SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

16 / 151
惑星スレア全体でのお祭り事としてクリスマスがアインクラッドにもそのイベントとして各層で雪が降り、各地で限定クエストが受注可能とたくさんの情報がアルゴの下に集まった。
そのひとつとしてオキ、シリカはレアアイテムである指輪を手に入れるために情報を元に指定された場所へと向かうのであった。


第15話 「クリスマス(後編)」

オキとシリカはアルゴからの情報で限定クエストのフラグを立てる前段階として第1層に足を運んでいた。

 

1層では、現在クリスマスという事であちこちで露店が出され商人プレイヤー達が挙って祭りを開いていた。

 

ここ最近下層には降りない事から久しぶりの1層である。

 

「クエストの場所はどこだろうか。」

 

アルゴ姉からもらった情報を元に地図を確認する。どうやら西側にあるらしい。周囲の雰囲気も楽しみつつ目的の場所を目指した。

 

「ここ…ですか?」

 

「の、はずだが。」

 

地図をもとにたどり着いた場所は教会。アクセサリー関係のイベントクエらしいので鍛冶屋等のクエかと思っていたのだが。

 

「ま、とにかく入ってみるか。」

 

大きな扉に手をかけ、中に入る。

 

中に入ると巨大なステンドガラスが光り輝き、その光が祭壇を照らしていた。その光景に二人は暫く見とれいていた。

 

「何か御用ですか?」

 

 

奥の扉から神父らしき人物が現れた。アイコンからしてNPCのようだ。

「えっと…。」

 

困った顔をしてシリカが顔を覗いてくる。アルゴ姉からもらった情報ではNPCの存在は無かった。なのでどうすればいいか分からない。同じく困っている顔を見たせいなのか、そういう反応になっているのか分からないが神父が近寄ってきた。

 

「ふむ…。君たち二人は、今幸せかな?」

 

いきなり何を質問してきているのだろうか。シリカをみると目が合い、顔を赤くして俯いてしまった。かわいい。

 

「ええ、俺は幸せです。」

 

シリカを見ながらそういった。神父はそれをきいて満足そうに笑顔になる。

 

「いいことです。…ふむ、これも神のお導きか。お二方にご協力願いたいのですが。ああ、悪いようにはしません。聞くだけ聞いて断ってもらっても結構です。あなた方を見てあるモノの事を思い出しまして…。」

 

神父が祭壇の奥から何やら小さな箱を取り出してきた。箱を開けると中から指輪が二個出てきた。

 

なんだかいろいろ昔話を交えて話をしてきたので、要約すると、幸せな若き男と女二人が目の前に現れ、神父がこの人達ならと思った時にその人物に指輪を与え、ある場所で祈りをささげれば神の加護を与えるというモノ。

 

話が終わるとクエスト受注可能アイコンが目の前に現れた。

 

「…つまりこの指輪を持って指定された場所に行って祈りを捧げればいいんだね。簡単だな。」

 

OKボタンを押し、承諾する。

 

「ありがとう。場所は中に入っている羊皮紙に書かれている。」

 

箱を受け取り、手を振る神父を背に教会を後にした。

 

「まずはどこですか?」

 

「んー・・・。静かな森林の村がある泉? お、アイコン出てきた。」

 

羊皮紙を持って中身を読むと、目の前にアイコンが出てきた。示している場所は22層のようだ。

 

「22層だね。たしかにあそこは静かだね。」

 

「それじゃあ行ってみましょうか。」

 

「きゅい!」

 

ピナも嬉しそうに鳴く。

 

 

22層につき、コンソールで示されている泉へとたどり着いた。

 

「どうすればいいんだろうか・・・。」

 

「祈る、って言ってましたね。」

 

どうすればいいのかわからないのでとりあえず箱を取り出し、泉の前で膝まづき祈りの構えをしてみた。それを見たシリカも一緒に祈る。

 

するとアイコン音が鳴り箱の中身が光りだした。

 

「ん、光ったな。これでいいのか?」

 

箱を開けてみるとシルバーだった指輪が水色に光り輝いていた。どうやら成功らしい。

 

「綺麗ですねー。」

 

シリカもそれを見て微笑んでいる。羊皮紙をみると次の指定された場所が出てきた。

 

「よし、次は32層だな。」

 

「はい!」

 

 

32層で同様に祈りを済まして次の場所を確認した。

「42層か。ホームベースだな。」

 

「どこを示しています?」

 

「んー・・・巨大桜の1本らしいが。あれだな。一番大きな桜。」

 

42層にはいくつか大きな桜があるが、その中でも一番大きな桜が示されていた。2人でフィールドを歩き進んでいると前から人が歩いてきた。どうやらNPCらしい。

 

「やあ。冒険者の方かな?」

 

「はい。この先の桜の木に用がありまして。」

 

シリカが嬉しそうに答える。木こりの姿をしたNPCは桜を見た。

 

「ふむ。あの桜か。あの桜にはある伝承があってな。根元にある祠に化物が封印されているらしい。ただ、その祠は出たり消えたりするという不思議な祠らしいんだ。もし見つけたら何もせずに立ち去ったほうがいいだろう。実際あそこで行方不明になった人もいるらしいからな。」

 

そう言って木こりはまっすぐ歩いて行った。

 

「化物・・・ですか?」

 

シリカが不安そうに見てくる。

 

「フィールドボスかなにかだろう? ついでだから調べてみよう。もしやばかったら逃げればいい。」

 

「そ、そうですね。」

 

相変わらず不安そうについてくる。このあたりのフィールドボスはあらかた片付けたはずなのだが、フラグが残っていたのだろうか。

 

目的の桜の木の下にたどり着いた後に指輪の箱を再度取り出し、二人で祈りを捧げる。指輪は前の2層よりも光り輝き桜色に光りだした。

 

「ほうこいつは綺麗だな。」

 

「はい。綺麗ですね。」

 

二人して顔を見合わせ笑う。

 

「きゅい!」

 

ピナが鳴く。ピナをみると何かを見ているようだ。その視線をたどり目を凝らしてみると桜の木にくっついた祠が見えていた。

 

「祠だ。」

 

「え?」

 

シリカも祠に気づいた。やはりクエスト関係のフラグがたっていたらしい。

 

祠に近づき、そっと中を確認した。中はどうやら階段になっており下に続いている。奥は暗くて見えない。

 

「ふむ。念の為には誰かに連絡しておくか。えっと暇そうなのはミケくらいか。」

 

どうせ相変わらず布団の中で寝ているだろう。メールの音で起きてくれればいいが動けそうなのはミケくらいだ。

 

「中を見てくる。シリカはここに・・・。」

 

「やっぱりそう言うと思ってました。行きます。待っているなんて・・・いやです。」

 

真剣な顔をして見つめてくる。俺の行動はバレバレか。シリカの頭をポンと撫でて扉を開けた。

 

「背中は任せた。」

 

「はい!」

 

二人で一緒に階段を降りる。中はひんやりとして薄暗い。誰が火を灯したのか蝋燭が唯一の明かりだ。

 

「もう少しみたいですね。」

 

そこまで深くない場所に降りた。なにやら開けた場所のようだ。そして何かがいる。

 

「気をつけろ。何かいるぞ。」

 

「わかっています。」

 

お互い武器を構える。そして薄暗い奥から封印されていたと思われる化物の姿が現れた。

 

『キシャァァァ!』

 

普通は考えられない大きさ。無数の足。黒光りする畝ねる体。光る目。巨大な大ムカデだ。

 

「っひ!」

 

姿を見てシリカが後ずさる。そりゃそうだ。女の子が虫に耐性があるとは思えない。俺だって好きではない。まだラグネやグワナーダの方が…変わらんか。

 

大ムカデはこちらの姿を確認すると体をうねらせながらこちらに向かってきた。思ったより速い。

 

「おおお!」

 

ガキン!

 

大きな口を広げてきた大ムカデの牙に向かって思い切り大剣を縦切りに叩きつけた。HPバーは2本。そして今ので結構削れたようだ。弱い。

 

『ギィィィ!』

 

金切り声をあげて怯みいちど奥へと逃げていく大ムカデ。

 

「シリカ! こいつは弱い! 無理しなくていいから待っててくれ!」

 

「!!」

 

叫んだ声を聞いてびくりと体を震わせるシリカ。だが、シリカはキっと大ムカデを睨み俺の隣に立った。

 

「守られるだけはいやです! 私だって、私だって一緒に戦いたいんです!」

 

頼もしいことで。ニヤリと笑い俺は再び向かってくる大ムカデに大剣を向けた。

 

「よし。今まで教えた通りにやるぞ。なーにただの化物だ。やつの目だけを見ろ。やつの攻撃は全て受けてやる。口の牙だ。かなり効いているらしい。もう一本いくぞ!」

 

「はい!」

 

 

大ムカデはこのあと全ての牙と攻撃をしてきた爪を全て俺の大剣とシリカのダガーに切り落とされ、最後は無残な姿でHPを0にされ結晶となり消えていった。

 

 

「思ったよりも弱かったです。」

 

「シリカが強くなったからだよ。」

 

「えへへ。ありがとうございます。」

 

頭を撫でるとにこやかに微笑むシリカ。やっぱり可愛い。ドロップアイテムとして『巨大桜の根』と『大百足の爪牙』が手に入った。どうやら素材らしい。後でリズベットに見てもらおう。

 

祠をあとにし、指輪のクエストを終わらせるために1層へと戻った二人は、神父に祈りをささげた指輪を渡した。

 

「おおお! お告げの通りだ! やはり君たちが神のお告げにあった男女だったんだな! 礼を言う。これで私も満足だ。その指輪は君たちが使うといい。私はお告げが本物だったことを目にしただけで満足だ。」

 

神父から指輪を受け取るとアクセサリーとなってアイテムボックスへと収納された。その内の一つを取り出しシリカに渡した。

 

「はい。クリスマスプレゼント。」

 

「え? ええ? その為だったんですか!?」

 

どうやらクエストの目的を理解したらしい。顔を真っ赤にして指輪を受け取ってくれた。

「あ、ありがとうございます。」

 

「む、そうだ。君たち。今日はクリスマスだったな。その指輪をもう一度私にあずけさせてもらえないだろうか。」

 

クリスマスという言葉が出てきた。どうやらこれが条件だったのだろうか。そうなるとなんといろいろと条件が必要なのだろうか。

 

指輪を受け取った神父は祭壇にそれを置き祈りを捧げた。

 

「主よ。今ここにお告げの者たちが現れました。どうか彼ら彼女らに加護があらんことを・・・。」

 

神父が祈るとステンドグラスが輝き、祭壇上の指輪を照らし始めた。

 

「おお! 神よ! ・・・君たちありがとう。私はいま生まれて最も素晴らしい時を過ごしているようだ。ありがとう。」

 

神父は微笑みながら指輪を渡してくれた。指輪は桜色から真っ白な雪のように光り輝いている。

 

シリカとそれをみて二人して微笑み教会の鐘の音とともにそれをあとにした。二人の指には、白い指輪が光り輝いていた。

 




皆さんこんにちわ。先週は風邪をひき、今週は仕事やPSO2の期間限定クエ等おもったより時間が取れず思ったように書けませんでした…(超言い訳
次回までにはいろいろと時間を取ってしっかり書きたいな。。。
では次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。