背筋を走った。
「隊長。僕はここまであなたの背中を見て走ってきました。ですが、届かぬ夢。あなたと僕はちがう。ですが、こうして戦えることを…感謝します。」
「ああ。ソウジとは何度もともに戦ってきた。何度も語り合った。私も、君と戦えて光栄に思う。」
アインスが片手に持つ刀を構えた。
「だからこそ、わたしは本気で君と戦おう。君が望むのであれば。私も望む。その力、見せてくれ。」
中段に構えたアインスのもう片方の手が、ゆっくりと刀へと引き寄せられる。
『隊長、ガチかよ!』
『オキはん。毎度ながらやけど、どういう意味や?』
ソウジも目の位置と同じ高さに、地面と平行にしたカタナを構える。
『オラクルのカタナの持ち方は居合、抜刀。だから基本的に片手もちになる。だが、いま隊長は両手持ちだ。オラクル流ではなく、彼の出身であるラグオル流のな。いままでは片手で持って、もうかたっぽで支える程度だった隊長ががっしりと握ってやがる。』
『つまりは…ガチ?』
『ガチ。』
オキの言葉にコロシアムの全員がアインスに注目する。
「この持ち方をするのは、いつ以来だろうか。」
「ご期待に添えれるよう、善処します。」
冷や汗がたらりと頬を伝う。
すでに戦闘開始の表示が出ている。だが、二人共動かない。
数十秒たっただろうか。ソウジが先に動いた。
「ふぅ!」
「…。」
それに合わせるようにアインスも地面を蹴った。
ガキン!
二人が重なり、直後に離れる。
『どっちや! どっちがくらった!?』
キバオウが身を乗り出してマイクを持つ。目を細めたオキが静かに言った。
「まじで火が付いたな。隊長。」
最初の一撃は、ソウジがアインスに小さな傷を負わせていた。アインスもソウジに傷を負わせている。
「ほう。」
「…う。」
ゆっくりと振り向いたアインスはそのままもう一度地面を蹴った。
「あああああ!」
ソウジもそれに応えるべく鋭い突きを放った。
「面白い。やはり、面白い!」
アインスの口元が歪み、ソウジへと切り込んだ。
みなさまごきげんよう。
ペルソナ5が落ち着き、ご無沙汰になっていたPSO2も徐々に復帰している今日この頃。
さて、少しずつですが進めていこうと思うこのSAO。
もうしわけない。時間があまり取れないために以前並に書く事ができません。ご理解とご了承をお願いします。
年明ければ元に戻せそう…。
できればSAO編は年度末までに終わらせたいな。
では次回またお会いしましょう。