SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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惑星リリーパ。金属やフォトンの功績が豊富な砂に覆われた惑星。かつて存在した文明により採掘施設が建設されており、地表から地下までが巨大な工場になっている。
主を失ったロボットである機甲種が、今も尚外的排除任務を遂行し続けており、ダーカーはもちろん、アークスに対しても見境なしに攻撃してくる。



第38話 「舞い踊る金黒の鳥」

「くそ…何体出てくるんだよ。」

 

既に何体倒しただろうか。5体? いや、10はいったかもしれない。いくらなんでも多すぎる。

 

惑星リリーパで見つかった新たな採掘場。そこで大量のダーカーが発生しているという情報が入った。今までに無い量の空間侵食を確認したアークスは、緊急任務を発令。ダーカーを殲滅する大規模作戦を行った。

 

もちろん俺たち『ペルソナ』も出動。リーダーオキの指示の下、コマチ、シンキ、クサク、そして自分は惑星リリーパへと降り立った。

 

チームに属さないミケや『怪物兵団』を率いるアインスもメンバーらと共に作戦に参加する。

 

だが、リリーパに降り立った直後、ダークファルス【若人】(アプレンティス)の眷属である大型の虫系ダーカー『ダーク・ラグネ』の希少種、『ダーク・アグラニ』と遭遇。また、同時に沸いた大量のダーカーによって強襲されメンバーとはぐれてしまった。

 

ダーカー大量発生による影響か、それともそれ以外の何かが起きている為か通信が遮断されており、誰とも連絡がつかなくなっていた。なんとか合流しようと皆を探そうにも最近頻繁に発生しだした鳥系ダーカーも大量に出現しておりそれどころではない。

 

それに加え機甲種も襲って来る始末で一度立て直す必要があった。

 

偶然見つけた広い施設に入り込み一息つこうと思って言った矢先に降りてきたのがこいつだった。

 

『ブリュー・リンガーダ』

 

鳥系ダーカー出現と共に現れるようになった巨大ダーカーだ。鳥のような頭に馬の体。そして上半身と下半身それぞれに2本ずつ腕をもっており、上半身の腕が翼に納刀された刀を、下半身の腕が槍を持ち攻撃してくる今までのダーカーとは違った異形のダーカーだ。

 

そんな奴が倒しても次、倒しても次と現れるとなるとさすがの自分もコマチではないが叫びたくなる。

 

「いい加減に…しろぉぉぉ!」

 

この日のダーカー出現率は過去最高クラスとなり、後に新たな仲間となる『クロノス』なる少女を連れてきたオキと合流した時には【若人】も出現していたという情報を聞いた。

 

あの日は忘れない。地獄のようなあの採掘場跡地の戦いを。そして何度も襲ってきたあのダーカーを。

 

 

 

「たしかにあの時は楽しかったさ。今までにない強さをもって、俺と同じカタナをつかって。こんな倒しがいのあるやつがいるんだと。でも、ここまできてお前と遊ぶ気は一切ないよ。」

 

『ヒョオオオオ!』

 

赤いオーラを纏い突進してくるブリューをサイドステップでよける。このあとは大抵あの攻撃だ。すぐさま反転し、ブリューへと距離を詰めた。

 

「思ったとおりだ。」

 

突進から反転しこちらに向いたブリューは上半身につけている輪っかを槍の前に浮かせこちらを狙う。

 

 

ゴォォォ!

 

 

ブリュー・リンガーダ最大の攻撃、竜巻によるなぎ払いだ。

 

巨大なリングから繰り出されまるでビームのように伸びる竜巻をなぎ払ってくる。当時のアークス達はこれにより何人もの犠牲者が出た。

 

「やっぱりこのゲームでもここは安置か。」

 

この攻撃は槍とリングの先から攻撃が繰り出される。つまりそれより前、ブリューに触れる程近づけばまったく攻撃は当たらない。むしろ一度攻撃を始めると終わりまで動かなくなるこいつに対して一方的に攻撃を仕掛けるチャンスともなる。

 

「一ノ太刀…一閃!」

 

居合の構えから横に素早い抜刀。ユニークスキル『抜刀術』のSSがブリューの体に斬りかかる。

 

「二ノ太刀…華扇!」

 

一度納刀し、更に攻撃を加える。今度は抜刀から下に一閃、直後上へと往復し弧を描くように飛び上がる。

 

ブリューは竜巻の攻撃を終え、輪を自分の体へと戻す体勢に入った。

 

「遅い…三ノ太刀。三段突き!」

 

刀を顔を同じ位置に、刃部を上に向け地面と水平に構える。そこから繰り出されるは3回の素早い突き攻撃。

 

『抜刀術』を手に入れスキルを地道に上げていき今では5個のSSが使えるようになった。初めは単体でそれぞれ使っていたのだが、ある日オキと練習している際に一から三ノ太刀が繋がる攻撃だと気づく。SSは基本として使ったあとにスキルストップがかかり、レベルの高い攻撃を出せばその分比例して硬直する時間は長くなる。

 

だが、この『抜刀術』は条件下でそれを無視する事ができると判明した。それは決まった順序でSSを連続でつなげること。また、コンボをつなげることにより、元々のSSの火力よりも大幅にアップさせ繰り出すことができる。

 

『ヒョォォォ!?』

 

顔面に鋭い突きをくらったブリューは吠える。地面に着地したハヤマはSS後の硬直で動けなかったがそれブリューもクリティカルに攻撃をくらい怯んで動けない。

 

「ほんと、大したスキルだね。」

 

初めてこのスキルを本格稼働させてみたが、やはり自分に合っている。

 

SS同士を繋げることによってその間SS後の硬直をなくすことができる。そしてその順序を終えると硬直するという仕組みだ。

 

繋げるタイミングはかなりシビアであり、失敗するとSS後の硬直が待っているがカタナ一筋で生き抜いてきた自分からすれば難易度は高くない。何度か練習すれば安定してつなげることができるようになった。

 

また、アークス時は数々のPAを繋げて戦い、どのPAが繋がり、どのような使い方をするという考案をするのが好きだった為、今回手に入れたこのスキルは自分にどハマリしている。

 

『ヒョオオオ!』

 

怯みから立ち直ったブリューは胴体のリングを空中へと解き放つ。そして持っている槍を振り回してきた。同時に硬直が解除され、素早く後ろに下がる。

 

今度は反対側の腕の持っている槍を振り回してきた。

 

「よっと。」

 

それをジャンプでよけ、着地後に素早くブリューへと近づいた。

 

「はぁぁぁ!」

 

抜刀術を手に入れてから、今までのカタナの扱いと違い普通に攻撃を加える際も納刀から抜刀への攻撃が可能になった。これによりアークス時の時とまったく一緒の攻撃の仕方ができるようになる。更に無理やり合わせていたPAの形も自然な形で繰り出す事ができるので今まで以上に攻撃のスピードをあげれるようになった。

 

「ツキミサザンカ! ゲッカザクロ!」

 

空中へ弧を描く斬撃を描きながら飛び上がり、そこから下への切り下げから一気に入り上げる。

 

ブリューはこちらを遠ざけようと両腕の槍両方をつかって回転攻撃を繰り出してきた。

 

「甘い!」

 

後ろへと下がりそれをよける。ちらりと空中に浮いている2個のリングを横目で捉えた。

 

リングはクルクルと回転しながらあちこちを飛び回り、赤黒い火の玉を地面に這わせながらこちらへと攻撃してきた。

 

「やっぱり一緒か。」

 

今までの傾向から攻撃パターンは一緒だと見ていたがやはりこの攻撃の仕方もやってきた。ならば尚更やりやすい。

 

地面すれすれに飛んでいるリングに標的を変え、輪に走って近づき、一つに攻撃を加えた。

 

「一ノ太刀 一閃!」

 

『ヒョォォォ!』

 

ブリューもそれをさせまいとこちらに向いて槍をクロスさせ衝撃波を繰り出してきた。

 

「二ノ太刀…華扇!」

 

SSを繋げ、攻撃によりジャンプすることを利用して衝撃波をよける。そしてそのまま突きの構え。

 

「三ノ太刀…三段突き!」

 

素早い三段の突きを繰り出す。攻撃を当てた直後にリング表面にヒビが入ったのが見えた。

 

「もう一回やれば壊れるかな?」

 

SS後の硬直。ブリューが近づいてくる頃には解除され再び輪に向かって攻撃を当てる。

 

「はぁぁぁ!」

 

ブリューのリングはクルクル回りながらエリアを動き回る。それを追いかけながら一振り、二振りとカタナを振っていき、隙を見る。後ろからはブリューが追いかけてきておりいまのところ距離は詰められていないが、いつ攻撃してくるかわからないため警戒はしておく。

 

「ハヤマどの! 地面を何かが這って来ておるぞ!」

 

「わかってる!」

 

シャルが扉から様子を見ていたのかこちらに警告をしてきたが、それはわかっている。

 

もう一つ。動き回っている輪がある。そっちをちらりと見ると、地面に這い回る衝撃波を撃っていた。

 

「っよ! ほっと!」

 

ジャンプしながらそれをよける。脳裏にはあの『採掘場跡地』での戦いが思い浮かぶ。

 

「っへ。お前の動きは見え見えなんだよ!」

 

本体の攻撃を避けながら、リングへの攻撃を進める。

 

「はぁぁぁ!」

 

 

キィン!

 

 

1個が壊れた。これで目障りなのが一つ消えたが、目的はそうじゃない。

 

目標をもうひとつの方へと変更する。

 

『ヒョオオ!』

 

ブリューも後ろを追ってきている。いまのところ変化はない。相手のレベルはかなり上だ。攻撃をまともに喰らえば痛いじゃ済まないだろう。

 

「だから、さっさと片付けるよ。」

 

別のリングに攻撃を加え出す。

 

「一ノ太刀、二ノ太刀!」

 

再びコンボをつなげていく。だが、ブリューはそれをさせまいと邪魔をしてきた。

 

空中で防御をし、しっかりと耐える。

 

「っぐ…。あっぶねぇ! 三まで行けなかったか。」

 

ブリューの槍を防御したとは言え、HPは思った以上に減った。

 

リングはまだヒビが入っていない。もうすこし攻撃する必要がある。地面に着地後、すぐさまブリューから離れた。

 

『レベルの差がここまで出るとはね。思った以上に痛いな。』

 

再びブリューはリングを自分の身体に纏い、こちらへと突進してくる。

 

『ヒョオオ!』

 

「させるか!」

 

避けざまにブリューの足に向かって一閃を喰らわせた。

 

『!?』

 

足を攻撃されたためか、ブリューが一瞬ひるみ突進からバランスを崩す。

 

「やりぃ! いくぜ! フルボッコ!」

 

膝を付いてひるんでいるブリューに向かって走り、空中へとジャンプした。

 

「ニノ太刀、三ノ太刀! 三段突き!」

 

今度はニノ太刀から攻撃を開始する。空中から一気に下へ向かい切り刻み、再び上へ弧を描く。そのまま空中での三段突き。

 

一連の攻撃が全てリングへと当たる。

 

 

パキィン!

 

 

『!?』

 

ブリューがその場で怯み、倒れる。そして胸部に赤いコアが出てきた。

 

ダーカー種に必ずあるコア。小型はそのまま露出しているが、大型になればなるほどそれを隠している場合が多い。

 

ブリューも胸部に隠しており、普段はカバーのようなもので覆っているが、リングを全て破壊することでブリューは一時的に行動不能となる。その時に胸が開きコアが露出する。

 

「一ノ太刀…一閃! 四ノ太刀…陽炎!」

 

横一閃から左右に往復しながらすれ違いざまに4回の斬撃を入れる高速移動での攻撃。あまりの高速の為に霞んで分身の様なものが見えるらしい。

 

そしてそのあとに再び鞘へと入れ、力を溜める。

 

「くらえ! 五ノ太刀! 五月雨!」

 

5回の同時居合い切り攻撃。居合いから五本でる斬撃。攻撃を食らったモノはあまりに同時の攻撃のためによけきれないとか。

 

 

ガキン!

 

 

ほぼ同時にコアへと放たれた5回の攻撃。それによりブリューの残りHPはがっくりと減る。さすがゲームバランスを崩すといわれるだけはある。

 

「まだ、倒れてる時間があるか。コレなら全部つなげることができるな。」

 

一旦離れ、HPを回復する。先ほどの攻撃で減った分を回復し万全の状態にした。

 

ブリューは再び立ち上がり、リングを再び形成する。

 

『ヒョオオオオ!』

 

翼に仕込まれたカタナを抜き、大きく吼えた。

 

「怒ったか。」

 

ブリューは自分がピンチとなると本気を出してくる。その変化のときに必ずカタナを抜くのだ。

 

ココからは先ほどよりも攻撃が鋭くなり、攻撃量も増える。

 

リングが再び空中へと放たれ、ブリューもそれに続く。

 

こちらもブリューの攻撃に注意しつつリングへと目標を定める。

 

『ヒョオオ!』

 

槍をクロスさせ放つ衝撃波。先ほどまでは1個だったのがさらに左右斜めへと飛んでくる2個の衝撃波がカタナから発せられる。

 

それをジャンプでよけ、リングへと攻撃を進める。

 

ブリューは近づき、槍の先を地面へと向ける。それを見た直後にすぐさまその場を離れた。

 

「やっべ!」

 

サイドヘステップした直後に槍の先が地面へと突き刺さる。それと同時に地面からブリューを中心に上へと円状の範囲内で衝撃波が伸びあがる。

 

そこからすばやく距離をつめてきたブリューは刀に手を置いた。

 

「居合い切り・・・!」

 

 

ヒュヒュヒュン!

 

後にバックステップをした直後、目の前に赤い斬撃が空中に多数現れる。反応がもう少し遅ければあたっていただろう。

 

「っへ! 当たるかよ!」

 

リングへと再び三ノ太刀までのコンボを繰り出し、一個、二個とリングを破壊する。

 

『ヒョオオ!?』

 

再び怯み、胸部にある小さな赤いコアが顔を出す。

 

「帰れ。かえるべき場所へ!」

 

一ノ太刀、一閃。横への居合い切り。二ノ太刀、華扇。上下に切り刻む。

 

三ノ太刀、三段突き。三回のほぼ同時突き。四ノ太刀、陽炎。体が二個あるように見えるほどの高速切り。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

五本の同時に放たれる居合い切り。それらが全て赤いコアへと放たれた。

 

「五ノ太刀・・・五月雨!」

 

『ヒョオオオオ!?』

 

ブリューのHPが一気に無くなり、弱弱しい一吼えの後に結晶となって消えていった。

 

「・・・動かん。」

 

やはり5個全てのスキルを連続でやると直後の硬直時間も長い。まだ、動かない。

 

「ハヤマ殿!」

 

シャルがこちらに走ってきて飛びついてきた。もちろんこちらは動けないのでそのまま抱きつかれることになる。

 

「シャル!? ちょ・・・まって! ・・・あ、やっと動いた。」

 

一度、シャルから離れ、落ち着かせた。

 

「すごいのじゃ! なんという動き! 火力! 全てがすごかったぞ! あれだけのレベル差がありながらのスピード! 一体・・・何をしたのじゃ!?」

 

そういえばシャルにも教えてなかったっけか。この『抜刀術』。

 

ま、丁度良い機会かな。初戦としては上々だし、弱点も動かし方もわかった。これからはそれを踏まえて攻略にも使えるだろう。

 

シャルに全てを話した。ユニークスキル。その仕組み、内容。そしてあいつの、ブリューの話。そのときに教えてくれた。先ほどシャルがなぜあのような状態となったのか。

 

どうやら昔、幼少の頃に行った動物園という動物を見て楽しむ場所で大量の黄色い鳥に頭をつつかれたらしい。何でもふれあい場とかで鳥に触れる事のできる場所らしいのだが、そこで誤って兄が彼女の頭に菓子を落としてしまったらしい。それをエサだと思った鳥達がいっせいに彼女の頭めがけてきたということだ。そりゃそんなことされればトラウマにもなるよな。

 

二人が壁に寄り添い昔話をしている時に、ボスのいなくなった広場の奥で宝箱が静かに光っていた。




皆様、明けましておめでとうございます!
2016年ですよ! 皆様の今年一年が良き一年でありますよう。

なんとかできました。ブリュー戦!
何度か採掘場跡地に潜り、資料用に観察しました。
その時にハヤマんと一緒に潜ってたのですが、かつての採掘場跡地実装当初の話でもりあがりましたよ。
冒頭の話のモデルともなった実話です。
キャンプシップから降りた直後(動いてないのに)目の前にソーマ&チェンジオーバー。倒してそこから先に進めばアグラニ&チェンジ(r。
逃げるようにエリア2に進み、これまた追いかけてくるようにエンプレス、倒した後ラグn(r
最後に追い打ちをかけるようにエリア3でのブリューは真っ赤。
これが初めて採掘場跡地実装当日の流れです。(後に地獄の日と呼ばれることに)

さて、抜刀術。ユニークスキルの一つがでましたね。あと持っていないのは?
次回をおたのしみに。

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