SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第140話 「向かうは地の底」

「兄さん! 兄さん!」

「どうした!? ヒツギ! …ッ!!」

ヒツギの声にエンガが向かうと、銀色の翼を背中から生やした騎士のような姿のモノが3体空に浮いていた。

「っち!」

エンガは素早く具現武装を具現化し、銃口から数多の弾丸を『ソレ』に向かって放った。銃撃音と共に前方に走ったヒツギは『ソレ』めがけて飛び上がり天叢雲を具現化すると同時にそのうちの一体を縦に真っ直ぐ切り裂いた。

「ふっ!」

空を羽ばたいていた『ソレ』は持っていた巨大な槍をヒツギへと目標を定めて横から突き刺しにかかった。だが、ヒツギは槍を弾き横一閃をくわえる。よろけたところをエンガの弾幕が襲い3体の騎士はガラスが砕けるような音を立て砕けて、最後は煙となり消えて行った。

「またあいつらか…。」

「ねぇ、本当に助けられないのかな。オキさん達なら…。」

ヒツギがアルに顔を向けたが、アルは首を横に振った。それをみたヒツギは肩をがっくりと落す。

ラスベガスの一帯、アースガイドの本部があった場所は今でも瓦礫の山と化している。生き残っていたスタッフメンバーがちらほらとエンガの眼に映り、瓦礫を少しずつどかしている。崩壊した理由はこの本部の長であり、皆のトップであったアーデムが原因だ。

生き残ったメンバーからの話ではアーデム側に付いたアースガイドのメンバーは一人残らず先ほど襲ってきた騎士のような姿の化け物に変化したという。そしてその翼の生やした騎士は本部を壊滅させ、アーデムと共にどこかへと消えて行ったそうだ。

変化したなら戻せないのだろうかとすぐに思ったヒツギ達だが、その力の受け具合を感じ取ったアルは変異した人を戻すのは不可能だと断言した。

「おーい! エンガさーん! こっちきてくれー!」

一人のメンバーである男がエンガを呼んだ。エンガとヒツギは顔を見合わせ頷き合った。まだ助けれる人がこの下に埋まっているかもしれない。立ち止っている暇はないのだ。

「なんだか、にぎやかになりましたね。」

「女の子…いっぱい。」

「ほんとオキって人助けすきだね。」

圭子(シリカ)と美優(ハシーシュ)、琴音(フィリア)がアークスシップへオキに会いに来ていた。ここ最近の状況をオキが説明し、その状況を見せたのだ。

先日ミケが助けてきた青空教室改め星空教室の少女達が過ごすチームシップ。今まで椅子とチームツリーだけがある何もない場所であった。しかし今ではたくさんのぬいぐるみが敷き詰められたエリアやなぜかここにいて寝ているキマリ号。その上にはミケがお昼寝中。ファンシーに飾られた壁、そして急きょ作られた窓際の教室である。今まではエステルが勉強を教えていたが、こちらの世界では何の役にも立たないので先生役として別の人物を代行として呼んだのだ。小さな姿が教壇の上に立っている。

「こまっちーが連れてきてくれたファータ・グランデ宙域の仲間内だそうだ。快く引き受けてくれたよ。」

「話には聞いていましたが本当に小さな人ですね。」

「ハーヴィン…だっけ?」

ハーヴィンとはファータ・グランデ宙域にいるいくつかの種族の一つで、オキ達アークスや圭子ら含む人型の種族と比べると体が小さく、大人でも身長が100cmに満たないとても小柄な種族だ。大人の姿にトラウマがある子たちが多くいるようで、どうしてもアークスシップにいる普通の講師では怖がられてしまう為、こうしてコマチに連れてきてもらった。

「私達からすれば宇宙人かー。あ、オキもそうか。」

笑う琴音にワレワレハウチュウジンダとオキが言うと小さく悲鳴を上げて逃げ回り、騒がしくならない程度に逃げる3人をオキは追いかけた。

オキはフランカ’sカフェでお茶をしながら圭子達の近況をきいて、談話している中、オキは丁度話をしておきたかった事を3人に話をし始めた。

「地球での一件が終わり次第すぐに【深遠なる闇】に最終決戦を仕掛けるつもりだ。」

シャオの演算はほぼ終えており、現在準備段階にあるという。その準備も順調に進んでおり、地球での一件が終われば直にでも最終決戦へのアプローチを開始するとシエラ経由で伝言を受けていた。

先の戦いで一度撤退した【深遠なる闇】がどのような状態で再び姿を現すのか、シャオの演算内では前回よりも強力な力を蓄えてくる可能性が高いと踏んでいる。

「負けるつもりはさらさらない。だが、絶対帰ってくる保証はできない。もはや今更感だけど、覚悟はしておいてほしい。」

オキの言葉に圭子達はゆっくりと頷いた。彼女たちはオキを慕ってここまでついてきた。覚悟は最初から決めている。

「私たちは大丈夫です。絶対帰ってくるって信じてますから。」

「帰ってきたら…デート。」

「あ、それいいね。もちろん、みんなのパターンと二人きりのパターンの両方ね。あ、ユウキちゃんとかも呼ぼうか!」

すでにどこに行こうかと、なにをしようかと話を始める圭子達に気合を入れられた気がしたオキの元に一つの連絡が入った。

「ん? ああ、今はフランカさんのカフェだが? …わかった。すまねぇな。せっかく来てくれたのに仕事のようだ。」

三人の見送りを背に気合を入れ直すオキは艦橋へと向かった。

「では、私達も行きましょう。」

「もう少し…。がんばる。」

圭子、琴音、美優はオキの姿が見えなくなったのを確認するとアークスシップの別の場所を目指した。そこにはすでに一緒に来ていた和人や明日菜、そしてユウキも一緒にいた。

「やっほー圭子! 琴音に美優も!」

「ユウキさん、和人さんに、明日菜さんも。」

大きな機械のタッチパネルを操作していた和人が圭子達の方を振り向いた。圭子達の後に続き、続々と集まってくる。

かつてオンラインゲームで共に戦ってきたメンバー達。アークスに助けられた面々がその場に集まってきた。

「こっちは準備できているよ。」

「それじゃあ、はじめましょっか。」

惑星スレアのオンラインゲーマー達は自分たちの家にあるギアと同じように頭にヘッドパートを取り付け、その装置を起動させた。

「「「リンク、スタート!」」」

「エンガからの連絡があったって?」

「ごめんね、オキさん。圭子ちゃん達来てるのに。」

あやまるハヤマに別にいいと一言言って、オキは現状の確認をした。

エンガ達のいるアースガイド本部の跡地に、地下への道が見つかったそうだ。ただの地下への道ではなく、スタッフ全員その道の存在を知らなかったという事。偵察にヒツギ、エンガが向かったところ、巨大な地下遺跡が目の前に広がっていたという。

直に地上へと戻ったエンガはアークスへの救援を依頼した。

「エンガさん曰く、そこからここ数日現れ続けている翼の生えた騎士が出てきたそうです。」

「ふーん…アーデムに関係ありそうだな。」

その翼の生えた騎士がアーデムと関わりあるのはエンガから聞いている。そこにいる可能性は高い。

「うっし、全員で突っ込むぞ。」

「おっけー。みんなに集合するように言っとく。」

ハヤマは守護騎士全員への通達を行い、シエラは素早く全員が地球へと降り立つ準備を整えた。

「これで、OKです! オキさん、ハヤマさん、よろしくお願いします。守護騎士、出撃!」

オキ、ハヤマ達はアークスロビーにて合流。

「ミケは?」

「昼寝してるみたいよ。」

「コマチ君は、ファータグランデか。」

「マトイちゃんはハルコタンに行ってるみたい。」

クロノスは相変わらずマザークラスタのメンバーの様子を見てもらっている。結局今いるメンバーで地球、ラスベガスへと向かった。

到着後、シエラに地下の状態をスキャンしてもらった。アースガイド本部跡地の地下は巨大な地下遺跡となっていた。

「とても深く大きな遺跡です。ただ、その階段がその遺跡の中心を貫いている柱にくっついているので、そのまま降りちゃってください。」

「降りれば、アーデムがいるのか?」

エンガの質問にオキは少しだけ首を傾けた。

「いや、いるかどうかは言ってみないとわからん。だが、こういう遺跡ってのは最深部の中央に大事な門があるってのが定評だろ?」

オキの言葉にエンガは少しだけ笑い、すでに走り始めたハヤマとアインスの背中を追った。シンキは直ぐに別行動をとり、下へと降りていった。

「進むと言ったはいいが、うーむ…。」

階段を下り続けるも底が見えない。降り始めて数十分がたったが、底が見える気配は一向にない。翼の生えた騎士たちだけが下から沢山登ってくるため思うように進めなかったのだ。

「めんどくせえ。」

思った以上に進めなかったオキはだんだんイライラしてきた。そしてとった結論はいたって簡単だった。

「はやまん、隊長。エンガを頼む。」

「え?」

そういってヒツギの肩と膝を抱え、階段の淵に立った直後そのまま下へと落下した。

「え? きゃああああああ!」

「まじかい。」

「まぁ彼なら大丈夫だろう。こっちも行こう。」

顔が引きつっているエンガの肩を掴んだアインスはそのまま一緒に下へと落下していった。

「やれやれ。」

ため息をついたハヤマも下へと降りていく。

降りていオキ達に襲いかかる翼の生えた騎士たち。落下しながらヒツギやエンガを守りながら一気に落ちていく。

「ん?」

目の前に光る何かが通り抜けた。フィールドのような何かを通り抜けたオキ達の落下スピードは急激に落ち、先程まで落下していた遺跡の風景も真っ青の空間にかわった。

「これは…。」

アインスたちもオキに追いつき、その空間が異常であるというのは直ぐにわかった。

翼の生えた騎士たちも大量に現れ、オキ達を囲む。

「罠か?」

「なんでもいい。突き進むだけだ。」

「だね。それじゃあ片付けます?」

それをみたオキたちは自らの武器を構えて3方向に散った。

「「「上等!!!」」」

口を歪ませ、敵の塊に突っ込んだアークス3名。それを援護するエンガとヒツギ。

大量にいた騎士たちは直ぐに片付いた。片付けた直後に拍手がその場に響く。

「さすがはアークス。予想通りだ。だがそれもここまでだ。この空間は外の世界と時間の流れが違う。そしてそれを制御しているのは私。君たちは閉じ込められたのだ。これ以上アーデム卿の邪魔はさせん。」

胡散臭い白衣の男、オフィエルがその場に現れたのだ。オキは彼の言葉で確信する。アーデムは下にいる。

「そうかい。ならばこの空間を制御しているおっさんを倒してこの空間を解くってほうほうを取れば進めるよな?」

オキの言葉を聞いて高笑いしたオフィエル。

「そうだな。私を倒せばそれも可能かも知れない。だが、それは不可能だ。なぜならここは私が制御する空間。全てを操作できる。私に攻撃ができるかな?」

構えるオフィエル。空間のいたるところからメスの顔が覗く。

「っへ。試してみるさ!」

マザークラスタ改め、アースガイド北米支部局長オフィエル戦が開始された。




皆様、ごきげんよう。
暑い。。。暑すぎる。アークスになりたいと思う日々。皆様いかがお過ごしでしょうか。
オフィエル戦にはいる回でしたが、途中まで書いていたのが保存できていなかったのか半分消えていました…。
おかげで途中で心折れてオフィエル戦突入で止まりましたナンテコッタイ。
次回こそはオフィエルにいろいろ楽しんでもらいましょう。

では次回にまたお会い致しましょう。

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