SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第1章 ~はじめましてから始めるデスゲーム~
第1話 「デスゲーム」


「おい、おい!!」

「ん…?」

気が付くとそこは見慣れぬ風景の場だった。誰かの声が聞こえ、頭を揺さぶる。

「おい、あんた大丈夫か?」

声の主はオキの目の前にいた。どうやらオキは地面に座っているらしい。

「ここ、は?」

「はぁ? ここは始まりの街から南にでた草原のど真ん中だ。こんなところで寝ていたらモンスターにやられるぞ。」

始まりの街? 草原? いったいここはどこなんだ!? オキは考えた。この状況と目の前にいる人物の頭の上に見える文字。そして普段は見えるはずのない空中にあるゲージバーや文字。

「ここは…君は?」

「おれの名前はキリト。こっちはクライン。さっき一緒にPT組んで戦い方を教え始めたVRMMO初心者だ。」

「うっせ。まぁ初心者なのは否定しないがな。お前さん、大丈夫か? VR酔いって奴か?」

VRMMO。彼らはそういった。そしてルーサーのレポートにもその名称があった。そしてその次につながる文字は。

「SAO…。ソードアート・オンライン。は、はは。なんてこった。夢じゃないんだな?」

「何やら混乱してるみたいだから説明しておくけど、ここはSAO、【ソードアート・オンライン】の中、浮遊城アインクラッドの第一層で始まりの街の外にある始まりの草原。大体町からちょっと歩いた西側ってところか。ほら、あそこに見えるだろ?」

オキは立ち上がり、キリトの指差す方へと目を向けた。そこには膨大な広さに広がる草原と少し遠くに見える街の外壁が目の前に広がっていた。

「…どうやら混乱していたようだけどようやく理解したよ。ここは夢じゃなく、SAOの中なんだな?」

「そうだ。夢じゃない。本当のファンタジーの世界が広がる現実だぜ。」

にこやかに言うクライン。何やら楽しそうだ。それはそうだ。ファンタジーのような、アークスのような化け物やモンスターと戦う日々の世界とはかけ離れた平和な世界の住民なのだから。憧れる気持ちもなんとなくわかる気がした。

「すまない。ここは初めてなものでね。すまないが初歩から教えてもらえると助かる。君はどうやら彼に教授してたみたいだし、一緒にいいかな?」

キリトとクラインは顔を合わせ頷いた。

「ああ、いいぜ。叩き込んでやる。」

「おれの方が先輩だからな。あんた、名前は?」

「オキ。オキだ。よろしく頼む。」

その後、オキはゲーム事態が初めてだという事を伝え、どのような仕組みからを教えてもらった。システムや基本的な知識。戦いに必要な事項やここでプレイする為の基本すべてを。

「へぇ。ここではステータスというのが数値で出るのか。面白いな。」

「あんた、ほんとにゲーム初心者なんだな。」

呆れ顔でオキの顔を覗くキリト。クラインはその間に周囲にいるエネミーを探しばっさばっさと切っていた。

「あんな風にエネミーを倒すと経験値という数値がもらえる。それがある一定以上溜まるとレベルが上がりステータスが上がる。その他にレベルが上がるとソードスキルという剣技を出したり、ステータスの底上げをするパッシブスキルというモノが使えるようになる。ただそれはスキルポイントというポイントを使って、えっと…この画面と、そうそう。そこで好きなものを振ればいい。ただ、一回振ると二度と戻せないから注意して。自分の戦いやすいスタイルを見つけることから始めるといいよ。」

「なるほどねぇ。パッシブスキルに剣技を出すソードスキル。ほうほう。」

『アークスで例えるならフューリースタンスやPAの事を指すんだな。その辺はあまり変わらないのか。これなら応用が利きそうだ。』

オキは現状とアークスで培ってきた経験をもとに着々と知識を仕入れた。また、ルーサーのレポートの内容と誤差が無いかも確認していった。

「戦いは普通に剣を振り回して攻撃。また敵の攻撃をよけたり、防御したりする。ほかにもSS、ソードスキルを使用して戦うのも基本だ。クライン! ちょっとSS使ってみてくれ!」

「おうよ! おーりゃ!」

クラインが初期スキルである『ソニック・リープ』を放った。

「あのように技を出すときにエフェクトが出て、通常よりもダメージボーナスが入る。つまり攻撃力が高いという事。ただ、SSを出した後はスキルストップと言って硬直するようになっている。硬直は技によって時間が変わり、強力であればあるほど長くなるのが特徴だから、戦いの最中にエネミーの隙をついて攻撃するのがいいだろう。」

「ふーん。なるほどねぇ。」

オキは初期装備らしい片手剣をキリトから教えてもらったとおり手に装備した。自動で消えたり持ったりできるのは便利だな。

「なるほど。ほうほう。どれ・・・。」

オキは戦いだけ見れば歴戦の兵である。なにせ長い間、ダーカー、ダークファルスと戦ってきたのだから。

剣を軽く振り、実際に目の前に敵がいることを想定、イメージで動いてみた。

『そうだな。さっき戦っていたのはオオカミだった。だったら同系のフォンガルフあたりか。』

目の前にいるイメージし目を瞑る。こい、そうだ。突進して、かわして、切る。また他のファングが飛び噛みつきをしてくるがそれもよける。うんいける。

「へぇ。さまになってんじゃん。」

クラインもその動きをみて動けている程度に感じたのだろう。

「そういえばここには小さいのしかいないけど、数で来るようになるの? それともデカいのもいるのか?」

キリトはニヤリと笑い、それにこたえた。

「ご明察。まだここは最初の最初。だから弱いのしかいない。けど各フィールドやあそこに見えるデカい塔がみえるだろ? あの中にはこの1層のボスが待ち構えている。そいつらは雑魚とは違い、巨大で強い。塔の中にいるボスを倒せば晴れて次の階層へと昇る事が出来る。それを100層まで繰り返せばゲームクリアだ。」

「ま、いつになるかわからねーがながーく楽しませてもらおうや。」

「なるほどねぇ。」

デカいのもいるとなると、ダークラグネやファングバンサクラスもいるだろう。下手をすればダークファルス級もいてもおかしくはないという事か。

「なるほど。どれ…。」

オキはイメージを更に強めた。

オキは先程の確かめる意識ではなく、完全に戦いの意識へと切り替えた。それにキリトは気づく。

『なんだこの人…? 急に雰囲気というか…意識が変わった!?』

イメージする敵は動き回る巨大な獣、ファングバンサー。

飛んできて、よけて、切りつけて更によけてきる。前転、側転。防御。攻撃。回避。その中にはPA、フォトンアーツも真似て入れた。持っている武器は片手剣に最も似ているガンスラッシュ。

「はぁ!」

キリトとクラインは先ほどの真似事から急に動きの変わったオキに目をくぎ付けにされていた。

「これは…。」

「い、いったい何と戦ってんだ!? いくらイメージしているとはいえ、これほどの動きをするには…。」

「ああ。実際に日常的に何かと戦っていないとできない。この人は一体…。」

オキはある程度の動きを確かめながら確認した。

「なるほど。PAの真似事はできるんだな。問題は遠距離が出来ないのが難点だが、まぁ何とかなるべ。後は武器やら何やらをそろえれば…。とと、すまん。つい集中してしまった。」

ぽかんとしている二人を置いてけぼりにして動き回っていたオキは笑いながら二人に近づいた。

「あんた…一体何者なんだ? 俺も多少は剣道をやってた時もあったけど、あんな動きは初めて見たぞ。」

「もしかして、武術の達人かなにかか?」

「まぁそんなところにしといてくれ。キリト、クライン今後もヨロシクしてもらっていいか?」

「あ、ああ! 任せろ!」

「ああ。もちろんさ。」

オキは偶然にも【ルーサーが記述していた事件の中心にいるはずの人物のうち二人】と仲良くなった。

 

ある程度オキは周囲のエネミーと対峙し、クライン共々レベル上げに専念した。元々技量のあったオキはすぐにVR世界のルールに慣れ、ある程度エネミーと戦う事が出来るくらいまでには上達した。それでも本人からすれば真似事で本気は出していないが。

3人は手に入れたお金を使って街で装備を整える事にし一度街へと戻った。時間を見るとだいぶ経っていたようだ。

「それじゃぁ今日はもう遅いから一度落ちるとしよう。」

「あーもうそんな時間か。仕事いきたくねー。ちきしょー!」

その言葉を聞いてオキは根本的な問題に気づいた。

「そういえばどうやってログ、アウト? っつったっけ。すればいいんだ?」

「ああ、それならオプション項目の下に…あれ。ない?」

「あれ、おれもねぇ! どういうこった。」

たしかに二人の示している場所にログアウト、つまりゲームを終了する為の項目は無かった。

『やはり、始まるのか。あれが。』

オキの予測は当たった。ログアウトができず、1万人のプレイヤー達が電子ネットワークの中に意識を閉じ込められそして数年後に…。

「一度中央広場に行ってみよう。」

「ああ。何かのバグか何かなら運営がなにか示してくるはずだ。」

周囲を見るキリト。たしかに周囲のプレイヤー達もログアウトボタンが無いことに気づき始めてざわついていた。

中央広場に向かった3人はすでに問題に気づき、空に向かって何か騒いでいるプレイヤー達を発見した。

「運営―! はやくなんとかしろー! きこえてんだろー!」

「ログアウトできないのー! おねがいー!」

「これは?」

オキは不思議な光景をキリトに確認をした。

「たぶん運営に気づいてもらいたくて叫んでいるんだろう。ログに残るしね。」

「なるほど。無意味な行動じゃないという事か。」

クラインが端末画面を操作し閉じた。

「ちょっと俺、リア友の所に行ってくる。あいつらも不安がってるだろうから。」

「ああ。俺はここにもう少しいるよ。何かあったら伝えて…え!?」

同じく端末画面を操作していたキリトがなにかに気づいたようだ。

「どうした。ボタンあったか?」

「いや、クライン。このSAOたしか限定生産で、しかも1万人しかINできないんだよな?」

「ああ。そりゃそういってたじゃねーか。さっきも俺とお前で1万人がINしてる数字をみたろ。」

どうやら数字が見れるらしい。オキもその画面を探した。

「これか…。1万、とんで6人?」

「なに!?」

その時広場でざわめきがあった。皆上を向いている。そこには赤いローブを着た巨大な人が浮かんでいた。

「SAOをプレイしている諸君。アインクラッドへようこそ。私はSAO作成者、茅場彰彦だ。」

『あれが、茅場…。SAO事件の犯人。』

ようやく出会えた。だが、顔の部分は見えない。オキは少し前へとでた。それと何か気になる気配。ほんの気持ち程度だが、目の前の巨大なローブの中から感じ取るモノを覚えた。

「君たちにゲームマスターである私からプレイをしてもらう事に感謝の意をこめ、あるプレゼントを君たち全員のアイテム欄に追加した。確認してもらえるだろうか。」

全員がアイテムを確認しだした。そこには「手鏡」と書かれたアイテムがあった。

「こいつは…!?」

全員手に握っていた鏡が一斉に光りだす。その直後、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。

「お、おい。お前誰だ?」

「お前こそ…。まさかクライン?」

オキの隣にいたキリトとクラインの姿、顔がまるで違った。周囲も女性の姿から男性へと変化しているのも見受けられた。

「これは、俺の顔だ! リアルの顔だ!」

「どういう事だ…。まさかギアを付けたときにスキャンしていたけど、その時に?」

「おれは元々この顔だし変わらずか。流石に少しドキドキしたぜ。」

オキは別にアバター、つまりネットワーク世界での姿を造ったわけではない。なので素の状態だ。周囲はファンタジーの世界で別のキャラクターになりきる為に姿かたちを変化させていた。それが今やすべてがリアルの姿だ。

「さて今諸君はログアウトボタンが無いことに気づいているだろう。これはバグではない。仕様である。」

その場にいた全員が絶句した。バグではなく仕様。つまり、一度INすれば出れない。

「どういう事だ!」

プレイヤーの一人が叫んだ。それにつられ周りも罵倒と悲鳴が聞こえる。

「これは『ゲームであって、遊びではない。』諸君らはこれより上層である100層を目指してもらう。そしてゲームマスターでありラスボスである私を倒せば晴れてゲームクリア。現実の世界へとログアウトできるようになる。また、もし道中でHPが0、つまり死んだ場合、君たちが装着しているヘッドギアから高出力の電磁波が射出され、脳を焼き切り殺す。HP0=死だ。」

その場にいた全員が一言もしゃべらなくなった。それもそのはず。今自分の本体がいつでも死に至る状態なのだから。

「今の鏡もリアルの自分と同等の感覚を持って貰う為に君たちのリアルの姿をそのまま映させてもらった。そして誰かこの中の1万人のなかの誰かが…。うん?」

茅場の様子がおかしい。どうやら何かのログをみて固まったようだ。

「1万人と6人…? おかしい。1万人しかログインできないように設定したはずだ。」

オキはその言葉を聞いてふっと笑い、前に歩いて出た。

「お、おい。オキ。どこに行くんだ?」

クラインの言葉を聞かずに人をよけて前に出る。そして静まった広場に大声で叫んだ。

「1万と6人。そうかい。おい、茅場彰彦といったな。ゲームマスターさんよ。そのイレギュラーならここに居るぜ!」

周囲にいた全員がオキを向いた。

 

 

「どういう事か説明してもらおうか…。」

「いいぜ。わかる事だけだがな。まず事実となる根本の部分。このゲームはほぼ確実に100%で第75層に到達した際に全員が死ぬ。」

オキの言葉に周りがざわついた。未来の事なんかわからない。だがこの男は言い切った。

「おれは元々この世界、星の住人ではない。アークス。星々を渡り宇宙を旅するオラクル船団のアークスだ。ある事件から俺はこの惑星、このSAOを知った。そしてなぜか巻き込まれた。6人って言ったな。俺のほかにどこかにいるはずだ。俺の仲間である別のアークスが。おい!どこかにいるんだろ!? おめーら!」

オキの声に反応したのかあちこちから声が上がった。

「おきさーん! ここにいるよー!」

「おれもいるぜ。ちと遠いけどな。」

「オキみつけたのだー! あちこち探しまわったのだ!」

声はここで途切れた。ところでミケ。お前どうして屋根の上にいる…。

「サラと隊長がいない? あいつらどこに…。まぁいい。俺は1万と1人目のプレイヤーであり本来部外者だ。この場いる1万人と違う形で参加している。あんたならそれが分かるはずだ。」

オキは茅場を指差した。指摘された通り茅場はコンソールで調べても、今目の前にいるイレギュラーな存在の出所が分からない。彼は皆に見えるようにグラフィックで地図を出した。そこにはプレイヤー達がどこからつながっているかを示す地図のようだ。あちこちに線が飛んでいるが、ある数本だけ国を離れ海の上を飛び、途中で切れている。

「たしかに君の体がどこにあるかはご覧のとおり、海の上でぱたりと消えている。どういう事かわからないがこの私ですら追えないという事か…。しかし75層で全員死ぬとはどういう事だ?」

「おれはあるたちの悪い研究者の研究資料を漁っていた。その時にそいつが作ったシミュレータでこの星の未来を見た。どのような因果を絶っても変えても、このSAOでの事件は起こり、必ず75層で死ぬ。詳細まではわからないがあの男が導いた結果だ。腐ってもあのバカはある点以外では計算をミスしなかった。実際その男のせいで数百万という人が死にかけたしな…。だが俺はあいつを倒し、オラクルを守った。あいつの導いた計算を覆す事で。だから今回もその結果を覆して見せる事をここに宣言する。」

周囲のどよめきが更に大きくなった。

「俺は未来を知った。1万人という多くの人間が死ぬ未来を。ならば守ってみせよう。いきなり、わけもわからない戦いの中に出されたら戦ったこともない、命を懸けたことない人が戦いなんてできるはずもないしな。驚くもの、絶望するもの。いろいろいるだろう。だが必ずクリアしてみせる。嘘だと思う者、狂ってると思う者もいると思う。しかしこれが現実だ。必ずや皆を現実の世界に戻してやる。一般市民を守る事もアークスの役目だ。問題は俺一人だけでは足りない。皆の協力が無ければならない。もしよかったら俺に力を貸してくれ。ここにいる惑星スレアの皆。死にたくなければ希望を持て。自信を無くすな。この男はゲームと言った。ゲームとは何か。いくら死ぬことがあっても、ゲームなら必ず打開出来るはずだ。ならば必ずクリアできる。俺には、俺たちアークスには戦う技量はあってもこのフィールドでは知識がない。情報がほしい。頼む!」

巨大なゲームマスターの前に出てオキはプレイヤー達の前で頭を下げた。シンとしている。そりゃそうだ。いきなり惑星を旅するモノだの75層で死ぬだのいきなり言われても混乱しているはずだ。だがそこで声を上げたのは一人の男だった。

「よーし分かった!手を貸そうじゃねーか! おい。ここにいるほとんどがゲーマーだろうが! 命を懸けてるとはいえ、ゲームだって言ってる。今までどれだけ困難なゲームをやってきた! クリアしてきた! こんなゲーム、クリアしてやろうじゃねーの! 戦いのプロって奴が手を貸してくれるっていうんだ! だったら俺たちもゲームのプロだろ! 負けてられねー。一丁やってやろうじゃねーか!」

「クライン…。おまえ。」

「そうだそうだ! このまま下向いてたって帰る事もできねー! 積んでるゲームだってあるんだ! ゲーマーなめんな!」

「…!」

「おーし!やってやろうじゃねーか!おい、チムメン集めろ。早速会議だ。」

「私も、できることがあるなら…! やろう!」

周囲のプレイヤー達が先ほどまで絶望した顔をしていたのにもかかわらず一気に活気がわいた。

「ふむ…イレギュラーな存在。それもゲームを楽しませるにはちょうどいいだろう。君たちイレギュラーの参加を認める。一応言っておくが、これまでのやり取りはゲームマスターである私ですら予測していない事態であり、決してゲームの内容や私の仕組んだ内容でない事をここに宣言しておく。中にはそのような考えを持つプレイヤーもいると思うがな。さぁゲームを始めよう。」

茅場彰彦であるゲームマスターはそういって消えかけようとした。その時にオキは気になる一言をゲームマスターに叫んだ。

「おい、茅場彰彦。いや今はゲームマスターか。一言だけ忠告しておいてやる。さっき言った75層で死ぬという理由。必ずしもその結果に至ったわけではないらしいが、理由として外部からの無理やりな接続がほとんどを占めていたらしい。注意する事だ。」

「…忠告、気にしておこう。」

ゲームマスターは完全に消えていった。

「ふう…さーて、この後はどうする…うわ!」

「おい! あんたいま言ったこと本当だろうな!?」

「本当に死んじゃうの!?」

「アークスってなんだイ?」

「う、嘘じゃないよな?」

「本当に助けてくれるの!?」

広場にいたプレイヤー達が一斉にオキの下へかけてきた。流石にあのような大立ち回りをすればそりゃ注目も浴びるだろう。

「だーもう! 全部本当だ! すべてな! 俺は宇宙から来た、そうだな宇宙人だ。」

「「「…!」」」

周囲にいた全員が黙る。信じてるような信じてないようなそんな顔だ。

「あー…その人の事、たぶんほんとだぜ。」

「クライン…?」

人をかき分けてクラインがオキの近くにやってきた。

「おい。嘘じゃないだろうな?」

「お前も、アー…なんだっけ。それなのか?」

周囲のプレイヤー達は疑心暗鬼に陥っていた。無理もない。

「ばかいえ。俺は日本人だ! 会社にだって行ってるれっきとしたサラリーマンだ。だけどな、俺はさっきまでこの人の戦い方を見ていた。おれぁ素人もいいとこ、戦いなんてしらねーが、この人の動きは誰がどう見たって間違いなくプロだ。しかも日常的に戦ってる。」

「クライン…。お前。」

キリトも近づいてきた。

「…おれは剣道を昔やってたことがあるんだが、あんな戦い方見たことが無い。だけどがむしゃらに動いていたってわけじゃない。大振りで剣を振りながら隙はない。かといって小降りに振っても力加減が無駄になっていない。達人以上、見たことないよ。あんなの。」

どうやらフォローしてくれているようだ。

「…俺信じる。何を信じていいのかもわからない状態なんだ。少しでも希望があるなら、俺は信じてみる。」

一人の男が声を漏らした。

「お、俺もだ! どうせ出れないんだ。俺一人でできる事じゃないし戦い方なんてシステムに頼るしかないんだ。だったらここはこの人に、俺は賭けてみる!」

「私も、まだ全部ってわけじゃないけど…助けてくれるんでしょ!?」

「ぼ、僕だって!」

「…わかった。君たちの心意気。必ずや答えてみせる。だけどさっき言ったように俺はこのようなゲーム世界は初めてなんだ。それとみんなの協力が必要だ。頼む。」

オキは頭を下げ、それに皆が答えるように歓声を上げた。

 




はじまりました! 今後共よろしくお願いいたします。
最低限、毎週土曜日にUPできるように頑張ります。
※はやく更新できたら平日でもあげます。

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