アインクラッド攻略をキリト達に任せ、ホロウエリアの攻略を進めていた。
アインクラッドは77層をクリアし、順調に進んでいると聞いている。
今回はコマチとフィーアをつれてのエリア踏破を目指し、『バステアゲート浮遊遺跡』を進んでいた。
「しっかし見れば見るほどアムドゥスキアだな。」
「だねー。これで敵が龍族だったらまんまだったな。」
周囲にいるエネミーは竜ではあるが、ワイバーンや巨人系のエネミーが多い。
「コマチやオキは、こういう所を走り回ってるのね・・・。私には考えられないわ。」
浮遊遺跡はまるで地面が浮いているかのような高度の高い場所に地面が浮いている。下を見れば青い海が広がっているのが分かる。
高所恐怖症の人は間違いなく足がすくみ進めないだろう。フィリアは下を少しだけ覗き、体を震わせた。
エネミーを狩りつつ、奥へと進むオキ達。
「・・・くくく。」
「どうしたんです?」
いきなり笑い出したオキにシリカが顔を覗かせてきた。
「いや、ついシンキと出会ったときの事を思い出してね。アイツとであったのは浮遊だったなぁって。」
コマチがうんうんと頷きながら同意した。
「確かに。あの時は・・・ひどかったな。」
「ツクシ死すべし。慈悲は無い。」
ツクシという言葉にシリカもフィーアも顔を見合わせ首をかしげる。ツクシとは一体? 普通のツクシのことを示しているのではないというのはわかっているようだが。
それに気づいたオキがツクシという言葉について説明しようとした。
「ああ、ツクシってのはね・・・。」
ゴゴゴゴ・・・
地面が急に揺れた。
「キャ!」
「ゆれるなぁ。地震か?」
「いや、何か来るな。」
オキの索敵になにかが引っかかる。地面の中を進んでいるようだ。
ゴゴ・・・ドーーーン!
地面から蛇のように細長く、それでいて顔は竜。青い伸びる体。小さな足が4本生えたシリカ、フィーアが今までに見たことが無い歪な生物が出てきた。
『キシャァァァ!』
アークス二人はそれをよく知っている。クォーツドラゴンがいるんだ。こいつももしかしたらと思っていた。
「オキさーん・・・。噂をしたら何とやらだよ。」
「だーな。呼ばれて飛び出てきたな。」
「まさか、つくしって・・・。」
フィリアがオキ、コマチの二人を見た。二人は口を合わせてそのエネミーの名前を叫んだ。
「「なぁ! キャタドランサ!」」
惑星アムドゥスキアの浮遊大陸に生息するキャタドランサ。かつてオキ達を数で囲い、危機的状況に追い込んだエネミーの一種だ。
『ホロウミッション開始』
キャタドランサ1体討伐を目標にミッション開始のアナウンスが流れた。
『シャァァァ!』
「エマージェーシーコール」
「アタァック。・・・懐かしいな。もう二年近く聞いてないのに頭に残ってるぜ。」
オキとコマチが懐かしきアークスのアナウンスも真似して武器を構える。
「懐かしんでる暇はなさそうよ!」
「オキさん! きます!」
フィーアとシリカ、フィリアも武器を構え、キャタドランサの攻撃に備えた。
「おわっと!」
キャタドランサは体を伸ばし、こちらに向けて顔を突っ込んできた。
「シリカ! フィリア! フィーア! あいつの体は見て分かるとおり伸ばしてくる! 予想以上に伸びるから気をつけろ!」
「はい! ・・・たしかにツクシに見えます。」
「そうね。見えなくも無いわ・・・。どうしてかしら。」
キャタドランサは伸ばしたときに鱗で覆った場所から柔らかい肉体が見える。その時にツクシのような細い、太い、細いと交互に見えてしまう為に周りのアークスからもツクシと言われるときがある。
「弱点は尻尾にある鉱石を壊せば出てくる! 後は伸ばしたときの柔らかい場所。そこを狙え。」
「分かったわ。コマチ。」
「こっちでヘイトとるから、コマッチーフィーアさんはケツやって!」
伸ばして固まっているキャタドランサの顔面に槍を突き刺す。それによりヘイトがこちらへと向き、その間にコマチたちが後方へと移動した。
「おらおらおらおら!」
「はぁ!」
コマチとフィーアの攻撃が硬い結晶部へと放たれる。その攻撃にヘイトが向かないようにシリカと一緒に真正面でキャタドランサの攻撃を受け流しつつ攻撃を放った。
『シャァァ!?』
パキン・・・!
「っしゃぁ!」
度重なる集中攻撃により結晶部は割れ、弱点がむき出しになる。
「試してみたいことがあったんだ・・・おらぁ!」
「コマッチー!?」
『シャァァァ!?』
コマチはキャタドランサの弱点部を持ち、思い切り引っ張った。
「ウオオオオオオ!」
彼のからだから湯気が立ち上る。スキル『バーサーカー』の『狂歌』が発動されている。
HPが少しずつ減る代わりに通常の何倍もの力を発揮するハイリスクハイリターンなモノだ。
キャタドランサはズルズルと引っ張られ、それに対抗しようと地面に潜ろうと頭を地面に突き刺した。
「やらせねーよ。コマッチー、引っこ抜け。」
槍でそれをやらせまいと、ほじ繰り返しコマチは勢いよくキャタドランサを引っ張り上げた。
「おらあああああ!」
あまりの勢いにキャタドランサは宙を反転し、そのまま地面に背中側から叩きつけられた。
ズズズン・・・!
地面がゆれ、キャタドランサはそのまま結晶となってきえていった。
「・・・ふう。満足。」
「やりすぎヒデェ。」
いくら『バーサーカー』スキルが力技だとはいえ、あのキャタドランサをバックドロップするのはやりすぎだ。
「フィーアさーん…。やりすぎないように注意してよー。」
「もうなれたわ。」
さらりと微笑みながらこちらのお願いも流す。彼女も彼女ですごい神経してるな。
「す、進みますか。」
「きゅるぅ?」
シリカもピナも脱力している。相変わらずだなぁもう。
「おつかれー。」
「お疲れ様。」
「お疲れ様でしたー。」
ある程度進んだところで転移門を見つけ、中央管理室へと戻ってきた。
「じゃあ今回は俺らが見守るから一度帰りなよ。」
「すまんねぇ。コマッチー。」
今日はコマチとフィーアがフィリアと一緒にこの場に残ることとなっていた。PTさえ組んでおけばホロウエリアに残ることが可能だというのが分かった為、ずっとフィリアと一緒にいるシリカ、オキは戻ることとなった。
「それじゃ後でおいしいご飯もってくるね。」
「俺、天丼希望。」
コマチがすかさず天丼を希望してきた。あとでハヤマから『だが断る』といわれたのは別の話。(尚、ちゃんとご飯は作った模様)
76層へと戻った両名は一度ギルド拠点へと戻った。戻った直後にオキは温泉へ。
「ふぃ…生き返るぜ。」
温泉に浸かると今までの疲れが全て溶け出していくような感覚になる。
「…はよ、連れ出してやらんとな。女の子だから風呂もないし。さすがに水浴びだけじゃつらかろうて。」
フィリアは向こうから出られない。ホロウエリアは拠点となる街が無い為に休む場所が無い。いくらVR世界だからといって精神的にくるだろう。
「…となりが騒がしいな。女湯か。」
隣から黄色い声が聞こえてきた。誰かが入っているのだろう。
「ま、別に誰でもいっか・・・。」
興味が無く、それよりも自分の疲れを癒す為にゆったり浸かりたかったオキは再度力を抜いた。
「そ、そんなところ触らないでくださいよー!」
「よいではないかー。よいではないかー。」
どうやら騒いでいるのはシリカとシンキらしい。他にもリーファやアスナの声も聞こえてくる。
「…よくねぇなこれ。」
シリカやアスナだけならまだ気にしない。シンキがいるだけで問題となる。
「おい! シンキ! てめぇ、人様の迷惑考えろ!」
壁の向こうにいるであろうシンキに向かって叫んだ。
「あらー。オキちゃんも入ってたのねー。シリカちゃん、小さいけどなかなか良いじゃない。」
「し、シンキさん!?」
恥ずかしそうにシンキの声を掻き消そうと頑張るシリカ。顔を赤くしているのが目に浮かぶ。
「やっかましいわ! まだ俺だって見てねぇーんだぞ! ちったぁ自重しろ!」
「うん! 無理! あら? きいてー! シリカちゃんね? 顔真っ赤にしてー。」
「わーわー!」
シリカが叫び、シンキの声をふさぐ。
あの歩く下ネタ魔人め。さすがにその答えにオキが切れた。
「てめぇこのやろう。」
オキはその場にあった桶をシンキの声に向かって投げた。壁を乗り越え、桶はシンキへと綺麗に向かって飛んでいく。
「あらあら。よっと。」
壁の向こうから木の跳ねる音が聞こえてきた。その直後、桶は綺麗に弧を描きこちらへと帰ってきた。しっかりそれをキャッチする。
「うわ! あいつ蹴ったな?」
「ふふふ。まだまだ甘いわね。まぁそこまでいうなら別に良いけど。リーファちゃーん!」
「きゃああ!今度はこっちですかぁぁぁ!?」
もはや合唱するしかないオキは心の中でリーファに起きるであろう災難に合唱した。
「散々な目にあいました・・・。」
コマチたちのご飯と補給品を渡す為に、再びホロウエリアへと移動しようと76層へ来たオキとシリカ。
先ほどの温泉での出来事は災難だっただろう。
「すまん。あいつ、いっつもあんな感じでさ。でも大事なときにはちゃんと皆を守ってくれるような奴だ。勘弁してほしいけどな。」
「母親のような方なんですね。」
オキはその言葉にかつて、旧マザーシップでの出来事を思い出す。
『先に行きなさい。リーダー。 こんな自分の惚れた女の生を信じれない盲目野郎の相手なんぞ私みたいなチンケな女1人で十分よ。さぁきなさい。ヘタレ坊や!』
旧マザーシップでルーサーを追いかけている最中。彼の口車に乗ってしまったアークス、テオドール。オキ達の道を阻み、愛する女性であるウルクですら見分けがつかずに攻撃し、オキ達にすらその牙を向いた。それを止めたのがシンキだった。彼女の武器である足技『魔装脚』。だが、本来の彼女の本気はソードを使う。巨大な曲剣『エルダーペイン』を軽々と振るい、力任せにごり押しする彼女はまさに魔神の如きだったと後に我を取り戻したテオドールは言っていた。
「…そんな事があったんですか。」
買い物をしながらシンキとの出会いをしゃべり、転送門へと向かう最中だった。
「ほんと、頼れるのやら、やかましいのやら。良く分からん・・・ん?」
オキは少し上の空に黒い渦のような靄を発見した。
「どうしたのです? ・・・なんでしょう。あれ。」
シリカも気づいた直後だった。渦の中から一人現れ、そのまま落下してきた。
「まずい!」
オキはすぐさま走り出し、その落下地点へと急いだ。
ずさぁぁ
スライディングで何とか地面に叩きつけられる前にキャッチし、その落ちてきた気を失っている少女をみた。
緑色の短い髪、整った顔立ちにすらりとした体が受け止めた腕から感じた。
頭の上にあるカーソルは緑。プレイヤーを示している。
「シノン・・・か。」
彼女の名前が記されていた場所を見ると、そこには『シノン』という名前だった。
大洗に行ってきました。「ガルパンは、大洗はいいぞ。」
皆様ごきげんよう。
今回はすこし短めです。書こうとしたら長くなりそうだったのできりのいいところで止めました。
さて、キーキャラである一人『シノン』が登場です。
これからさらに騒がしくなrそうです。
では次回にまたお会いしましょう。