76層にて空間から落ちてきた少女『シノン』はSAOのプレイヤーではなく、プレイヤーが使用しているヘッドギアのシステムを組んだ療養設備をヘッドギアとカーディナルが誤認識した結果から巻き込まれた事が分かった。
「入ってしまったならしかたないわ。クリアすればいいんでしょ?」
「お、おう。」
さっぱりとした性格の彼女は切り替えが早く、誤って入ってきたこの世界にすぐさま慣れた。
また、待っていることも性分に合わないためと戦闘の仕方も教えてくれと来たので丁度レベル上げと戦闘の実践練習を行っていたシンキ、リーファと共にPTを組んでもらいキリト達と交代で戦力となるまで頑張ってもらう事となった。
ちなみにシンキは
「美少女だひゃっほーい。」
と喜んでいた事から暫くシノンに警戒されていたが、気が付けば慣れ親しむ関係となっていたことから相変わらずシンキのコミュニケーション能力に脱帽せざる得なかった。
そして一つ面白い話がシャオから教えられた。シャオがホロウエリアとつながることが可能となったことを伝えられた。予想ではオキが封印を解いていったことからだと推測される。
ホロウエリアはアークス達が調査してきた惑星の原生種等が数多く登録されているらしい。まだ一部しか確認できないらしいが、一つ試したいことがあるらしくその依頼をお願いされた。
「あることをしてほしい。」
「あること?」
「そう。僕の演算では問題ないことが予測されている。君達がもっと楽に素早く攻略する為なのと…。」
シャオは言葉をいったん止め、上を向いた。
「この上にいるアイツと戦う為に。」
どうやらこの上、一番最上階にいる相手を知ってしまったらしい。いや、最初から分かっていたのか。そのためにはある事をしておいた方が良いだろうと準備を進めていたようだ。
「シンキが入っちゃったおかげで少し時間とっちゃったけど、準備は出来た。お願いできる?」
その内容を聞いてから、嫌とはいえない。むしろどうして嫌といえるのだろうか。
「おもしれぇ。そんな事が出来るのか。とはいえ、それチートじゃね?」
「相手からダーカー因子を観測しているといったら?」
そうなると話は別になる。
「先に言え。ダーカー因子はフォトンじゃないきゃ、その存在自体消しきれない。なるほど、確かに必要だな。」
シャオからはその使用法を聞いて必ずホロウエリアで使用することを言われた。
「さって、ホロウエリアへっと。」
定期連絡を済ませ、消耗品を買い足した後にホロウエリアへと向かおうとしたときにシリカがいないことに気づいた。
「あれ、どこいったんだろ。」
普段なら黙ってどこかにいくことは無い彼女にしては珍しかった。
フレンド一覧から確認すると76層のアークソフィアにはいるらしく、一度ホロウエリアで待機してもらっていたハヤマとシャルに連絡を取り、少し遅れると伝えた。
「どーこいったかなあ。」
転送門広場から住宅街等広い範囲を探したが見つからない。メールもしたが連絡が帰ってこない。さすがに心配になってきた。
「困ったな。」
次第に足早になり、既に街中を何周かしてしまった。彼女の所在地は相変わらず76層のアークソフィア内を示している。
「ふーむ…。ん?」
商業地区に入った際に、先ほどは通らなかった道からシリカの反応がようやく見えた。
「こっちか。」
夫婦として登録している為、近くまで行けばどこにいるか分かるようになっている。路地裏の方を示しているアイコンに沿って歩いた。
到着した場所は普段通るような場所ではない裏路地の奥にある店。外側から見て喫茶店のようだ。
「こんなところに? まぁ入ってみるか。」
シリカがいるならと思い入った。
「いらっしゃい…ま…せ?」
入った瞬間目を疑った。なんとシリカがメイド服を着て従業員として働いているではないか。
「シリカ…?」
「オ、オキさん!?」
二人して入り口で固まる。
フリフリのついたスカート丈の長いロングメイド姿。小さな体で出るところも少ない彼女だが、すごく似合っている。
「あら~? オキちゃんじゃない。」
奥からシンキとリーファ、シノンも現れた。同じくメイド服を着ている。
「なにやってんの…。」
「ちょっとねぇ~。説明はするからまずはテーブルについて。」
「こ、こちらへどうぞ。」
シリカは顔を真っ赤にしてテーブルへと案内してくれた。
『とりあえずハヤマんにはシリカがシンキにつかまったから少し遅れるとメールしておくか。』
ささっとメールを送り、ハヤマからは
『シカタナイネ』
と一言だけ返ってきた。状況は察してくれたらしい。
「あの、メニューです。」
シリカとシンキが一緒に水とメニューを持ってきた。
「説明も貰おうか。」
「はいはい。分かったわよ。」
シンキが言うにはこれがクエストらしい。どうやらかなり経験値が入るらしく、ただ従業員を一日やるだけでいいとか。
更にシリカを一緒に混ぜた理由も教えてもらった。
「実はね? このクエストの本当の目的は彼女達の防具を手に入れることなの。」
「防具?」
どうやら今着ているメイド服。防具にもなっているらしく、ステータスもかなり高いらしい。
「防具なら倉庫にいっぱいあるだろ。」
「分かってないわねぇ。可愛い女の子には可愛い服が似合うでしょ。どう? シリカちゃんの格好は。」
「うう…。」
シンキはシリカを俺の前にずいっと出した。すごく恥ずかしそうにモジモジしている。
「うーん…。」
上から下までみる。
「あの…やはり私にはこういう服は…。」
「オキちゃん?」
シンキはわかってるわよね?という目でこちらを見てくる。もちろん俺の趣味を知ってのことだろう。
「シリカ。すっげぇ似合ってるじゃねぇか。というかシンキナイス。何より評価するのはロングだというとこ。やはり良いね。ロング。」
「でしょー! ミニも良いけどねぇ。」
「アークスにも、メイド服ってあるの?」
「あ、気になります。」
シノンとリーファが興味を持ってきた。
「あるよー。そっちの意味とあってるかは分からないけどね。」
アークスにもメイド服がある。ピュアメイドドレスというミニスカメイドとクラシックメイドドレスというロングスカートの2種類だ。偶にその服を着たアークスも見たことがあるが、なかなかいい。
後にメイドとは主人に仕える世話係のような職業だというのをリーファ達から聞いた。
「あぅ…。」
嬉しそうな顔をしているシリカの顔は真っ赤だ。
「とはいえ、勝手にシリカを連れ出すな。」
「えー。」
「えーじゃない。」
まったく。仕方が無いので1日シリカはアインクラッドのほうでお留守番をお願いした。
「ということで、シンキに持ってかれた。」
「大丈夫かなぁ…。」
正直うんとはいえない。だが、本人もなんだかんだで楽しそうだし、手に入るメイド服を見せたかったようで。
『ご主人様♪』
シリカがメイド服を着てそう言ってくる姿を想像した。
「オキさん。顔。」
「いかんいかん。」
どうやら相当にやけていたらしい。気合を入れなおす。
「それじゃあ今日は入り江エリアを攻略しよう。ハヤマん。ちょっとこっちに。」
「なに?」
シャルとフィリアから離れて、シャオからお願いされた内容をハヤマに教えた。
「それマジ? 出来るの!?」
「マジらしい。まだ試してないし、そんなに回数は使わないでほしいとも言われたから、今回のボスエネミーに使ってみようかと。」
コンソールのモニター画面に映る『アイツ』を指差してニヤリと笑った。
「なるほど。確かにアイツなら有りだな。」
今回の入り江エリアの最奥にいるエリアボス。ハヤマ、そして自分ともに何度も戦ったダーカー種。
「いこうか。」
「ああ。」
シャル、フィリアをつれ入り江エリアへと飛んだ。
入り江エリアは浮遊遺跡から見えた海のあるエリアだ。上を見上げれば浮遊遺跡エリアが見える。
「ウォパルだな。」
「だね。」
惑星ウォパル。海が殆どをしめる水の惑星。海岸エリアや海底洞窟のエリア等、かつてあの『ルーサー』が拠点としていた場所でもある。
周囲を見渡すと洞窟への入り口と、海岸のすぐ目の前にある大きな灯台への道が示されていた。
「洞窟は…岩にふさがれておるのう。」
「灯台は扉があるわね。洞窟が入れないならそっちにいくしかないのかしら。」
シャル、フィリアが周囲の状況を教えてくれた。まずは大灯台へ。
ゴゴゴゴ
扉は大きな音をたてて開いた。
「中にいるのはっと…。」
入り口を進み、中へと入ると機械仕掛けの大きな部屋へと出た。奥には階段が見える。そして周囲のエネミーはというと
「リリーパ機甲種ときたか。」
「レベルも低いし、無視でいいかな?」
4本足のみで歩く機械スパルダンAや、スパルダンに銃座を乗っけたスパルガン等、惑星リリーパにて主無き今でも稼動する機甲種たちが部屋の中を歩いていた。
レベルはそこまで高くない。倒してもそんなに経験地にもならない。ならば無視してさっさと上を目指した方が効率も良いだろう。
「よし、危害を加えなければ相手もこっちを向くことは無いレベル差だし、上に行くぞ。」
「了解。」
「わかったわ。」
「了解なのじゃ。」
シャル、フィリアは出来るだけ固まり、機甲種たちに障らないように階段を目指した。
2階、3階と昇ったが、特にエネミーも変わらない。
「ここが4階だが…。げぇ。」
「どうしたの? 見たくないもんでも…げぇ。」
二人して本当に見たくない奴を見てしまった。
「どうしたのじゃ? 二人とも。」
「何かいるの?」
シャルとフィリアも扉の墨から部屋の中を確認した。
部屋には2足歩行で歩き、巨大な剣を持った人型の機甲種が動き回っていた。
「リリーパでもメンドイ奴だ。あまり相手したくないんだよなぁ。」
「アイツ、燃やしてくるからねぇ。よく燃えたミケがこちらに走ってきたなぁ。」
『あつあつなのだー! 一緒に燃えるのだー!』
と、ミケは燃えるとこちらに向かって走ってくるときがある。アークスは多少の炎に焼かれてもちょっと痛いだけですむが、それでも痛いもんは痛い。
なぜミケはいつもこちらを燃えさせようとするのか。理由を相変わらず教えてくれない。いい迷惑だ。
「おかげでいい思い出が無い。」
「攻撃も結構いたいんだディンゲール。」
二足歩行の人型ロボット。巨大な剣を背中に背負った筒のようなモノからでる炎で燃やしこちらを攻撃してくる。
「一気に駆け抜けるぞ。」
「了解。」
「わかったわ。」
無駄な戦闘は避けたい。なのでヘイトが向かない距離を走り、奥にある階段目掛けて走りきった。
次の階も同じような構成だったので同様に走りぬけ、そろそろ最上階に到達するころだった。
「さって、ここは…。お? 最上階らしいな。」
広い広間となっている屋上で屋根が無い。エネミーも見当たらないとこからボスがいる可能性が高い。
「確かモニターには・・・。」
ゴゴゴゴ…
上空から巨大な音を立てて降りてきた巨大な機甲種が1機。
「青いよオキさん。」
「予想してたっちゃ予想してたけど…。」
空中をその巨体で飛び回り、肩部についたミサイルポッドから巨大なミサイルを落とし、脚部についたブースターで空を飛び、更に下部に付いた主砲でレーザーをなぎ払う。
『ホロウミッション開始 エンブリオ・ヴァーダー討伐』
惑星リリーパの地下に広がる広大な地下坑道。その最奥に眠る巨大な戦艦『ビッグ・ヴァーダー』。その頭脳に当たる本体のみが飛び回る『ヴァーダ・ソーマ』。
そのレア種の目に当たる場所が光った。
「くるぞ。狙いはまずブースター部分。アレ壊してしまえばこっちのもんだ。空に飛ばすな!」
「わかったわ。ブースターね。」
「しっかしアインクラッドのエネミーとはかけ離れたエネミーが多いのう。」
そういいつつも武器を片手にフィリアとハヤマが狙うブースター部分の一つを攻撃するシャル。こちらも同様に思いながらも久々に戦う機甲種相手に槍を構えニヤリと口元を歪ませた。
結果から言うと問題にもならなかった。
レベルが上がり、武器も高ランク、対処法も分かっているとなるとお話にならないくらい弱かった。
ゴゴゴ…ズズン
空から落ちたエンブリオは時間も掛からずに撃破された。
「もの足りん感じがするのう。」
「かなり強くなった気がするわ。」
シャルはハヤマとともに行動しているからか、物足りなさを感じ、フィリアは初めてこのホロウエリアに降り立ってからの自分と比較していた。
「まぁソーマだし。」
「WBあったらもっと早かった。」
「無いもんねだらない。」
こちらの要望を即座に切るハヤマ。まぁそんなもんあったらバランスも何もなくなってしまいそうな気がするが。
「オキ、こんなのが落ちたわ。」
フィリアが手にしてきたのはピッケルだった。これで入り江の洞窟前にある岩を壊せるのではないだろうか。
「洞窟へ行こう。」
全員が頷き、大灯台を後にした。
カンカン…ガン!
何度かピッケルで叩くと音を立てて岩が崩れ入り口が開いた。
「道順はあっているみたいね。」
「だな。それじゃあ進もう。」
ピコン
洞窟に入ろうとしたときにシリカからメールが飛んできた。
「ん? 向こうは終わったか。ちょっとつれてくる。」
どうやら向こうのクエストが終わったらしい。こちらも丁度きりが良いのでつれてくることにした。
「すみません! お待たせいたしました!」
「大丈夫じゃ。問題ないぞ。」
「ええ。問題ないわ。」
シャルとフィリアもシリカが来てくれて嬉しそうだ。
尚、メイド服は着ていない模様。残念がってたら背中を叩かれた。
洞窟を進む最中、ウォパルの海底洞窟と似ていることが分かった。
「綺麗ですねー。」
「そうじゃな。なかなかいい場所ではないか。」
「気持ち悪い生き物達がいなければ…だけど。」
苦笑気味に言うフィリア。確かに女性から見ればウォパルの原生種はあまり好まれない容姿だろう。
魚に小さな手足が生えたような生き物や、巨大な貝殻から3又の首が生えたモノ、唯一女性陣に人気があったのは小さなくちばしをつけた二本足でチョコチョコと歩く原生種だ。フィリアやシャル曰く、可愛いらしい。
そんな光り輝く洞窟内をエネミー倒しながら進んでいくと地底湖のある広場へと出た。周囲にはエネミーが全くいない。かといってセーフティエリアでもない。
「…くるな。」
「ああ。」
ハヤマと同時に背中合わせで周囲を確認した。女性陣も警戒をする。
ザザザザ…
地底湖のほうから水しぶきを上げ、こちらに向かってくる巨大な影。
「なぁあれって…。」
「赤い背びれだな。下は容易に想像が出来る。」
ザザーン!
水面から飛び出てきたのは赤い鱗をもった巨大な水生生物。惑星ウォパルの暴れん坊で有名な『オルグケトラス』。
本来は蒼い鱗を持ち背びれも2本の『オルグブラン』だが、赤い鱗を持ち、背びれが2本増えた4本の背びれは異常に発達。その巨体で更に攻撃性の増したレア種が『オルグケトラス』だ。
「とげとげしいわね。」
「じゃなぁ。しかし、負ける気もせん!」
「オキさん! いきますよ!」
女性陣はやる気まんまんのようだ。こちらも負けてられない。
「よっしゃ!やったるで!」
「一番もらいぃ!」
ハヤマが早速走り出し、オルグケトラスへと攻撃を開始した。
『オオオ…。』
弱弱しい悲鳴を上げて、オルグケトラスは地面に倒れた。
「弱くないか!?」
「浮遊遺跡に比べるとあっけないわね。」
シャルとフィリアも手ごたえの無さに少し驚きつつも、無事に終わったことで一息ついた。
「ここら辺って弱めに設定されてんのかね。」
「どうでしょうか。それなら楽でいいのですが…。」
「オキさーん。鍵見っけたよー。」
ハヤマが『さびた鍵』を拾ってきてくれた。オルグケトラスからのドロップ品だろう。
この先で使う場所があるのだろう。一旦休憩をしてから先へと進むこととした。
地底湖を抜けると遺跡のような地下の建物内へと出た。アークスたちはこの場所をよく知っている。
「採掘場跡地か。」
「その地下水路だな。嫌な場所に出たもんだ。」
遺跡のように見えるが、惑星リリーパの地下水路がモデルになっているに違いない。周囲のエネミーもウォパル原生種とリリーパ機甲種がごっちゃまぜになっていた。
「そろそろこのエリアの最後かしら。」
フィリアが周囲を見渡しながら言った。確かにその通りだと思った。モニター上の地図もそろそろ入り江エリアの最後を示していた場所だ。つまり
「アイツが近い。」
「くー。楽しみだ。」
『アレ』を試せると思うと久しぶりにワクワクしてくる。そんな二人をシリカ達は不思議そうな目で見ていた。
「楽しそうね。」
「ん? ああ。以前話したアークスの力。少しだけ見せることが出来ると思うよ。」
「??」
シリカもフィリアもシャルも顔を見合わせて首をかしげた。
また暫く道なりに進むと翼のマークが描かれた豪華な扉の前に出た。
「ここで使いそうだな。」
先ほど手に入れたさびた鍵を差込みまわすと音を立てて扉が開いた。
「翼のう…。嫌な予感しかせんのじゃが。」
シャルが体を震わせておびえている。
「大丈夫ですよ。オキさんたちがいますから。」
「そうだな。それにハヤマんから聞いたけど、黄色い鳥が苦手だって? 今回は赤いはずだから。」
「赤い?」
扉の先はコロシアムのような場所だった。屋根は無く地上まで高い崖で覆われていた。円状となった広場の中心に一匹の巨大ダーカー種が舞い降りた。
『ヒョオオオ!』
「ブリュー…リンガーダ? いや、違う。こいつは赤い!」
「その通り。そのレア種。俺達がコイツらと初めて出会ったときに最初の相手をした…ノーブ・リンガダール!」
真っ赤な体に両手に握った槍はハルバードに変わり、頭のとさかも形が変わっている。
「さって…試させてもらうかな。」
「久々にアイツで戦えるなんてね。楽しめそうだ! シリカ、シャル、フィリア! ここは俺達に任せてくれ。」
オキとハヤマの体にノイズが走るのをシリカ、シャル、フィリアが見た。その直後に持っていた武器が変わった。シリカは後にこう語った。
「ハヤマさんの持つ武器は刃部が錆びておりそれでいて何故か刃こぼれをしていない。見るものを魅了するかのごとくその姿が美しく思える武器。オキさんの武器は風を纏い、雷が走り、その元となった生き物の強大な生命力が分かるような気がしました。」
『ホロウミッション開始、ノーブ・リンガダール討伐』
アナウンスが流れ、アークス2名はノーブへと相棒である武器を持ち、戦闘を開始した。
キン!
ハヤマのカタナから円陣の波紋が広がった。鋭い切れ味の波紋はノーブの体を真っ二つに切り裂いた。
『ヒョオオオ…。』
ノーブは結晶となり、砕け散る。直後に光り輝く体を持った少年シャオがオキとハヤマの前に現れた。
『リンクシステム、オールグリーン…問題なさそうだね。』
「ああ。久々の相棒を握れて楽しかったぜ。」
「さすがにこの状態を維持してると、チートすぎるかなぁ。」
ハヤマが名残惜しそうに消えていく相棒のカタナを見ながらつぶやいた。
『本当はずっと使わせてあげたいけど、カーディナルへの負担が半端なく増えていく。だから、あまりむやみやたらに使うことはまだ不安定だからやめた方がいい。』
「連続使用テストもどこかでやりたいな。」
シャオがオキの言葉に頷いた。
『そうだね。どこかでやりたいね。…それじゃあ残りがんばってねー。』
シャオが消えると、シリカとシャル、フィリアがよってきた。
「今の…は?」
「ああ、今のはね…。」
皆に説明をした。出来るだけ早くクリア出来るようにしようとしていること。アインクラッド最上階に『あるモノ』の存在があること。それらに対処すべき事を実験踏まえて試したこと。
「ま、まるでチートね。」
フィリアが苦笑いしている。
「そうなんだよなぁ。そこがちょっと引っかかるとこでねー。とはいえ、そもそも存在自体がチートの固まりのようなもんだしなぁ。まぁいっかって。」
「確かに。相手の動きを知っている時点でそもそもが…うむ。我は納得じゃ。」
なんだかんだで納得してくれたらしい。ありがたいことだ。
コロシアムの反対側の扉が開き、奥へと進むとまたあの文様の門が見つかった。
フォン…
「これで次のエリアにいけるな。」
「次は…大空洞エリア?」
ハヤマが地図を確認しながら言った。
「うん。さぁ進もう。」
大空洞エリア。場所は中央管理室のある区の増したに当たる空洞内部。地下水路のような遺跡から急に近未来的な建物の内部へと変わった。
「なんだか、不思議な場所ですね。」
「ああ。これは見たこと無い場所だな。」
今まではアークス達が調査してきた場所がモデルになっていることが多かったが、今回の場所は見た事が無い。
「注意して…。」
進もうといった矢先だった。
「キャアァァァ!」
「フィリア!?」
足元が急に開き、フィリアが下へと落ちていった。
「落とし穴か!」
「くっそ。…シリカとシャルは一度戻れ。お前ら疲れてるだろ。俺達で何とか探すから。」
「で、でも…。」
「シャル。お願い。」
「…むむ。そうやってお願いされると…反則じゃぞ。」
シリカとシャルは転送ゲートから中央管理室へともどり、二人がアインクラッドへと戻ったのを確認した後、ハヤマと頷きあい二手に分かれて下への階段を探し出した。
「無事でいてくれよ…。」
「いたた…一体何なのよ…。まずいわね。一人になっちゃったわ。」
落ちてきた穴を見上げながら周囲をすぐさま確認する。エネミーはいない。今のところ安全のようだが、気が抜けない。その時だ。
「へぃへぃ! こいつぁたまげた。そっちから出向いてくれるとはなぁ。」
フードを被り、巨大な包丁を持った一人の男が、フィリアとであった。
皆様ごきげんよう。
前半はホロウフラグメントのアインクラッドルートのシリカイベントでした。
ロングメイドイイヨネ。
さて、今回の途中、ある事をアークス達ができるようになりました。
まだ中身は内緒ですが、今回のキーとなるモノです。(ていうかどう考えてもチート
次回はホロウエリアに出てきたPoHさんとの決戦です。おたのしみに。
では次回にまた会いましょう。