SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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行方不明者が増える一方で、仲間すらも手をだされたオキはその容疑者であるティターニアリーダー、アルベリヒを追い詰めた。だがその男が出したのは、ダーカーだった。


第60話 「逆鱗に触れ」

『ヒョオオオ!』

アポストル・トリッツァーの咆哮が周囲一体に響き渡る。

「ダーカー因子確認。これは自白したようなものかな?」

「ねぇねぇ。オキちゃん。これやっちゃっていいの?」

シンキがすごくウキウキとした顔でオキに聞いてきた。

「シャオからは許可を得ている。やるぞシンキ。ミケっち! ハヤマンがこの階層到着したそうだから挟み撃ちで2,3人捕まえろ! 状態は死んでなけりゃどうでも構わん!」

「アイサーなのだー!」

オキとシンキはダーカーを、ミケは逃げたティターニア残党を追いかけに走った。

転送門前広場。プレイヤー達を押しのけて転送門へ向かって走る男達がいた。

「どけ!」

「くそ・・・! あの野郎、自分だけ逃げやがった!」

「こちらとトカゲの尻尾じゃねぇんだよ! くそまだ追いかけてきやがる!」

「ウラー! なのだー!」

ティターニアのメンバーは後方を見るとものすごいスピードで猫耳を生やしたフードを被った子供のようなプレイヤーが追いかけてきている。つかまれば間違いなく監獄行きだ。

「もう少しで転送門だ! あそこまで逃げ切れば・・・!?」

シュイン!

「・・・。」

転送門前に一人の男が現れる。

「どけぇ!」

「・・・・フン!」

ガン!

「ッガ!?」

ティターニアメンバーの一人が男をどかそうと手を出した瞬間だった。他の二人は何が起きたのかほぼ見えなかった。見えたものは、先頭を走っていた仲間が転送門から出てきた男に胸倉を持たれ、思い切り地面に叩きつけられている姿だった。

「・・・。」

ギロリと睨まれ、男達はその場で立ち止まってしまった。

「ハヤマナイスなのだー!」

「捕まえたよ。」

ミケとハヤマ、ティターニアのメンバーの一部を捕獲。その他の方面でもギルドメンバーが逃走したティターニアメンバーを捕まえていた。

シュゥゥゥ・・・

「あっけない。もっと面白いかと思ったのにー。」

シンキは不満そうにしている。アレだけ暴れておいてまだ足りないと。とはいえ、オキ自身も軽く層思っていたのだが。

「仕方ねーべ。ダーカー因子消滅確認っと。ミケっち達の所にいこう。捕まえたらしい。」

「はーい。」

オキとシンキはアルベリヒが出したアポストル・トリッツァーを撃破。

どうやって出したのか、どうしてそんな事が出来るのか。メンバーから情報を聞き出すことにした。

メンバーを1層の監獄へとぶち込んだオキは、ハヤマ、アインス、シンキを尋問役に選び、ティターニアメンバーの入った牢屋を訪れた。

「あんたらのリーダーはどこにいるんだ?」

「・・・。」

オキの質問に誰も返事をしない。

「ふん。質問を変えようか。リーダーのことは何か知っていることはあるかい? あれは普通のプレイヤーじゃないだろう。」

「・・・あんたらもだろう?」

「くっくっく・・・。」

「へっへっへ。」

一人の言葉に全員が笑う。隣の牢屋の男が一人、ティターニアのメンバーに声をかけた。

「ああああ、あんたら。悪いことはいわねぇ。この人たちにさからわねぇ方が身のためだぞ。」

「ああ?」

ティターニアメンバーがその言葉ににらみつけた。

「はっはっは。面白いことを言うじゃねぇか。確かにその通りだ。今しゃべったのはアンタだったな。ヤルのは最後にしといてやる。」

口元は笑っていたが、オキの目は笑っていない。それに気づいていたのは周囲のアークスとオキ達の怖さを知っている牢屋の主達だけだった。

「シンキ。」

「はいはーい?」

「どれか選んで好きにしていいぞ。奥に空いてる牢屋があるはずだ。」

オキの言葉にシンキの目が光る。そして周囲の男達を一通り見渡した後、左端の男を選んだ。

「あなたにするわ。来なさい。」

「お、俺!?」

そのほかの者は少し羨ましそうに見ている。それもそうだ。シンキは男性はもちろん、女性すらも見れば誰もが羨む美貌と抜群のスタイルを持っている。

だが、オキ達シンキの本当の姿を知っている者たちからすれば連れて行かれる男が哀れに思う。

「・・・どうする?」

「好きにしろといったはずだ。」

ボソリとオキが一言シンキへと伝えた。シンキはソレに対しニッコリと微笑みながら男を連れて奥へといってしまった。

「・・・羨ましいか? 美しい女性に連れられて、人気が少ない暗い牢屋でナニされるか。期待してるか? 馬鹿な奴だ。シンキはな・・・。」

オキが続きをしゃべろうと一呼吸吸い込んだ直後だった。

「ひぎゃあああぁぁぁぁ!!! ・・・があぁ!!! ・・・ぐぁ・・・あ・・・。」

奥から耳を塞ぎたくなるような悲鳴が響き渡り、そして小さく低い何かを潰すような音に変わっていった。。その声、音に元々牢屋にいたオレンジプレイヤー達は体を震わせ怯えている。

「シンキはな、この中で最も残虐性の高い奴だ。俺やそのほかの皆が考えることよりも恐ろしいことを平気で思いつき、行動する。」

オキは奥を見てから再びティターニアメンバーを睨みつける。

「っひ!?」

「もう一度言う。知っていること、隠している事、全て話せ。」

「話せば、悪いようにはせん。」

アインスもオキの言葉に続く。だが、誰一人として言葉を発さない。先ほどまでの違いは全員が不安な顔をしているだけだ。

オキはその状況にため息をついた。

「・・・はぁ。しかたない。ここではやりたくなかったが全員に見てもらう必要があるな。はやまん。」

「・・・ああ。」

ハヤマは男達の前にでて一言だけ質問をした。

「シャルという少女を探している。古風な言葉使いをする女の子だ。」

その言葉に一人がニタリと笑いながら言った。

「ああ、あの少女か? あまりにもうるさかったから少し黙らせた。なかなかよかったがな。へ・・・へへへ。」

その言葉にオキが前に出ようとする。だが、ハヤマはソレをとめた。

「どけハヤマん。そいつは・・・はやまん?」

ハヤマの顔をオキが見た。その顔は今までの温厚なハヤマの顔ではなかった。

ハヤマは笑った男を思い切り真正面から蹴りを腹に入れ、壁に背中から激突させる。

「っが!? ・・・っひ!? な、なにを!? 俺は最後にって・・・!」

男が見たのはハヤマが刀をゆっくりと振り上げた姿だった。

「あぁ? あれか、あれはな…嘘だ。」

オキの言葉と同時に上下に素早く切られる男。

「っが・・・あ・・・や・・・ぐぉ・・・。」

あまりのスピードと衝撃は男の体を何度も揺さぶった。その為悲鳴どころか声もまともにでない。

いくらSAO内で体が頑丈であり、挙句衝撃のみで痛みは無いとはいえ、ダーカーの硬い甲殻を簡単に切り裂く力を持つブレイバーのカタナ捌きを何十秒も受けたのだ。

十数秒間カタナPA、ゲッカザクロのループを喰らい続けた男は白目となり、泡を吹いてその場に倒れた。

バタ・・・

「さぁ。こうなりたくなかったら。はけ!」

受けたメンバーを見て、残りのメンバーがようやく自白した。

自白した内容は隠れた場所に拠点を構えていることと、その中で次世代に続く実験を行っているという話。

実験内容は下っ端である自分達には伝えられておらず、人をさらう部隊として活動していたようだ。ちなみにシャルの話はただ単に暴れられたので大人しくさせる為に戦い好きの(今は完全に沈黙している)男が好き勝手に暴れただけのようだ。それを聞いてハヤマは少しほっとしたようだ。

ちなみにオキが『何を思い浮かべたんだ?』とニヤケながら聞くと、その場の勢いで切られそうになった。

「まったく、はじめから正直にすればいいものを。」

「あら? オキちゃーん。そっちおわったー?」

シンキが連れて行った男を引きずって帰ってきた。こちらの男も白目をむき、完全に気絶している。

「ういーっす。オキさんいるー? ここにいるって聞いたんだが・・・。うわぁミンチよりひでぇ。」

コマチが入り口の方から入ってきた。そしてつぶれている2名の男達をみて苦笑していた。

「どうした? コマチ君。」

「あぁ。ミケが逃げたメンバー捕まえてな。自白させた。」

「おろ。こっちは必要なかったか。よく自白したな。」

オキが呆れて肩を落とした。

「ん? ああ。まぁミケだし。」

オキは察した。『ミケが捕まえた』という事。それは『オキの知人関係の中で最も何をしでかすか分からない奴』がストッパーなしで尋問したからだ。

「あ、察し。で? その捕まえたのは?」

コマチは黙って首元を切る仕草をした。あぁたしかに。『殺すな』とは言ってなかったしな。

相変わらず、敵とみなした相手には容赦しない面子だこと。オキはそう思いながら監獄を後にした。

自白した内容から80層の岩陰にティターニアが隠れているアジトがあることが判明した。

それによりキリト、アインス、ハヤマ、そしてストレア(シャオインストール)を率いて強襲した。

「いいか? 何が出るか分からん。気を引きしめていくぞ。」

「ああ。・・・いくぞ。」

アインスの号令により、岩陰からその中へと入り込んだ。

「これは・・・。」

「なにかされている!? ストレア! シャオ! 近くにコントロールしている機械があるはずだ! 解除して助けろ!」

「・・・シャル。」

行方不明のプレイヤー達を見つけた。だが、なにかのカプセルに入れられ、皆が眠っている。身体の波形を取っている様に見える。少なくとも見ていて気持ちいいものではないのは確かだった。ハヤマはシャルを探しにカプセルを一つずつ覗いている。

シャオから解除方法を伝えられたストレアはその場にある全てのカプセル型の機械を解除した。

「これは・・・。」

オキは近くにあったここで何をされているかを記された紙を見つけた。

「なにがここで行われていたのか。わかるかい? オキ君。」

「シャル!!」

オキが紙を見だした直後にハヤマがシャルを見つけたようだ。

「みつけたか!」

アインスもそちらに駆け寄る。

「シャル! しっかりしろ!」

「げほ! ・・・ハヤマ・・・どの? カカ・・・やはり、迎えにきてくれたのう。思った・・・通りじゃ。」

「ツキミ君も無事のようだ。」

アインスが隣のカプセルからぐったりとしたツキミをシャルの近くに寄せた。

「よかったのう・・・ツキミ・・・。ハヤマ殿が・・・助けに・・・迎えに・・・スー・・・スー。」

気力でおきたのだろうか。ツキミは静かに眠りについた。優しく頭を撫でるハヤマは立ち上がりオキに近づいた。

「オキさん。帰ろう。そして見つけ出して・・・オキさん?」

ハヤマがオキの様子がおかしいことに気づいた。固まって動かない。

そして近づこうとした瞬間だった。

ガキン!  バリ…バリ…

 

近くにあったコンソールにゲイボルグが刺さった。刺さったコンソールはバリバリと電気を漏電させている。それを見たキリトが目を丸くしていた。

「おいおい。破壊不可能オブジェだぞ。」

行われていたのは脳を直接操作する人体実験。その実験がボイド、ルーサーが行っていた実験にあまりに酷似していた為にオキは近くのコンソールに武器を叩きつけたのだ。

普通なら弾かれるはずなのだが。

「了解。 シャオから伝言。オキのフォトンが活発化してるって。大人しくさせてって言ってる。」

オキは黙って槍を抜き、目を見開いたままどこかへと歩いていこうとした。それを止めたのはアインスだった。

「どこへ行こうというのかね?」

「どけ。アインス。あんたもわかるだろう?」

槍を前につき出すオキ。アインスは一息吸ってオキの顔面を殴った。

「っが!? なにしやがる!」

オキは殴られた拍子に床へと転ぶ。

「少しは頭を冷やしたまえ。ここには奴はいないようだ。情報もない。君一人出たところでなんになる。私だって抑えているのだ。やらねばならぬことが先にあるだろう。」

オキは差し伸べられたアインスの手を黙って握り立ち上がった。

「…すまん。そうだな。やつにはそれ相応を受けてもらわんとな。」

「ああ。」

その後、オキはアインクラッド中に『ティターニア』メンバー全員を『ラフコフ残党』と同格の危険人物として情報を投げかけた。

これにより残ったメンバーもほぼ捕まえることができた。もんだいはリーダーであるアルベリヒが捕まらなかったこと。メンバーに聞いても知らないという。逆に『騙された。』『話が違う』とメンバーの中でもどうやら食い違いが発生しているようだ。

 

 

 

とある層の生い茂った草原。

「…くそっくそ! どうしてだ…! なぜだ! 僕は神の力を手にしたというのに! …今に見てろ。僕を馬鹿にする奴らは…皆殺しだぁぁぁ!」

ある男の声が響き渡ったが、誰ひとり聞くことはなかった。

そしてその男はまだ気づいていないのだろう。今このSAO内で最も敵に回してはいけない人物達の逆鱗に触れたことに。

 




皆様ごきげんよう。
やばい。今月やばい。PSO2がまともにプレイできていないほど忙しい。

さて、SAOを知っている人なら知る人ぞ知る胸糞悪い男No.1に輝くアルベリヒ。
今回は代役としてティターニアメンバーでしたが、しばらくしたら彼にもそれ相応の対価を払ってもらいましょうかね。
ではまた次回お会い致しましょう。

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