SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第125話 「マザーズ・ロザリオ」

「だあああ!」

 

「おおおお!」

 

槍と直剣が火花を散らしながらぶつかりあう。青年と少女の激しい攻防と声がコロシアムフィールドに響き、周囲からは歓声が大きく広がっていた。

 

決勝戦にふさわしい、剣士同士の戦い。始まってから約10分以上経過した今でも、お互いに譲らない攻防戦を繰り広げていた。

 

オキの三連突きがユウキの直剣をはじいた後に真正面へ放たれる。ギリギリを避けたユウキの髪の先端がそれを掠る。しかしユウキはそれに怯まずオキへ真横から直剣を振った。

 

槍を身体の真横へと構え、ユウキの攻撃を防いだオキは、そのまま槍を地面に突き刺し、槍を軸に体を浮かせて回り、飛び蹴りを放った。

 

ユウキはしゃがんでオキの足を回避。足払いの要領で槍を蹴る。槍を軸にしていたオキは支えを失い地面へと落下。

 

チャンスと読んだユウキは足払いした勢いで回転切りでオキの胴体を狙う。

 

胴を狙われたオキは体を空中で横回転させ、槍で剣を叩き落としそれを防いだ。

 

「ふー…。」

 

「はぁ…はぁ…。」

 

一連の激しい動きに対し一呼吸で落ち着きを戻したオキ。反面、ユウキはまだ息が上がっている。

 

VR世界は疲れることはない。だが、人はそう思い込んでしまうと本当に疲れたりしてしまう。

 

オキの精神力と普段から戦いの真っただ中にいる日常からの差だ。

 

「ふふふ…。」

 

微笑みながら下がるユウキにオキもつられて笑う。

 

「楽しいなユウキ。」

 

「うん! すっごく楽しい!」

 

走り、回り込み、再びぶつかる。

 

初めて出会い、戦い、そして別れたあの日からだいぶたつ。さらにあの時とは違う懸念されたモノが無くなったユウキは生き生きと剣を振る。誰にも邪魔されない、このフィールドで。彼女は今まさに最も楽しく戦えていた。彼女の笑顔がオキにとてもまぶしく刺さる。

 

「こいつは…負けるかもな。」

 

冷や汗を一滴流したオキはニヤリと笑いぼそりとつぶやいた。

 

「え? なに!?」

 

聞こえなかったユウキは距離をとったオキに首をかしげた。

 

「このままじゃ負けるかもしれんと言ったんだ。だから…戦い方を変える。」

 

槍の柄の後方を握り、突きをメインに戦う構えを取っていたオキは、クルクルと槍をその場で回し、体の周囲をそのまま回転させ、空中にほおり投げた槍を再び捕まえた。

 

握った場所は、柄の真ん中。しかも今まで両手で構えていたのを今度は片手持ちだ。

 

「あの構えは、ダブセか。」

 

「持ち替えるとは思ってたけど、早かったね。」

 

「それだけユウキ君との戦いが楽しいという事だろうな。」

 

二人でにやりと笑う男たち。アインスとハヤマはその構えをよく知っていた。

 

ダブルセイバー。柄の両端に刃のついた剣。普通の剣と違い、両刃の付いた柄を握り棒術のように振り回すことで多数の攻撃を一度に出すことのできる手数重視のスピード型武器。

 

数多の敵と戦うために多種に渡る武器を使い分けるアークス。中にはアインスやハヤマのように一つの武器を極める者もいる。

 

オキの得意とする武器。ワーヤードランス。それとは別に得意とする武器がある。

 

パルチザンと、ダブルセイバーだ。

 

真正面から突っ込んだオキは槍を棒術のように振り回し、右に左にユウキへと襲い掛かる。

 

「くぅ…!」

 

先ほどまでのスピードが段違いで上がっている。何より見たこともない動き。捌ききるので手一杯だ。

 

更には回し蹴り、その勢いで回した槍をフェイントをかけて切り上げ。

 

「しまった!?」

 

「一気に、決める!」

 

直剣をはじかれたユウキに隙ができる。一旦槍を引いたオキはチャンスと読み、再び突きの構えを取る。

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

オキの朱き槍は一直線に彼女の胸へと目指す。誰もがこれで決まったと思った。一人を除き。

 

「…それを、待ってたよ!」

 

 

ガキン!

 

 

はじかれた直剣の勢いを利用してユウキは槍の一突きを刃の面で防ぎ、受け流した。

 

「なに!?」

 

槍はその勢いのままユウキの身体の横を素通りする。今度は逆にオキの身体が無防備となった。

 

「楽しかったよ!」

 

ユウキが直剣を光らせ、オキの身体へと突き刺そうとする。オキはその瞬間、微笑んだ。

 

「マザーズ…ロザリオ!!」

 

11発の瞬速の突き。ユウキの持つ最大の攻撃がオキへと放たれた。

 

地面に倒れたオキ。シンと静まるコロシアム。フィールドに立ち続けるは一人の少女だった。

 

『きまったああああああ! 多くの猛者をバッタバッタと切り倒し、このコロシアムの頂点に立ったその少女の名は…絶剣のユウキやぁぁぁぁ!!』

 

コロシアムから一斉に歓声が上がった。ユウキは回りをみわたし、自分の状況をようやく理解する。

 

「ふぅ…こいつは一本取られたな。」

 

寝転がりながらタバコに火を付けたオキは負けた悔しさよりも、彼女と戦えた楽しさが心の中で上回っており、目の前に広がる蒼い空のように澄んでいた。

 

「やった…。やったぁ! オキに勝てた!!」

 

飛んで喜ぶユウキにオキは立ち上がり頭をクシャリと撫でた。

 

「よーやったわ。まさかあそこで防ぐとは思わんかったわ。」

 

「だって…オキがあの技使ったら、必ずココに突き刺しに来るってわかってたもん。最初からそれを狙っていただけ。」

 

ニコやかに笑う彼女の顔をみて頭に手を乗せたオキは高笑いをした。

 

「はっはっは。確かにあの技は心臓めがけて狙うからな! そりゃ何度もみせてりゃそうなるか!」

 

オキは笑い、ユウキはオキを引っ張りながらフィールドを後にする。

 

この時ユウキは分かっていた。もしあの時にオキが『ゲイ・ボルク』を撃ってこなかったら。

 

もし、知らない技だったら。捌き切る自信はなかった。でもオキならあの技を最後に持ってくるとなぜかわかっていた。だからこそ勝てた、と。

 

「また、やろうな。」

 

「うん!」

 

 

 

 

その数日後、オラクル船団、チームシップ『ペルソナ』内部。キリト達をはじめ、今回のALO闘技大会に参加したオキ達の仲間たちが集まりユウキの祝勝会を上げた。

 

参加した皆々がそれぞれの戦いを先ほど見たかのように語り、また実際に録画されたその動きを実際に見て論議したりなど様々に楽しんでいた。

 

特に今回はアークスであるオキが一人の少女に負けた事。

 

ゲームの中とはいえ、アークスの力を使っていなかったとはいえ、彼女はオキに勝った。それは事実として残る。

 

「わざとではあるまい?」

 

「わかって聞いてるでしょ隊長。わざわざ持ち替えまでやった俺がわざと負けるなんてことするもんじゃないって。」

 

まぁねとほほ笑む隊長はコクリと杯に口をつける。

 

「ユウキは実際強かった。言い訳もしないし、負け惜しみも言わん。あいつは、強い。」

 

キリト達に囲まれ、笑顔で語りあっているユウキを見るオキ。

 

「オキ君の前に一度戦ったからわかる。その時の動きとまるで違った。彼女は、オキ君のためにあの力を出したのかもしれないね。」

 

「っふ。かもな。」

 

「オーーーキーーー…。」

 

「たーすーけーてーくーだーさーい!」

 

ふとユウキを見るとシンキに弄られているユウキとシリカが見えた。

 

「お呼びだぞ。」

 

「手伝ってよ隊長。」

 

嫌そうな顔でアインスの顔をみるオキに対し、無言で首を横に振るアインスだった。

 

 

 

「ひどい目にあいました…。」

 

「ほんとだねー。」

 

「なぜか私まで巻き込まれた…。」

 

「疲れた。」

 

シリカ、ユウキ、フィリアにハシーシュはオキの部屋へと退避していた。

 

シリカ、ユウキだけでなく、不運にもフィリア、ハシーシュにまで魔の手が伸びたのだ。

 

「皆さまお疲れのご様子で。お茶を入れましたのでどうぞお飲みください。」

 

「ありがと。アオイちゃん。」

 

お茶を持ってきてくれたアオイの頭をフィリアが撫でた。

 

「なんかどっと疲れました。」

 

「さすが魔神。恐るべし…。」

 

オキのマイルームの一室、畳のある和風の部屋。大きなテーブルを囲みお茶を飲んだ皆はどっと疲れが出ていた。

 

「いやはや。あいつもあれが無けりゃかっこいいんだがなぁ。」

 

テラスでタバコを吸ってきたオキが戻ってきた。いくつかの書類を持っている。

 

「ほれユウキ。これでいいのか?」

 

「うん! ありがと!」

 

シリカ達が不思議そうな顔でその書類の束を覗いた。

 

「ああ、それか? それはアークスが使用しているワイヤードランスの資料を簡単に描いた奴だ。今回の闘技大会で優勝した人には武器の追加ができる権限を手にすることが出来てな。俺はそれも狙いつつだったんだが、ユウキが勝ったからな。」

 

「せっかくだからオキの使う武器も使ってみたいなーっておもって、だからALOに追加してもらおーって思ったんだ。」

 

笑顔でその資料を読むユウキに周りもつられて微笑む。

 

「ちなみに俺がもらった準優勝の賞金はすべてミケの食い物代に消えていった。」

 

ため息をついたオキ。戦いのさなかにミケが暴走してコロシアム周辺に出ていた屋台のほとんどを食してしまった。その代金の請求がオキ達のチームに丸ごとのしかかってきたのだ。

 

「僕も分もいくらか上げたよ。あんなに使い切れないもん。」

 

あははと笑うシリカ達。その怒りのオキとどこ吹く風状態のミケの様子が容易に想像できる。

 

「そういえば4人集めた理由を聞いてなかったけど、なにかあったの?」

 

「大事な話があるって言ってた。」

 

フィリア、ハシーシュが首をかしげて聞いてきた。

 

祝賀会の後、皆を呼んだオキは大事な話があると言って連れてきたのだ。

 

その言葉を聞いてオキは部屋にあるモニターにある映像を流した。

 

「話ってのはこれだ。闘技大会の前、ユウキが退院した位かな。ちょっとデカい話になりそうだ。」

 

オキの映した映像は、その時オキが目にした光景が映っていた。その内容は思いもよらぬ光景だった。

 

 

 

 

「なぁ、シンキよ、どういうつもりなんだ?俺の浄化作業前に話があるってペルソナ、六芒、隊長達まで…。全員集めて一体何の話なんだ?」

 

ここは、アークスシップの中でも最近住民の引越しが終わり廃棄、解体が予定された。

 

無人の艦。そんな場所にアークスの中でも最大戦力と言っても過言では無い実力者、六芒均衡ら全員とペルソナメンバー。隊長を始め、オキ達と深く関わっているアークス達が全員集められて居た。

 

「……。」

 

シンキは此方に背中を向けたまま黙っている。普段のおどけた雰囲気はない。

 

「あのな、浄化作業中はコールドスリープに入るから暇じゃねーんだ。いろいろ検査受けてから入らなきゃならんから、時間が惜しい。意味も無く呼び出したわけじゃないだろ? ダークファルスとの決戦でもなけりゃこんな数の戦力を…。ユウキの様子も気になるし。」

 

退院した直後のユウキは元気だ。今までにない程の元気が湧いて出てくると本人は言っていたが、まだ油断はできない。現在はスリープ装置に入ってALOにて闘技大会への調整をしている最中だとオキは聞いていた。

 

そんな心配そうなオキをよそに、背中を向けたままシンキはゆっくりと語り始めた

 

「…貴方達は【深遠なる闇】をどれくらい理解してる?」

 

唐突な言葉。シンキから発せられたその言葉は普段にない重みがあった。

 

「あ…? そりゃあ、フォトナーが作り出した負の遺産、ほっとくと宇宙が危ないダークファルスの親玉、だろ? あの馬鹿がそう言っていたし、アウロラも…。」

 

あのバカ、ルーサー。そして【若人】本体復活に伴い、アフィンの姉にして(元)【若人】のユクリータ内部に顕現した『最初』の【若人】にしてオラクル船団最後のフォトナー、アウロラ。その二人から【深遠なる闇】の話はいくらばかりか聞いていた。それに実際にシオンや自分、【仮面】からも。

 

シンキはゆっくりと振り返りこちらに向き直った。その顔は母性溢れる女神の顔ではない。厳しい顔をした魔神の顔。その姿とより強く発せられる威圧感にオキを始めその場にいる者達の身体に緊張が走った。

 

「そう、この宇宙ではね。」

 

「この宇宙では?」

 

ハヤマが首をかしげる。

 

「フォトナーが作った全知の出来損ない、それがこの宇宙での【深遠なる闇】。私から見れば『ただの出来損ない』なんだけど…最悪のケース、私の中にある闇へ至る可能性を見た。」

 

彼女の言っていることが冗談ではないのは全員がわかっている。彼女はふつうのアークス、人ではない。この場にいる者、それこそシャオいや現在我々オラクル船団だけでなくこの宇宙の驚異となっている【深淵なる闇】。それすらも凌駕する存在。皆はそう認識していた。彼女の中には彼女の世界で育ち、宇宙、世界を飲み込まんとした『闇』が存在していたからだ。その力は普段の彼女から見られる不思議な力で鱗片がわかる。

 

「それは一体…どうなるんだい?」

 

今まで目をつむっていたアインスの片目が聞く。

 

「その平行世界への条件は大分遠いけれど、私の持つ闇の原初へ至った場合、大いなる光という抑止力が無いこの世界では憎悪の感染というフォトンではどうにも出来ない存在へ至るでしょうね。」

 

そこに集まった全員がざわつく。

 

ざわつく空気の中、シンキは再び口を開いた。

 

「だから、浄化作業中オキちゃんが居なくてもいいように、今この場で本当の闇がどういう物か知ってもらおうと思ってね、集めたの、それが理由。特に、オキちゃんに頼りっきりで三英雄すらダークファルス一体にボロボロにされるようなのじゃ、オキちゃんが居ないと心配でしょう?」

 

と、ジト目で六芒を睨む。

 

「…。」

 

「いや、ハッハッハ!痛い所を突かれたなレギアス!俺達も頑張っているが中々足りなくてな!」

 

黙っているレギアスをヒューイが茶化す。

 

「さて、全員武器を出しなさい。早速始めるわ。死にたくないなら、全力で止めて見せる事ね。」

 

「…本当にやるのか…?いくらシンキでもこの人数だぞ…?」

 

クロが心配そうに声をかける。

 

「…そういう認識は今のうちに捨てて置きなさいな、今から見せるのは私であって私ではないのだから。」

 

「あ? どういう事だ」

 

オキが聞くや否や、シンキ後ろに開いたアルゴルの宝物庫から、丸い球体が取り出された

 

「エスパーボール、設定、大いなる光の全権限一時移行。」

 

シンキがそう唱えると、エスパーボールと呼称されたそれは空高くシンキの真上に浮かび上がった

 

そして…シンキの体から光の奔流がエスパーボールに伸び、エスパーボールを中心として廃墟のアークスシップの天井に巨大な10の光のリングを作った。

 

光の奔流が収まると同時に

 

シンキの体は黒い靄に包まれた。

 

そこに居るのは別人、いやまったく別のモノになったシンキ。

 

地響きとともに地面から這い出てくる『ナニカ』。それが異様なモノ、異質なナニカだというのが一瞬でわかった。その状況に一同、唖然としているとシャオから通信が入ってきた。

 

『オキ! 君達が居る廃棄するアークスシップから強大なダーカー反応が…!一体何があったんだ!?』

 

「…シンキだ…。」

 

唸るようにシャオへ答えたオキはフォトンをできる限り活性化させる。

 

『ッ!シンキが!?僕らが知る深遠なる闇より遥かに強力な反応だぞ…!?』

 

ゆっくりと地面から生えてきた大量のどす黒い霧のような靄。それと同時に巨大な『うっすらとしか見えないナニカ』。わかるのはそれが大きく、柱のように幾つも生えた巨大な三角系の生物。靄の中には無数に光る朱い光。それはまるで目のように蠢いていた。

 

どす黒いオーラを纏いシンキは普段の余裕ある態度からは考えられないような

 

狂ったようなどこか、誰かの声が幾重にも重なったような笑い声をあげながら

 

こう言い放った

 

「「「助けを乞え…狂声をあげろ…苦悶の海に溺れる時だ!ハハハハハハハハハ!」」」

 

その声を聴いた瞬間、オキの頭に何かが走った。同時に鋭い頭痛がオキを襲う。

 

「ぐ…ぁ…!?」

 

「オキ君!? ちぃ!」

 

「オキ!! この…!」

 

頭を抱えながらその場に膝をつくオキを見てアインスやクラリスクレイスが近寄ろうとするも、多数の触手がその行く手を阻んだ。

 

「なんて力だ…。」

 

「…抑えきれない。」

 

ハヤマとクロノスも苦戦している。

 

オキの目の前に何かが見えた。

 

『銀髪の少女…? 紅い…球体…。オレンジ色の髪の少女…紫髪の少女…?』

 

とぎれとぎれであり、しかも鮮明に映らないその光景だが、まるでそれを体感したかのような感覚に落ちいる。

 

 

球体に吸い込まれる銀髪の少女。黒い甲冑の女性。

 

 

巨大な竜、先ほどとは違う黒甲冑の女性。

 

 

赤きドレスの王、白きベールの少女。

 

 

大海原に海賊船

 

 

 

霧の濃い街

 

 

 

多くの戦士とロボットの軍団

 

 

 

白き巨大な塔と騎士

 

 

 

黒き海と巨大なナニカ

 

 

 

そして目の前にいるなにかと全く同じ蠢くなにか。

 

 

 

 

一瞬でその光景が脳裏に走った。ひどい頭痛は次第に収まっていく。

 

オキが気が付いた時には、周りで戦っていた者達は地面にへたばっていた。

 

「まぁ…ギリギリ合格点かしらね。」

 

宙より降りてきたシンキはツカツカとその場を後にしだした。そしてオキとすれ違いざまにこういった。

 

「あなたが見たのは…現実よ。忘れないように、心に刻んでおきなさい。」

 

 

 

説明をしたあと4人は黙っていた。オキは小さく口を開けた。

 

「いつか起きるであろう事柄だと思う。どこでそんな戦いが繰り広げられるのか全く分からない。だけど遠い先ではない。だから知っていてほしい。」

 

いつか、皆を巻き込む巨大ななにかが起きることを。オキは4人の顔を順番に見た。

 

自分をしたってついてきてくれた少女たち。この子たちは守らねばならない。

 

アオイの事も見る。彼女にはいつも世話になっているから。

 

「えぇ。ご安心を。私もいざというときは…。」

 

サポートパートナーはアークス同様フォトンで機能している。そのため戦うことも可能だ。

 

「大丈夫です。私やここにいる皆さんは、何があってもオキさんを信じます。」

 

シリカが微笑みながらオキへと言葉を返した。それに対し残りの3人も首を縦に振る。

 

「だから、心配しないで思いっきり戦ってきて。」

 

「大丈夫。私たちはあなたを信じてる。」

 

「オキの強さはしってるもん。だから、僕たちのことは気にせず、今まで通りでいてよ。何があっても僕たちは覚悟は最初からあるから。」

 

アークスと共に歩む。それは最悪の場合も考えられるという事。つまりは『死』。

 

戦いを避けられないアークスだから、それは分かっている。オキを慕い始めた時から、それは覚悟として決めていたと彼女たちは語る。

 

それを聞いてオキはコクリと頷いた。

 

「ありがとな。お前達を悲しませないためにも、もっと強くならないとな。」

 

彼が話した物語のような、星を巻き込み、宙を巻き込み、世界全てを巻き込んだ壮絶なる戦いへと足を踏み入れるのは、まだ先である。

 

 

 

 

「そしてもう一つ。これは今でも起きていることだ。」

 

オキの話したもうひとつの大事な話。それは、登録されていないアークスが最近多く活動しているという情報だった。




みなさまごきげんよう。
2週間休暇をいただき、ようやくこの章を終わらせることができました。
最後は納得いく終わり方をずっと考えていました。生きたユウキがどう過ごしていくか。
そしてそれをどうやって次に繋げるか。悩んでいたところにシンキからひとつの物語を渡されました。それが後半です。
次回作に続く話となっております。
長く続いたSAOも次章で完結となります。そして次回作へと続きます。
次章がまた長いのですが・・・。どうやってアレンジしようかな。


ではまた次回にお会いしましょう。

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