アークス二人の強烈な打ち合いの音が鳴り響く中、控え席では次の対戦者が体を震わせていた。
「あ、あんな後で戦うのかよ・・・。」
クラインはハヤマ、コマチの戦いを見て、その直後に戦い同格、もしくはソレに近い戦いができるかどうかで不安になっていた。
「なにやってるの? クライン?」
様子がおかしいと思ったのか、サラが様子を見に来た。
「サラ・・・。いや、その・・・なんだ。」
「はぁ。しっかりしなさい。あれを見た後じゃあ仕方ないわ。でもね、あれは規格外もいいとこ。あの人たちと同じ動きをしろだなんて思わないわ。あなたのできることをやりなさい。いつも、言ってるでしょう?」
背中を叩くサラ。
「いって。たはは。そうだな。俺の、できることか・・・。」
クラインはじっと二人の動きを見だした。
「全く。世話が焼けるんだから。」
その様子を見て問題ないと思ったのか、サラはその後ろで一息ついた。
「鶴の一声ならぬ、サラの一声ってね。流石です。」
「あなたは・・・。」
笑顔の美青年がそこに立っていた。サラはこの男をどこかで見たことがある。だが、記憶にあまりない。
「私ですよ。ほら。」
アイテム化したお面をつけた。モアイと呼ばれる石造の仮面だ。
「あー! あなた、センター!?」
「普段はこのお面ですからね。あまり覚えていないのも無理はないでしょう。」
「あ? センターか?」
後ろが騒がしいので振り返ったクラインはセンターがいることに気づいた。
「どうも、クラインさん。次の戦い、よろしくお願いします。オキさんからは全力でいけと、言われてますので・・・本気で戦いますね。」
面を外してにこりと微笑むセンター。
「お、おう。こっちも本気で戦うぜ! よろしくな!」
二人が握手するその光景を見ていたサラは、センターからオキ達に近い何かを感じ取ったのを見逃さなかった。
ドン!
「きゃ!」
「なに!?」
急に近くで大きな音が鳴り響いた。
「おおおおお!」
「くっそ! やられるかぁぁ!」
パワーのあるコマチが力技でハヤマを壁際まで追い詰めてきたらしい。
先ほどの音も、コマチが外壁を殴った音だ。
ハヤマとコマチの攻防は一進一退。パワーで勝るコマチが押しに勝っている程度でソコまで変わらない。
二人の決着ももう少しで終わりそうだ。
「おおおおおお!」
コマチが空中高くへと飛び上がる。
「上!?」
コマチは両腕を振り上げ一気に振り下ろした。
ゴン!
コマチの拳が地面を大きく揺らす。
「っぐ・・・え!?」
「まだまだぁぁぁ!」
体をひねり、ジャンプで体ごと回転させもう一度ハンマーを振り下ろした。
ゴン!
「この・・・!」
「おらぁ!」
ガン!
さらにもう一回。コマチの強力なハンマーが振り下ろされる。
「しつけぇぇぇんだよぉぉぉ!」
ハヤマは振り下ろされた両腕に脚を乗せ、コマチ目掛け横一閃を放った。
「っち!」
ギリギリ避けたコマチは距離を取ろうと後ろへと下がる。だが、ハヤマがそれに待ったをかけた。
「させないよ!」
「なに!?」
下がろうとした後方に、ハヤマが既にいたからである。
「グレンテッセンか・・・!」
グレンテッセンによる超スピード移動でハヤマはコマチの移動スピードを上回り先回りを可能にした。
コマチがいる場所は既にハヤマの射程範囲内だ。どのような攻撃が来てもいいように警戒しながら迎撃態勢へと移行する。
「遅い! 秘剣、燕・・・返し!」
ハヤマの素早い斬撃がコマチへと入る。
ザザザン!
三連続、否三回ほぼ同時の剣技が決まり手となった。
『WIN! ハヤマァァァァ!』
「「「ワアアアアア!!!」」」
歓声が上がり、切られ倒れたコマチにハヤマが手を差し伸べた。
「大丈夫かい?」
「ああ。全く、面白いもんもってんなぁ。」
最後のアレのことだろう。ハヤマはこっちに手を振っているシンキを見た。
「アレはシンキが考案した技だよ。せっかくだからっていくつか教えてもらったんだ。『竜より強い燕』だってさ。」
「なんじゃそりゃ。」
クスリと笑うコマチ。
「こまっちゃんだっていくつか教えてもらったでしょう?」
「んあ? ああ。まぁな。」
コマチもいくつかは教えてもらっている絶技。しょっぱなに出した奴もそうだ。
「次。」
「え?」
コマチがぶっきらぼうにいう。
「次はシンキだ。アイツに勝てるか分からんが、まぁがんばれや。」
「・・・おう。」
二人はにこやかに拳を打ち合った。
『続いての対戦カードは・・・。モアイのお面は何を思う。お面の下には甘いマスク! ネタに生きる超残念系美男子! センタァァァ!』
「新しいマスクを新調しました!」
またどこから手に入れたのか、どこのお面なのか分からないお面をつけてきた。
形はハート型のように見える。何より一番目を引くのは見開いた巨大な目。色は青と赤色を主体としており、面の周囲にはとげが付いている。
「それムj・・・モガモガ!」
「俺達は何も知らない。いいね?」
ハヤマが突っ込もうとした矢先に、オキが黙らせる。
『続きまして・・・。愛する相手は数千光年。史上最長の長距離もなんのその! アインクラッド内一番尻にしかれるタイプNo.1! クライン!!!』
「なんだそりゃぁぁぁ!」
クラインの叫びにオキがクスリと笑っていた。
「草生える。」
「あげたのかわからねーけど落としたな。徹底的に。」
「しいてないわよ!」
顔を真っ赤にしながら反論しているサラの言葉は誰も聞いてくれない。
「さてと・・・今回はお面をとってっと。」
センターは持ってきた両手斧を地面に下ろし、お面を取った。
「先ほども言いましたが、今回は本気で戦います。期待はずれだけは・・・まぁ此処まで来たあなたなら大丈夫か・・・。」
「あ? ま、まぁよろしくな。」
『さぁカウントダウンや!』
頭上の数字のカウントダウンが始まる。
クラインはカタナをセンターに向ける。にこやかに微笑むセンター。クラインは以前からのセンターの戦いぶりを思い出していた。
それにあわせてオキの解説が始まった。
『いままで何度かセンターと戦った奴は知ってると思うが、センターはパワーのある両手斧で一撃必殺の完全脳筋ビルドだ。だからソレを上回るスピードの出せるカタナを持ったクラインのほうが逃げながら切っていけば勝ち目がある・・・』
0!
『・・・ように見えるだろう?』
開始と同時に予想に反したことが起きた。
「ところがギッチョン!」
猛スピードで駆け出したのはセンターだった。
「はやっ!?」
「せい!」
ドォン!
その場で急ブレーキをかけたセンターはスピードの勢いをそのままに斧を上に振り回し、クラインのいた地面へとたたきつけた。
「外したかぁ・・・。」
「ななな・・・。」
何とか避けたクラインは目を丸くしている。
『アイツはな。一撃は一撃でも、スピードと斧の重さを利用したスピードタイプの珍しい型の使い手だ。これを知ってんのは極わずかだろうな。スピードは多分ほぼ互角。さぁどう戦うかが見ものだね。』
「驚きました? これが私の本気モード。普段は、パワータイプに見せてますけどね。」
「な、なんで・・・。」
「どうして隠しているのかって?」
にこやかに微笑むセンター。再び地面を蹴ってクラインへと襲い掛かる。
「元々、ソロで戦っていたときからこの戦い方をしていました。」
「っく!」
ギャリン!
ズシャァァァ・・・
今度は避けれないと読んだクラインはカタナで防御する。
「クソ・・・。」
防御の上からパワーで吹き飛ばされたクラインは何とかその場で踏みとどまった。
「あの日、オキさんと出会ってから暫くはオキさんとシリカさんと共に動いてました。その時に言われたんですよ。」
『その動きするのはいいが・・・。回り巻き込むと厄介だな。その場で斧振り回せる戦い方も覚えろ。』
『つ、つまり・・・。』
『そ、あいつの戦い方は走ってぶん回して逃げるヒット&ウェイだが、スピードを生かせない狭い場所や仲間の多いところでの共同戦闘では活かせない。だから斧の普通の戦い方を伝授した。』
「いやぁ。オキさんと出会うまではソロを貫くつもりだったんですが、面白いくらいにお話が合いまして、結果付いていくことになってからはこの戦い方を封印していたんです。まぁたまにオキさんとかと手合わせするときは、いろいろ教えてもらいましたが。」
普段から開いているのか閉じているのか分からない細目から少しだけ瞳が見える微笑み方をするセンター。
「やはり私はこちらの戦い方の方が好きですね。さぁ、いきますよ!」
「くそ! 俺だって負けられね―んだ! うおおおお!」
クラインは両手に握った刀を構え、走ってくるセンター目掛け、飛び上がり上空から切りかかった。
みなさまごきげんよう。
ペルソナ5、1周目が終わりました…。123時間かかったぞ。
なげーよ! 面白すぎだろ! フタバ可愛すぎ!
で、今週もあまり進まない小説。申し訳ない。
来週から来月にかけて仕事の関係でうまく書ける時間があるかどうかがわからなくなってきました。
お休みする場合は毎度のことながら活動報告にてお知らせいたしますのでそちらをご覧くだださい。
では次回にまたお会い致しましょう。