SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

23 / 151
第22話 「闇の頂点巨なる躯」

 

無事に要塞ガルグの防衛を果たしたメンバーはガルグの兵達から大量の報酬を貰った。

「よく守り抜いてくれた。これは闇の勢力討伐に使ってくれ!」

要塞の長であるグリズというNPCから『支援物資』という名のクエストクリア報酬。

「どう分けようかこれ…。」

防衛戦で疲れ切った体で進むのは危険と判断した皆はガルグ要塞で一晩を過ごすことにした。

夜、ガルグの会議室を借り、ギルドの長たちと分け前の相談をしている。

「ふむ。アークスの皆が頑張ってくれたおかげだ。オラクル騎士団に3、怪物兵団に3、残りを我々で分けるのはどうだろう。」

ディアベルが提案し、プレイヤー達は妥当だと頷く。もちろん俺と隊長は猛反発。

「ふざけんな。なんでうちがそんなにもらわんといけんのや。全員で半々だ。2ずつ分けりゃすむことやろ。」

タバコの火を消しながら怒鳴る。納得がいかん。

「その通りだ。これは俺たちだけで済んだことじゃない。皆が協力して初めて得た成果だ。私もオキ君の意見に賛成だ。」

流石隊長わかってるぅ。

「俺はディアベルに賛成する。俺たちの所は矢を運んで撃っただけだ。」

「リンド、君たちの働きは大いにある。君たちがいなければあれだけの重さの矢を軽々と持ち運びできず、ビブラスに対して速攻できなかっただろう。」

「ディアベルやクラインも一緒だ。前衛メンバーが俺たちだけだったらどうなっていると思う。前線維持できなくて門まで一直線だ。」

再度タバコに火をつける。キリトが手を挙げたので発言させる。

「俺もオキさんの意見に賛成。少なからず全員で得た勝利だ。分けた方がいい。ラストアタックボーナスとか個人的なボーナスがあるならまだしも、みんなでやった報酬ならそれがいいと思う。」

キリトの発言に悩んだ顔をするディアベルだが一度ため息をついた。

「はぁ…。わかった。キリト君までそういうなら仕方あるまい。双方どうだい?」

クラインとリンドも渋々だが頷いてくれた。これで山分けだ。

「だが条件がある。」

「な、なんだよ?」

ディアベルが条件を提示してきた。先に好きなものを選べと言うのだ。コルの他にも装備やアイテムも混ざっている。その中から山分けをしなければならないが、先に選べと来たか。

「りょーかい。仕方ない。キリト、アスナとはやまん連れてきて。選別するぞ。」

「おーらい。」

ハヤマとアスナ合流後、隊長達と共に報酬の入った宝箱の前に立つ。この中から受け取れという事か。

「とりあえずアスナは女性向けに使えそうな装備品と皆が使えそうなアイテム。ハヤマんは今の所足りてない部分を埋めれる防具品。キリトは武器の選別を頼む。」

「わかったわ。」

「りょーかい。」

「あーよ。」

俺は、ネタ探し。

「なーにか面白い物はーっと…。」

「でたよ。オキさんのネタ探し。」

ハヤマが苦笑しながらこっちを見ている。

「ほんと、暇さえあればネタ探してるわね。」

「いいだろ? 面白い物ありゃ周りに笑顔ができるし、なにより俺が面白い。」

「はいはい。」

アスナもキリトもお手上げのような感じでに呆れ顔。そんなこと気にせず再びアイテムを見ていく。

「武器、防具、アクセ。んーこれ使えるくね?」

「あー、サクラ行きだな。あいつの武器そろそろ交換した方がいいだろ。」

「これどうかしら。」

「ステもなかなか。いいと思うよ。」

それぞれが周りに相談しながらアイテムを選定していく。そんななかで面白い物を見つけた。

「これは…。」

見つけたと同時にアイテム欄に入れ装備欄へと移動させる。

「なんかあった?」

「これこれ。」

服の表示が切り替わり、今迄の軽甲のついた服から一転し、キリトが着ているコート系の服を着てみた。

「おお、懐かしい。普段のオキさんそのままじゃん。」

「だろ? 俺、これにきーめた。防具としてもそこまでとびぬけたものじゃないし、今の着ている奴とあまり変わらないからいいっしょ。」

白いコート風の防具。ステータス自体は現在皆が装備している防具と比べてあまり変わらない。だが、SAOを始める前にアークスとして活動していた時に好んで着ていた服装に似ている。

「へぇ。みんな、服着て戦ってたの?」

キリトが質問してくる。

「いや、みんながこんな服着てたわけじゃない。服自体はあくまでファッションの一部だったからね。防具とかは別だからみんな好き勝手な服着て戦ってた。」

「中には水着とかいるよな。」

「まじかよ…。」

ハヤマのセリフに興味もったキリトだが、アスナに睨まれて再びアイテムを選別する。

アークスは本当に服装がばらっばらだ。スーツのような服で戦う者もいればハヤマの言ったとおり水着で戦ったり。中にはラッピーや惑星リリーパの生物リリーパ族のキグルミを着てアークスをやっている者もいる位だ。ここの皆があれを見たら仰天するだろうな。俺たちからすれば日常茶飯事で慣れたものだが。

アイテムの選別が終わり残ったモノをディアベルに渡し、選んだアイテムはギルド内のメンバーに配布した。

均等に分けたはずのコルも受け取ったが、思った以上の額だった。もう一回あのギルド拠点が買えるぞ。

おかげさまでアイテム補充も充分にできたメンバー一向はエリアボスのいる闇の塔と呼ばれている迷宮区へと足を進めた。

道中に拠点として使える建屋がいくつかあったので利用したが、NPCが殆どいない。

レティシア曰く闇の勢力により要塞より先には人が殆どいないのではないかと言う。流石に25年もあんなのに攻められてたんじゃそりゃ滅びもするわな。

そんなこんなで道中のエネミーをこちらの物量でゴリ押ししながら進み迷宮区前まで到達。

今迄に見たことが無い重々しい雰囲気を出した塔のすぐそばにあるセーフティエリアとなっていた洞窟を拠点とし迷宮区を突破する事にした。

迷宮区事態を一気に駆け上がる為ハヤマ、コマチ、アインス、キリトを頭に少数精鋭で迷宮区に突っ込ませることに。何よりハヤマと隊長がここ数日まともに戦えてないということで少し暴れたいらしい。少し、ねぇ。

精鋭部隊が迷宮区を攻略している間に再度エリアボスの情報をレティシアに確認し、対策を練る事にした。

「レティシアからの情報と要塞ガルグにいたNPC達からの情報をまとめると…『闇の者はかつては巨大な姿で現れたという。その姿は余りにも巨大。人間は何もできずに下層へと生き延びた』と聞いている。また、実際にその姿を間近で見たという老兵曰く『数多の腕を持つ、巨なるモノ』だそうだ。」

ディアベルが情報をわかりやすくまとめたくれた。

「私と同じく騎士だった父上も同じことを言っていた。『巨大な腕、深遠なる力』とな。」

レティシアも更なる情報をくれる。そして思い出した部分も付け足してくれた。

「そうだ。『氷の力』これも付け加えてくれ。同じく父上が言っていた言葉だ。」

ここまでくれば相手の事が容易に想像ができる。アークスだからこそ、だが。

「よーくわかった。今回の戦い、今まで以上にきついぞ。相手は…。」

「オキさーん。ボスエリア見つけたよー。」

洞窟内に声が響く。もう終わったのか!? 半日も立ってないぞ?

「お疲れ様。はやかったな。アインス。」

「ああ、思った以上に短くてね。すぐに到達してしまった。」

座り込む隊長に近づく。

「隊長、敵が分かったぜ。」

「ほう。やっぱりアレか?」

頷く。それを見た隊長とハヤマがニヤリとした。

「【巨躯】。やっぱあいつかー。」

「愛刀が無いのが残念だが。我慢するさ。相手に不足は無い。ただ叩き切るのみ。」

相変わらずである。苦笑するしかない。

「さて、エリアボスの部屋が見つかった。相手もわかっている。その情報をオキ君から説明してもらおう。」

ディアベルによって開始された対策会議。いつもならば彼が司会進行をし、敵の情報を出して最適なメンバーを選ぶのだが今回はアークスの方がよく知っている。そこで選ばれたのが俺だった。

「少し目を瞑って、イメージしてほしい。まず本体。とてつもなくデカいタケノコ。」

数名が噴き出す。キバオウに至っては大爆笑だ。

「あっはっは! だめや! 腹いたい! さ、さすがオキさんやで! あはははは! ダメ…しぬ…。」

笑いすぎで転げまわってる。無理もないだろう。だが真剣な顔で続ける。

「ちなみに今のは冗談ではない。星の1/4位の大きさを持つタケノコ状の形をした赤黒い巨体から山々よりデカい手を持った腕が何本も生えている。顔事態は無いに等しいが目の様なものが数個赤く光り、額部分には赤いコアがある。そこからはアークスですら簡単に貫かれ、運が良くてもカッチカチに凍らされるビームを放つ。名を『ダークファルス【巨躯】(エルダー)』。実際に大きさは見てみないとどれだけのデカさかは分からない。でも俺たちの何十倍、何百倍ものデカさを持っている。今からあいつの行ってきた攻撃を一つ一つ説明する。対処法と一緒にね。今回予想しているのは、盾役が重要不可欠だ。リンドのとこには悪いけど頑張ってもらうからね。」

「おう、任せとけ。」

笑っていたキバオウや苦笑いしていたその他メンバーも真剣な顔つきになっていく。こちらも1年ぶりってとこだ。思い出しながらしゃべらないと。

一通り説明と可能な限りの対処法を説明した後に最後に一言だけ付け加える。

「以上だ。他に質問があるなら後で随時受けるぞ。うんで、最後に。この戦い、必ず勝つぞ。レティシアの為にも!」

「お主…。」

全員を見回す。普段のエリアボス討伐という意味だけじゃない。レティシアの為もある。うん、いい目だ。

「何もかも、すまぬ。」

「いいって事よ。こちらも事情があるのでね。困ったときはお互い様だ。」

その言葉を聞いて頭を下げたレティシアは再度皆にも頭を下げるレティシア。

「よし、準備はいいな? 行くぞ!」

「「「おおお!」」」

次の日、メンバーを選抜しボス部屋の扉を開いた。

部屋の中は真っ暗であり、今迄のボス部屋と違う雰囲気だ。

『よくぞここまで来たな。人の子らよ。』

暗闇の中から扉の外から照らされる光の中に出てくるヒューナルの姿。

「よぉ、エルダー。いや、その姿じゃヒューナルだったか? 倒しに来たぜ。」

先頭に立つ俺が啖呵を切る。それを聞いたヒューナルは不気味に笑った。

『フフフ…ハッハッハ! いいだろう。我が力、全身全霊を持って戦ってやる。』

そういって床に溶け込んでいた。

『最高の場を用意した。来るがいい…。』

部屋中にヒューナルの声が響き、部屋の真ん中にワープポータルが現れる。こことは別の場所で戦うのか。

「入ったが最後。倒すまで戻ってこれない可能性があるな。」

ディアベルの意見に全員が頷いた。アークス以外全員が。

「さって、久々のエルダー戦だ。おめーら久々すぎて床なめるなよ?」

屈伸運動をしながらハヤマ、ミケ、コマチ、アインスを見る。

「何言ってんの。その言葉そっくり返すよ。」

カタナの状態を確認しながら笑うハヤマ。

「どーせただのエルダーさんなのだからなー。ハヤマがなんとかするのかー。」

「ミケも戦うんだよ。全く。」

相変わらずの他力本願のミケと突っ込むコマチ。

「久々の【巨躯】か。ふふふ。ふふふふ…。」

あ、だめだ。隊長がもう戦闘態勢に入ってる。傍から見てやばそうに見えるけど、こんな状態でもしっかり指揮できる隊長ってすごいよな。

「アークスは全員準備OKだよ。レティシア。」

「ああ。決戦の時だ! みなには力を借りっぱなしですまないと思っている。だが、今一度その力を、光の力を貸してほしい! そしてその光で私の愛する国を照らしてほしい!」

うん。やる気満々だな。

「そうだな。あんなのがいたんじゃ夜も安心して寝られねーしな。」

「緊急警報…。」

コマチがボソリと呟く。

「うっさい。…乗るぜ。」

ポータルに全員で乗る。

「…これどうやって起動するんだ?」

「オキさん、上です!」

シリカの示す方を見るとそこには『人数制限オーバー』の文字が光っていた。

「おいおい、マジかよ。少人数でいけってか!?」

クラインが頭を抱える。それに続いて周囲もざわつき始める。

「ふーむこれ何人まで?」

コンソールで調べてみると12人と標記されている。そこまで再現するかよ。茅場彰彦め。

「流石50層。生半可な難易度じゃないな。どうする?」

キリトがこちらを見てくる。

「仕方ない。メンバーを選ぶしかないだろ。行きたい人―。」

参加者を募ってみるが手を挙げたのはアークスの4人にキリト、ディアベルだけ。

「おい、ミケ。なんでお前は手を上げてない。」

「めんどくさいのだー。いきたくないのだー…。」

「はいはい。後でおいしいご飯作ってあげるから!」

「行くのだ!」

ハヤマの誘惑に負けた猫。一匹釣れました。

「となると、アークスは参加だな。」

「ふむ。残りは君たちが決めると言い。何せ私たちは本来初見だ。戦い慣れたメンバーの方がいいだろう?」

ディアベルの言葉に全員が頷く。こりゃまいったな。

「仕方ない…えっと。そうだ、レティシアは人数に入るのかな。レティシア。そこ立ってみて。」

「こ、こうか?」

今俺のPTはレティシア、シリカと3人。表示では2/12となっている。

「なるほど。そういう事か。つまりレティシア+12人って事か。ってことは…ハヤマ、ミケ、コマチ、アインス、キリト、アスナ、ディアベル、クライン…後リンドのとこから2人程盾に特化した人を選抜。レティシアと俺で12+1人だ。火力を重点に置いて、盾役が守る。あいつにスピードはいらないからな。レベルと火力順でこんな感じ?」

「盾に特化した奴だな? ならばジュラとウェインだ。おい。」

リンドの指名により前に出てくる。何度か一緒に戦ったプレイヤーだ。ガッチリとした甲冑を着たま二人。まさに騎士だ。

「盾なら任せろ。必ず守ってやる。」

「我にお任せあれ。」

「頼むよ。今回盾役が活躍する場面多いから。」

メンバーはそろった。残ったメンバーは本来のボス部屋で待機となる。

「すまないシリカ。ここを頼む。」

「はい。お気を付けて…。」

にこやかに頭を撫でてポータルに乗る。

「おっし! 起動!」

ポータルが起動し、12人が特殊エリアへと転送された。

「なんだココ…。」

周囲は真っ暗だが、足場は見える。四角形の床だ。

「なななな! なんだこりゃ!」

クラインが叫ぶ。暗闇で何か光ったらしい。そちらをみると少しずつその姿を現した。

「闇…!」

レティシアが剣を構える。

「なるほど。こんなのがいきなり現れたんじゃ、そりゃ国も滅ぶわな。」

槍を構えながら見上げる。

「確かに闇だね。うん。」

ハヤマも隣でニヤリと笑う。

『さぁ始めるぞ! 猛き闘争を!』

巨大な赤黒い円錐の巨体。側面からでている6本の腕。何度も見たその姿。幾度も戦い感じたその威圧感。

50層エリアボス『ザ・ダークファルス・エルダー』戦。開始。




皆様ごきげんよう。
風邪をひきました・・・。なのでこんかいエルダー戦まで終わらせるつもりだったんですが半分で止まりました。次で50層クリアといたします。
次回「折り返し地点」。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。