SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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ホロウエリアに新しいエリアが出現し、シンキを始め、シノン、リーファ、そして依頼者のフィリアが突き進む。そこで見た巨大な影は・・・。


第61話 「猛炎を放つ極彩色の怪鳥」

ホロウエリアに新たな場所が出現した。オキ達が走りまわったエリアから離れた場所に新しいエリアが出現したのだ。

きっかけはフィリアが受けていたクエスト。ホロウエリアでの一件が落ち着いた後に、ホロウエリアでトレジャーハントをしていたフィリアが偶然受けたクエストだった。

そのクエストを受けてシンキ、リーファ、シノンも共にそのエリアに来たのだが・・・。

「このフィールドだもの。確かにいるわよね・・・。コイツも。」

『ヒョオオオオオオ!』

巨大な咆哮が響き、シンキ達の前に巨大な怪鳥が翼を広げ飛び上がった。

露出度の高い踊り子の服が歩くたびになびく。その煌びやかな服に光が反射してキラキラと光る姿をすれ違う人たちが振り返り見る。

服だけではない。豊満な体つきに整った容姿。同姓である女性すら見とれてしまうその美しさ。

街中を歩くそんな彼女の名はシンキ。オラクル船団のアークスであり、今はSAO内で暴れまわるイレギュラーズが一人。

彼女はオラクル出身のアークスではない。ある場所からラグオルに流れ着き、そしてオラクル船団へと流れてきた。この時点で彼女が一体どれだけの年月を生きているのか分からない。一度オキが聞いた話ではアリサⅢという船にいたらしいが、オラクル船団にはそんな名前の船はない。

ソレを知るのは本人のみ。不思議な女性である。

オラクル騎士団ギルド拠点内に入ったシンキ。

「あ、シンキー。」

「なーに? オキちゃん。呼んだ?」

ロビーでタバコを吸っていたオキにシンキが呼び止められた。

「今暇かー?」

いきなりの言葉にシンキは一瞬固まる。とはいえすぐにクスリと微笑んだ。

「ええ。問題ないわ。」

リーダーはいつもそうだ。唐突に何かを依頼してくる。だが、その唐突さ、内容が面白いものばかりでやり応えがある。

「よかった。シンキじゃないと難しそうでな。フィリアがホロウエリアでクエストを受けたらしい。」

シンキが聞いた内容はフィリアのクエストのお手伝いだった。ソレだけを聞けばなんてこと無いが、問題はホロウエリアの場所だった。

「こんなエリア名見たことが無い。が、この文字はすごく気になる。アークスの手助けが必須と考えた。」

オキが示したエリアの名前。確かにこれは気になる文字だ。だがオキ、ハヤマ、コマチ、ミケ、アインスの5名は別件で忙しいらしく、手伝いに行くことが出来ないらしい。行けるのは実質シンキだけとなる。

「俺達が知っている敵の可能性が高い。フィリアを頼んだぜ。既に彼女はホロウエリアの管理室にいるはずだ。合流してくれ。」

「任せなさい。」

シンキがくるりとUターンしてフィリアと合流するべく拠点を出て行こうとした。その直前にオキに止められる。

「・・・手ぇ出すなよ。」

「ふふふ・・・。」

拠点の扉を閉めるのと、オキの『否定しろ』という怒声が背中に聞こえるとは同時だった。

「で、私達も一緒なのね。」

「よろしくお願いします。よーし頑張るぞー!」

シノン、リーファも一緒にホロウエリアを訪れた。

「すみません。よろしくお願いします。」

フィリアが丁寧に頭を下げた。

「いいのよー。オキちゃんからのお願いだし。それに、どんな敵がいるか楽しみだわ。」

3人はシンキのにこやかな笑顔を見て改めて認識した。

『ああ、この人もリーダーと同じ人種なんだ。』

と。その時に攻略中だったオキがくしゃみをしたのを知っているのはシリカとハシーシュだけである。

「ハーックション!」

「風邪ですか?」

「大丈夫?」

「んー大丈夫。そんなはずは無いんだが。」

ホロウエリア『壊れた紅き森』。

シンキがワープポータルから飛んだ先の新しいエリア。そこはオキの予想通りの場所だった。その場所は熟練のアークスのみが見たことがある場所が広がっていた。

「やっぱり。私達が見たことある場所ね。ここまであるのは驚いたけど。」

「話には聞いていたけど、本当に知っている場所なの?」

「アークスが知っている場所だって聞いていますが。」

シノン、リーファが首をかしげシンキに聞いた。

「壊世地域、と私達は呼んでいたわ。原因は未だ不明だけど、普通の場所とは違う唐突に現れたエリアよ。ここは惑星ナベリウスの壊世地域ね。」

付近の植物は枯れたような色合いで生い茂り、空は見たことも無い赤色のような橙のような色をして広がっていた。

今のところ確認されている壊世地域はナベリウスとリリーパの二箇所。そのエリアでは通常のエリアに生息したり、稼動したりする原生種や機甲種の変異したような姿のエネミーが見受けられる。そのモノらの危険性は熟練のアークスの中でも更に戦闘能力の高い者でも戦えば簡単にはいかない程である。

「気をつけて進むわよ。ここのエネミーは一筋縄ではいかないわ。」

リーファ、シノン、フィリアはシンキの言葉通りのエネミーの強さを実感した。

アインクラッドのエネミーよりも素早く動き、的確にこちらを狙ってくる。

「はぁぁ!」

「っふ!」

「やあ!」

だが、シンキにたたき上げられたリーファとシノン、オキ達とこのホロウエリアを走りまわったフィリアの3人はその動きについてこれた。

シンキはもちろんである。

「ふふふ。あぁ、懐かしいわねぇ。」

普段以上に蝶のように舞い、蜂のように素早く攻撃するその姿は普段からは考えられない。そう普段からは・・・。

「普段からああだったらよかったのに。どうしてこう・・・あの人は・・・。」

セーフティポイントを見つけ、少し休憩する4人。周囲の様子を見に行ったシンキがいなくなったのをいいことに、シノンがボソリと呟いた。

「まぁ・・・そうですね。」

リーファも苦笑気味だ。

「私はあまり、シンキさんと一緒に行動したことが無いので、分かりませんが・・・。オキさんからは何度か・・・ひゃう!?」

「ただいまー! うーん♪ いい感触ねぇ。」

「っちょ・・・!? シン・・・キ・・・さん! ひゃう!」

シンキがいつの間にか帰ってきており、気づいていないフィリアの後ろから大きいとも小さいともいえない、程よい大きさの胸をもんだのだ。それもガッツリと。

「・・・。」

「あ、あはは・・・。」

シノンとリーフは呆れるほかなかった上に、その後でしっかりとシンキの餌食となった。

「もー! シンキさん!」

「ご馳走様でした。いいじゃない。減るものでもなし。」

口を尖らせて文句をいうシンキ。

「うー・・・。何で私がこんな目に・・・。オキさんとならよかったのに・・・。」

「相変わらず、あちこちにフラグ立てる子ね。」

フィリアは顔を赤くして何かをしゃべっているが、良く聞こえない。ふーんとにやけたシンキは、ふとあることに気づいた。

「あら? そういえばオキちゃん、言ってないのかしら。あのこと。」

シンキが口元に指を当てて呟いた。

「あのこと?」

フィリアがシンキを見た。リーファとシノンも顔を見合わせてシンキの言葉を待った。

「いい? アークスはね? 今現在女性がダントツに多くて、男性は数が少ないの。割合的には確か・・・。だからね・・・?」

シンキの説明に次第に目を見開く3人の少女は。

「「「ええー!?」」」

ホロウエリアに叫び声をあげた。

「そんな事があったなんて。知らなかった。」

「アークスってやっぱり面白いなぁ。」

シノンは興味深く頷き、リーファは面白そうに笑っていた。ただ、ソレを聞いたフィリアは複雑そうな顔をしている。

「うー・・・。そうしたら、私も・・・。でも、うーん・・・。」

その姿をシンキがニヤけた顔で見ていた。

「ふふふ。面白くなりそう。・・・って事はハヤマちゃんも、言ってなさそうね。ふふふふ。」

シンキの目が光ったのをこのとき誰も気づかなかった。

シンキ達が進む道には、アークス達が見た壊世地域のエネミー達が沸いてきた。

特に目を引いたのは道中にて急に現れた『ベーアリ・ブルス』。壊世地域の『暴れるクマ』『ダンシング・ゴリ』としてあだ名がつけられ、対処がめんどくさがられる筋肉質の巨大なクマだ。それでもシンキの指示、そしてシンキやオキに鍛え上げられ、戦いになれた3人はそれを討伐し順調に進んだ。

そういえばと、シンキがフィリアの受けたクエストを確認した。

「粗方進んだけど、そもそものクエストの詳細を聞いてなかったわね。何すればいいのかしら?」

「あ、えっと。ある鳥の羽を手に入れることです。それで私が目指していた装備が作れるので。そろそろ見つかると思うのですが。ああ、その角を曲がった先の広場に・・・。」

クエストはある鳥の羽を手に入れること。シンキはこのエリアの鳥を思い返した。

「鳥・・・ってまさか・・・。」

口を歪ませ微笑むシンキの頬に冷や汗が走る。ここのフィールドにいる鳥は正直あいたくない部類である。その時だった。

『ヒョオオオオオ!』

シンキの予想通りの鳴き声が周囲の空を響かせた。

「この先ですね!」

リーファが進もうとしたその前を、シンキが壁に手をついて彼女を抱きつく形で止めた。

「え・・・? ええ!?むぐ!?」

「しっ。静かに。」

シンキがリーファの口を手で塞ぎ、壁の先にある角からゆっくりとその先に広がるという広場を覗いた。

「・・・やっぱりいるわね。クソ鳥・・・。」

鋭い角を生やした額。真っ赤な色をした巨大な羽。虹色の羽を持った尾。

『極色鳥』ディアボイグリシス。幾度かシンキもオキ達と戦ったが、正直『めんどくさい』の一言だ。

「ここでもコイツと出会うなんて・・・めんどくさいわねぇ。やるわよ。」

めんどくさいといいながらも微笑みながら曲剣を出し、広場への曲がり角を進んだシンキ。

強いかといわれるとそうでもない。じゃあ弱いかといわれるとソレも違う。

何がめんどくさいというならば、飛んだ後に降りてこない。動き一つ一つがこちらに対して攻撃となる。そして・・・なによりめんどくさいのは。

「くるわよ! 足元に注視して!」

『ごぉぉぉ!』

ディアボの放つ焔である。火柱が勢い良く立ち、周囲一体を火の海と化すその力はシンキ以外のメンバーには余りにも強力すぎた。

「あつつつ!」

「もう・・・たしかにめんどくさいわね・・・。」

「その通りね!」

3人はシンキの伝えたとおりの動きをするその怪鳥に苦戦気味だった。

『コォォォォ!』

ズズン!

上からの急降下落下でこちらを押しつぶそうとするディアボ。

「きゃぁ!」

「っく・・・!」

「うわぁ!」

地面を揺るがすその巨体を何とか避ける4人。

「降りてきたわね。さぁ覚悟しなさい。」

シンキはジャンプしながらディアボへと曲剣を振り下ろす。姿勢を整えた他の3人も再び攻撃へと転換する。

ガン! ギン!ガン!

「ふふふ。アハハハハ!」

楽しそうに笑うシンキは振り回してきた角へと曲剣を素早く切り払う。シンキがヘイトをとって真正面から切りかかっている最中にリーファたちが側面援護に回る。

「でやぁぁ!」

リーファの片手剣が、シノンの矢が、フィリアの短剣がディアボの側面へと放たれる。

『コォォォオォ!』

攻撃されまいとディアボは体をひねり、尾でなぎ払おうをしてきた。

「うわぁ!」

「あぶない!」

シノン達はかろうじてソレをかがんで避ける。シンキはソレに対して。

「フン!」

曲剣を思い切りぶつけ、力任せに攻撃を止めた。

「・・・大丈夫? ・・・皆!」

ギシ・・・ギシ・・・

「・・・! 大丈夫です!」

リーファが立ち上がり、攻撃の範囲外へと退避する。それは相手からの攻撃範囲ではない。シンキの動く範囲だ。

「あああぁぁぁ!」

キィィィン!

はじめはゆっくりと。そして少しずつ早く動かした曲剣はディアボの尾を切り裂いた。

『コォォォォォ!』

一度なき、再び空へと飛び上ろうとするディアボ。これでは効率が悪すぎる。シンキ達は決定打を出せないでいた。

だが、負けるわけには行かない。シンキは最近手にした新たなおもちゃ・・・じゃなかったスキルを試してみることにした。

「ここでなら、試せるかしら。」

シンキがニヤリと口元を歪ませた。

脚に力を入れ、ディアボと同時に上空へと飛んだ。

「はぁ!」

シンキがジャンプし曲剣を構えた。普通ならそこからは届かない距離だったが、今のシンキなら『届く』。

フォン!

空中で不思議な音が響いた。その音と同時にシンキは空中を蹴る。

「よっと!」

「え?」

フィリアは目を見開いた。だが、すぐにソレが何を意味していたかを理解した。

「そうか! ユニークスキル・・・!」

そう。シンキが手にしたのは空中で再びジャンプが出来るユニークスキル『エアハイカー』だ。体術を好んで使用して戦っていたシンキならではのスキル。元々アークスの武器、魔装脚をメインに使用していたシンキなら簡単にそのスキルを使いこなすことが出来る。

『コォォォ!?』

いきなり真下からシンキが現れた事で油断していたのかディアボは一瞬固まる。その一瞬の隙をシンキは見逃さない。

「ふふふ。いまさら高度をとろうなんて、遅いわよ。シノンちゃん! 狙いは・・・ここよ!」

シンキが振り下ろした曲剣はディアボの角にヒビを入れた。

ガキン!

ギリギリギリ・・・

既に下で構えていた弓のしなる音がゆっくりと響く。そしてソレは放たれた。

ゴォォウ! バキン!

シノンの弓から光り輝く矢が5本連続でディアボの角へと突き刺さった。

『コォォォォ!?』

ディアボが怯み地面へと落ちていった。

「今よ!」

角が折れ、その場に倒れるディアボ。その隙にシンキをはじめリーファ、フィリアは弱点部位であるディアボの顔面にSSを放つ。

「それそれそれ!」

楽しげに切り刻むシンキ。これ以上は飛ばさない。そう思いながら3人もシンキに続く。

一気にHPを削り取られたディアボは結晶となって砕け散った。

『ヒョオオオ・・・。』

パキィィン!

ドロップアイテムとして『獄炎鳥の極彩羽』をゲット。無事、フィリアのクエストはクリアできた。

ホロウエリアを後にしたシンキ達は拠点へと戻ってきて温泉に入っていた。

「ふぅ・・・。疲れたわ。」

「今回のは特に強敵でしたねー。」

シノンとリーファがゆっくりと湯船に浸かっていた。

「アレくらいまだまだよ。外にはもっと強くて、めんどくさいのが多いんだから。あの鳥はその中でもその一部。」

シンキが体を洗っている。白く透き通った肌。艶やかな白銀の髪。リーファ達は改めてシンキの美しさに見とれた。

「・・・何度見ても綺麗ですね。かっこいいところもあるのに・・・どうしてああなのでしょうか。」

リーファがボソリと呟いた。シノンも苦笑気味である。

「ふっふっふ。聞こえたわよ。」

「「え!?」」

ふと2人が声の方を向くと、シンキが既に妖怪『触らせろ』になってすぐ後ろにいた。その姿からはかっこよかった姿が台無しである。

「「きゃぁぁぁ!」」

温泉に悲鳴が響いた。

ギルド拠点へと戻った直後にフィリアはハシーシュの部屋の前に立っていた。

「シンキさんの話が本当なら。ハシーシュさんも、私も・・・すーはー・・・。よし!」

コンコン

「誰?」

部屋の中からハシーシュの声が聞こえた。

「フィリアです。少しだけお話が。」

ガチャリと扉が開くと、ハシーシュそしてシリカの姿までもがあった。

「フィリアさん?」

「シリカさんも・・・。あ、ちょうどよかったわ。聞いて欲しい話があるの。」

「とりあえず、中にはいって。」

ハシーシュはフィリアを自分の部屋へと入れた。そしてその後、偶然いたシリカも、ハシーシュもその内容に驚き3人で結束を固めたことを、自分の離れでタバコをふかしていたオキが知る事になるのはちょっとだけ先だった。

 




皆様ごきげんよう。
先週は失礼しました。想定外の予定やら何やらで小説があまりにも進まなかったので休暇とさせていただきました。
今回は本来あげるはずだった前回を飛ばして、予定通り今週分としてシンキメインのお話とさせてもらいました。
前回あげるつもりだった物語はあくまでつなぎ程度の番外編となる予定だったのでまぁ問題ないかなぁと。

さて、出てきましたユニークスキル。これで何個目? もう10個いったかな?
さぁ数えてみよう!


PSO2では強化版徒花、『輪廻』が開始されました。まー・・・ノラだと床なめるアークスの多いこと多いこと。
いくら攻撃力高くなったとはいえ、防御しなさすぎじゃねーかと思うほどばったばったと倒れていく様は怒りや呆れより逆に笑いが出ましたよ。
さすがに私以外11名床なめるのは大いに笑わせてもらいました。
これは次回アップデートのオーディン戦がいろんな意味で楽しみですね!
FF14とのコラボでくるオーディン戦は途中からある一定以上のダメージを与えないと斬鉄剣で即死且つクエスト強制失敗だそうで。ノラが怖い・・・。
アークスの皆さんは準備を怠らないようにしっかりと強化しましょうね!


それでは次回にお会いしましょう。

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