SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第146話 「人よ、星々を繋ぎとめよう」

地球でのいざこざがようやく落ち着きを見せたある日。

あれやこれやといろいろあったが、やっと対【深遠なる闇】に向けて行動が出来ると意気込んだオキ。決戦はもう間近というというそういう日。オキはシンキに呼び出しを喰らった。

崩壊しかけたビルの狭間をジェット音を吹かす音か鳴り響く。自前の改造した移動用ライドロイドに乗って、ビルの崩れたがれきの上を通り過ぎていくオキ。呼び出された場所は廃棄になりかけのアークスシップの一つ。先日の【深遠なる闇】によって出現した【巨躯】、【敗者】のコピー同時襲撃。ここは一番被害を受けたシップだ。あちこち穴が開き、場所によっては最外層の壁面まで見えている。連絡では既に廃棄が決定しており近日中には解体されるとのことで住民たちは別のシップに移動済みで現在は無人とのこと。つまりここにはオキと呼び出したシンキしかいない事になる。

呼び出された当初はなんだろうと思っていたオキだが、一つのある事柄を思い浮かべた。

「あれを貸してもらって暫く経つ。だいぶ体に馴染んで来たし、その確認を兼ねてこんなところに呼び出したってことだろうな。…そうだろ! シンキ!」

ライドロイドを小さなカプセルに変化させた後、崩れたビルとビルの間に向かって叫んだ。崩れかけたビルの壁は大きく抉れており、半分無くなっている。その中間付近の出っ張った場所、金属の骨組みにシンキは立っていた。腕を組んだままオキを見下ろし、少しだけ笑みを浮かべている。

「ええ。その通りよ。せっかく貸したのですもの。その力、見せてもらいたくなるでしょう?」

わざわざ廃棄しかけのアークスシップに呼び出した答え。シンキの力『全知なるや全能の星』が無くても誰でも分かる。

オキは周囲のフォトンを吸い、溜め、イメージを開始した。預けられた力の解放をする為のイメージをより強くするため、シンキに教えてもらった解放用のキーとなる詠唱を開始した。

「そんじゃ早速見てもらいますかね。『揺り籠に刻まれし傷と栄華、今こそ歌い上げよう』」

シンキは不気味に笑みを浮かべたまま、腕を組んだままオキを見つめる。そして門を開ける。宇宙の財全てが仕舞われている『星の財宝(ゲートオブアルゴル)』の門を。金色に光り輝き大量に何処からともなく現れた武具の数々は空中から顔を出したままオキの方角へと頭を向ける。

「さぁ、見せてくれる? オキちゃんの力となったソレを。ソレを使うオキちゃんの力を。そして進んでみせなさい。ここで立ち止まるようでは、あなたにこの宇宙を守りきる力は無いわ!」

大量の武具が金色の門から射出される。すべてがオキを狙って一直線に飛んで行った。光って飛んでくるその武器をみてニヤリと笑ったオキはその名を叫んだ。

揺り籠の叡智(エイジ オブ オラクル)!!』

腕に装着したエルデトロスを大きく振り上げ、そして叫んだ直後に振り下ろし大きく空を切った。

その直後にシンキと同じくして空中から、地面から、光る歪みが浮かび上がり、そこから沢山の鎖が飛び出した。先端には小さくしたエルデトロスの先端の刃が槍の如く鋭く尖って付いている。

それぞれが空中でぶつかり多数の爆発を繰り広げた。その衝撃波は土煙を作り、拡散。お互いの姿を隠してしまった。

 

 

 

 

『天の鎖?』

【敗者】を倒した直後、シンキに呼ばれ彼女の部屋へと招かれた時があった。その時にその力の話を聞いた。

かつてどこかの宙のかなたで創造主、神すらも縛り上げることが出来たというどこかの宇宙の鎖。以前、シンキに軽く教えてもらったことはあるが、詳細まで話してくれることはなかった。

『そう。ただこれはソレをベースに私が作ったモノ、でもそれに限りなく近い力を持つわ。…これからどんどん過激になっていく。あなたの力はこの宇宙では比較的高い方ではある。でも、限界はある。だから力を貸し与えるわ。』

シンキはオキの回答も待たずにオキの腹を掌底で叩き、オキを壁へと吹き飛ばした。壁に叩きつけられた後、オキは体の中にうごめく何かを感じ、暫く苦しみ悶え、のた打ち回った。

溢れようとする力を抑えるだけで精一杯。あふれ出れば、オキの身体はただじゃすまない。そう感じたのだ。

暫くしてオキは自室で目を覚ました。あれは夢だったのかと思った矢先に自分の中の奥底でうごめく何かを再び感じ取る。

それ以来、オキは彼女にこたえる為、その力を制御すべく日々鍛錬を欠かさず行っていた。だがその半年後にSAOへと飛ばされ2年近くもの間寝たきりになる。それが幸いとなったのか、体に馴染んだからか、以前よりもより制御が効くようになった。

最初の【深遠なる闇】との戦いでは、まだ自信が無かった。戦いの最中に出せる程余裕のある戦い方はまだできないと。

そして地球での騒動が起き、その際にその鱗片を見せる。シンキはその際にその力を見て、試す価値のある力に変貌したソレを見るべく現在に至る。力は意のままに操れるどころか隠し玉さえも作る事が可能となった。

その成果を、今シンキに、魔神に、【観測者】に見せるとき。

 

 

 

 

土煙を貫き再び飛んでくる武器の数々。剣、槍、斧だけでなく防具であるはずの盾すらも回転しながら飛んでくる始末。

そんな一つ一つを目で追い、フォトンで感じ取り、イメージした通りに制御できるようになった『天の鎖』改め『揺り籠の叡智』と名付けたソレはフォトンで生成され、オキのイメージした場所より飛び出していく。飛び出す場所は遠くに設定することはフォトンの操作上可能ではあるが、遠ければ遠い程制御は難しくなり、脆くなる。逆に近ければ近い程制御は簡単になり、飛び出す力も強く、そしてより強固な鎖が飛んでいく。数もより多く出せる。

同じ名前の鎖を持つシンキの、本来の『天の鎖』と違い、あくまでもオキのフォトン操作能力が基点となる。その為、シンキの鎖ほど強固な強度は持っていないのが残念なところだ。あくまでも受け継いだのは鎖を出すことが出来る能力だけだからだ。

鍛錬すればシンキの鎖のように強固な鎖を作り出せるようにもなるのだろう。だが、まだ時間が足りない。今の現状でどこまでいけるか。それを試す時でもある。

第3波の波状攻撃を撃滅する鎖を出したと同時に前へと走り始める。シンキはソレを読んでいたのか土煙がまだ舞っている中走るオキの先にすでに武器が飛んできているのをオキは煙の切れ間からソレを目にする。

「っち。」

舌打ちし、地面に軽く指を付いたと同時に地面からは太く、多数の鎖が束になって真っ直ぐ生えてきた。その束は盾となり、いくつもの飛んでくる武器をオキから防いだ。

だが、その壁も1,2本武器を防げば破壊されていく。ぶつかってくる武器の数々。魔剣、聖剣と呼ばれ星々で、銀河で名を轟かせた宇宙の宝物。いくらフォトンを使って出せるようになった力とはいえ、相手が悪すぎる。

じゃららと鎖が鳴る音を出し、オキは空間から空目掛けて出ていく鎖を握る。握ったと同時に出ていく鎖に引っ張られ、オキの身体は空中高く飛び上がった。

シンキからの武器の雨は未だ続いている。鎖を飛び出させ、武器に当て防御しつつ、鎖を握り、飛び、そしてまた鎖を出して握り飛ぶを繰り返す。普通に走り、飛んで回避するよりもスピードは段違いに早く、エルデトロスで使っていた戦法、刃を引っ掛けて体を引っ張り、加速した先で反対側のエルデトロスを別の場所に引っ掛け飛んでいくという戦い方。アークスが敵対する超巨大な敵に対し、思いついた戦い方…というのは嘘で、惑星スレアで流行った漫画作品からパクった戦術。

鎖を実戦で使えるようになってからは実際に使用し、つい近日でもデウスエスカ相手にこの戦法で近づいた。

あの時は相手の動きが比較的ゆっくりだった為、回避は余裕であったが、今回の相手はスピードと威力が桁違いだ。

オキの顔や肩等、避けていてもかすり傷はできていく。

「ふふふ。」

不敵な笑みを見せるシンキはマシンガンのように数多の武器をオキへと放出し続けた。

土煙も関係ない。シンキの眼は次第に近づいてくるオキの姿を追う。そして、土煙の中からオキが空に飛びだしてきた。

「シンキィィ!」

「っふ。」

空高く飛び上がり、そしてエルデトロスの一本をビルの壁に引っ掛け、体を引っ張り急降下したオキを迎え撃つように再び宝物庫から多数の武器を吐き出すシンキ。空に撃ち上げられた武器の数々はオキの身体目掛けて飛んでいく。

オキは真正面から嵐のように飛んでくる武器の数々を前に、再び数多の鎖を呼び寄せた。空中でいくつもの爆発。その爆発を斬るかのように降りてきたオキはシンキの立っていた金属の骨組みをビルの瓦礫ごとエルデトロスで叩き切った。

飛び出た骨組みの先端に立っていたシンキは落ちていく金属の骨組みを軽く足で蹴り、上に伸びていく鎖を目で追った。

空中を自在に飛び回るオキを目に映し、シンキの口は次第に歪んでいく。

「ははは…。」

「おおおお!!!」

再び空から強襲したオキは地面に笑いながら落ちていくシンキに遠慮なくエルデトロスの斬撃と鎖の二重攻撃で襲いかかった。

瓦礫が大きく飛び跳ね、地面は揺れ、轟音と共に広がる土煙。

その土煙から黄金に輝く小さな乗り物に乗って空中へと飛び出したシンキはそのままわき目もふらずに市街地の空へと飛びあがった。普通に生活していればかなり高めに設定されている市街地の天井。その先は外壁に守られ、更にその先は宇宙の海が広がる。

シンキが飛び出してから数秒後にジェット音を響かせオキも空に上がったシンキを追った。

黄金の小さな船、その中心に設置されている椅子に座るシンキは肘置きを軽く指で叩き、スピードを上げ始める。

追いつこうとアクセルペダルをいっぱいに踏み込んだオキは、改造し排気量を大幅に上げ、一般的なライドロイドの数倍にもスピードでシンキを追う。だがそのスピードは徐々に離されていく。更には後方にまで武器を飛ばしてくる始末だ。

「ちぃぃ!」

避けても追尾してくる武器の数々を空中に出した鎖で何とか防ぐオキは、追っているにもかかわらず防戦一方になっている事に気づいた。

『このままじゃいけねぇ。隊長はこれを乗り越えたんだから。』

オキの尊敬する一人である男、アインスは彼女の好奇心という名の試練を乗り越えた。力は本気の本気でないとはいえ、あの飛んでくる武器の数々をその身に受けボロボロになっても、彼女の前に立ち、そして『エア』を切り裂いた。

「うっし!」

意思を決めたオキはスロットル全開状態でハンドルを鎖で固定。ライドロイドの上に立ちあがった瞬間、真正面に向かって鎖を飛ばし、それをつかんだ勢いでライドロイドよりも早く体を飛ばした。もちろんそれもただの勢いのみ。すぐにスピードは失速してしまう。だから次から次へと鎖を飛ばし、ソレをつかんで前へ前へと飛んだ。飛んでくる武器はいくつかはエルデトロスで防いだが、それも突破され、肩や腹部に数本肉を抉って行った。

 

ドシャ…

 

転がりながらもなんとかシンキの船に乗りこんだオキはシンキの座る椅子に後ろから襲い掛かった。

「おおおお…っ!?」

相変わらず笑みを浮かべるシンキは後ろから襲ってくるオキの眼をしっかり見ていた。タイミング、場所、見えないはずの状態からのはずが完全にばれている。それでもオキは腕を振り上げシンキにエルデトロスを振り下ろそうと腕に力を入れた。

次の瞬間、後方からの衝撃が走る。後方側面の脇腹に激痛が走ったオキは飛んできた空間が黄金に輝いているのが一瞬だけ見えた。

そしてその勢いのまま、船の前方に飛ばされる。再び転がったオキは体勢を立て直しながら脇腹に刺さった武器を無理やり引っこ抜き、シンキへととびかかる。だが、再び死角から飛んできた武器によって転がされる。

「はははは。どうした? もっと見せてみるがいい。それともそれが限界か? オラクルの子よ。」

シンキの口は笑っていても目が笑っていない事にオキは気づいた。いつもの優しい聖母のような眼ではない。彼女の『戦い』をする時の、眼。縦に瞳孔が開き、光るその眼は魔神と言われるに相応しい威圧を放つ。

「うるせぇ…よ!!!」

「…ほう。」

ゴロゴロと船の先端まで転がったオキがその勢いを使い、反動でエルデトロスのワイヤーを伸ばし、勢いよく振り下ろした直後、シンキの眼は数多の鎖を映していた。まるで鞭のように振り降りてくる鎖。それが目の前に広がるアークスシップ市街地の天井一杯に広がり、シンキを襲ってくる光景だった。

「叩き落としちゃる! 『禁鞭(きんべん)』!!!!」

自分も乗っかっているシンキの黄金の船、本人もろとも物量にモノを言わせた攻撃で叩き落とした。

 

 

 

 

「ふー…。つつ…レスタ…。」

ボロボロにつつも回復テクニック『レスタ』で回復し、火を付けたタバコを口にくわえたオキは空に浮かぶシンキの姿を見た。

巨大な6枚の黒い翼が空を優しく仰ぎ、オキを見下ろしている。

「やーっぱ、そう簡単には、いかねぇよなぁ。船落しただけでも良しとするか?」

レスタで回復したとはいえ、見た目だけだ。抉られ、突き刺された身体の中はすでにぐっちゃぐちゃになっているのが分かっている。正直立っている事だけでも精一杯だ

「なかなかやるではないか。だが、残念だったな。我の船は傷一つついてないぞ?」

追い打ちをかけるように金色に輝く小さな空飛ぶ船は輝きを落とさず、その眩しさを見せつけるかのようにオキに空に浮かぶ姿を見せる。

「せっかくの大技もきかねーか…。それでこそシンキだぜ!」

地面に手を付き、口を歪ませ笑うオキは最後の奥の手を仕掛けるべくフォトンを吸収する。その吸収力は崩れかけとはいえ、一つのアークスシップを維持するフォトンのほぼ全てを一瞬吸い取るほど。普通ならそのような事は絶対にできない。【深遠なる闇】に至る可能性のあったひとつの存在だったからこそ、その力を振るうことが出来る。

思った通り。シンキは戦いの眼から優しい目に一瞬だけ戻った。全ての母のような、優しい瞳で全力を出そうと構える子を見守る。

彼にあの力を渡したのは間違いではなかった。『ただの戯れだったとはいえ』、だ。

「くくく…ははは。フハハハハハ! いいだろう。見せてみろ。オラクルの子よ! 我を失望させるなよ?」

優しき眼から反転。魔熊のように笑う魔神は自らが認めた相手としてその力を顕現させる。黒と白の歪な形の武器。剣と呼ぶにはそうとは思えない円錐の剣。刃はなく、3つに分かれた部位がそれぞれ回転する。

 

 

『呼び起こすは(そら)の息吹』

 

 

オキ自身の身体の周囲をいくつもの鎖が飛び出していった。それと同時にオキも鎖と同じ方向に飛んでいく。

その力を与えられた時、苦しみ、悶えていた時。その力の元の主であったのだろうか、誰の記憶だったのだろうか。夢で見たそれはいつの時代、どの宇宙、次元をも超えたその先にいたであろう存在の姿。そのモノが見せた一つの形。オキはソレを模った。

 

 

『人と共に歩もう、俺は。故に―――』

 

 

オキの身体は何重にも絡みついた鎖と共に一本の鎖になっていく。巨大な鎖と槍になったオキはスピードを増してシンキへと向かい始める。オキは夢で見せられ、耳にし唯一覚えていた一つの言葉を技名とし、言い放った。

シンキの持つ原初のソレは次第に回転を速めだす。黒と白の風を纏わせながらシンキはその剣を振りかざした。

宙を割き、星々を作り、いくつもの世界を作り上げたとされる原初の光。シンキはその光を、輝きを、風を、ただ放った。

 

 

人よ、星々を繋ぎとめよう(エヌマ・エリシュ)!!』

『解き放て! 乖離剣(エア)よ!!』

 

 

轟音と巨大な振動。偶然にもその船を眺め、その揺れを目にした一般の人は、一瞬ダーカーの襲撃が再び起きたのかと身構えたそうだ。巨大な音と衝撃を放った後に地面に転がる一人の男を浮かばせ、静かに女性は去って行った。

オキが目覚めたのは2日後。心配そうにオキの顔を覗く可憐なサポートパートナーと、涙を浮かべ鼻水をオキの胸に柄ながら胸に顔をうずめた少女が一番初めに目にした光景だった。

「もー、心配したんだからね!」

怒るユウキに謝るオキ。元々シンキに呼び出され、嫌な予感がしたオキはこうなる事は予想しており、最初からアオイやユウキに話は通していた。自分が倒れて帰ってくれば心配するだろうと思い、圭子達にも念のため連絡はしておいたのだが…

「本当です。いくらシンキさんから手ほどきを受けるとはいえ、死にかけで戻ってくる人がいますか!」

これである。今回は自分の部屋とはいえ、正座するオキを中心にぐるりと少女達が囲み、頭を下げ続けるオキに対し激怒していた。

「いやだからさ、しかたねーだろって。シンキの呼び出しを断ればもっとひどい事になるし…許してくれよ。」

「「「「「ダメです!!!」」」」」

全員からの総意で拒否を喰らうオキ。とほほと肩を下げるしかなかった…

「…んだよ! おめーのせいでな!」

「あっはっはっは!」

笑いながら金色の杯で鮮やかな赤色に輝く酒を飲むシンキに、同じくして金色の杯を持つオキはその仕打ちがどうであったかをシンキに報告していた。皆に雷を落とされた後、シンキが見舞いに来てくれたので、見舞い品として持ってきてくれた極上の酒を一緒に

飲みつつ、起きたらどうなったかを話していた。

「でも、よかったでしょ? 自分の限界が知れて。どう思った?」

シンキの眼がオキの眼を見る。力強く見つめるシンキにオキは思ったことをシンキにぶつけた。

「…まだ、強くならなきゃならねぇ。信じて、待ってくれている人達が安心して、迎えてくれるように。怪我ひとつなく、笑って帰っていけるように。」

「そう。まぁ、今回のは、一応合格ってことにはしてあげる。でもそうね、少なくとも隊長ちゃんくらいにはなりなさい。」

「わかっているさ…。」

ずずずと杯に口をつけ飲み干したオキは、シンキとの一戦の最後を思い返す。

シンキが放ったのはあくまでも『乖離剣の輝きのみ』だ。彼女の乖離剣の最大出力である『光闇乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』と比較すると雲泥の差がある。

アインスはそれを、満身創痍になり、数日目が覚めない程の重傷になったとはいえ真正面から真っ二つに切り裂いたのだ。

まだ強くなる必要がある。そう思っていた事をシンキが読み取ったのか一言だけオキに残して去って行った。

「大丈夫。あなたはまだまだ強くなれる。あなたが死ぬ気で頑張れば、ね。」

その言葉と同時に消えて行ったシンキは黒い羽を一枚だけ、オキの部屋に残して行った。

「ったく、魔神め。」

その言葉とは裏腹に、オキの口は微笑み、眼には火がともっていた。

【深遠なる闇】との決戦まで後一週間を切った、ある日の出来事。




皆さま、ごきげんよう。シンキが一番初め、この小説の彼女の設定を依頼した際に『オキちゃん、私こうしたいから、オキちゃんもこうしてみたらどう?』と返してきた設定を今回織り込みました。
シンキの『光闇乖離す開闢の星』にオキの『人よ、星々を繋ぎとめよう』。最後の最後に回収です。(シンキみてるかー?)
さて、とうとう次で最後になるでしょう。また2話構成とか3話構成とか言わない限り…(頑張ります)
次回、【深遠なる闇】との決戦です。今までに仕込んでおいた、この作品のタイトルにもなる一つの大仕掛けを描きます。
もしよろしければ、最後までお付き合いいただければと思います。

さて、この場を借りて次回作の告知をしたいと思います。
現在、この作品「ソードアークス・オンライン」が完了した後に
続編『Fate/Grand Order Guardian of History』を公開していきたいと思っております。
時間軸はEP5。この作品で言う【深淵なる闇】決戦後となっております。
どうぞよろしくお願い致します。

ではまた次回にお会い致しましょう。

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