SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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ハシーシュと共にクエストを行うことになったオキはそのクエストで懐かしいモノに会うことになる。


第57話 「砂漠の中の小さな獣人族」

「はぁ!」

 

79層の砂漠エリア。横一閃を蠍エネミーに喰らわせるハシーシュ。その動きをオキはじっと観察していた。

 

『動きは悪くない。むしろいい方だ。避けるときはしっかり見極め、最低限の動きで攻撃を避け、そのまま攻撃へと転換する。無駄がない。』

 

「あの・・・ずっと見られてると・・・その。」

 

粗方片付けたハシーシュがこちらを見ている。少し顔が赤い。

 

「ああ、すまん。いや、動きをな。やっぱ俺から見てもかなり動けている。ここまで戦えるようになるにはかなり経験をつまないと無理だ。」

 

「そう? ありがと。」

 

帽子を深く被る仕草で顔を隠したハシーシュ。照れたときの癖なのだろうか。

 

「進むぞ。」

 

「うん。」

暫く進むとオアシスに出た。かなり大きい湖もある。

 

「この先に、遺跡がある。そこが目的地。」

 

湖の辺に地下への入り口を見つけた。その階段を下りていく。

 

「この方角は・・・上は水だな。」

 

階段を下りる方向と湖の地下への方角が一緒だ。階段の天井は頑丈そうに見えるが、この天井が崩れないことを苦笑いしながら祈るオキ。

 

「遺跡・・・。」

 

地下へと降りるとそこは古代遺跡のような地下遺跡の通路となっていた。

 

「へぇー。ん? これは・・・!?」

 

オキが壁に沿って歩いていると、気になる模様を見つけた。

 

「これ、読める?」

 

ハシーシュが顔を近づけて、その文字を見た。

 

「うん。懐かしいな。ここでこの文字を見るなんてな。えーっとたしか・・・。」

 

落書きのような文字。プレイヤーは気づかないだろう。情報が手に入るクエでもあるのだろうか。だが、アークスならそれが何なのか、情報なしでもわかってしまう。

 

「こっちだな。」

 

文字の感覚からすると仲間を呼んでいる? いや、導いているのか。

 

「なんて書いてあった?」

 

「たぶんだが、呼んでる。仲間なのか…俺たちなのか。」

 

「よく読めたね。」

 

通路を歩きながら次の文字がないかを探した。

 

「俺が普通のプレイヤーじゃないっていうのは知ってるよね?」

 

こくりとハシーシュは頷いた。

 

惑星リリーパ。砂に埋め尽くされた機械達が動く星。先人達は既に滅びており降り立ったアークス達を出迎えるのは機甲種とダーカー。そして小さな小さな獣人族。通称『リリーパ族』。

 

「…ってわけでアークスの知り合いにそのリリーパ族とコミュニケーションを取ろうとしたアークスがいてね。その人と一時期共にリリーパを調査してたから彼らともなんとなく通じるようになってな。」

 

「そうだったの…。その小さな獣人族って、あれのこと?」

 

通路の先に小さな丸い体。尖った耳。ふっさりした毛。間違いない。リリーパ族だ。

 

「りっりっ?」

 

とことことこちらに歩いてくるリリーパ族。エネミーではなくNPCとしてのアイコンだ。こちらを攻撃してくることもないだろう。

 

「どうしたの? 君。」

 

「りり…。」

 

甲高い鳴き声。つい懐かしくてホンワカする。ミケがいたら蹴り飛ばすだろうが。あいつがいなくてよかった。何故か蹴りたがるんだよな。ミケ。

 

「どうやら仲間とはぐれたようだな。そうだろ?」

 

「りー!」

 

どうやら当たったらしい。」

 

「りりり! りり! りりりり!」

 

「…何を言ってるの?」

 

ハシーシュは困っている顔をしている。そりゃ言葉が通じないんじゃな。

 

「えーっと。んー。たぶん、仲間はあっちにいるのはわかるんだけど、襲ってくる奴らがいて帰れない。かな?」

 

「リー!」

 

喜んでいる。どうやらあたりらしい。

 

「よくわかるね。」

 

「いやでもわかるさ…。あの人と一緒だったら。」

 

リリーパ族とコミュニケーションを取ろうと奮闘したアークス。フーリエ。彼女のリリーパ族を守ろうとするその思いは本物だ。よくこの気まぐれな獣人族と一緒に動き回れるものだ。いや、こちらも似たようなものか。あのミケに比べれば。

 

「連れていけばいいの?」

 

リリーパ族の頭を撫でるハシーシュ。どうやらその愛らしい姿を気に入ったらしい。

 

「そうだな。このままじゃ可愛そうだ。どうせこのまま奥まで行かなきゃならないんだからな。連れて行こう。こいつをたのむ。戦闘は任せろ。」

 

リリーパ族を抱きしめこくりと頷いたハシーシュ。リリーパ族も優しく包み込むその腕の中で落ち着いている。暴れなくてよかった。おれが昔やったとき暴れたんだよな。

 

槍を取り出しながら昔を思いながら先を見つめた。

 

 

遺跡最下層と思われる。場所。

 

先程までのエネミーが動き回っていた場所とは違う。

 

「りりり!」

 

リリーパ族が一声鳴くと周囲にあった小さな穴からたくさんのリリーパ族達が顔をのぞかせた。

 

「いっぱい、いる。」

 

「仲間かな。離してやりな。」

 

ハシーシュが名残押しそうにゆっくりと下ろしてやるとリリーパ族はとことこと歩いて仲間たちの元へと帰っていった。

 

「さって、俺たちの目的はここかな?」

 

「にしては少し違うような…。」

 

先程まで遺跡だったのが最後の階層だけ自然の洞窟のようだ。近くには小さな泉もある。天井は高く、地上に空いた穴なのか、陽の光が差し込んでいた。

 

「困ったな。…ん?」

 

「りりり。りり!」

 

先ほどのリリーパ族がこちらにこいと言っているのか、ズボンの裾を引っ張っている。それをみてハシーシュと顔を合わせ頷きあった。

 

リリーパ族の後をついていくとそこには壁画が描かれていた。どうやらこの遺跡の地図に見える。

 

「これは…。」

 

「ここ。この子達の住処。この先にまだ遺跡ありそう。」

 

最深部かと思ったが、実はまだ先があるようだ。彼らはこれを見せたかったのか。

 

「ありがとな。」

 

「りり! りりりり! りりり!」

 

何かを言っている。この感覚はたしか。

 

「えっと、別の仲間が…? 向こう? いった? 帰ってこない。」

 

「つまり…別の子が…帰ってこないってこと?」

 

たぶんそうだろう。彼らが心配そうにしているところをみると、こちらにそのリリーパ族を探してきてほしいのだろうと推測した。

 

「わかった。探してきてやる。どうせ奥に行くのだからな。」

 

「うん。見つけたら、連れてくる。」

 

「りり!」

 

リリーパ族達は嬉しそうだ。どうやら伝わったらしい。

 

「ようし。ならば先へと進むか。」

 

「うん。わかった。」

 

洞窟の先にまだ道があった。その先にいるのだろう。そして本来のクエストの目的地があるのだろう。そしてオキは感じていた。

 

この先にいると思われる、強者が待っていることを。

 




皆様ごきげんよう。
すみません。今回はかなり短いです。時間があまりなくて進めることができませんでした。
とりあえずきりのいい所まで!

さて、PS4版が追加され大和も導入されて落ち着いたPSO2ですが、いろいろ問題もありますね。各所で話題になっているモノは多数あります。一つ一つ落ち着いていくことを願うばかりですね。

では次回にまたお会いしましょう。

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