ギルドリーダー:アインス
サラ:短剣使い。アークス。クラインとの仲の良さは若干進展している、らしい。
ソウジ:カタナ使い。イケメン。とにかくイケメン。アインスがSAO内で初めてであった人物。カタナの知識が半端ない。
ソーマ:大剣使い。男性陣の中では一番身長が低く、歳も一番下。だが冷静沈着で落ち着いた年齢に合わない性格をしている。
グレイ:短剣使い。大人びた短髪のお姉さん。メンバーからは『姉御』と呼ばれている。
シィ:メイス使い。怪物兵団の武器管理担当の少女。大人しい性格で闘いもあまり積極的ではないが皆を支援したいと武器作成改造を日々頑張っている。
ヒョウカ:細剣使い。クールビューティの言葉が似合う美少女。普段から口数が少ない。実はアインスに惚れている。
ケイ:片手剣+盾使い。お調子者の熱血バカ。熱い男だが正義感の強さと何事にも自分の信念を貫く姿勢はアインスも認めている。
GT:槍+盾使い。ソウシが最近勧誘してきた。メンバー内で一番体が大きい。見た目が怖いと初めは思われがちだが、実はかなり優しく紳士。ケイと気が合うのかよく一緒に行動している。
正月が過ぎ、もう少しで49層に到達しようかという所だった。
迷宮区を攻略からギルドホームに帰ってきたときに、メンバーの一人であるソウジから相談があったところから始まる。
「隊長。ちょっと相談があるんですけど。よろしいですか?」
「ん? なんだい?」
聞いた内容は28層にある村で昔大戦で活躍したという隠居した剣豪から修行を受けるというクエストだった。
「初めは修行してステータスを上げることが目的だったんですけど、修行が終わってクエスト完了したと思ったら新しいクエストがでて…。」
ソウジ、同メンバーであるヒョウカ、そしてGTの3名で行っていたらしいそのクエスト後、どうやら剣豪と一試合して勝てば剣豪が使っていたという武器をくれるという話だった。だが
「あのじいさんつよすぎ。」
GTが苦笑気味にいう。少なからずこの『怪物兵団』はかなりのレベル、装備、経験が備わっていると自負している。
油断さえしなければ最前線でも苦戦はしない。だが、その老人はかなりの強さらしく3人とも一瞬で負けてしまったらしい。
「ほう…。」
話を聞き終えた俺は体がうずいている事に気づく。
『戦ってみたいものだ…。』
「隊長、うずいてます?」
シィが顔を覗きこんでくる。
「ははは。やはりばれるか。」
「隊長はそういうの好きだからねー。」
「うん。ばればれ。」
その場にいたソーマやケイもうなずいてくる。
「行って来たら?」
「サラ君。」
奥のキッチンから出てきた。どうやら話を聞いていたらしい。
「こっちは大丈夫だから。好きに暴れてきたら? オキにも連絡はしておくから。」
さっそくメニューコンソールを開いてメールをしている。何もかもいつも感謝の言葉以外でない。
『大丈夫。こっちは何とかなってるから心配しないで。わざわざ連絡ありがとう。隊長が戦いたいっていうなら行って来ればいいんじゃない? むしろさっさと行かないとこっちのカタナバカがすごい行きたがってるから早くいかないと先こされるよ?』
とオキ君からメールが飛んできた。最前線を少し離れる事を連絡したのだが…。これは急がねばならないな。ハヤマ君に先を越される前に。
「よく来たな。わしの名前はヒシギ。」
「アインスです。なんでもかなりの剣豪の方とお聞きしまして。」
28層のフィールド最東端にある一軒の家。付近の村での情報ではかつて起きた大戦争で活躍したと言われる大剣豪だとか。
白い長い髭を持った白髪のご老体。その剣豪であった老人に修行を申し入れるとクエスト開始。
内容は「マキ割り」から始まり、「洗濯」「掃除」「畑仕事」等、ヒシギの生活の手伝いばかり。
『これは…なるほど。そういう事か。』
本来修行と聞けば、武器を持って稽古をしたり素振りをしたりなどがイメージされるが、このクエストの内容はそれが無い。その為、途中でリタイアするプレイヤーもいたそうだ。だがアインスはすぐにこれが修行の一環で武器を振る事に直結している事に気づく。
マキ割りがいい例だった。
『マキ割りというのもなかなか面白い。ただ斧を振り下ろせばいいだけではなく力の一番かかる場所を見切り、力加減を考えて無駄な力をかけずに振り下ろす。更に一撃で真っ二つにしなければならない。ふむ、奥が深い。』
淡々とこなすアインス。他の内容をそれに近かった。
数日の修行を終えたアインス。その日はチームメンバーも様子を見に来てくれた。
「よくぞ耐え抜いたな。お主なかなかの精神じゃ。文句ひとつも言わんとはの。」
「全て剣を振る為に必要な動きばかりでした。普段からの生活の中でもこれだけの事ができるとは。逆に勉強になりました。」
後で聞いたが、この修行の話はソウジ達の国ではかなり有名な話らしい。面白い歴史だな。
「ふむ。ついてこい。」
ヒシギの跡を付いていくアインスとメンバー。ソウジから耳打ちされた。
「ここからです。たいちょー。一撃目は…。」
「ソウジ。言わなくてもいい。大丈夫だ。俺を信じろ。」
そういうとソウジは頷いて黙った。こちらもうなずき返す。
「さて、ついたぞ。」
家を離れて少しだけ林を抜けると道場があった。
「かつて、わしの師匠と修行していた場所だ。お主、なかなか筋がいい。どうじゃ、わしと一本やってみんか?」
きた。ヒシギは一本のカタナを渡してきた。
「私でよければ。」
もちろん受け取る。その為に来たのだから。
「そうじゃな。ルールは簡単。最初にお主かワシ、どちらかの胴にカタナの刃を触れさせた方の勝ちじゃ。」
「いいでしょう。」
ヒシギが刀を構える。先ほどまでの老人の目ではなく、剣豪としての目が生き返っている。
「…ほう。」
ヒシギが上段の構えに対し、アインスは鞘から刀を抜かない。居合の構えだ。
「…ではいくぞ?」
さて、どうくる。上段の構え。そうなると振り下ろしだが、問題はどうして『俺のメンバーが一撃で負けたのか』
「っふ!」
「!!」
一瞬前に踏み込んだと思いきや、直後に目の前まで迫ってきた。これか、このスピードにやられたのか。
上段から踏込の勢いと同時に振り下ろしてくる。
それを間一髪で体を横に移動させ避ける。避けたところに下まで降り切った刀が振り上げてくる。
後ろにステップで回避し、足に力を加え前に出る。
「む!」
居合、横一閃。
刀を振り上げきった胴に向かって切りかかる。だが、それを後ろに回避された。
体の体勢が崩れている。更に前にでて上からの振りおろし。
ヒシギはそれを刀で受け止める。
キィン!
道場に初めて刀の打ち合う音が響く。それを端から見ていたメンバー全員は言葉が出ない。
ソウジは思った。今迄何度かアインスの戦いぶり、アークスの化け物退治を見てきた。基本的に楽しそうに戦っているイメージが多い。1度だけ、25層のあいつだけは別だったが。
『たいちょーの今の戦いぶりはまた違う。戦いを楽しむのではなく、殺意を持った戦いでもなく。自分の全ての力を試している。本気の…戦い。』
これが『アークス、アインス』!
「うぬ!」
「ぐ!」
力任せに刀を押し、跳ねのけてきた。
『まずい。体勢が!』
その隙を狙ったかのごとく両手で持った刀を振り上げ全力で振り下ろしてくる。
それを刀で受け流しつつ後ろにジャンプする。
『距離を保てたか。』
距離が離れ、体勢も戻し再度構える。ヒシギも動かない。お見合い状態だ。
「ふむ…強いな。お若いの。」
「いえ、あなた程でも。」
二人してニヤリと笑う。
完全に静止した状態が暫く続く。
見守っていたヒョウカが体重を少しだけ前にかけた際に足元の床がきしむ。
ギシッ!
その音と同時に両者が動く。
アインス横に一閃。
ヒシギは前に出つつそれを防いぎ、直後に当身をしてくる。
「ぐっ!」
ぐらりとバランスを崩される。
「ふん!」
鋭い突きが襲う。だが体をひねってしゃがみ回避。そのまま足払いをかける
ヒシギはジャンプして回避、そのまま振りおろし。アインスそれを切り上げで受け止め再び鍔迫り合いとなる。
「…お主全力ではないな。まだなにか隠しておるな?」
「…。」
本当にこの世界はバーチャル世界なのだろうか。時々違和感なく現実だと思えてしまう。
それにここまで言われて全力を出さねば、いくら中身がプログラムでできているNPCとはいえ失礼に値する。
『やはり…面白い!』
今度は逆にこちらから払いのけた。
「むう!」
体のバランスを崩すヒシギ。そこへ居合からの切り上げを行う。それもただの切り上げではない。
『PA、ツキミサザンカ』
綺麗な孤を描いて切り上げられる。ヒシギはそれを刀で受け流す。
まだだ。『ゲッカザクロ』。
切りあがった刀をそのまま一気に下へ切り下す。更に直後には切り上げが待っている。
「ぐぅ!」
ガキン!
ヒシギのカタナが弾かれ、胴が完全に空く。
「ふぬ…。」
そこへ、その場から強力な突きを繰り出す。
ドン!
「ガハッ!」
それに打ち込まれたヒシギの体は、壁際まで大きく吹き飛ばされた。
「シュンカ…シュンラン。」
鞘へ刀を収めるアインス。『勝者:アインス』の文字がでると共にチームメンバーからの賞賛の声が響いた。
本来のシュンカシュンランは強力な突きの後に力任せの切り下しが2回、さらに力いっぱいの振り上げ1回がつながる派生PAだ。しかしアインスは突きの部分だけを好んで使用する。代わりに他のPAへとつなぐためだ。
「いやはや、なかなかやるのう。ここまで惨敗したのも師匠以来じゃわい。いつつ…!」
「大丈夫ですか? つい本気を…。」
「いや、問題ない。これくらいでくたばっていては師匠に怒鳴られるからのう。」
そういって道場内に飾ってある神棚へと足を運んだヒシギはそこに置いてあった一本の刀をアインスに差し出す。
「これは…?」
「わしを超える者が現れた。新たな時代を切り開くがよい。これはその手向けだ。」
『兼定』
受け取るとそこに書かれていた文字にはその名があった。
かつて師だった者が使っていた業物。ある事件で命を絶つ前に弟子であった剣豪に渡された。その男の生き様と一緒に。
『次代への流れが見えない訳でも、時流がどちらに傾いているか判らない訳でもなかった。ただ、それに背を向け…。親友の無念を晴らすため、武士の時代の終焉を見届ける為、最後の最後まで武士で在り続ける。あの人はそういうのが判らない人じゃないが、曲げられない信念があった。』
アインスは目を瞑った。そのような男がいたのかと。
「重い・・とても重い刀じゃないか。だが、その宿命は俺が引き継ごう。この刀に込められた『想い』と共にな。」
受け取った後、礼を言ってその場を後にするメンバー。
見送った後に剣豪は空を見上げて呟く。
「時代を切り開け。生きるがよい。そなたが守る大事な者達と共に。「誠」の意志を継ぐ新たな時代の者よ。」
「すごかったですね! 感動しました!」
帰路、シィが嬉しそうに笑顔で話してきた。
「うん。すごかった。」
まだ落ち着かないのか普段から口数の少ないヒョウカも口を開く。
「さて、ソウジ君。わたしが受け取ってしまったがこの刀…。」
「ああ、それですか。実はその刀ですが、たいちょーのプレゼントにしようと思ってクエストを受けたんです。」
「む?」
話を聞くと、どうやらソウジが探している刀があるらしく、その情報を仕入れている最中に今回のクエストの情報を得たらしい。クエストの途中で狙っているものではないと知ったこと、その刀をせっかくだからアインスに普段からのお礼も兼ねてプレゼントしようとしたようだ。
だが問題としてあまりにもNPCが強すぎた。諦めかけたところでオキに相談したらしい。すると
「隊長だったら逆にそのNPCと戦いたがるんじゃない? あの人、自分が努力して手に入れたほうが喜ぶだろうから、倒せないNPCがいるっていう情報と、倒すと刀がもらえるっていう情報だけ渡して誘ってみたら? 喜んで付いていくと思うよ?」
なるほど。彼のいれ知恵だったというわけだ。
「騙したみたいですみません。」
皆シュンとなる。
「いや、嬉しいよ。受け取ろう。この刀を。」
これは思った以上に重い武器になりそうだ。
「あ、あともう一つ。その刀まだ完全な状態ではないと思います。」
「というと?」
「その刀の本当の名前だと思われるのが『和泉守兼定』。先ほどNPCが話していた人物のモデルとなる過去の侍、『土方歳三』が持っていたと言われる刀です。」
ほう。実際に存在するのか。あの生き様を貫いた人物が。そう思いつつ刀をみる。
まだ本調子ではないということか。
「っふ…。」
「隊長、嬉しそうね。」
グレイがソーマと微笑みながらいう。
その時、アインスがあることに気づいた。
フィールドの影で一瞬だったがたしかに一人のプレイヤーが数名のプレイヤーに追いかけられていたのを。
「…みなすまない。すこし用事ができた。先に帰っていてくれないか。」
「あ、手伝います。」
ソーマがついてこようとする。だがここから先はすこし嫌な予感がした。皆を危険にさらすわけには行かない。
「いや、大丈夫だ。」
そう言って先ほどの追われていたと思われるプレイヤーがにげた方面へと駆け出した。
「皆は…帰ったかな?」
ある程度走った途中で後ろを振り向き確認した。誰もついてきていないな。みな素直でいい子だ。
「さて…。」
フィールドの地図ではこの先は行き止まりのはずだ。
『索敵ではこの先に数個の反応アリ。やはり誰かいるな。』
周囲は森の木々で囲まれており、道は一度上り坂となってから行き止まりまで急な坂道となっている。
影から行き止まり方面を覗いた。
予想通り、カーソルがオレンジ色のプレイヤー3人が1人の女性プレイヤーを襲っていた。
丁度夕方の太陽が下り道の陰になる時間であり、薄暗い場所。
周囲を見渡しこの者達が狙っていたかのような人を襲うにはぴったりの場所だと確信する。念のため周囲を索敵スキルで探る。
『オキ君からはこういうのも罠の可能性があると言っていた。念には念をいれておこう。』
だが索敵スキルは前方のプレイヤーのみ。女性プレイヤーは今にも襲われそうだ。
太陽を背に坂の上でオレンジプレイヤーを止めさせる。
「まてぃ!」
「誰だ!?」
太陽を背にしているせいか相手からは見えていないらしい。襲っているプレイヤー達は手をかざしている。
「貴様達、そこで何をしている。」
再び聞く。まぁ聞く必要もないと思うが。
「誰だかしらねーが、貴様には関係ないだろう!」
「さっさと失せろ!」
「それとも、痛い目にあいたいのか?」
はぁ。どこに行ってもこういう輩は変わらない言葉を吐くのだな。ため息がでる。
「たすけ・・・たす・・・けて!」
泣いている女性プレイヤーが助けを求める。
「人を傷付ける者、人を脅かす者。人それを、外道と言う。」
「貴様…一体なんなんだ!」
「貴様たちに名乗る名前は無い!」
「くそ、やっちまえ!」
オレンジプレイヤーは各々の武器を取り出し、アインスに襲い掛かってきた。
「遅い!」
一回転での居合切り。PA「カンランキキョウ」で一閃。
下層のプレイヤーではアインスの火力を抑えることはできない。たかだか一度の攻撃で周囲を囲んだオレンジプレイヤー達は吹き飛んだ。
「ぐ!」
「つ、つよい…。」
「くっそ…一撃でこれかよ。」
「…確かに重い。重いカタナだ。」
ずしりと腕、肩にかかる重さを感じとり呟くアインス。
初めて切った「兼定」の相手がこのような外道らとは少々申し訳ないと思った。
「たいちょー!」
「おまえたち…。」
不自然に思ったメンバーがアインスの跡を追ってきた。
周囲で転がるオレンジプレイヤーを見て瞬時に察知。
「オレンジプレイヤーか。」
「犯罪者め。」
「死ぬか、二度と出られない監獄に入るか。どちらか選びな。」
回廊結晶を投げ渡すグレイ。コクコウと頷くオレンジプレイヤーは回廊結晶で黒棺宮へと送られた。
「あ、ありがとう…ございます。」
襲われていた女性プレイヤーはなにか礼をと申し出たが、アインスはそれを断る。
後にディアベルから送ったオレンジプレイヤーの話を聞いた。
どうやら女性プレイヤーにストーカーがいたらしく、交際を申し込んだが断られた腹いせにオレンジギルドに依頼したそうだ。
もちろんそのプレイヤーもしっかり御用となった事はいうまでもない。
その後、助けた女性プレイヤーとチームメンバー(主に女性陣)が仲良くなっていたがこの時に『アインス隊長ファンクラブ』なるモノが発足していた事をアインクラッド攻略後に知る事になるのは別の話。
皆様、こんにちわ。
隊長ことアインス視点、いかがだったでしょうか。
隊長からは実際に『土方歳三が好きだ』という話を聞いた時にこの話を思いつきました。
久しぶりの戦闘描写。結構頑張りました。
これで彼が振ってみたいと言った『和泉守兼定』がいつか完成するでしょう。
後半のオレンジプレイヤー戦はあっけなく終わらせましたが、どちらかというとそのやり取りをやってみたかったのでつい。
ロム兄さんかっこいい。
さて実際のPSO2では報酬期間が終わりました。
今回の結果、ガルグリフォン星13武器5本! かなり濃い報酬期間だったかと思います。
アークスの皆様はなにかいいものが出ましたか?
最後に、夏休みということで1週間後の更新は休止とさせてもらいます。身勝手ながら申し訳ありませんが2週間後にまたお会いしましょう。(もしかしたら書いてるかも?)