SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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オキたちがホロウエリアを完全攻略した後、アインクラッドでは80層をクリアしていた。そんな中一人の男がアスナに声をかけたところから始まる。


第54話 「偽りを抱えし妖精の女王」

「どうしようか。」

「ふむ。これは私だけでは判断がつかないな。…ああ、オキ君丁度良いところにきてくれた。」

「んー?」

オラクル船団ギルド拠点大会議室にて、ギルド間会議の開始前。

キリト、アスナ、ディアベルが先に来ており、オキが部屋に入ると何か困っている顔でこちらをみた。

「どないした?」

「いや、実はアスナのところに…。」

キリトが説明をしてくれた。アスナが一人で街で買い物している最中に一人の男が話しかけてきたそうだ。その男はギルド連合に入りたいといってきたらしい。

「私に話しかけてきたのは『有名な神速のアスナさんとお見受けしてー…。』って言ってたけど…。」

アスナの二つ名。彼女もこのギルドの中でキリトの次にレベルが高い。プレイヤー勢の中でもトップ5に入るだろう。極めつけはユニークスキル『神速』も持っている。だからこそ彼女を見つけ話しかけてきたのだろう。その話で納得したオキはその男のことを聞いた。

「ソイツとギルドの名前は?」

ディアベルが既にアルゴを通じて情報を持ってきてくれたらしい。情報を書いた羊皮紙を渡してくれた。

「ギルド『ティターニア』。リーダー『アルベリヒ』。ここ最近急激に力を伸ばしたギルドか。悪い噂、なし。いい噂…なし、か。」

「情報が少なすぎるのも少し気味が悪い。いくらなんでも短期間過ぎる伸び方だ。」

「俺達がまだ知らない何かの情報をもっててソレを利用して力を手に入れたっていうなら、話は分からんでもないが。少なくとも会ってみねーとわかんねーな。何とかソイツと会えない?」

ディアベルが頷き、その依頼を受けてくれた。

後日、オキ、ディアベル、アスナが立会い、ギルド『ティターニア』リーダー、アルベリヒと会う事になった。キリトも来たがっていたが、別件もあるけどどうしようとか言ってたのでそっちに行かせた。こっちは問題ないからね。

「やぁ。どうもはじめまして。私がギルド『ティターニア』のリーダーを勤めさせてもらっているアルベリヒと言う者だ。どうかよろしく頼むよ。」

そこに現れたのは見るからに豪華そうな金色に光る鎧を身にまとった男。年齢はディアベル位か。少なくともエギルより若い。剣も見た目で分かる。かなりのレアものだ。装備だけ見ると最前線で活動していると思われる。ニコニコと笑顔で外観はそこそこいい男だ。

「どうも。ギルド連合『アーク’s』。その取り纏めをしている一人。『オラクル騎士団』のオキだ。」

「ほう。あなたが名高きギルド連合の長、そしてイレギュラーズ。お噂はお聞きしていますよ。」

「私はディアベル。アインクラッド解放軍のリーダーを勤めさせてもらっている。今回はオキ君と私が面接をさせてもらう。まず、メンバーのレベル等の情報を渡していただきたい。さしあたり無ければで結構だが・・・。」

「かまわないよ。これが僕のチームメンバーさ。」

淡々と情報交換を進めるティアベル。その途中、チラチラとアスナを見ているのに気づいた俺はアスナの隣にゆっくりと近づいた。

「あの男はアスナとつながりが?」

小声でアスナに聞いた。

「い、いえ。特に。今まであったことも無いわ。」

ただ単に美少女だからだろうか。にしては見方が少々違和感がある。

仕舞いには目が合ったのかウィンクまでしている。相当お熱らしい。おかげでアスナは怖くなったのかオキの背中に隠れてしまった。

「…アルベリヒ君。出来ればこちらの話に集中してほしいのだがね。」

「ん、すまない。いや、あまりにもアスナさんが今日も美しいものだからね。つい。」

俺はアスナを見てアルベリヒを見た。この男、ファンかなにかか? あまりにも熱烈すぎるが。

「・・・ともかく、対談はこれで終了だ。少々待ってほしい。」

ディアベルがアルベリヒの下を離れ、こちらに帰ってきた。アルベリヒに聞こえないようにディアベルに様子を聞いた。

「どうだった?」

人を見る目はオキよりもディアベルのほうが上だ。その為オキはディアベルにアルベリヒと話をさせ、どういう男かを見定めてもらった。

「ふむ・・・。違和感がある。なにか・・・すまない。言葉に出来ないが、少なくとも現状では悪い奴ではない。だが、いい奴でもないと思う。」

内容を俺もよく聞いていなかったが、ディアベルが困惑するほどの男か。

「次はオキ君、頼む。性格が良い悪いどちらであっても一番の問題はオキ君の担当分だ。」

「あいよ。 すまない、アルベリヒとやら。ここからは俺が担当するね。」

「ふむ。いろいろ試験があるんだね。まぁ最前線を行くからには必要というわけか。うんうん。で、何をすればいいのかな?」

「次は腕を見せてもらう。」

オキが担当するは戦闘の実践。実際に戦い、腕を見せてもらう。デュエルの『初撃モード』。最初に体に傷を負わせた方の勝ちだ。これなら命に別状はない。

最前線を走るギルド連合に入り、共に戦うにはある程度のレベルはもちろん、腕も必要だ。極端に言えばレベルは時間をかければ弱い敵でも上げられる。

だが、強敵との戦いは経験がものを言う。一緒に戦うにあたり、腕が無いものはお帰り願っているのだ。なぜならば、その者の命だけでなく、こちらのメンバーにも被害が出てしまう可能瀬があるからだ。

「ほう。腕…つまりデュエルという奴だね。いいだろう。僕の腕を見せてあげよう。ふふん。こう見えて自信はあるんだ。」

かなりの自信家だな。まぁ腕があれば別にどうということは無い。

「では、初撃モードに。」

「了解した。」

モード選択が終わり、双方が武器を構える。相手は片手剣。最初は軽く、様子をみるとしたオキ。

「ところで、一つ聞いていいかい?」

「あん?」

「君は先ほどアスナさんと仲よさそうな雰囲気だったが…どういう関係か聞いていいかい?」

アルベリヒが武器を構えたときに聞いてきた。目が笑っていない。

オキは魔が差してつい冗談を言った。

「俺の左手薬指が見えないかい? あいつもつけてるぜ。」

アルベリヒがこちらの手をみて、アスナを見た直後目を見開いていた。

「なーんてじょ…。」

「そうか・・・。そういう関係か。ふ、ふーん。」

オキは冗談のつもりだったが、アルベリヒは震えて真に受けている。おかしい。アスナの相手、キリトの話は各方面に伝わっているはずだが。少なくとも最前線だけではなく前線メインで活動するギルドなら嫌でも話を聞くだろう。

  『オキの相手はシリカ』

だと。それを知らないということは、情報を仕入れていない奴か、それともかなり中途半端な下層からきたのか。少なくともこの男は上層で活動していた男ではないと予測した。

カウントが1から0に変わる。直後にアルベリヒは飛び上がり、両手に握った片手剣を振り下ろしてきた。

「はぁぁぁぁ!」

「おっと。」

切り下ろし、そのまま切り上げ等で続けてくるかと防御の構えをしてみたのだが。

『なんだ? この男。うごかねぇ。つか続けねーのかよ。』

中腰の状態からゆっくりと立ち上がったアルベリヒはオキを笑いながら指差した。

「は、ははは。よくぞ我が剣を避けれたな。だが、次はそうもいかんぞ?」

「お、おう。」

その後攻撃を何度か防御するも、切り上げ、切り下げ、なぎ払い。全てが遅く、まるで演技でもしているのではと困惑する*ほどだった。

『な、なんだ? この男、ふざけてんのか? 演技をするような…。まるで初めて武器を振るような…。』

「ははは。どうかね。僕の猛攻は。手も足もでないだろ。」

オキが困惑しているなか、アルベリヒはこちらが防御に徹しているのを、自分の攻撃のおかげだと思っているようだ。

「はぁ・・・。まぁ・・・。」

とりあえず様子を見ることにした。このままアルベリヒを攻撃して終わらせてもいいが、なにか違和感がある。時間をかけてその答えを探ることにした。

「君のような男が、アスナさんと? …ははは。笑いがでるね。僕の方が…上じゃないか。」

どうやら若干半切れらしい。勘違いとはいえ、アスナと関係を持っているのがそんなに嫌なのだろうか。

ちょっとからかってやることにした。

「実力が上だからってなんだって、愛する人を幸せに出来ないわけじゃないだろう?」

「なんだと!? おらぁぁぁ!」

アルベリヒは両手にもって片手剣をオキにふり下ろした。ソレをオキは軽く防御で受け、それを跳ね除けた。力をそのまま反射し押し返したというべきか。

アークスの基本技でもある。

ガキン!

「うわぁ!?」

アルベリヒは壁に剣を打ち付けたように跳ね返され、そのまま後ろに倒れてしまった。

「おっと。大丈夫かい? そんくらいで吹き飛ぶとは思わなかったよ。」

「・・・ふ、ふふふ。いや、少しビックリしただけさ。僕はこう見えてもレベル100だからね。」

レベル100は『オラクル騎士団』内では普通になりつつあるレベルだ。それでも最前線でレベル100超え。この男はどこでレベルをどうやってあげてきたのだろうか。どう見ても戦いなれていない。

立ち上がりアルベリヒは腰を低く落とした。

「僕の本気を見るがいい!」

SSを撃とうというのか。隙を作らずいきなり撃つのも考えものだが、オキたちがホロウエリア攻略後に『アインクラッドに実装された新スキル』を使うならば話は別だ。用心し、防御の構えに入ったオキ。

「だぁぁぁぁ!」

おおきな横ぶり。特にソードエフェクトも光らせず、ただ横に力強く振っただけだ。オキはソレを軽く後ろに下がり避けた。

「あんた…本当にここまで戦ってきたのか?」

「な、なにいう! 僕のレベルが分からないのか!? レベル100だぞ!?」

レベルを強調しているが、レベルに見合った動きをしていない。レベルは経験を意味し、経験は動きとなる。それが見えないこの男はいったい何者なのか。

オキは警戒するに値すると結論付けた。

「100だろうが200だろうが。俺からすれば素人以下だ。 そらよっと。」

3度素早い突きを真正面に放ち防御を誘発。その直後に真下からの切り上げで防御を弾き、無防備となった胸部に向かって朱槍を突き立てた。

「うわあっ!?」

攻撃を受けたアルベリヒは再び後方へと吹き飛んだ。

『WIN オキ!』

空中に勝者の名前が浮かび上がる。だが、オキは嬉しくもなんともない。一つため息をついてタバコに火をつけた。

「ふぅ・・・。おもしろくねーの。」

アルベリヒは吹き飛んだ後に、ゆっくりと立ち上がった。その形相は先ほどまでの優男には見えない険しい形相となっていた。

「なんだよこのクソゲー! バグってんじゃねーのか!? 何で僕が負けるんだよ! 思うように動けよ!」

オキは呆れ顔でアルベリヒに近づいた。

「おい。アルベリヒとやら。…お前さんふざけてんのか? ああ?」

オキに睨まれ、怯むアルベリヒ。足を後ろに一歩下げたアルベリヒは一度呼吸を整え、咳払いをした。

「ゴ、ゴホン。ど、どうやら普段の調子が出ないようだ…。ど、どうだったかね? イレギュラーズの君。」

オキは目を瞑り、そのままアルベリヒに背を向けた。

「不合格だ。馬鹿野郎。そんな実力でよくうちに入りたいとかぬかしたもんだ。帰れ。そして大人しく下層で待ってろ。アインクラッドクリアは、俺達がやる。・・・帰るぞ。おめーら。話にならん。」

「あ、ちょっと・・・。」

「う、うむ。そ、それではアルベリヒ。今回は残念ながらということで・・・。失礼する。待ちたまえ! オキ君!」

オキがアスナ、ディアベルを率いてその場を去った。アルベリヒはその背中に向かって叫んだ。

「・・・いいだろう。いつか僕の実力が分かる日が来ます! ソレまで頑張りたまえ! イレギュラーの君!」

「あまりにも言い過ぎではないかね?」

ギルド拠点に戻り、シリカの入れてくれたお茶をすすりながらオキはディアベルに言われた。

「何言ってる。ディアベルも見ただろう。ありゃなにかセコイ手を使ってレベルを上げたか何かでまともに戦いを知らん。あんなのが前線で俺達と一緒に戦われても邪魔なだけだ。」

「う、うむ。確かにそうだ。実際私も同意見だしな。アスナ君はどう思った?」

「うーん・・・。確かにレベル、や装備と動きがかみ合いません。何か裏があると思います。そういう方はあまり入れない方がいいと。私もオキさんに賛成です。」

アスナも真剣な顔で分析結果をしゃべってくれた。

「今一度、アルゴ姉に情報をかき集めてもらう必要があるな。頼むよ。アルゴねぇ。」

会議室の隅。その末席に座っていたアルゴはお茶をすすり、親指を立てた。

「このネズミのアルゴにお任せあレ。」

「さーて。シリカは買い物にいったし、俺もなにか探すかなぁ。」

ギルド『ティターニア』とそのマスター『アルベリヒ』については情報を待つとし、要注意人物としてマークすることとなった。

オキはギルド拠点を後にし、街中をぶらついていた。その時に人と人の間に見慣れた男を見つけた。黒い服に二本の剣を刺した男は一人しかいない。

「お? オーイ! キリ・・・ト?」

声をかけようと叫んだ直後に声を止めた。キリトの腕に絡みつき、体を近寄らせた女性がいたからだ。アスナではない。リズベットやその他ギルドメンバーでもない。

ならば連合の誰か? いや、あそこまでキリトにくっつける女性はいない。なぜなら仲良くするだけなら問題はないが、あまりに極端なスキンシップをするとアスナがヤバイ。いろんな意味で。

なので女性陣は美少年であるキリトを気に入っていながらも手を出そうとはしないしからかうこともあまりしない。

『つまり、ギルド連合外の女性か。ほーう?』

紫色を主体とし、遠くから見てもシンキよりかは少ないが、肌の露出が多く見える。背中には大剣を背負っているため大剣使いなのが分かった。

『あのキリトが嫌がっている言葉を発しているように見えながらも、嫌な顔をしていない? こっちはこっちで面白そうだな。』

オキはニヤリと口元を歪ませて、後を追った。




皆様ごきげんよう。
今週もバタバタでギリギリに書ききるが出来ました。

今回から出てきた男はSAOファンならご存知のあの人。
この男が最終的にどうなっていくのかはお楽しみに。

さて! PSO2、PS4版始動開始!
私はPS4は持っておらず、そのままPC版なので画質設定6を体験しました。
何これすごい。今まで使用していたキャラの輪郭がまるで違うように見えるくらい。
おかげで持っているキャラの半分以上が調整する必要が出来ました。
【敗者】なんかピッカピカでした。

ともあれ、来週から私は西日本を中心に移動することを予定しております。(地震大丈夫・・・だとおもう)
移動は2週間を予定しており、一応予定通り更新するつもりではいますが、もしいつもの土曜日の8:00に更新されていなければ
その週はお休みとご承知置きください。

ではまた次回にお会いいたしましょう。

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