SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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ハシーシュがギルドに入ってから暫くして85層攻略も目前に見えてきた頃、1部のプレイヤー達から攻略組、アークsへ相談が持ちかけられた。


第59話 「動く欲望」

「ティターニアのメンバーがセクハラやってるぅ?」

攻略組『アーク’s』定例会。オラクル騎士団拠点大会議室にオキの声がこだました。

「ああ。ティターニアの奴ら、かなり堂々と行為に走っているらしい。」

情報を説明してくれたディアベルは苦そうな顔だ。

「中には無理やり体触られたーいうねーちゃんもおる言うてな? 本来ならハラスメントコード引っかかるはずやのに、何故かひっかからヘン。」

キバオウは手を広げて困った顔をしていた。

「うーん。最近バグらしき報告も受けてるし、ハラスメントコードが動かなくなったか?」

腕を組んで考え出すオキ。ハラスメントコードとは簡単に言えば男性が女性に対してセクハラ行為を行った場合に発生する危険コードだ。

セクハラ行為だと感じ取ったときに女性プレイヤーの目の前に選択画面が出る。その時にセクハラ行為を受けたという肯定のボタンを押した瞬間に『監獄』へ瞬間移動という事だ。

ただ、このコードは意図的に外すことも可能であり、オプション関係の設定最下層にその解除選択部がある。これを外すことで大きな声では言えないことも出来るという話は聞いたことがある。

「オキさん。試してみるのはどうでしょうか?」

「アリだな。」

シリカから提案があった。実際に実験してみれば早いことだ。

「んー・・・。とはいえ、どうやって調べるか。」

「私なら大丈夫です。どなたかが体を触ってみればいいのですから。」

「そうか? んーならリンド。シリカの肩揉んでやって。」

「俺か? まぁいいが・・・。失礼するぞ。」

「はい。 ・・・ん。」

優しくリンドがシリカの肩を揉みだす。

「コードは?」

「んー・・・でますね。」

「そうか。・・・頼むから冗談でも押さないでくれ?」

シリカの肩から手を離すリンド。

「ふふふ。そんな事しませんよ。」

「すまなかったな。オキ君。」

「おい、なぜ俺に謝るリンド。」

少しだけニヤケたリンドがオキの肩を叩いた。

「そりゃ大事な奥さんの体を触ったのだ。当たり前だろう?」

「はぅ・・・。」

顔を真っ赤にするシリカ。うんかわいい。じゃなかった。

「そうかい。・・・逆の場合はどうなのだろうか。試してみるか?」

「はいはーい! 私やってみたい!」

シンキが速攻で手を上げ嬉しそうに笑顔だ。

「却下」

「却下だ色ぼけ魔神。」

「てめーはだめだ。」

オキ、ハヤマ、コマチによって速攻却下される。

「えー。ブーブー!」

「てめぇはいらんとこまで触るだろうが。」

「え?」

手をワキワキとさせるシンキ。ダメだコイツ。

「え? じゃねぇ! ワキワキさせんな! あーもう。シリカ。お返しにリンドの肩もんだれ。」

「は、はい。それじゃあ失礼しますね。」

「うむ。」

リンドの肩をもみだすシリカ。

「コードはでず。やはり男性にはないらしいな。ああ、もういいよシリカちゃん。ありがとう。」

「はい。どういたしまして。」

結論は『問題なかった』となった。だが、実際に被害が出ている以上、軽視できない。

「各ギルドへ伝達。警戒態勢に入る。ティターニアを見つけたら、注意せよ。女性プレイヤーは一人で行動しないように。必ず最低でも3,4人で。出来れば信頼できる男性プレイヤーと共に行動せよ。」

「「「了解!!!(なのだー!)」」」

「というわけで、アルゴ姐にも情報伝達を頼む。」

「あいヨ。俺ッチに任せナ。」

25層の喫茶店にてアルゴと落ちあった。彼女も情報を集めているらしく、女性の敵としてみなしたらしい。

彼女には、他の情報屋を通じて各層で活動しているプレイヤー達にティターニアの現状を伝えてもらうつもりだ。

カランカラン・・・

扉の開く音が店に響き、数名の男性が入ってきたのを確認した。

「噂をすれば、ネ。」

「なに?」

ニヤニヤとしながら笑い話をしているように見える男達。

「ティターニアか。」

アルゴとオキはチャンスとばかりに目で合図しあい、様子を見ることにした。

はじめはそこまで問題は無かった。バカ話をしている感じだ。

だが・・・。

カランカラン

勢いよく店の扉が開いた。そして入ってきた女性がツカツカとティターニアメンバーに近づいていく。

「ちょっと! あなた達でしょう!? 私の友達にセクハラしたの!」

「あー?」

男達はなにかと思い女性を見た。その女性の後ろにはオドオドとした女性もいる。それをみて顔を見合わせたティターニアメンバーはニヤリと顔を歪ませた。

「あー! 君ね! 人聞きがわるいなぁ。俺達は彼女から誘ってきたのを受けただけだよ?」

「そうそう。俺達は誘惑されたんだ。くくく・・・。」

ソレを聞いて弱気な女性は泣きそうな顔だ。

「そ・・・そんなことは・・・。」

「あなた達ねぇ・・・この子がそんな事するわけ・・・!」

「しないって? その場にいなかった君が…わかるわけないよねぇ。」

「っく・・・。」

流れはティターニアのメンバーのほうに流れている。悪いのは明らかに男共のほうだ。だが、言い訳で逃げようとしている。それどころか、彼女達を囲みだした。

「それより、一緒にお茶でもどう?」

「そうそう。俺強気の女に弱いんだよ。」

「あーわかるわー。くっころってやつ?」

男の一人が彼女の腰に手を回したときだった。

「やめてよ!」

バシ!

振りほどいた彼女の手のひらが男の頬にビンタする。それを喰らった男は形相を変えて拳を振り上げた。

「てめぇ! なにしやが・・・!」

「はいはい。そこまで。」

オキはがっしりと男の腕を握り止めた。

「なんだよテメェ! 離せ・・・!?」

摑まれた反対の腕でオキに殴りかかろうとした男だったが、オキは軽く足払いをかけて男を床に倒した。

「がっはぁ!?」

いきなり目の前の世界が回転した男は何がおきたか分からないまま背中から床に激突、オキはそのまま槍を取り出し男の顔面の真横に突き立てた。

「おっと、すまんなぁ。手と足が滑っちまった。よかったなぁ。顔に刺さらなくて。」

ニヤリと笑い、オキは男の顔を覗いた。

「き・・・さま・・・!」

「やめておきたまえ。」

いつの間にか店の扉が開いており、ティターニアリーダー、アルベリヒがそこに立っていた。

「おう。アルベリヒじゃねーか。きさん、きっちりマトメとけや。苦情でてんぞ。」

オキがアルベリヒを睨みつける。

「いや、すまないね。以後気をつけるよ。」

アルベリヒは床に倒された男と、呆然と見ているしかなかった男達を連れて店を出て行った。

「っち。すました顔しやがって。そっちのは大丈夫か?」

残された女性2人はアルゴによって守られていた。

「ありがとうございました。助かりました。」

「いいってことよ。あいつらだけじゃなく困ったときはすぐにアーク’sへ連絡いれな。話はつけとく。」

「はい!」

大人しそうな一人がオキの背中を気にしていた。

「あの・・・そのマーク。オラクル騎士団の・・・。しかもその槍使いとくると・・・。」

「何を隠そウ! この人はオラクル騎士団のリーダーサ!」

アルゴが高らかにオキを紹介した。

「何でお前さんがいうんじゃい。まぁいいっか。ともかくこちらも注意して警戒に入っている。そっちも無理な行動はしないように。他の友人達にも伝えといてくれると助かるよ。」

「分かりました。あの人たち、あちこちで迷惑行為やってるの。中には無理やり薄暗い路地に連れ込まれたりとか・・・。」

「ほうほう。情報はコイツに。助けは俺たちに。いつでも構わん。言いにこい。」

「はい!」

60層のフィールドにて、タケヤとツバキがクエスト攻略の為に目的地へ向かっている最中にも同じことが起きた。

「本当にこの先なんでしょうね?」

「情報ではな。アルゴさんの情報だから間違いないだろ? 多分。」

「多分って・・・ん?」

ツバキが前から来る何かに気づいた。はじめはエネミーかと思っていたが、プレイヤーのようだ。

「はぁ・・・はぁ・・・! お願い! 助けて!」

「何かあったの?」

息を切らして女性がツバキに駆け寄る。タケヤはオレンジプレイヤーの警戒をしたが、別の問題だった。

「ティターニアに追われてるの! お願い!」

ツバキとタケヤは顔を見合わせて追ってくる男達の前に立ちはだかった。

「っち・・・。ずらかるぞ。」

男達はタケヤたちを見て、すぐさま元来た道を戻っていった。

「助かったー・・・。ありがとう・・・。」

「大丈夫。大丈夫だから・・・。」

ツバキは震える女性を落ち着かせつつ、タケヤは周囲を警戒していた。

数日後、更に問題が発生した。アルゴからの緊急招集でそれが発覚した。

「行方不明!?」

「うヌ。つい先日から下層と中層付近のプレイヤーが数十名単位でいなくなってい事がわかっタ。既に、解放軍に手伝ってもらっているガ・・・。」

「未だに見つけきれない・・・。申し訳ない。」

ディアベルが悔しそうに謝った。

「ディアベル君が謝ることじゃない。うちも手を貸そう。」

アインスもすぐさまメッセージを打ち出した。ギルドメンバーを動かそうとしているのだろう。

「情報では、行方不明者が出たすぐ近くでティターニアメンバーが目撃されているそうダ。」

「また、ティターニアか・・・。」

唸る様にオキはここ最近の問題元の言葉を吐いた。偽りと思われる装備にレベル、コードの出ないハラスメント行為。そして今回は行方不明者だ。

一体何が目的で何をしようというのか。

「とにかく・・・このままでは埒があかん。場を押さえて・・・。」

「タタタ! タイヘンデス!」

会議室にアリスが勢いよく入ってきた。

「どうした?  アリス。」

息を切らしている。相当走ってきたのだろう。

「シャ・・・シャルサンが・・・シャルサンとツキミサンが・・・ユクエフメイに・・・。レンラクが・・・トレません!」

ガタ!

ハヤマが血相を変えて立ち上がり、大会議室を飛び出していった。

「・・・あの野郎。どこの層に向かったって確認せずに飛び出しやがって・・・。アリス、教えてあげて。」

「ワ、ワカリマシタ!」

敬礼して即座に飛び出していったハヤマへとメッセージを送るアリス。

「ちぃ・・・。これは面倒になってきたぞ。」

シャルが行方不明になってから次の日。シャルが向かった層をあっちこっちと探した、見つからず時間だけが過ぎていた。

「オキさん! なんとかしましょう!」

「もう我慢の限界よ!」

ギルド拠点の大会議室にてオラクル騎士団のメンバーが集ってオキにティターニアへの制裁を求めてきた。今回の剣は間違いなくティターニアだと全員が踏んでいる。

「・・・。」

オキは目を瞑ったまま黙っている。レンやサクラ達もオキへと話しかけた。

「私達も見ました。ティターニアの人たちが女の子を路地裏に連れ込もうとしていたのを。」

「偶然見つけたからよかったけど、実際に被害も出ています。早く何とかしましょう。」

「・・・。」

相変わらずオキは黙ったままだ。

「オキさん? どうしました?」

シリカが心配そうにオキの顔を覗いた。

「・・・。」

ゆっくり目を開けたオキはシリカの頭を撫で、タバコに火をつけた。

「ふー・・・。」

「・・・どうした? オキさん。以前なら真っ先に・・・。」

キリトが不思議がる。以前のラフコフ騒動の時はまっさきに動いたのにと。その時だ。

オキの目の前にメッセージが届いた。それを見るなり目を見開く。

ガタリ!

「・・・! 来た!」

勢いよく椅子から立ち上がったオキに全員が驚いた。

「え? え!?」

「ちょ、ちょっと・・・オキ?」

アスナも、リズベットもいきなり立ち上がったオキに驚いていた。

「・・・各員に通達! 62層に向かい、ティターニアメンバーを捕縛せよ! シンキ達が追ってくれている。 キリト! アスナ! リズ! アリス! 62層の拠点の街、東側から! ミケ! 双子とフィリア連れて西から! タケヤ! ツバキ! レンにサクラは北から。 オールドのとっつぁんとセンター、エギルの旦那は南から! 全員街の中央へ向かえ。シリカとハシーシュは俺について来い。絶対に逃がすな。コマッチーはフィーアにストレアとユイちゃんでここを守れ。何しでかすかわからんからな。いくぞ!」

シンキ、シノン、リーファはオキに言われたとおりにアルベリヒを追っていた。

「オキさんから伝言来ました! シンキさん! シノンさん!」

「私も確認したわ。」

「ふふふ。それにしてもオキちゃんの言うとおりだったわね。」

目の前を走る男の行った行為の一部始終を3人は見た。オキは彼をはっていれば必ずボロを出すことを確信していた。そこで、まだそこまでプレイヤー間で顔の知られていないメンバーで且つ、何があっても冷静に対処が出来る者としてシンキを。そしてそのシンキと共に行動し同じく対応が出来るメンバーとしてリーファ、シノンが選ばれ、アルベリヒの行動を追っていた。

効果はすぐに出た。すぐさま行動したアルベリヒは追われていることに気づかず、その犯行現場を押さえられる。何とかごまかすが、結果的にシンキ達に追われることとなったのだ。

「シノンちゃん。お願いね。足元を狙って。絶対に当てちゃだめよ。」

「わかったわ。」

シノンは走るのをやめ、その場にひざまずき、背中にある弧を描いた武器を手にした。

ギリリリ・・・

強く張られた弦がきしむ音が鳴り響く。彼女が手にしているのは『弓』。このSAOには普通ありえない『遠距離』武器。

彼女はシンキ、リーファと共に早く前線で戦えるように数々のクエストを休むことなくやってきた。そしてある日彼女が見たことの無いスキルを手にしたことに気づいた。『射撃』スキル。誰もが知らないスキル。そうユニークスキルだ。

「狙いは・・・そこ。」

ヒュン!!

甲高い音をならし、シノンの放った一本の矢は綺麗にアルベリヒの足元へと刺さる。

「うわ!」

アルベリヒはバランスを崩し、そしてその後ろから走ってきたシンキに蹴飛ばされる。

「もう・・・! にがさないわ!」

ガン! ズシャァァ!

「ぐは!?」

アルベリヒが立ち上がり、再度逃げようとしたときだ。

「はいそこまで。」

オキが目の前に立っていた。他のティターニアメンバーはオラクル騎士団のメンバーによって捕まっている。

「・・・ごほん。なにかようかね? イレギュラーの君。」

「澄ました事言っちゃって! 私達は見たんだからね! そいつの短剣が人に刺さったときに一瞬でその人がいなくなったのを!」

リーファの言葉に押し黙るアルベリヒ。その言葉を聴いてオキはニヤリと口を歪ませた。

「俺の仲間に手ぇ出したのが間違いだったな。・・・さぁ! 返してもらおうか!」

オキが槍をアルベリヒに向け、アルベリヒはソレをみて、笑った。

「くくく・・・。なんども、なんどもなんどもなんども邪魔しやがってぇぇぇ!」

今までにない形相でオキを睨みつける。だが、それに動じないオキ。

「あ? 何言ってやがる。きさん、人んとこの仲間手にした口が何言ってやがる!!」

「う・・・。」

オキの睨みつけはアルベリヒを後ずさりした。

「あなたと格が違うわ。うちのリーダーは。」

シンキが後ろからジリジリと近寄っていく。

「く・・・くそぉ!」

アルベリヒが手を上に掲げた。

そして直後に出てきた巨大なエネミーに気を取られている間にオキたちはアルベリヒに逃げられてしまった。

「しまった・・・。逃げられた。」

「あらー? こいつ・・・アホ鳥じゃない。」

 

『ヒョオオオオオ!』

 

真っ赤な丸い巨体。体を回る大きな顔。そして尻尾についた回るのこぎり状の突起。

アポストル・トリッツァーがその場に出現した。




皆様ごきげんよう。
今週も来週もいそがしいいいい!
なんだこれ! こんなに忙しいのはめったにないぞ!
おかげさまでPSO2の新たな期間限定クエを未だに行けてません・・・。

さて、話が動きましたね。完全にクロのアルベリヒ。
そして出てきたアホ鳥。こいつの名前相変わらず直ぐに出てきません。言いにくいんだよ!
SAOもそろそろ終盤戦です。では来週またお会い致しましょう。

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