SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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とうとう90層を突破したオキ達。そんなラストスパートをかけるSAOの外、アークスシップでの1ページ。



第63話 「寄せる想いと待つ思い」

オラクル船団のアークスシップの一つ。惑星スレアの周囲を回る衛星の真横に待機していた。

その中にある病室の一室にてマトイは今日もオキの部屋で彼の帰りを待っていた。

「うーん。はぁ。」

背伸びをして、モニターの画面を閉じた。今日も画面の中ではあの人の元気に暴れまわる姿を見れた。それだけでも安心だ。

目の前に眠るその人、オキに微笑んだ。

「今日も元気だったね。あと少しで100層。もう少しだから、頑張って。」

間違いなく聞こえていない。それでもマトイは話しかけた。自己満足だが、それでもよかった。

近くには小さな小さな可愛らしい少女がカビンに入った花の水を入れ替えてきたのか、元あったテーブルの上に乗せていた。

「早く、帰ってきて欲しいね。アオイちゃん。」

小さな少女はオキのサポートパートナーだ。8000番台No.8620系統のサポートパートナー。名を『アオイ』という。小人のような大きさの彼女をみてマトイはいった。

黒く長い綺麗な髪、正反対の白く透き通った肌、ロレットベルディアを彼女に似合う服に改良したロング服を身に纏い、服には彼女の番号である『8620』の番号が打たれていた。

「はい。マトイ様をはじめ、多数の方々がマスターのお帰りをお待ちしております。ワタクシも含め・・・。その思いにワタクシも同感でございます。ですが、既に90層を超えられました。後もう暫くの辛抱でございますよ。マトイ様。」

自分のご主人である、オキをじっと見つめ、その後マトイに微笑んだ。

「アオイは、強いんだね。」

マトイはアオイの頭を撫でた。

「あ、いえ、そんな・・・。ワタクシは強くなんかございません。マスターの帰りをただ待ち望む一つのサポートパートナー。それだけでございます。」

アオイの言葉にマトイが首を振る。

「ううん。やっぱりアオイは強いよ。私は・・・モニター越しとはいえ元気な姿が見れるのは嬉しいけど、実際にオキの体験した、いろんなお話をその声で、実際に聞きたいなぁ。」

マトイがオキの手の上に自分の手を置こうとしたときだった。

「随分寂しそうな顔してるね。」

「ひゃう!」

びくっと体を震わせ、声のした方をみた。マトイの振り向く首からは、まるで壊れかけた機械音のしそうな動きだった。病室の扉がいつの間にか開いており、そこにいたのは美しい顔立ちで少し小柄な身体。銀色のショートの髪。なにより目を引くのは背中に生えた(ように見える)白くて綺麗な翼をもった者だった。

「あ、クロちゃん。びっくりしたー。」

「すまない、驚かすつもりはなかった。それと、ボクのことはクロノスがいいっていつも言っているだろう。こんにちは、アオイ。失礼するよ。」

クロノス。アークスの一人。オキがつれてきた。はじめはオキ達になじまなかったが、次第に心開き今では信頼を寄せる大事な仲間の一人だ。中に入ってきた彼女はアオイへの挨拶を済ませて、マトイのすぐそばへと近づいた。

「全く。こんなにも人を心配させておいて。早く帰って来い。馬鹿リーダー。」

ペシっと軽くオキの額を叩いたクロノス。マトイは苦笑するしかなかった。

その直後にまた病室の扉が開いた。

「あー。いたいたー。」

「先に行くとは、卑怯だぞ! 貴様!」

「まぁ、遅れたのは俺達のせいだったから・・・。」

クーナ(アイドル状態)とクラリスクレイス。そしてイオが病室へと入ってきた。

「皆!」

「そういえばついてきてたんだった。すまない、あまりに遅かったから気付かなかった。」

少しだけ微笑みながら言うクロノス。傍から見ればそれは煽りにしか聞こえない。だが、このメンバーからすればソレは別のものに見えるのだ。

「はん! 何を言っている。貴様はこいつのところにくるのが単に楽しみだっただけだろう? 隠しても無駄だ! 私には分かる!」

「・・・どうしてだい?」

目をピクリと動かすクロノス。クラリスクレイスは腰に手を当てて、えらそうに続けた。

「私や貴様達は、『同じだ!』と、ヒューイやマリアが言ってたぞ? 私と同じという事は、貴様も楽しみにしていたという事だな!」

ドヤ顔で言うクラリスクレイス。その言葉に反感したのはクロノスだけではなかった。

「…何故、そう思う?」

「ちょっと! どうしてマトイやイオならともかく、私まで入ってるのよ!」

クーナだった。

「ん? 違うのか?」

首をかしげるクラリスクレイス。クーナは顔が真っ赤だ。

「まぁまぁ。」

苦笑しながらマトイはその場を宥めた。

「・・・ふぅ。全く、この人には恩があるだけ。ただそれだけよ。」

ため息をつきながら言ったクーナの言葉に、キョトンとしたクラリスクレイスはニッコリと笑った。

「なんだ! 一緒じゃないか。私だって、この人には恩がある。私を救ってくれた・・・恩が、ある。」

3代目クラリスクレイス。かつてはルーサーの傀儡として、その心を操られていた。

彼女はあの日のことを思い出す。

自らのクローンとして多数出現した「私」を見た。怖かった。

いっぱいの「私」。知らない事、教えてくれないクラリッサ。目の前が真っ暗になった。

『リズ!』

その時、光が見えた。一瞬だけ。でも力強く。だから私はそれに手を伸ばした。暖かく、そして心地よく。

その名で呼ぶのは一人しかいない。私の名前が長いからと、略して呼ぶのはたった一人。だから私は、呼んだ。

「助けて・・・オキ・・・。」

その人は私の命を救ってくれた。私を優しく包んでくれた。

その後も、自分もそのクローンの一人で、ただ性能がよくって選ばれた「一体」なのが「私」だと知って落ち込んでいたときも、助けてくれた。作られた私を「私」だと言ってくれた。

『クローン? 作られた存在? 知るかボケ。お前はおまえだ。おまえはお前だ!大事なことだから2度言ったぞ! お前は、俺のしっているクソ生意気で、ソレでいてバカで、それでもほっとけない。周りを笑顔にしようと必死に頑張っている、努力しているリズだ! 他のクローンがクラリスクレイスだろうと。俺がリズと呼ぶただ一人はお前だ! ヒューイもいったろ? あれはお前のそっくりさんだと。』

ヒューイと二人で笑いあうその姿をみて、悩んでいたのがなんだかバカらしくなっていた。

「私はオキにその恩を返さないといけない。ヒューイも言っていた。『貰った恩は、一生かけてでも返さないといけないな!』とな! 今がその時。私は、オキがいない此処を、オキが大好きなこの場所を必ず守る。帰ってきても変わってないように。」

オキを見ながら微笑むクラリスクレイス。ソレをクーナがじっと見つめた。

「あなた・・・変わったわね。」

「こいつのおかげだ!」

ニカっと笑うクラリスクレイス。

「そこまで大きな恩・・・ではないけど、俺も先輩にはいっぱいお世話になったからな。そういわれると、一緒なのかな?」

イオがボソリと呟いた。ソレを聞いたクラリスクレイスは顔を輝かせながらイオの肩を叩いた。

「そうだろそうだろ!」

「いい、痛いってば。」

イオはそういいながら以前起きたことを思い返す。

イオはアークスとなって日がまだ浅い。オキ達がアークスになってからそんなに離れていない時期になった為、実はオキ達とは殆ど変わりは無い。だが、オキ達は元々から持っていたセンスやフォトンを扱う技量が桁違いだった為に差の広がり方も桁違いだった。

そんなオキ達を『先輩』と慕い、その背中を追いかけるイオはアークス生り立ての頃にオキ達によって命を助けられたことがある。

惑星ナベリウス、凍土エリア。彼女はそこで遭難していた。力をつけたい。先輩達の小さな力でもいいから、なりたいと思い、ナビゲーターの人に無理を言って普段よりも奥地へと向かったのだが、運が悪く当日の天候は猛吹雪。挙句、通信機の故障によりイオは遭難した。何とか洞窟に逃げ込むも吹雪は何日も止む気配が無く、非常用の食料も底をつきかけた。イオは元々他人とのコミュニケーションはあまり取れないほうだ。

彼女を助けるべく、自分の命まではって助けに来るものはいないだろう。そう思いつつ孤独を感じたときだった。

「イオー! どこだー! へんじしろー!」

はじめは幻聴かと思った。だが、その幻聴は次第に大きくなる。イオは力を振り絞り、自分の持っている弓を精一杯の力で引き、PA『シャープボマー』を雪で埋まった入り口へと放った。

崩れた入り口からオキが現れ、イオの記憶はそこで途絶えている。

気が付いた頃には彼とその仲間達が乗るキャンプシップで帰宅途中だった。

「先輩・・・なんで俺なんかの為に・・・。」

オキは雪で真っ白けだった。普段はフォトンで守られる身体だが、ソレすらも意味が無くなる猛吹雪。下手をすればオキの命まで危うかった。ソレなのに、数度出会い、少しだけしゃべり、一回だけは一緒に食事もしただけだ。そんな自分を助けに来てくれた。その理由をイオは知りたかった。

「馬鹿。一緒に飯くったろ。だったらそれだけで守る必要のある仲間だという事だ。」

「その話、聞いたことがある。確か、かなりの吹雪だったって。」

マトイの言葉にクーナはコンソールを操作し始めた。

「えーっと? あった。これね。えーっとどれどれ? うわ・・・これ本当? この日の凍土エリアの風速、過去最大じゃない。アークスへの出撃も規制されてるし。」

呆れながらクーナがその情報を見た。

「オキは『大事な仲間がナベリウスで遭難したからちょっと行って来る』って。私とお話していたときだったから覚えてる」

マトイがその時のオキの言葉を真似て言った。イオはその言葉に顔を赤くした。

「だ、大事な仲間だなんて・・・。俺なんかが・・・。」

「その言葉通りだと思う。実際、ボクもそんな感じだった。」

クロノスが微笑みながらイオに言った。

「ワタクシもその時の事を覚えていてございます。何せ、帰ってこられたマスターの全身雪だらけときたら・・・。」

クスリとアオイが微笑む。

「にしても、ちょっといってくるって・・・。この環境にちょっと行ってこれる場所じゃないわね。・・・とはいえ、私の時もそんな感じだったかな。ハドレッドとの時も。」

クーナは少しだけ寂しそうな、それでも嬉しそうな顔でボソリと呟いた。そして次の瞬間にはクロノスを見て笑顔で質問を投げた。

「そういえば、クロちゃんはどうやってオキと出会ったの? そんなかんじだったーって今言ってたけど。」

「だからクロノスと呼んでほしい。ボクは……オキ達と二度戦った。」

「ええ!?」

「なんだと!?」

「フフ・・・。」

クロノスの言葉に驚くクーナとクラリスクレイス。マトイはクスリと微笑んだ。どうやら話を聞いているらしい。

「初めてオキに出会ったとき、ボクは何に対しても無関心だった。」

惑星リリーパ。採掘場跡地。当時は新たに見つかったエリアで、挙句その日は大量のダーカーが出現した異常な日だった。

偶然、調査依頼で来ていたクロノス。通信も殆ど繋がらない状態で、ようやく得た緊急の脱出ポータルへの情報を最後にその場へと向かっていた。

「はぁ、今日も全くついてない」

そうボヤキながらもクロノスは目の前に現れたダーカーを倒しつつ、地図を確認しながら進む。

その時に、地図しか目にいっていなかった為に建物の影から走ってきた一人の男に気づかなかった。

「うわっ!?」

「おっと!」

それがオキとの出会いだった。それぞれが持っている武器を互いに向け合う。状況が状況であったが為に仕方ないとはいえ、彼との出会いはソレだった。

オキとの出会いの後、半ば強引にオキの仲間を探す手伝いをすることに。はじめは全く乗る気じゃなかった。

だが、道中で彼が探しているという仲間を思う気持ちと、心配しつつも必ず大丈夫と言い切るほどの信頼。

クロノス自身とは正反対の性格と状況。彼と何が違うのか。クロノスは初めて興味がわいたのだ。

仲間を見つけ、共に戦った仲として感謝の言葉を言われ、礼をしたいといわれた。だから、お願いした。

「ボクとここで、戦って欲しい。」

「ええ? クロとオキって戦ったことあったの!?」

「聞いてないぞ!? そんな事!」

クーナとクラリスクレイスが大声を上げる。イオも驚いた顔をしていた。

「知らなくて当然。ボクがオキと戦ったことは本来、秘密だったから。」

アークス同士の戦闘は基本禁止されているようなものだ。めったなことが無い限り、アークス同士で戦うことは無い。クロノスはもう少しのところで自分の興味がわきそうなものに手が届きそうなのだ。

「分かった。」

ダメ元でお願いした事だったが、まさか了承されるとは思っていなかった。

「ちょっとオキさん!」

探していた仲間であるハヤマという男がオキに対して反感の意があるようだ。それもそうだろう。なにせ禁止行為をお願いしたのだから。だがその後に続いた言葉はクロノスの予想に反していた。

「セコい! 俺も戦いたいのに!」

クロノスは目を丸くした。さっきまで大量のダーカーと戦い、大型エネミーとも何度も戦ったその男はボロボロの状態だ。戦えるとは思えない。そんな彼が言った言葉は自分も戦ってみたいという言葉。

「ワシも戦ってみたいぞ。」

もう一人の丸いメガネにカテドラルスーツを着た少し中年風に見える男性もタバコを吸いながら手を上げた。

『なんなんだ、この人たちは…!?』

オキはその神父っぽい男ににこやかに言った。

「コマッチー・・・座ってろ。」

「はい。」

ショボンとした顔で正座する男。すこしだけクスリと笑ってしまった自分がいる。

「相変わらずの戦闘バカ共・・・。」

クーナは呆れた顔でオキを見た。クラリスクレイスはというと

「私もコイツとは戦ったぞ! どうだ? 強かったか? 私は負けてしまったが、半分の半分の、半分の半分の半分の力だったら、負けなかっただろうな!」

意気揚々と語っていた。彼女も戦技大会でオキと戦っている。ちなみに勝ったのはオキとハヤマだった。

「もう一人いたわね・・・バカ。」

「あ、あははは。」

クーナが肩を落とし、イオは笑うしか出来ない。

「あぁ、強かった。」

「あああぁぁぁ!」

「せやぁぁぁぁ!」

オキの武器と、クロノスの武器がぶつかり合い火花を散らした。

二人とも息を絶え絶えにしながら戦っている。ハヤマは時間を気にしていた。

そして・・・。

「ストップ! そこまで! これ以上は後が怖いよ!」

オキが提案したのは20分間だけ全力で戦う。それ以上は後からオペレーターに雷を落とされる危険があるからだ。

「はぁ・・・はぁ・・・。つよい・・・。」

「ちぃ・・・。どっちが・・・。」

その場に座り込んだクロノスと、その場に寝転んだオキ。

「どうだ。見つけたいもの。みつかりそうか?」

「ん?……少しだけ、見えた気がする。」

クロノスは結局それが何なのかを確証することが出来なかった。だが、彼との戦いのおかげで少しだけ、何かに興味が持てそうな気がした。今まで何に対しても無関心だった自分が、何かに興味を持った。それだけでも十分だった。

「それじゃ、ボクは行くとするよ。邪魔したね。」

「おい、どこに行くんだよ。」

立ち去ろうとしたクロノスはオキに呼び止められた。

振り向いたクロノスに対してオキは変な顔をしていた。

「どうした? クラバーダがクレイジースマッシュ食らったような顔して。」

クラバーダ。水棲ダーカーの一種。蟹のような姿をしている。

クレイジースマッシュ。ランチャーのPAでランチャーの重さ全てを乗せて思い切りランチャーを振り、相手を吹き飛ばす技だ。

「いや…ボクはキミと戦った。それなのに何故、ボクを引きとめる?」

「ああ、それで?」

オキはタバコに火をつけて吸い出した。

「迷惑をかけた。それでも…?」

「ソレがどうした。俺は楽しかった。」

微笑むオキ。

「ボクは・・・。」

「おいおい。そんなに俺たちに嫌われたいのか? 嫌って欲しいなら嫌いだから近寄らないでって言えばいいじゃねーか。別に俺はそれでも・・・。」

「違う!」

クロノスはオキの言葉を大きな声でさえぎった。その言葉にオキは黙り込む。

「…すまない。」

「いや? いいさ。そうじゃないならなぜ、立ち去ろうとした。その理由を教えてくれ。それとも大事な用事でもあったか? じゃ無いなら一緒に帰ろうぜ。せっかくだ。飯でもどうよ。おごるよ。いい店知ってんだ。」

にこやかに笑うオキ。その時クロノスは思った。

『この人についていけば。もしかしたら何かが分かるかもしれない。』

その後、キャンプシップでアークスシップに帰還したオキ達だったが、出入り口の真正面ににこやかに仁王立ちするコフィーさんに止められた。アークスシップでのクエストカウンターにて受付譲をしている彼女だが、アークス達のクエストの取りまとめをしている人でもある。

「おかえりなさい。オキさん・・・?」

「げっ・・・。お、おつかれさまっす。」

どうみても歓迎している雰囲気ではない。それもそうだろう。なにせ禁止されているアークス同士での戦闘を行ったのだから。

「何か言い分があれば聞きましょう・・・。なぜ、あの場所で戦闘行為をおこなったのかを。さすがの今回は許されませんよ。」

完全に青筋が出ている。この人たちはいつもこうなのだろうか。とはいえ、今回は自分が原因だ。この人たちが悪いわけじゃない。そう思いながらクロノスは事情を話そうとした。

「実は・・・。」

「・・・いやー。お恥ずかしながら誤ってとはいえ、この子の胸揉んじゃって・・・。」

オキが急に変なことを言い出した。その場にいた全員の目が点になった。

「はじめは男の子だとおもうじゃん? これだけすらっとしてんだ。見間違うさ。そんでもってちょっと事件があってねぇ。誤って胸揉んじゃったわけよ。服がだぼっとしてるから、見た目は分からなかったけど、思ったより柔らかかったから。そんでつい、『小さい』って連呼しちゃって。」

なははと笑い、コフィーはソレをみて呆れていた。ローブのような礼装を着る彼女は確かに身体のラインは服のせいで見えない。それでいて中性な顔立ちというのもあり、男性にも女性にも見える。

「・・・はぁ。今回は見逃します。次はありませんよ。」

ギロリとオキを睨んだコフィーはその場を去っていった。

「何故、ボクのことをかばった?」

「んー? まぁな。こうすりゃ、俺も必要以上に怒られずにすむ。ま、次は無いみたいだから二度と使えない手になっちまったが。」

「その後、皆でおいしい焼き鳥屋行っていっぱい食べたな。」

「楽しそうで何より。」

クーナは両手を広げて呆れている。

「その後は今の通り。ボクの数少ない落ち着ける場所を作ってくれた。ここは今ボクが在るべき場所。彼に出会わなければボクはずっと一人で過ごしていたに違いない。」

オキの顔を見るクロノス。

「…そう此処のマスター、オキに。彼らがあっちへ向かったとき、ボクは誓った。彼らが戻ってくるまで、此処を守りきるって。あの人が大事にするこの場所を。」

にこやかにしゃべるクロノス。その気持ちは皆一緒だった。

「オキには恩がある。私を助けてくれた。私を救ってくれた。その気持ち、良く分かるぞ!」

「俺も先輩にはお世話になりっぱなしだったからな。こういうときこそ、恩返ししなくちゃね。」

「この間も、名前だけだけど以前と同じようにハドレッドと暴れてくれた。あの子の元気な姿を見せてくれた。そして、最後まで一緒にいてくれた。この人には大きな恩がある。私も、全っっっ力でサポートするつもりだよ!」

クラリスクレイス、イオ、そしてクーナが頷きあった。

「オキ、皆一緒に頑張ってるよ。だから、安心して帰ってきてね。私も、アオイも、みんなも待ってるからね。」

マトイがニコリと微笑んでアオイと一緒にベッドに眠るオキの手を握った。

「マスター。いつでもお帰りをお待ちしておりますよ。無事に帰ってきた時には、いつもどおりの元気なお姿をお見せして頂きとうございます。」

「……通信か。ボクだが?」

通信の相手はコフィーさんだった。クロノスはなにかやな予感がした。

『クロノスさん! 同チームメンバーであるクサクさん、ユユキさんが惑星ナベリウスに降り立った瞬間に多数の巨大エネミーが出現しました! 大急ぎで駆けつけてください!』

「…不幸だ。」

クロノス。オキのチームメンバーが一人。彼女の特色『超がつくほど不幸属性』。

向かうところで数多の不幸が彼女を襲う。この後もベイゼ、ヴィスボルト、果てにはゲル・ブルフまで同時に出現する有様だったのは別のお話。




皆様ごきげんよう。
今回はアークスシップ内で待つメンバーを描きました。
マトイちゃんをはじめ、リズ(クラリスクレイス)やイオちゃん、クーちゃん(クーナ)はPSO2内のNPCで最も気に入っている女性NPCであるために好き勝手に書かせてもらいました。
サポパ、アオイのモデルはゲーム『まいてつ』より『ハチロク』です。
レトロな大和撫子な彼女はとても魅力的で大好きなんですよ。(操作キャラとして作成もしてます)
そんな彼女達と一緒にいたのは私のチームにいるクロノス。通称クロ。
彼女の不幸属性は本物です。実際に彼女と共にフィールドへ向かい、何度多数の不幸にあったことか。
ちまっと出てきたもう一人の新しい名前ユユキさんもチームメンバーの一人。この方も厄介な属性持ってるんですよこれが。
彼女の『ボス召喚能力』はかなりのもの。完全ランダムなはずなのに、彼女が向かうところほぼ全てでボスエネミーが道中に出現。通り抜けるだけでも少なくても2,3体。多ければ4,5体出てくるというものすごい人。偶然のように思えるかもしれませんが、実際そうだからしょうがない。おかげさまで彼女らと行くアドバンスクエは退屈しません。

では次回にまたお会いしましょう。

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