ホロウエリア浮遊遺跡エリア編後編始まります。
空から降ってきた少女を76層に作ったエギルの店(2号店)の上にある宿の部屋へと移動し、キリト、アスナ達に見てもらうように伝え、こちらは待っているフィリアたちのいるホロウエリアへと急いだ。
「すまん。遅くなった。」
「遅かったな。何かあったのか?」
予定よりかなり遅れた理由をコマチやフィーア、フィリアへと伝えた。
「つまり、親方! 空から・・・。」
「それ以上はいけない。」
コマチがよろしくないセリフをはこうとしたので口をふさいだ。
「とはいえ、コマッチー達のご飯も遅らせるわけにはいかないからね。とりあえずキリト達にお願いしてこっちに来た。」
アイテム化させたハヤマ特製親子丼をその場に出した。
「さぁ食べよう。」
おいしそうな匂いを出し、その場にいる全員が手に取った親子丼は笑顔で食べられた。
次の日、先日の続きから攻略は開始された。
「今日はここから最奥までを目指す。まずは目の前にあるこの塔。見た感じ、ここの最奥の頂上とつながってるように見える。」
目の前に聳え立つ巨大な塔。その上の方を見ると塔の上へとつながって見える通路が塔の外側を回るようにつながっていた。頂上からは別の一本が下に見える海の方角へと伸びていた。あそこが次のエリアへの道だろう。
「中に何がいるか分からないから、注意していきましょう。」
フィリアも警戒して塔へと入った。
塔に入ると中は薄い蒼色の石ダタミの通路と少しの緑の草葉で覆われたダンジョン。アークスの二人は外の浮遊大陸がモデルと思われるフィールドから予測はしていたがここまで『龍祭壇』に似ているとは思っていなかった。
「いやー。ここまで似せてくるとはねぇ。」
「だな。内部構造がめんどくさい迷路になっていなければいいのだが。」
コマチの言葉を聴いてオキそとその言葉を発したコマチは深くため息をついた。
「ど、どうしたの?」
フィリアが心配そうに見てきた。シリカもフィーアも同じだ。
「いや、このダンジョンなんだけど…。」
3人に説明した。
『龍祭壇』とは、アムドゥスキアに生息する龍族の聖地たる場所であり、聖域であること。その場所に全く同じ状態であること。そして龍祭壇は迷路のような構造になっていることが多く、どんなアークスでもその迷路状態の龍祭壇で迷子になる。
「あの迷路めんどくさいんだよな。」
「うむ。こっちが出口か? と思ったら反対だったとかよくあるからな。」
進みながらオキとコマチはかつて龍祭壇の面倒な迷路状の構造を思い返しつつ、エネミーを狩った。
しばらく進んでいると索敵スキルに反応があった。
「ストップ。」
全員がその場に止まった。
「どうしました?」
シリカが心配そうに隣へよってくる。
「静かに…。」
もしかしたらあのオレンジプレイヤーかもしれない。そう思い角の先にいると思われるプレイヤー数名をちらりと覗いた。
「…おい。急ぐぞ。」
「ああ。だいぶ予定より遅れている。」
3人ほどの男性プレイヤーが奥へと進んでいた。カーソルはオレンジ。やはり予想通りか。
先へと進んだオレンジプレイヤーが見えなくなったところで、シリカ達を後ろに付け、後をつけた。
3人のオレンジプレイヤーが向かった先には一人の男が待ち構えていた。
「よう…遅かったじゃねぇか。」
『アイツは…!?』
待ち構えていた男は自分が1層の牢獄へとぶち込んだ男。深々とフードを被り、口元だけ見せた着こなし。そして何より彼の代名詞である『友切包丁』が彼の手にあった。
『Poh!? なんでアイツがここに!? そんなはずはない。だってあそこから出られるわけが…。』
オキは再び壁から男達を覗いた。
「すみません。なかなか手強い奴でして…。へへへ…。」
「ふん…。まぁいい。…あん?」
Pohがこちらを見た。
「やべ。」
見られた? いや、たぶん大丈夫だ。ばれてないはず。
「どうしました? ボス。」
「いや? なんでもねぇ。ここは人が来るかも知れねぇ。離れるぞ。」
「へい。」
Poh達は道を外れ、オキが向かう別の方角へと姿を消した。
「…確認を取ろう。」
オキはすぐさまディアベルへと連絡を取るためにメールを作成した。
「…。」
フィリアの様子がおかしいのに気づいたシリカは彼女の背中を摩った。
「大丈夫ですか? 顔色が悪いです・・・。」
「え、ええ。大丈夫。大丈夫よ・・・。」
メールを送りつつ彼女を見た。青ざめた顔がそれを示している。やはり彼女が出会ったのはあいつで決まりだ。
だがどうしてここに? 牢獄に入ってるはずだ。
ピコン
機械音の音が頭に響いた。すぐさま対応してくれたディアベルからの返事だ。
『オキ君の言われたとおりアイツの状態をこの目で確認してきた。何も変わってはいない。武器も確認した。君とこの間確認したとおり、我々の倉庫に入っている。後ほど説明を受ける、でいいかな?』
「あいつは牢獄っと…。ってことはどっちかが偽者、か。まぁどちらかとか言うまでも無いか。」
偽者なのは間違いなくこちらにいる奴だ。本物は牢獄にぶち込んでいる。実際戦い、その手で入れたのだ。
「オキさん。どうする?」
コマッチーが近づいてきた。今のところは様子見するしかない。
「進もう。フィリア。アイツはたぶん偽者だ。どうして同じ格好、同じ武器を持ってるなんかは今後調べる必要があるが、まずは君の安全を確保する必要がある。そのために、ここから出るぞ。」
「…ありがとう。」
こちらの気持ちを受け取ってくれたのか。彼女は気を取り戻し力強く頷いてくれた。
エネミーを倒しつつ、宝箱から武具を頂戴しつつ進んでいくと、普通の扉とは違う、頑丈で特殊な装飾がされた扉が見つかった。
「ここから先はボスクラスのいる可能背が高いな。」
「ええ。いきましょう。」
フィリア、シリカ達が頷きあい、扉を開けた。
「…予想はしてたけど、ね。」
「だーな。しかも白黒じゃねぇか。」
金色に光る鱗を持ち、強固な盾のような巨大な腕。惑星アムドゥスキアの騎士のような存在である『ドラゴン・エクス』。そのレア種とも言われる雌の龍。
『我は剣(つるぎ)! 彼(か)を討つ剣(つるぎ)!』
ノワル・ドラールは巨大な咆哮をし、こちらに威嚇をした。
「ノワル…! 巨体と裏腹にコイツは素早い動きでなぎ払ってくるぞ! コマチ! ヘイト! シリカ! フィリア! フィーア! コマチと俺が真正面から叩くから側面からその盾ぶち壊してやれ!」
「はい!」
「わかったわ。」
「了解。」
『シャアァァァァ!』
再び吼え、ノワル・ドラールがこちらへと飛び上がった。
しばらくノワル戦が続き、特にこちらの被害もなしにノワルを追い詰めていった。
『逃さん!』
ノワルが空中へと浮き、地面へと巨大な盾の先、尖った先端を突きたてた。
「下から来るぞ!気をつけろ!」
「クリムゾン?」
コマチがボケつつ、皆は走り回り地面からの光線攻撃をかわした。
「おらおら!」
ガン! ガン!
コマチが隙を作ったノワルの顔面を攻撃する。攻撃直後にこちらが槍で更に攻撃を加えた。
「そいやぁ!」
バキン!
『損傷…!? 軽微…!』
顔面部の一部が破壊され、これでよりダメージが通るようになった。既に側面の盾もシリカ達の活躍により壊れている。
『これより…全力で参る!』
ノワルの体の一部が赤く発光した。怒りモードに入ったことを示している。逆に考えれば相手のHPは少ないというのも分かる。
『旋刃・一刀断絶!』
ノワルは体を回転させ、なぎ払ってきた。オキやコマチはもちろん、シリカ達もそれをうまくかわす。
『斬り刻む! 連迅・破迅流星!』
今度は3連続の切り払い。真正面にいた俺とコマチは軽くそれをよけた。
「何度その攻撃を受けてきたと思う。体が覚えてんだよ!」
「コマッチー、何度もこいつらと戦ってたってロのカミツさんから聞いてるけど…そこまでやってたのね。」
ロ・カミツ。惑星アムドゥスキアに生きる龍族達を統べる長たる存在。他のものと違い、概念のような存在だ。自分はまだかのモノの全貌を知らない。
「そろそろか…。」
「だな。皆はなれろ!」
「「「はい!」」」
シリカ達が離れ、ヘイトをとっているコマチへとノワルが向き直る。
ノワルのHPも残り少ない。最後の大技を決めてくるだろう。
「とか思ってたらやっぱりやってきたぜっと! コマッチー! 止めろ!」
「あいよぉ!」
ノワルは自分の巨大な盾に力を貯め、巨大な剣を作り上げた。
『消し飛べ! 煌刃・刀一崩潰!』
ノワルの巨大な光の剣はコマチへと向かって振り下ろされた。
「そんなもの、当たるかぁぁぁ!」
コマチはそれを無理やり拳で受け止めアッパーのように振り上げた。
『シャァァァ!?』
ノワルはコマチの振り上げにより、押し上げられ柔らかい腹をさらけ出した。
「ナイス。そんじゃ〆ますかねぇ。」
槍をノワルへと向け、低く腰を落とし、ソードエフェクトを光らせた。
「その心臓…貰い受ける! ゲイ・ボルグ!」
呪いの朱槍『ゲイ・ボルグ』は鋭い突きを放ち、ノワルの胸部へと深く突き刺さった。
『我が闘争に…悔い…無し…。』
小さく一吼えしたノワルはその場へと倒れ、結晶となって散っていった。
「オキさん、そんな技あったっけ?」
「ん? いや、ただなんとなく言っただけ。そう言った方がいいかなと無意識に。」
それをコマチは聞いて納得したようだ。
「無意識なら仕方ないか。」
フィリアが地面に落ちていたドロップアイテムを拾ってこちらへと歩いてきた。
「すごかったわね。あんなのといつも戦ってるなんて…。改めてすごいと思うわ。ところでこんなのが落ちてたのだけれど。」
アイテムは光り輝く玉で『騎士龍の魂』と描かれていた。
「どこかのキーアイテムか何かか? ともかくもってようか。」
しばらく休憩を取った後に、先へ進むと確実にボスフラグが立っている扉を見つけた。
「どうやってあけるんだろ。」
「オキさん、先ほどの玉が必要みたいです。」
扉には『騎士の魂を捧げよ』よあった。間違いなく先ほどの玉だろう。
「皆、準備はいい?」
その場にいた全員が頷いた。
「クォーツはさっき休憩のときに言ったとおりに動くはずだ。色や多少形が変わっていてもほぼ同じ攻撃をしてくる。気を引き締めていこう。」
扉を開け、先へと進むと予想通り塔の頂上へとつながっていた。
頂上は広く平らな広場となっており、周囲には囲うように小さな柱が何本も立っていた。
「ボスはどこに…。」
フィーアが警戒しながら周囲を確認したが何もいない。
「…上だ。」
「エリックかな?」
コマチボケてる暇ないぞ。
ヒュウゥゥゥ…ズズン!
蒼く鋭く尖った鉱石を体に持ったエネミーが猛スピードで降り、地面へ突き刺さった。
突き刺さった先端を地面ごと引っこ抜き、大きく吼えた。
『シャァァァ!』
「…クリス!」
これまたレア種とは。アムドゥスキアの浮遊大陸エリアに生息する超高速で飛行することが出来る龍族の一種。クォーツ・ドラゴン(通称ヲー)。
鎧のように体に纏った青色の鉱石は鋭く、細い体を武器に超高速で飛行する。また鋭く尖った先端の一本角は硬質な地面すらも貫く。
その中でも更に蒼く輝き、より鋭くなった体を持ち、攻撃性の高いレア種、『クリス・ドラール』。
『ホロウミッション開始 【碧き角を抱きし剣の龍】クリス・ドラール討伐』
目の前に再びあの文字が出てくる。
「なるほど、剣の龍王ねぇ。間違っちゃいないが。」
「来ます!」
シリカの掛け声で全員が武器を構えた。
ゴゥゥ!
クリスは翼、体の側面にある突起物からジェット気流のようなものを出し、勢いよくこちらへと突進してきた。
「おお、はやいはやい。」
「でも、直線的だからよけやすいわね。」
「当たったら痛そうです・・・。」
オキとシリカ、フィリアのいる真正面へと突っ込んできたクリスは二人に簡単によけられる。その直後体を素早く反転させ、再び突進してきた。
「そんなのに当たるかよ。」
「ほんと、分かりやすいわね。」
今度はコマチとフィーアを狙っての突進。それを避けクリスの動きが止まった。
「いまだ!」
「はい! てやぁぁ!」
「はぁぁ!」
シリカ、フィリアもこちらの攻撃に続き、側面へと回り込み攻撃を仕掛けた。
「こっちも、おらぁぁぁ!」
「っやぁ!」
コマチフィーアもそれに続く。
『シャァァァ!』
クリスは攻撃を受け、邪魔だといわんばかりに角を振り上げ、振り回しの予兆を見せた。
「逃げろ!」
振り回しが来たころには皆が範囲外へと逃げていた。
『シャァァァ!』
クリスがその場に止まり、力を溜めだした。クリスの真上には白き氷柱のようなものが多数、作られた。
「ファンネルか。…コマッチーいったぞ。」
「あいよぉ。」
多数の鋭い氷柱状の剣はコマチ目掛けて飛んでいった。コマチはクリスの周囲を走り回り、それを避ける。その間にこちらは攻撃を再びクリスへと放った。
「よっと。」
クリスの翼の先端にワイヤーを伸ばして引っ掛け、上空へととび上がり落下のスピードも合わせて槍を翼へとつきたてた。
バキン!
『オオオオ!?』
翼についていた鉱石が破壊され、クリスが怯んだ。
「擬似ヘブンリーフォールってなぁ。怯んだぞ。やれ。」
顔面部へと移動した各々は自分の出せる最大火力をクリスの弱点でもある顔面へと叩き込んだ。
ガキィン!
今度は角が破壊され、柔らかい鼻にあたる部分が露出した。
『オオオオ…!?』
再び怯んだクリス。こうなってはこちらのターンが続くことになる。
「そいやぁ!」
6連撃SS、槍の最終奥義を露出した部分へと放つ。他のメンバーも再びSSを放った。
HPが一気に削れる。ここまでくるともはや勝負はついた。
『オオオオ!!!』
「なに!?」
クリスが怯みから急に回復し、巨大な咆哮を放った。
勢いをつけ上空へと飛んだクリスは塔の周辺を飛び出した。
「突っ込んでくるな。さーて誰かなー。皆はなれてろー。突っ込んできたら突っ込んできた方向の横に逃げるように。」
狙ってきたのはこちらだった。
ゴォォォ! …ズシャァァア
鋭く勢いのある突進をしてきたクリスだったが、着地する際にバランスを崩したため、地面へと体を擦り倒れた。
「はん。馬鹿め。翼壊しておけばそうなるとは思っていたが、そこまで忠実に再現とは恐れ入るね。」
倒れた場所へと走って移動し再び攻撃を放つ。立ち上がったところで再度離れ、攻撃に備える。この繰り返しでクリスは終わる。
『シャァァァ!』
再び上空高く飛んだクリスはこちら目掛けて急降下をしてこようとした。
ごぉぉ! ズン!
地響きと揺れを起こしながら地面へと突き刺さったクリス。しっかり避けた俺はコマチと共に突き刺さったままのクリスを見てにやりと口を歪ませた。
「そんなに突き刺さりたいか?」
「ならば望みどおりだ。オキさん。」
「任された。そおりゃ!」
突き刺さった角のあると思われる地面へと槍を深々と突き刺した。クリスがそれを抜こうと力をこめるが槍が引っかかりそれが出来ない。無理やり地面ごと持ち上げようとしたがコマチがそれをさせなかった。
「おらおらおらおら! 埋まりやがれぇ!」
クリスの額部を地面へと向けて殴り続け、地面から抜けないクリスの頭は上下に揺れていた。
『オオオ…。』
とうとう力尽きたクリスは地面に突き刺さったまま倒れ、そのまま結晶化し砕け散った。
「はん。どんな気持ちだ。」
「普通じゃ出来ないことをここでは出来るってのが楽しいわ。」
拳と拳を打ち合いながら女性陣の待つ場所へと移動した。
「ひどいものを見た気がします。」
シリカ達はその光景を見て苦笑いだった。
『ホロウミッションクリア』
「…お? 何か貰った。」
ボスクラスを倒した為に報酬がもらえた。中身は蒼い鋭い結晶が刃となったダガーだった。
「ダガー、『剣龍の蒼小剣』か。シリカ。もってろ。」
「え? うわ! い、いいんですか?」
「別にかまわん。というか多分その要求値、もてるのはシリカだけだ。」
『剣龍の蒼小剣』はステータスが高く、魔剣クラス。比較できる同等クラスは俺の『ゲイ・ボルグ』等数本がいいとこだろう。
それを装備できる要求値を満たしているのはシリカだけだと思われる。フィリアもダガー使いだが…。
「うん。私じゃ無理ね。高すぎるわ。」
ステータスを確認したフィリアは首を振った。
「分かりました。ありがたく使わせてもらいますね。」
早速装備したシリカの腰に蒼く光るダガーが装着された。いままでのダガーは50層での『あのダガー』。ステータスはかなり高い部類だったがそろそろ火力不足だろう。丁度よかったかもしれない。
「きゅる。」
ピナも同族である龍の気を感じたのか、少し嬉しそうだ。
「さぁ下へ行くぞ。これでそこが開くはずだ。」
海のエリアへと続く門を手のひらの紋章で開き、長い坂を下り始めた。
皆様ごきげんよう。
ようやくホロウ編の流れが完全に決まりました。
まだまだしばらくアインクラッドは完全攻略できそうにありませんね(
自分で書いてて、長くなるのがわかりきってしまいました。
でも最後までしっかりやり遂げます。楽しみにしておいてくださいね。
でh次回にまたお会いしましょう。