「オオオオオオオオオオ!」
ボスの叫び声がボス部屋の中に響き渡る。
ビリビリと響く空気をものともせず、次の行動を予測し武器を構えるアークス陣。
「隊長…指揮頼める?」
「りょうかい。」
少しずつ後ろに下がり後衛のプレイヤー達の下へ向かうアインスを確認し、オキが先陣を切る。
「いくぞ!」
武器を装備しなおしたオキは片手剣を振り下げ、ハヤマ達と共にボスへの攻撃を再開する。
「オオオオ!」
再び攻撃を開始してきた為、ボスもそれに反応し武器を振り上げる。
後ろに下がり切ったアインスは指揮者を探した。
「この中で指揮をしていた者はいるか?」
「私だ。援軍感謝する。ディアベルだ。」
「アインスだ。あの者達からは隊長と呼ばれている。握手をしたいが今はそれどころじゃないから、あとでいいかい?」
「もちろんさ。」
二人して前線でボスを足止めしているアークス達を見ながらニヤリと笑う。
「よろしければ私も指揮に参加しよう。オキ君から任されたのでね。」
「もしやあなたもイレギュラーズなのか?」
「…いっている意味がよくわからないが、彼らと同じだと言っておこう。」
なるほどとつぶやき、ディアベルは息を吸い込み叫んだ。
「よし! これより指揮をアインス隊長に任せる! 我々もイレギュラーズに負けない勢いで支援するぞ!」
「「「おおお!」」」
周囲で再び攻撃を今か今かと待っていたプレイヤー達の意気が上がる。ボスはアークス達により完全に囲まれ、一人を狙えば残りから袋叩きにあう状態になっていた。
HPは1/4を削った状態だ。アインスがボスをじっと見つめる。様子をうかがう為だ。
周囲ではお供としてポップした雑魚を殲滅する部隊も善戦し、今や残り1匹だけとなっていた。
「これでおわりや!」
ライトエフェクトを輝かせ持っている片手剣を振りおろし最後の一匹を倒し終わるキバオウ。それにディアベルが合流した。
「ご苦労様。キバオウ君。君たちのおかげでボスが完全にイレギュラーズの料理になってるよ。」
息を切らしながらガッツポーズを取る雑魚殲滅部隊。
「っは! ワイらに掛かればこんなもんや。やけどあれに突っ込むほどワイも馬鹿じゃない。思った以上にきついな。」
「ああ。イレギュラーズ…アークスの彼らがいなかったらこんなに簡単にはいかなかっただろう。君たちは一度後ろに下がって回復等の支援を受けてくれ。残ったメンバーは再びボスへの攻撃を開始する!」
「ディアベルはん…無茶するんやないで。」
キバオウの目は完全に信頼した目をしていた。ディアベルもそれに笑い了解とキバオウに伝えると他のプレイヤー達と共にボスの攻撃に参加する為駆けだした。
「ハヤマん!」
「あいよお!」
ボスが振り上げた野太刀はハヤマを狙い両手による全力で振り下ろされた。だがアークスによる反射神経はそれを簡単に避ける。
「よし、他のプレイヤーは攻撃後の隙をついて攻撃! 武器が光ったらアークス以外は全力で後退! アークス各員はSSを避け衝撃を受けた後にヘイトを取れ!」
アインスの指揮が響き渡る。ボスのHPは半分を切り始める。
「オオオオオオオオオオオ!!」
「赤くなった!?」
「態勢変化だ! さらに変わるぞ! 敵の攻撃を見極めしっかり避けろ! アークスは最悪の場合プレイヤーを蹴って吹き飛ばしてでも守りきれ!」
「あいよー! ほれこっちだ馬鹿牛!」
コマチがヘイトを取っており、後方にプレイヤーが側面にはアークス達が陣取っている。オキのSSがボスの膝に当て、ヘイトがオキに変わる。
「オキ君! ヘイトがそっちに向いたぞ! プレイヤー達は位置を変えて再びボスの後ろから…いや! 武器が光ったぞ! 後退だ!」
ボスが両手に握る野太刀を横向きに構え力を入れる。武器は光出し即死級の攻撃を持つ「一刀両断」の予兆だ。
「SS来るぞ! 撤退!撤退!」
前衛で各プレイヤーに指揮をしていたディアベルも走って後ろに下がる。
アークス達は振り回された野太刀を目で追い、しゃがんで避ける。後から来る衝撃破もしっかり武器で防いだ。
「隙が出来たぞ! 全力攻撃! 削り取れ!」
「なのだー!」
一番瞬発力の高いミケのSSから振りの遅いコマチまで4人のアークスによるSSと後方からのプレイヤー達からの全力攻撃によりHPはあとわずかだ。
「HPがほぼなくなったぞ! 油断せず隙を付け!」
「うおおおおおおおお!」
SS攻撃でスキルストップの掛ったプレイヤー達。再度動き出した際に一番に動いたのはディアベルとキリトだった。
「いくぞキリト君!」
「ああ! これで決めてやる!」
二人のSSが炸裂する。その攻撃によりボスはピタリと止まり次の瞬間ポリゴン片となり勢いよく砕け散った。
「…おわった…のか?」
「フラグ乙」
オキの言葉にボケるコマチ。
「いや、クエストクリアって出てるから。」
「みんなおつかれさまなのだー!」
しっかりツッコミをいれるハヤマにぴょんぴょん飛び跳ね喜ぶミケ。プレイヤー達も安堵の表情を浮かべたり、床に座り込んで息を切らしていたり、ガッツポーズを決め合ったりしていた。
「さすがだよ。イレギュラーズのみなさん…。」
早速タバコに火を点け吸い始めるオキ達に近づくディアベルとキリト。
「オキ達がいなかったら間違いなく無理だった。できても、かなりの犠牲があっただろう。」
「いや、俺もさっきは冷や汗かいた。油断はできない。あんたらプレイヤー達の協力あってこそだ。」
そこにアインス、サラ、キバオウ等のプレイヤー達も近づく。
「オキ君。あれ反省点だね。無茶しすぎだよ。」
「本当よ。まぁ無事でよかったわ。」
「イレギュラーズの皆はん。ワイらだけだったらいつまでかかっていた事かわからへん。これからもよろしゅうたのめるか?」
「おれらからも頼む!」
「私も!」
「僕もだ!」
アークスは顔をみあわせ頷いた。
「こちらからもよろしく頼む。」
オキが代表してディアベルと握手を交わす。そして歓声があがった。
「ところでこのラストアタックボーナスってなんだ?」
ディアベルがプレイヤー達の無事を確認している最中に、オキが先ほどのクエストレコードを確認した際に気づいた。
「ああ、それか。ボスに対してとどめを刺したプレイヤーがもらえるボーナスの事で、特殊なレアアイテムがもらえるんだ。今回は俺だったみたいだな。中身は防具か。」
キリトが説明つつ、手に入れた防具を装備した。
「ほう…。」
「似合うね。キリト君。」
黒いコートで、キリトに何故か似合うと思ってしまった。たぶんだが黒い色が似合うのだろう。アスナも気に入ったらしい。
「性能もなかなか。いいね。でもこれ、オキさんに渡したいんだけど。やっぱ一番活躍してたし、なによりMVPとってる。」
キリトはすぐにそれを自分が元々装備していた防具に戻し、オキに渡そうとした。
レコードには確かにオキがMVPになっている。
「いいよ。キリトがつかんだものだ。これからも俺たちの事は気にせずガンガン攻めてくれ。レア品も自分が拾ったなら自分で使うといい。これからはプレイヤー達にも強くなって貰わないとね。」
オキは受け取らず、キリトはしぶしぶだが再びコートを装備した。
「さって、上に上がるか。ここからはしっかりとレベルや装備を準備して…。」
オキが上に上がる階段の方向を向いた瞬間、後ろからドタバタと騒がしい声が聞こえてきた。
「うおおお!? 間に合わなかったのか! キリトー! オキー! いるかー!?」
「クライン!?」
声の主はクラインだった。どうやら全力で迷宮区を走って抜けてきたらしく、息を切らせている。
「はぁ…はぁ。お前たちがボス攻略に向かったって情報屋から聞いて走ってきたんだ。…まぁ、間に合わなかったようだが。無事でなにより。ふぃー。」
その場に座り込むクライン。どうやら情報を聞きつけ、援軍に来てくれたらしい。
「クライン。ありがとう。でも大丈夫だ。犠牲は一人も出ていない。」
オキはクラインに握手を求めた。クラインはニカっと笑いそれを受ける。
「そうか、よかった。しかしなんだ。思ったより早く攻略を進めてたんだ…なってうぉ!?」
「え? なに!?」
周囲を見渡したクラインがサラを見て驚いた。いきなり驚かれたサラも目を丸くして驚いている。
「あ、いや、こんなきれいなお嬢さんも参加してるとは思ってなかったもんで…っていや、なんでもねぇ…。」
思いっきり本音が出ている。
「きれいって…ありがと。でもいきなりのナンパはごめんよ。」
顔を赤くしながら後ろを向くサラ。オキ達はそれをみてにやけていた。
「なによ! そんなににやけて!」
「いんやぁ? なぁ。」
「うむ。なにも無かった。いいね。」
「あ、はい。」
「なのかー?」
オキ、ハヤマ、コマチ、ミケはそのやり取りをみて囃している。サラも余計につんけんしていた。
「はっはっは。さて、上の階をアクティベートしようか。ああ、オキさん達に説明すると上の階段を上がると目の前がすぐにその階層の拠点になっている。そこと1層の中央広場にある転送門を繋げることを言うんだ。さぁみんな! 上に上がったら1層のみんなに教えてやろう! イレギュラーズが早速1層突破したとな!」
「「「おお!」」」
プレイヤー達はこの勢いに乗る様に走って階段を昇って行った。オキ達もそれを見ながら歩いて階段を昇って行った。
ディアベル生存、綺麗なキバオウ、キリトがビーターと呼ばれない世界。
こういうのもいいよね。
アクションシーンの文書力をあげたいです…
ここから先は一気に中層区域へ駆け上ります。