コロシアムの歓声を受けながら、二人の武器は何度も交差し合っていた。
「はぁ!」
「やっ!」
オキ、シリカの武器はアーク’sで揃えた低レベルの武器である。双方握っているのは同ランクの武器。普段とは違うものである。武器の強さで差をなくすためだ。
『さすがイレギュラーズのリーダー! 小回りのきくダガーもなんのその! 綺麗にその槍で受け流し、攻撃を捌ききっとる! せやけど、そんな男を相手に劣勢なれど打ち合いがまだ続いとる! 長年付き添って共に歩んできただけはあるシリカはんも譲らん状態や!』
キバオウの実況は今日もキレキレである。
オキの攻撃は本気で打っている。だが、長年共にその背中、その横を見てきたシリカはオキの癖を知っている。だからこそ、その隙がつけるのだ。
「ハハハ! こりゃ楽しいわ! やるじゃねぇか!」
「笑っていられますか!? オキさん!」
獲物はオキのほうが長いが、素早いシリカはその懐に潜り、小回りのきくダガーでオキを相手した。
とはいえ、シリカは劣勢である。相手が相手だ。勝てる勝負ではない。だが、本人は本気で勝ちに行く気持ちで戦っていた。それが愛した人の、相手をしている男の願いだから。
「やぁぁぁ!」
一度槍を切り上げ、防御をさせたシリカは素早く側面へと移動し、足元を狙った。
「あめぇ!」
「あぅ!?」
動きを読めるのはシリカだけじゃない。オキも同様だ。防御した槍を素早く側面へと展開。足への攻撃を防いだ直後に、体を反らせてシリカへと蹴りを放った。
「っ!」
シリカは空中へとジャンプし、オキの蹴り出した足の裏へと飛び乗った。
「っふぅ!」
「!?」
ズシャァァァァ!
『『『オオオオ!?』』
シリカのとんでもない回避でコロシアムの観客達は大興奮だった。
『なーんということや! オキはんの攻撃を利用してもんのすごい回避をしたシリカはん! 会場は大興奮やで!』
「なかなかやるやん。さすが俺と一緒にいただけはあるな。ちぃと驚いたが。」
「オキさんだって・・・。流石です・・・。」
息の上がっているシリカに対し、オキは全く余裕だ。そもそも本気状態でない事からシリカは改めて実感する。
『オキさん…。やっぱりすごいです。』
「さぁて、そろそろ終わらせるかな。」
オキが中腰で槍を構える。シリカは理解した。得意の一撃必中のアレが来る。
ならばそれを避け、こちらはカウンターを仕掛ける。シリカはオキの動いを予想する。
自分のHPはもう少ない。ここで喰らうわけには行かない。
「…っふ!」
地面をけって、素早くシリカへと近づいたオキはそのままシリカの短剣を弾く。
直後に背後をとって、頭上から槍を振り下ろした。
「せいぁ!」
「させない!」
ギィン!
『ォオオ!?』
一部の観客がその勢いに釣られて立ち上がる。
頭上からの攻撃を防いだシリカだが、下方は無防備となっている。
「っ!?」
「へへ。わりぃな。」
ガキィン!
「ゲイ・ボルクっと言いたいとこだが、武器が違うんでな。」
『オキ WIN!』
空中に大きな文字が現れる。
「はぁ…はぁ…。やっぱりオキさんは強いです。」
膝をついていたシリカがゆっくりと立ち上がり、オキにニコリと微笑んだ。
「なーに。シリカも強かったぞ。俺は楽しかった!」
『けっちゃくううう! やはり強い! さすがオキはん! 勝者、イレギュラーズ、オキ! みんな! ともに戦い、善戦したシリカはんとともに、大きな歓声をあげぇやぁぁぁ!』
『『『ワァァァァ!』』』
盛大な歓声の中、二人は手をつないで退場した。
みなさまごきげんよう。時間があまりなく、今回は(も)少なめ。
一体いつになったらこの忙しい毎日が落ち着くのやら。。。
さて、今回からコロシアム編に入りました。メインであるオキやアークスたちの戦いをメインに書いていくつもりなので、一部戦いは大雑把に書いていきますね。
では次回をお楽しみに。