SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第122話 「神鳴流剣士」

ひらひらとした和風の着物をアレンジしたメイド服に時折動く小さく尖った獣耳がなぜかよく似合う。

彼女の刀は彼女の身長よりも長い刀だった。それを軽々と振り、ケットシー特有のスピードもあり、オキの攻撃についてくる。

いや、ついてくるではなく、オキがついていく方だった。戦闘開始から5分経過した今、オキは苦戦していた。

『はやい。ゲームだけの動きじゃねーなこれ。』

得意の3連突きをやすやすと交わされ、側面へ回り込んだセツナは体を大きく回転させながら刀を横一閃。

オキも切られまいと槍の柄でそれを防ぐ。

「星の朱槍。噂に違わぬ強さをお持ちのようで。」

つば競り合いで火花を散らしながら押し込んでくる。

「そういうアンタもかなり戦い慣れてるな。」

ニヤリと笑うオキに対し、綺麗な微笑み。セツナも楽しんでいるようだ。

「時間はたっぷりだ。終わりまで、手ぇぬくんじゃねぇぞ!?」

「ええ。こちらも負けるつもりはありませんから!」

お互いが猛スピードで離れてはぶつかり、離れてはぶつかりとフィールド上を駆けまわる。

「こいつは早い! ワイらの目でも追えないスピード勝負! 星の朱槍オキに対し、剣士セツナもそのスピードでぶつかり合う! なんちゅう戦いや! こんなん見たこと無いで!」

キバオウの実況もあり、会場内は大盛り上がりだ。

「オキさん頑張ってくださーい!」

「まけるなー。」

「やっちゃえー!」

「いっけー!」

シリカやハシーシュ、フィリア。そしてユウキが外から応援する。

「セツナさん頑張ってくださーい!」

「せっちゃんファイトやー!」

「まけんじゃないわよー!」

セツナの友人たちも声援を送る。それを聞いた二人はよりブーストをかけた。

「っしゃおらー!」

オキの鋭い突き。しかしをそれをセツナは紙一重でかわし、突きだしたオキの腕を握った。

「まずっ…!」

それを払おうと腕を引こうとしてもすでに握られた腕は自分の突きだした力と合わさり引くことが出来ない。

「神鳴流 浮雲・旋風一閃!」

オキを引き込みながら足をからめ、前方に回転しながらオキは地面へと叩きつけられた。

「っが!? んなろ!」

オキは腕に力を入れ、飛び上がる要領で彼女ごと空中へ跳ねる。しかしそれも読まれていたのか彼女は態勢を変え、オキの顔を足で挟み込む。

「むぐ!?」

「失礼。」

そのまま後方に縦回転しながら再びオキは地面へと叩きつけられた。

「神鳴流 浮雲・桜散華。」

アクロバティックな動きに場内はより一層盛り上がる。

「なんてこった! ものすごい動き! ワイあんな動き初めて見たで! どう見る解説のアインスはん。」

あまりに暇だったので解説をお願いされたアインスは丁寧に今の動きを説明した。

「流れるような動き。綺麗の一言だ。相手の力を利用し引き込んでの搦め手。反撃されてからの再度足技でのほおり投げ。私もオキ君とは長い付き合いになるが、その彼を二度も連続で地面に伏させたのは初めて見た。素晴らし。」

「ふむふむ。なるほどなぁ。おっと!? しかしここでオキはん負けじと起き上がる! そこに飛び上がって上空からセツナが決めに行ったー!」

オキが吹き飛ばされ、地面に伏しているのをチャンスとみたセツナは飛び上がり刀に稲妻を走らせる。

「神鳴流 雷鳴剣!」

「こんにゃろ!」

オキは目を見開き、槍を上空へと投げた。それをはじいたセツナはそのままオキへと切りかかる。

だが、それは防がれた。はじいたはずの槍が、セツナへ再び戻ってきたのだ。

「っ!?」

槍の攻撃をはじく為に刀で防御した為、オキへの攻撃が出来なくなった。

その間にオキは立ち上がり、投げ、セツナを二度も攻撃した槍を手元に引き寄せた。

「あーあ。奥の手で取っておいた技、ここでつかうとはね!」

オキの腕に付いたサブウェポンのウィップ。それを投げた槍に即座に巻き付けまるで鎖鎌、アークス流でいうならワイヤードランスのように扱う小技だ。小技と言うが、普通そう簡単にできるモノでもない。

再び投げた槍はセツナめがけて飛んでいき、それをはじくもオキの巧みな技で再度セツナを襲う。

「くっ!」

自由自在に動き回る槍を防ぐセツナ。だが、あきらめた目ではない。まだ隙を伺っている。

「神鳴流 斬空閃。」

槍を投げた直後のオキを狙って斬撃が飛ぶ。隙間を縫っての攻撃をしてきたセツナに驚くオキ。

その攻撃を皮切りに再び至近距離まで迫るセツナは高速の斬撃を放った。

「神鳴流奥義 百烈桜華斬!!」

ほぼ同時の多段斬撃がオキを襲う。たった一振りのように見える高速の斬撃。

もしこれが一点集中で強力な一撃だったなら、防ぎ切れるかどうかわからなかっただろう。熟練のプレイヤーでも難しいと思われる。だが、面での攻撃に慣れているアークスならふせげる。

「防がれた!?」

確実に隙をついたと確信したセツナは大技を放った。だが、それをオキは槍の中心を握り、すべてを防いだのだ。

「へへ、呪いの朱槍をご所望かい!? ゲイ・ボルク!」

振り切った大きな隙を見逃さず、オキの朱槍はセツナの胸を貫いた。

これによりオキの勝利が決定した。

「ふう。あぶなかったぁ~…。」

吹き飛ばしてしまったセツナの手を取り立ち上がらせたオキはセツナと共に歓声を浴びながらゆっくりとフィールドから外れた。

「いやはや。むっちゃつえぇな。びっくりしたぜ。」

「いえ、私なぞまだまだ修行が足りません。あれを防がれるとは思いませんでした。流石、アークスですね。」

セツナは小さくオキにほほ笑んだ。彼女はアークスの事を知っているようだ。

眼を見開き驚いているオキにあわてて説明を入れた。

「ああ、ご安心ください。怪しいものではありません。ある組織に入ってるものでして、ついこの間アークスの方々と協力関係になったもので、偶然あなた方の事を知っていたのです。もし何かありましたら、どこかでお会いすることもあるかもしれません。その時は、どうかよろしくお願いします。」

セツナは微笑みながら握手を求めてきた。オキは快くそれを受ける。

「ああ、こんな可愛らしいのにむっちゃ強い剣士と一緒に仕事できるなら、こちらからもお願いしたいところだ。」

その言葉に顔を赤くするセツナをみてオキが笑う。

「せっちゃーん! 大丈夫!? けが無い? ウチがなおしたろか?」

「このちゃ…お嬢様。大丈夫です。」

セツナの知人たちだろう。黒髪の和服美人がセツナの背中側から飛びついてきた。

微笑む彼女は一礼して、そのものらと共にその場を後にした。

さて、第1戦目が終わり、第2戦目へと突入した。その2戦目をダイジェストでお届けしよう。

初戦、アインスVSタカミチ。

バフを積んだ居合い拳のパワーと、隙を作る見えない拳のスピードによりはじめは苦戦したアインスだったが、真正面から拳の居合いを同じく居合で叩き切るというとんでもない事をやってのけたアインスは、タカミチとの戦いに勝利を決めた。

ユウキVSクロでは能力を使ってないのの、自由に動き回る立ち回りと思いきや、急に堅実に守り、一手一手を確実に拾う立ち回り等、クロが覚えてきた数々の動きを見せ、ユウキが苦戦。しかしその時間を楽しむユウキの感情と、負けるつもりは一切ない気持ちを読み取り、最後の一撃を誘う。最初から勝つつもりはなかったクロだが、簡単に負けるつもりもなかった。

この一撃もユウキにダガーを差し込むつもりでもいた。

だが、事前にオキのアドバイスを受けていたユウキは、攻撃の直前。

「一番おいしいメロンパンはどんな味!?」

と叫び、つい大好物のメロンパンを思い返したクロに隙ができ、その隙をぬってユウキの一撃でユウキの勝利となった。

ちなみにクロは「せこい。メロンパンを要求する。」とオキにたかっていたのは別の話である。

キリトVSシンキ。

はっきりいってシンキの独壇場だった。

開始直後に飛べるはずの無い会場上空を真っ黒な6枚羽を広げて飛び上がり、運営側もこれは武器の特殊能力を使用しての仕様を使ったモノなので判定はOKとなり、キリトは攻撃が全くできない状態だった。

しかしそれでは面白くないと思ったのか、フィールドに大小さまざまな木々を魔法で生やし、それをつたわせることでキリトとの空中戦が始まった。

序盤はシンキも慢心しまくっており、ハンデだと言いながらキリトを善戦させる。

中盤にはいったところで、木々をつたった戦いに慣れてきたキリトは、木々をしならせ、シンキに小さな一撃を入れる。

その一撃がキリトにとっては大きく、自信をつける結果となった。だが、シンキは甘くない。

空を降りたシンキは木々を燃やし、元のフィールドに戻した後、キリトに少しだけ本気を見せてあげた。

キリトが切りかかるとそこにはシンキはおらず、キリトの後方にシンキがいる。そして後ろを振り向き剣を振るもまた後方を取られる。これを数度繰り返した。

「魔神からは逃れられぬ。」

恐ろしい程の笑みを見せたシンキはそう言い放った。その言葉と笑みは多くのプレイヤーの印象に残る事となる。

キリトは剣を振るい、シンキへと攻撃したがシンキはそれを杖で軽く払い、杖先でキリトの額、首元、胸を3度突く。

あまりの綺麗な流れ、静かな攻撃に手が止まってしまったキリトに大魔法級の魔法攻撃で攻撃。シンキの勝利となった。

そして第2戦目、最後の戦いはオキVSハヤマ。

お互いの動きを知り尽くしている二人は最初から本気のぶつかり合いを見せた。

勝つために出せるものをすべて出すハヤマに対し、勝つために手段を選び組み上げるオキは正反対だ。

共に戦うにはこれほど戦いやすい仲間はいないと自負する二人。

ハヤマが真正面で戦い、オキが後ろから支援する。だからこそ今まで一緒に戦えたのだが

「くそ、真正面からどかどかと。下手に手ぇだすと隙付かれて一発で持ってかれちまう。」

「あーもう。小さい攻撃がちくちくと。やりづらいったらありゃしない。」

二人して「めんどい。」と言いながら戦っていたのである。

大きな攻撃をすれば隙を突かれて一発で逆転されてしまうために小さく攻撃するオキ、真正面からすべてを叩き切るつもりでいるハヤマは大きく攻撃するがその隙を突かれて小さい攻撃が当たっている。

そんな一進一退の攻防が続いた終盤だった。

「えー…戦いのさなか申し訳ない。止めれそうなのが二人しかいないのだ。聞いてくれ。ミケが、ハヤマ君の名前をつかって、外の屋台を、食い荒らしているようだ。」

苦笑いしながらアインスがマイクを通してそれを伝えると血相を変えたハヤマが

「ミィィィィィケェェェェェェェ!!!!」

と叫びながらフィールドを駆け抜けて行ってしまった。

結果、いつかは勝負をつけたいものだと大爆笑しながら今回の勝利を貰った。

コロシアムの外にはお祭りという事もあり、たくさんの屋台が並んでいた。

「やきそばくださいな!」

「らっしゃい。いくついる?」

「全部。」

屋台で焼きそばを作っていた男性が小さな少女の間にさらに小さな何かがいるのを見た。

「全部なのだ。」

「い、いいのか? まいどあり。」

「料金はアーク’sのハヤマにつけとくのだー。」

頭に大盛焼きそばを、右手にはお好み焼きや串焼きの入ったパックを高いタワーを作って持ちながら袋に入ったいっぱいのフランクフルトを下げている。左手で器用にたこ焼きを大梁ながら行く人すべての目を奪い、屋台の料理を片っ端から吸い込んでいくミケ。

「ミーーーーーケーーーーー!」

「見つかったのだ。にげるのだー!」

コロシアムから出てきたハヤマが鬼の形相で追いかけてくる。それをミケや双子達は笑顔で逃げ回った。

「きゃー!」

「にげるのです!」

ミケ、逃げる時でも食べるのをやめない。




(フラグっぽい話があったけど彼女たちが再び出てくることは)ないです。
みなさまごきげんよう。わたしが剣士とかに憧れるようになった原因の一つであるネギまより数名キャラを出しました。せっちゃんかわいい。
後半第二戦をダイジェストでお送りしました。はっきり言って時間ありません・・・。
年末って忙しいですねぇ。
さて、来週分ですがまたもやお休みします。何度もすいません。
『コ ミ ケ』ですハイ。
戦場に行ってきます。
もし書けたら上げておきます。
ではみなさま、来年明けてからまたお会い致しましょう。

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