SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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ラフコフとの戦闘をしながらアジトを探るオキ。
手持ちのアイテムが少なくなったために買い足しで1層を訪れることに。
オキはそこで情報を得るために牢獄を訪れたときにある人物と出会うことになる。


第29話 「牢獄の女王」

「そっち向いたぞ! ヒースクリフ!」

「うむ!」

キリトの声を聞き赤い十字の紋章が描かれた盾を構え、53層エリアボス『クレセント・ザ・ナイトキング』の巨大な大剣から繰り出される攻撃を受け止めるヒースクリフ。

「はぁ!」

ヒースクリフは攻撃を盾で受け止めた直後に、弾かれ硬直しているボスの腕に上段からの切りおろしを行う。

これで数度目だが、何度見てもあの盾はおかしい程硬い。さすがユニークスキルというモノか。

「神聖剣。何度見てもすごいな。守りと攻撃が両方とも成立している。」

隊長ことアインスもうんうんと頷きながら賞賛している。

ヒースクリフがエリアボス討伐に参加しだしてから、その活躍をみたプレイヤーメンバーも士気が上がり、今まで以上に気合が入っている。特にキリトやアスナ、ディアベルが筆頭だ。

「アスナ! スイッチ!」

「了解!」

交互に攻撃を加え、うまくボスのヘイトを誘導している。ボスのHPも残りわずかだ。

「はぁ!」

ディアベルの攻撃が引き金となり、ボスの体は結晶化し砕け散った。

「っしゃあ!」

クラインたちが腕を上げ、勝利を喜んでいる。

「お疲れ様。今日はディアベル君がラストアタックか。おめでとう。」

「いや、今回はキリト君とアスナ君がうまく敵を引き付けていてくれたからこそだ。」

隊長がディアベルを労う。

「だが、ルールは守れよ。ディアベル。」

キリトが近づいてくる。今迄通りラストアタックボーナスを取った人はその前にどのような状況であろうとも、取った人が必ずボーナスアイテムを貰う事になっている。

「わかってるさ。ありがたくいただくよ。」

「ハヤマ君。」

アインスが目で合図してくる。締めろって? 了解。

「あーよ。みんな、お疲れ様! この後54層に昇りアクティベートをしたら各自また自由に動いてもらって構わない。無理せず確実に上を目指していこう。」

「「「おおー!(なのだー!)」」」

「ハヤマ殿! 今日もお疲れ様じゃ!」

「お疲れ様、シャル。」

夜、着物を着たシャルとメイド服を着たツキミと共にお茶を入れに来る。寝る前は必ずの日課になっている。特にあの日以来からは密着してきたり、膝枕や肩もみ等のマッサージも要求してくるようになった。なんというか積極性が増した?

とはいえこちらはまだ考えが固まっていない。彼女に対しての想いと言うかなんというか、それに関しては受け止めなくてはならない。それはわかっている。だから以前よりかは『ほんの』少しだけこちらからも近寄る様にした。

コンコン

「私が出ます。」

扉の方へと近づくツキミ。

「どなたでしょう。」

「その声はツキミ君だね? ハヤマ君はいるかな? 緊急だ。」

声は隊長だ。少し顔がこわばる。

「ハヤマ殿…。」

心配そうに見てくるシャル。ヒトナデだけ頭を撫でた後に心配するなと言って扉を開けた。

「休み中すまない。集合だ。ハヤマ君だけ来てくれ。シャル君、ツキミ君。ハヤマ君を借りるよ。」

隊長の顔が本気(マジ)になってる。これはただ事ではないな。

「了解準備する。会議室? 了解。」

「で? 何があったの?」

大会議室にはコマチ、ミケ、アインス、キリト、ディアベル、リンド、クラインが集まっていた。そしてもう一人。

「やぁハヤマん。」

「アルゴネェ?」

なんだか久々に見た気がする。

「ほんとは今すぐにシャルっちとの話を聞きたいところなんだけド、ちょっとそういう話ができる状況じゃなイ。今度きかせてネ。」

「その件は後にして貰おう。さて、夜分遅くに集合してもらい感謝する。オキ君から情報が入った。ラフィンコフィンの情報だ。アルゴ君。頼むよ。」

アインスの説明に周囲が黙る。

「りょーかイ、タイチョ。」

アルゴからの説明が始まる。内容はこうだ。

オキさんがとうとうラフィンコフィンの主要アジトを掴んだそうだ。幹部である『赤目のザザ』、もう一人の幹部『ジョニー・ブラック』この二人が定期的に行き来しているエリアがあるという。もちろん罠の可能性もあるが今迄の中でも一番可能性が高いとオキさんは踏んだようだ。

「理由は、勘。」

だそうだ。とはいえ、あの人の勘は馬鹿に出来ない。それにそういう時に限って必ず確証を得ている。

だが問題はそこからだ。

「はぁ!? あの人もう向かってるの!?」

何考えてんだあの人! 一人でどうにかするつもりかよ!

「これはあれだな。旧マザーシップを思い出すな。」

アインスが唸る様に呟く。オラクル船団のマザーとなる母体『だったもの』で【敗者】に奪われたもの。それが旧マザーシップ。それを占拠しオラクル船団をつぶしにかかったルーサーを止めるべくたった一人でマザーシップに突っ込んでいったのかオキさんだ。そのあと、追い駆けて行ったらルーサーの傀儡となっていた六芒均衡の三英雄と戦ってる始末。

「あのバカリーダー。まだ懲りてねーのか。」

「相変わらずなのだなー。変わらないのか―。」

コマチとミケもあきれている。

「場所はここの階層の岩場エリアにある隙間。ここは普通に見ればなにも無いんだけド、実は絶妙な隙間があってね。ほんとは洞窟を作る予定だったんだろうナ。その洞窟が丸々残されていル。」

ガタ

「どこに行こうというのかな? ハヤマ君。説明は終わってないぞ。」

立ち上がる俺を引き留めるアインス。

「どこって決まってんじゃん。あのバカリーダーを殴りに行くの。今回ばかりは相手の戦力が分かっていない状態。それを見越して突っ込むつもりだよ。あの人。」

「それくらいわかっているさ。だが、君だけを行かせるわけにはいかない。」

立ち上がる隊長。すでに腰には愛刀が下げられている。

「隊長…。」

「ア、そうそう忘れてた。そのバカリーダーから伝言だヨ。えーっと、『どうせ一人で突っ込んでとか思ってんだろ。アークスのメンバーで来たい奴は来い。待っておいてやる。だが、その他のプレイヤーメンバーはここから先は地獄となる。取り押さえるなんて甘っちょろい考えのある奴は来るなよ? 相手は本気で殺しにくる。迎え撃ち、殺す気が無いとてめーらが死ぬ事になる。その覚悟のある奴だけだ。来ていいのは。それ以外は来るな。邪魔になるだけだ。』だそうダ。」

それを先に言ってほしい。伝言を聞いた後にミケ、コマチが立ち上がる。

「それじゃあうちのバカリーダーを支援しに行きますか。」

「めんどくさい。ささっとおわらせてしまうのだー。みんなが安心して寝れるように!」

二人もやる気のようだ。すでに顔つきが本気である。

「私も行こう。」

「俺もだ。」

ディアベルとキリトが立ちあがる。

「お、おれも行くぞ!」

「私も共に行かせてくれ。」

皆が立ち上がった。

「気持ちはうれしい。だが、ここからは『殺し』の世界だ。君たちはそれでも向かえるか? 立ち向かえるか? オキ君の言う通り平和解決など無理だ。これは冗談では済まされないぞ。」

「何を言うアインス。普段から君たちには世話になりっぱなしだ。この星の、人同士の問題まで解決させっぱなしで終わらせれるわけがない。申し訳がなさすぎる。俺たちの問題は自分達でも解決しなければならない。だろう?」

「あいつらは人の道を外れた外道だ。いくらオキがあいつらの目を反らせたって、別のオレンジプレイヤーによる犯罪は増えている一方だ。一度大元をつぶさねばならない。皆を、守らねばならない。」

「ディアベル、リンドの言うとおりだ。大事な人を守らねばならない。ここでほおっておけば、自分じゃなく大事な人にまで危害が及ぶ! それだけは阻止しなければならない。だから、奴らを止める。殺さなければならないなら…殺す。」

こんな子供まで巻き込んで止める事が出来ない。キリトの言葉に全員が口を閉ざす。だが、ここで止めなければ増える一方だ。更にここで決断しなければ大事な人を失う事になる可能性もある。

「いこう。」

「「「おう!!(なのだ!)」」」

俺の号令により、リーダー各位がバカリーダーに向かって行った。

 

***

 

時は遡り、一週間ほど前。

キィィン!

森林の中の川沿いにある広場で刃の交わる音が響く。プレイヤーがエネミーと戦っている音ではない。時間は深夜を過ぎている。

「そろそろ吐く気になったか? ボスの居場所!」

「うっせぇ! てめぇが死んだら意味ねーだろうが! だから、死ね!」

周囲には数名のオレンジカーソルのついたプレイヤーが転がっている。HPバーは赤色で点滅入していた。

「ひゃっははは!」

「うらぁぁ!」

両手斧を思い切り振り回し、飛び掛ってきたジョニーブラックを吹き飛ばす。

「っぎゃ!」

何とか防御したものの、かなりのHPを持っていけた。さて、仕上げと行くか。

「吐け。命だけは助けてやる。」

「…へへへ。甘いぜ。あんた。」

ボン! ボボン!

複数の爆発と同時にジョニーブラックの周囲に煙が立ち込める。いつのまに仕掛けたんだ?

「今日はこの辺にしといてやるよ。また楽しもうぜー! きゃははは!」

煙が風で流される頃には周囲にいた雑魚どもも一緒に消えていた。

「逃げたか。」

月が映る川へと向かい、覗きこむ。

『酷い顔だ。こんなの、シリカには見せれないな…。』

普段、シリカに見せていた顔じゃない事は自分でもわかるくらいひどい。特に目が。

ぱしゃり

「ふー。冷たくて気持ちいい。」

川の水で顔を洗い気持ちを落ち着かせる。

「また暫くは来ないだろうな。今のうちに装備確認っと。」

ソロで活動しだしてからできるだけ夜に動くようにし出した。その為、よく夜襲を行ってくることが多い。

襲ってきた後暫く立ってから別の行動に移る。それがあいつらの傾向だ

「やっべ。今ので斧もってかれたな。耐久値もう無いじゃん。」

出来るだけメイン武器は温存しておきたい。その為に店やフリマで売っている安い武器を適当に仕入れて使い捨てのように使用している。耐久力の低い武器がほとんどだったのでいつも一戦交える度に一本は壊れるか寸前まで行ってしまう。

まぁスキルが上がるからいいんだけど。アークスのときは多数の武器種を使ってきた。こっちでもどのような状況にも対応できるように最低限は慣れておかねばと思っている。まぁまさかプレイヤー同士で戦ってもスキル熟練度が上がるとは思ってもいなかったけど。

「えっと…げ、もう武器ねーじゃん。仕方ねえ。買い足しいくかぁ。」

あまり街中には入りたくない。以前、グリーンカーソルのついたプレイヤーに罠をはられエネミーに囲まれた時があった。もちろん囲まれることなど何度もあった為に容易に抜け出してやった。他にもオレンジカーソルの無い、グリーンプレイヤーによる罠が何度かあった。一度はめられて、誤ってグリーンカーソルのラフコフメンバーを攻撃してしまい、オレンジカーソルになってしまったこともある。

『カルマ回復イベント…面倒なんだよな。』

オレンジカーソルになってしまうと、街に入れなくなってしまう。(正確には超強力な憲兵のNPCがわんさと襲ってくる)その為それを回復する為のカルマ回復イベントと言われるクエストをこなさねばならない。そんなに難しくは無いが、なんといってもそのクエストの面倒な部分はアイテムの収集。かなりの数を拾う必要がある上に、とにかく見つけづらい。

「はぁ…。できるだけ身を隠していくか。アルゴネェにも連絡とっとこ。」

メールボックスを開き、アルゴに連絡を入れた。

***

 

 

「大変そうだネ。オニーサン? 顔が怖いヨ。」

1層、始まりの街。そこのカフェテラスで落ち合った。ここに来るのも久しぶりだな。

「ははは。困ったものだ。…例の情報、まだ分からんか?」

アルゴには奴らのアジトの情報をかぎまわってもらっている。本当はしてほしくないが、彼女からの強い要望だった。

『情報屋ならば、危険も承知の上。させてもらうヨ。』だそうだ。

「新しく情報を仕入れたけど、一番有力なのは…ここと、こことここ。また全部調べてみル?」

「ふむ…。ま、そうしてみるさ。」

コーヒーをコクリと飲み干し、立ち上がる。

「マァマァ。そう焦らずニ。もう少し話していきなヨ。」

アルゴが俺の肩を持って再び座らせる。

「あまり長居はできんぞ。何時あいつらが何処で見てるか分からんからな。」

あえて人の多いこの街にきて紛れ込んではいるとはいえ、どこで見ているか分からん。念を押しておくのは悪くない。

「しーちゃんから。これ、渡してきてッテ。」

コトリとテーブルの上に置かれたのは手紙だった。メールでの連絡は毎日行っているがこうして手紙としてもらったのは初めてだ。

「ん、受け取っておく。…ああ、そうだ。ついでだ。じゃあこれをお返しに渡しといて。金取らねぇよな?」

「取ってほしイ?」

にやけ付きながら顔を覗いてくる。勘弁してくれ。

「これを渡せばいいんだナ? 預かっておくよ。」

俺が渡したのはここ最近NPCの店で見つけた綺麗な髪飾りだ。緑色の葉のような飾り付けがされており、元気で笑顔のまぶしい彼女にとても似合うと思ったからだ。

「ふふん。離れていても二人は考える事一緒だネ?」

「あ?」

にやけ付いているアルゴ。手紙を指差している。確かに手紙にしては重い気がする。

「なんだ?」

開けてみるとそこにはシリカからの手紙と、数枚の写真が入っていた。全てシリカが写っており、アスナやリズを初めとする女性メンバーとのやり取りを撮っているらしい。

「…そうか。これは早く終わらせてやらないと、心配かけてるな。」

アイテムウィンドウ内でお気に入りに選択し大事にしまう。

「少しは元気でたカ?」

「ああ。元気でた。さってじゃあ行ってくるわ。そっちも無理すんなよ?」

「任せておいテ。」

二人でニヤリと笑いながらその場で別れた。

別れた後、ついでだからと思い、アインクラッド解放軍のギルド拠点へと向かった。

「よぉ。元気かー?」

「オキはん! 最近みぃひんと思ったら、こんなところでなにしてはるん?」

どうやらディアベルは攻略中でいないらしい。いたのはキバオウ含む数名の幹部たちだった。

「いや、ちょっとついでに挨拶をと。ああ、そうだ。これみんなで食べて。49層の名物、『ヒカリマンジュウ』。」

久しぶりに49層へ向かうとレティシアが温かく迎えてくれた。彼女たちの言う上層部、50層の復興も少しずつ行われているようだ。そしてこの饅頭が販売されている事に気づき、買っておいたのだ。本当はうちのメンバーに買ったんだが、また買いに行けばいいさ。

「おお! すまんなぁ! で? どうや? 進捗。」

やっぱり気になるよね。周囲のメンバーも俺のやっている事を知っている為少し顔がこわばる。

「ああ、今の所いくつかの情報をたどって奴らの拠点を探しているんだがものの見事に全部大外れ。いや、一か所だけ惜しかったところがあったな。すでにいなくなってたけど。」

「そうかー。すまへんなぁ。オキさんばっかりに押し付けて。ワイらがやらなあかんことやってのに。」

キバオウがしゅんとなる。俺は肩をバンバン叩きながら笑いながら励ました。

「なーに言ってんだよ。おめーらにはやる事があるだろう。この1層で暮らす人たちを守るって大事な仕事がな。」

「いてて! オキはんにはかなわんなぁ。…せや。目には目を、歯には歯をっちゅうことわざがこの国にある。犯罪者には犯罪者を。ここの奥にオキはんらがぶちこんだ犯罪者がおるで。聞いてみるのもありなんちゃうか?」

その手があったか。

「サンキュー。キバオウ。他のみんなもありがとね。」

「いえ、オキさん方イレギュラーズの力あってこそです。」

「そうです。我々がここを安心して守れるのもイレギュラーズの力あってこそ!」

「すまんな。じゃ、いってくる。」

ギルド拠点の奥、黒い球体の奥にその牢獄はある。

「おーお。いることいること。」

予想より暗い鉄格子の中。その中には犯罪を犯し、攻略組(主にイレギュラーズ)によってぶち込まれた奴らがいた。

「んー…と。」

中を覗き見ると数名の男たちがこちらをおびえた目で見ている。

「なぁあんたら。ラフィンコフィンの情報もってないか?」

「っひい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

え? なんでこんなにおびえてんの?

「やめときな。そいつら、あんたのお仲間さんにぎったぎたにされたみたいでねぇ。特にあんたの顔はここじゃ鬼どころか悪魔のような存在だよ。」

後ろから聞いたことのある声が聞こえる。ってかうちの仲間にぎったぎたって。誰だよ。可能性があるのはハヤマんか、隊長か、それともコマチか。ミケは…てきとーに遊んでぽいっちょしてそうだからないな。

「この声は…たしかタイタンズハントの。」

「おや、覚えてくれているとはうれしいねぇ。ラフィンコフィン、『笑う棺桶』か。あんた、あいつらとやってんのかい?」

「知ってるのか!?」

鉄格子に向かって歩いてくる女性。魅惑力のある体つき、綺麗に整った顔。オレンジギルド『タイタンズハント』リーダー、ロザリアだ。以前、俺とシリカを狙って襲ってきたオレンジプレイヤーであり、初めて接触したオレンジプレイヤーでもある。

「知ってるも何も、あの男からあたしはやり方を教わったんだからねぇ。そこらへんで捕まっている犯罪者たちも大半がそうさ。」

「情報がほしい。なんでもいいからあいつらの事を教えてくれ。」

「そうさねぇ。条件があるって言ったら、どうする?」

まぁそう来るとおもったよ。ちくしょう。

「出してくれってか? そうだな。その情報がウソ偽りない本物であるならば、考えてやってもいい。」

ニヤリと口元を歪ませる。それを見てロザリアはふっと笑う。

「なーんてね。冗談だよ。仮に本当に出してくれたとしても、あたしは出るつもりないよ。こいつらもね。ここで長い間、考えてた。あたい達がやってきたことは、償いきれないことだって。」

「おまえ…。その顔、嘘はなさそうだな。許すつもりもないし、許される事ではない。もうやってしまった事だ。だが、これから起きる事を未然に防ぐことができる。もしお前が少しでも償いたいと思うのならば、なんでもいいあいつらの事、教えてくれ。」

「あんた…。」

俺はその場で頭を下げる。どのような相手であっても、それが犯罪者であろうとも。手助けをしてくれる相手であるならば俺は敬意を払う。

「わかったよ。教えようじゃないか。おい、そっちのも。知ってること全部吐きな。」

「へ、へい!」

どうやらこの牢獄のリーダー格らしい。まるで女王だな。よーやるよ。

「もーないかな。これで売り切れさ。」

粗方情報を貰った。おかげで先ほどのアルゴからの情報と一致する場所がある。そこで張り込めば…。

「さんきゅ。助かったぜ。」

「そうだ、一つ聞きたいことがあった。」

「あん?」

「あの子、元気してる?」

俺は黙り込む。そしてアイテム欄からあれを取り出した。

「ほれ。元気そうにしてるだろ?」

ロザリアに写真を見せる。シリカがリズやアスナと笑いあっている奴だ。

「…そうかい。元気そうならいいよ。よかったね。あんたとあえて。これ、大事な物だろ? 返すよ。」

「ああ。」

何やら不思議な顔をしてこちらを見ている。

「なんだよ。もう何もでねーぞ。」

「いや、もし先にあんたと会っていたら。ここにいるのはあたしじゃなかったかもってね。どこで道をはずしちゃったんだろうね。」

天井を見上げるロザリア。

「この世界にもしって言葉は無い。あるのは現実と結果だけだ。それを後悔しないようにその瞬間を生きる。それが大事だ。今更んなこと言ったって知らん。まぁ今回世話になったしな。ケリ付いたら今度は土産持ってきてやるよ。」

「そいつはいい。美味い物であるなら尚いいぞ。」

ふんと笑い、俺はもう一度ロザリアに頭を下げた。

「協力、感謝する。」

「ああ、守ってきな。大事な人を。大事な人たちを! あたしらみたいなのに、奪われるんじゃないよ!」

背中越しに聞こえてくるその声に対し、腕を上げて握り拳を見せる。やる気が一層強くなったぜ。




皆様ごきげんよう。
ラフコフ討伐に向けて着々と準備を進めていくメンバー達。とうとうアジトをみつけたオキ。
次回SAO内で猛威を振るったオレンジプレイヤー集団「ラフィンコフィン」の討伐作戦が始まります。乞うご期待。

PSO2ではとうとう出ましたね「深遠なる闇」!
実際に戦ってみましたが「うーんこの」ってかんじでしたね。
かつて実装当初の「巨躯」、「敗者」両名?のときと違ってすんなりと倒せてしまったことになんか違和感いっぱい。
でも倒したあとの草原とBGMはPSOをプレイしていた人たちから言わせてみると「せこい」らしいです。アインス隊長も泣いてしまったそうな。

さて、次回の投稿ですが、仕事の関係で遅れる可能性があります。
そのときはご了承ください。(10/30現在半分ほど書き終えてますが残りが間に合うかどうか・・・)

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