SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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惑星スレアのある星系から離れた場所にオラクル船団はいた。
巨大な光を放ち中心にあるマザーシップ。その周囲に何百とあるアークスシップ。
その一つの病室に船団を守った英雄たちが眠っていた。


第34話 「アークスシップ」

シュイン

 

病室の扉が開き、幼い子供と少女が現れる。部屋の中には一人の少女がベッドで眠り続ける一人の青年をじっと見つめていた。

 

「マトイ、オキとの連絡をつけて来たよ。」

 

幼い子供の姿をしたアークスシップすべての管理をするシャオが告げた。

 

「うん。今、モニターで確認したよ。」

 

壁に掛けられた小さなモニターにはオキ達が大きな部屋でサラから現在のオラクル船団の状況を説明されている所が映し出されている。

 

オキ達が惑星ウォパルで意識不明となり連絡が途絶えた際、彼のチームのメンバーがそれを察知し、彼らを早急に見つけた事から今回の事件が発覚した。

 

惑星スレアで起きている1万人の命を懸けたデスゲーム『ソードアート・オンライン』。彼らの意識はSAO内に閉じ込められている事が調査により判明。原因である装置共々アークスシップへと移換した。

 

調べによるとフォトンの力により彼らの命はあるモノの、意識はフォトンを通して装置へと移動、スレアの電子ネットワーク内へと意識を飛ばされていた。

 

シャオの演算により、彼らの意識を戻すには装置を止める必要があり、確実に安全に止めるには装置がつながっているSAO内のカーディナルがSAO終了のプログラムを起動する必要がある事が分かった。カーディナルとの接触を試みる為には近づく必要があり、オラクル船団をスレアへと向けなければならない。これにはすべてのアークスの命もかかわってくる。そのことを知ったアークス達は自分たちの命を救ってくれた英雄、オキ達の命を救うためにそれを承諾。そしてようやくスレアを見つけたのだ。幸いにもナベリウスやリリーパ等、調査しなければならない惑星に向かうには影響はない距離である事が判明し、星に住む人々を混乱させないようにできるだけギリギリの範囲まで近づいたのだった。

 

これにより、カーディナルとの接触を可能とし、SAO内の状況をいち早く知る為に彼らが何をしているかをモニターできるようにした。フォトンを通してならすべてが可能である。

彼らが意識不明になってからも【巨躯】の襲撃、そして【敗者】討伐時に現れた双子のダークファルス『ダークファルス【双子】(ダブル)』に食われたルーサーをコピーし、幾度となく【敗者】をけしかけてきた。だが、アークスの徹底的な防衛により今のところは問題ない。更に【巨躯】に至ってはオキ達がいない事から

 

『奴らのいない闘争など無意味!』

 

とか言って消えてから100日以上襲撃は無い。

 

【若人】(アプレンティス)による惑星リリーパの採掘基地襲撃は起きているモノの全て防衛しきっている。彼らがいなくてもアークス達は彼らの代わりになるよう、負けないよう日々奮闘している。

 

「あ、手を振ってる。シャオ君、教えたの?」

 

「うん。彼らには見えてないけど、場所を教えてあげた。」

 

「ふふ、元気そう。」

 

笑顔になるマトイ。彼女は惑星ナベリウスで倒れていたところをオキとハヤマが発見。保護した身元不明の少女だった。そんな彼女の正体は10年前のアークスシップへのダーカー大襲撃にて散った二代目クラリスクレイス本人だという事が判明している。そして同じ名前を持つ人物が一名。

 

「ふん。さっさと帰って来い! 馬鹿者が。」

 

ツンケンしている少女は三代目クラリスクレイス。アークスのトップである[六芒均衡]の[三英雄]が1人である。オキとはルーサーとの戦いのときにいろいろあった彼女は、オキに恩がある。

 

「それも伝えておくよ。」

 

シャオは目を瞑り、サラにそれを伝えた。それを聞いたのか、オキは画面に向かってニカっと笑った。

 

「わかってる。やる事終わったらね。だってさ。」

 

「全く、こっちの心配も知らずに。」

 

今はこうして彼らの姿を見ることができるからこそ、安心して彼らの帰還を待つ事が出来る。しかし、それが出来なかった当初、マトイを初めとする数名が寝込むまで彼らの看病をした事実もある。

 

「ふふ。さて、他のみんなの所にも言ってくるよ。見ることはできても聞くことはできないからね。」

 

シャオは共にSAOへと入り込んだアークス達の部屋を回る事にした。

 

ハヤマの眠る部屋に向かうと、アザナミとイオがいた。

 

「やぁ二人とも。」

 

「おや、シャオじゃないか。」

 

「こんにちは。」

 

ペコリと礼儀正しく頭を下げるイオと軽く挨拶するアザナミ。

 

アザナミは六芒均衡の一、レギアスから『ブレイバー』と呼ばれる職の試運転を頼まれていた。そしてハヤマにそれを依頼したのが彼女だ。

 

イオはハヤマらより後にアークスとなった後輩。弓をメインに使うブレイバー。ブレイバーとしての先輩でもあるハヤマに何度も教えてもらった。

 

「やぁ、二人とも。」

 

軽く手を上げて挨拶をする。

 

「彼らと連絡が取れたって本当かい?」

 

「うん。何時でも彼らと話せるよ。何か伝えておくことはある?」

 

アザナミはそれを聞いてうーんと何かを考えだす。その隣でイオが手を上げる。

 

「早く帰ってきて。先輩。って伝えてもらえる? みんな、心配してるって。」

 

「りょーかい。」

 

モニターではハヤマが手を振っている姿が見える。伝わったようだ。

 

「そういえば、ハヤマ君は向こうでもカタナを使っているみたいだけど。」

 

「そうだね。相変わらずだってオキは言ってた。」

 

「ここまで愛してもらえるのはおねーさんもうれしいかぎりだと伝えておいて。」

 

ハヤマにカタナを教えたのはアザナミだ。だからこそ、愛してもらえるのはうれしい物だろう。

 

「他にもあったら何か教えてね。他の人たちの所にもいかなきゃ。」

 

そう言ってハヤマの部屋を後にした。

 

「次はっと…。」

 

続いて隣の部屋へと入る。部屋のプレートにはコマチの名前が貼ってあった。

 

「失礼するよ。」

 

部屋に入るとコマチの布団に手をかけ、今にも剥がそうとしている女性と、それを見ている少女が1人。

 

「…何をやってるの。」

 

「っち。」

 

今絶対舌打ちしたよね。この人。

 

「いんやぁ。なんにも。」

 

「はい。何もしておりません。しいて言うならただ見ていただけです。」

 

はぁとため息をついて部屋の中へと入った。女性の方はシンキ。少女の方はクサク。

 

オキの率いるチーム『ペルソナ』のチームメンバーだ。元々癖の強い彼らだが、彼女らも相当である。

 

シンキ。妖美な姿とスタイルを持ち、すれ違えば誰もが振り返る美女。クサクは幼いながらも大人びた性格であり、シンキに負けない美少女である。だが、問題がある。特にシンキ。

 

「全く、だめだよ。寝ている人を襲っちゃ。」

 

「襲ってないわよ。触ろうとしただけよ。」

 

「です。」

 

変わりないんじゃ。全くこの人たちは。

 

シンキは誰に対しても何かしらの『セクハラ』行為をしてくる。異性同性関係なしだ。とはいえ、彼女なりの信愛の証だとオキは言っていたが。

 

おかげで一時期僕も大変だった。(ガクブル

 

「オキちゃんたちと連絡取れたって?」

 

「うん。これからは少しずつ向こうの情報を貰いつつ、こっちからの情報も渡していくつもりだよ。何か言いたいことある? 今なら伝えれるけど。」

 

「そうねぇ…。いいなぁ。私も混ざりたいなぁ。っていっといて。」

 

「はやく帰ってこないと何があっても知りませんよ。とだけ…。」

 

この人たちは…。相変わらずだなぁもう。

 

「…伝えておくよ。それじゃあ次いかなきゃ。」

 

「あ、シャオ君。」

 

シンキが部屋を出ようとした時に止めてきた。

 

「こっちは大丈夫。私達で守っているから、そんなゲームさっさと終わらせちゃいなさい。って。」

 

「オキさん達なら特に問題は無いと思います。ですが、あまり無理をなさらないよう。と。」

 

「わかった。」

 

なんだかんだで心配なんだな。しっかり伝えておこう。

 

「次は…っと。」

 

部屋の扉をノックし、中へと入る。

 

「あ、シャオさん。」

 

「ご無沙汰しております。」

 

和風の服を着た女性と機械の体を持つキャストの男性がベッドに眠るミケの隣に座っていた。

 

「やぁ。カトリ。サガ。ミケとの連絡がついたよ。今みんなの所を回って伝えたいことが無いかを聞いて回ってるんだ。なにかある?」

 

それを聞いてまぶしい笑顔を見せるカトリ。かなり嬉しそうだ。

 

「はい! みなさん心配しております。あまりご無理はなさいませんようにと。」

 

「私からも同意見だ。」

 

それを伝えるとモニターではミケが大きく手を振っている。それを見てカトリも嬉しそうに笑顔になった。

 

ちなみに僕はこの『人』の事をよく理解していない。僕の演算でもよくわからないあやふやな人物だ。それでも皆を笑顔にするこの人の事は僕も気に入っている。

 

オキに以前この人の事を聞いてみたところ彼もよくわかっていないらしい。

 

『ミケは野良猫のようなモノ。なんだかよくわからない人だけど、それでも面白ければそれでいいから特に気にしていない。』

 

この人を連れてきた本人すらこういっている位だ。一体何者なんだろう。少なくともアークスであるのは確かなのだが。

 

「さて、カトリ。そろそろ今日の修行を始めるぞ。」

 

「えぇ~…。私はミケさんの看病を…。」

 

「ミケは元気そうだぞ。さぁいくぞ。」

 

「ふえぇ~…。」

 

サガに引きずられるように連れて行かれるカトリを見送り、隣の部屋へ。

 

「ん?」

 

「む。」

 

「おや。」

 

アインスの部屋。珍しい組み合わせに遭遇した。

 

「シャオか。」

 

「こんにちは。」

 

白きキャストの男性と、体のラインがはっきりわかるスーツを着る少女。

 

「二人が一緒だなんて珍しいね。」

 

「私が来た時に彼女がいたものでね。世間話をしていたのだ。」

 

「私はみなさんのお見舞いに来ていただけです。」

 

六芒均衡の1。先ほどの三代目クラリスクレイスと同じく三英雄であり、40年前のダークファルス【巨躯】と対峙した張本人。レギアス。

 

そして、一時期はアークスの裏の顔として動いていた六芒均衡の零、クーナ。今はその仕事を辞め、表の顔であるアイドル活動に専念しよくライブをしている。

 

「彼らと連絡が取れたよ。なにか伝えたいことはある?」

 

「そうだな。私からは何も言うまい。彼らが無事で帰ってくれば、それでいい。」

 

クーナの方を向くとモニター画面を眺め出した。

 

「私も同意見です。無事であるならそれで問題ありません。」

 

「りょーかい。」

 

伝え終わると、アインスとオキは軽く頭を下げていた。

 

「全くどうして。彼らは人を助ける為には躊躇しないんでしょうかね。」

 

「それが性分だと言っていたな。」

 

「わかっていますレギアス。私の時も、そういっていたのですから。」

 

クーナはオキ、アインスに恩がある。あの悲しき暴走龍『ハドレッド』。彼の最後を共にしたのは2人だ。その時僕も見ていたが、最後にクーナと2人で大暴れし、とても楽しく踊っていたように見えた。

 

「さて、あまり邪魔するのもわるい。私はここで失礼するよ。」

 

「そうですね。私も失礼します。」

 

二人ともそういって部屋を出て行った。

 

「じゃあ僕も最後の一人を見に行きますか。」

 

最後の一人。僕の縁者、サラ。

 

「おや、シャオじゃないかい。」

 

「マリア。」

 

女性のキャスト。六芒均衡の2、マリア。サラの保護者でもある。

 

「連絡がつける様になったって?」

 

「うん。何時でも大丈夫。何か伝えることある?」

 

「そうさねぇ。」

 

マリアはモニター越しに彼女を見た。そして隣にいる男性を。

 

「ふむ。見た目はまぁまぁだね。後は根性があるかだね。」

 

「…何を言っているか大体想像はつくけど。一応一般人って事を忘れないであげてね。」

 

クラインの事なのは間違いないだろう。保護者としても心配なんだろうか。

 

「大丈夫さ。…まぁこの子がまさか男を引っ掛けるとはねぇ。」

 

「そうだね。僕も初めは驚いたよ。」

 

モニターで笑っているサラを見る。からかうとうるさそうだからやめておこう。

 

「じゃ、僕はもう行かなきゃ。」

 

「ああ。」

 

サラを見てから部屋を出る。彼らがいない間、彼らが守ったこの船団を守らなければならない。

 

それにいくつかやりたいことあるし。さぁ忙しくなりそうだ。




皆さんごきげんよう。
今回はオキ達の眠っている状態のアークスシップ内を描きました。
思ったより短かったかな。
【巨躯】の部分はある鯖がある一定期間こなかったという事件を元に作りました。
偏りすぎなんだよなぁ・・・。
さて、PSO2はそろそろクリスマスイベント期間となりますね。
アーレスも手に入る可能性もあるということで、頑張りたいですね。
では、またお会いしましょう。

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