ダークファルスとはアークスの「敵」に位置するダーカーたちの長。本体は赤黒い粒子とされ、他者の肉体に憑依することで姿を現す。 その正体は、フォトナーが堕落の果てに生み出した「深遠なる闇」の残滓から生まれた存在。ダーカーもこの残滓であり、深遠なる闇が倒されない限り無限に出現し続ける。
【巨躯】は40年程前に惑星ナベリウスでアークスのレギアスを初めとする三英雄と決戦。、結果倒せない事が分かり遺跡エリアの最奥にある場所に封印された超巨大なダークファルス。惑星ナベリウスの凍土エリアの万年雪景色はその時の影響で【巨躯】の力が計れる。
1年前に起きた「【巨躯】復活事件」でアークスの一人であるゲッテムハルトという男により封印が解かれ彼の体を乗っ取り完全に復活。力を取り戻した【巨躯】は、星の半分以上の大きさとなり宇宙へと消えていく。
ダークファルスとしての宇宙の支配よりも、アークスたちとの滾る闘争を好むなど好戦的な性格。しかし、戦う意思のない者に対しては見逃す所もある。
自分と幾度も激突しているオキ達を良き宿敵と意識している。人型形態として戦う場合は『ファルス・ヒューナル』という名になる。
『よもや終わりではあるまい。』
ヒューナルの野太い声がボス部屋に響き渡り、自分の拳同士をぶつけ合い、直後にオキに対して一気に近寄り振り下ろした赤黒い光を放つ拳が床を揺るがす。
オキ達は大人の2倍はあるだろう大きさのヒューナルの周囲を囲み、振られる拳を避けながら攻撃を入れていた。
「はあああ!」
飛びあがったハヤマのカタナが上空からヒューナルの体を切り裂き、そのまま上へと往復する。だが、その硬さは尋常ではなく余り攻撃が入らない。
「くっそ、硬すぎんだよ!」
「だな。しかし懐かしく思うなその動き。ゲッカザクロか。ならば私も。」
アークスが使うPA【フォトンアーツ】。フォトンという自然のエネルギーを体内に集め、武器を媒介にして放つ技。フォトンを使わなくても動きだけなら再現ができる。アインスが放つ動きは《サクラエンド》。居合抜きから左右に大きく、且つ素早く切り裂く。
SAOのカタナはアークスの使うカタナと違う部分がある。
アークスのカタナは抜刀を重点にしており、フォトンをためることでより広範囲に攻撃が繰り出される。SAOでは抜刀とは違い、スピードよりも力を重視し、両手での使用を行わなければならない。
だが、ハヤマ達にとっては関係ない事。なぜならアークスのカタナも似たような大きさだ。扱いは慣れている。またアインスに至ってはオラクルよりも前にいたラグオルの動きも再現し、攻撃に加える。
大きくジャンプしたヒューナルはそのまま蹴り下ろしてくるが、バックステップで回避したコマチはすぐさま近寄り持っている大剣で斜め上から切り下す。
「おい、ヒューナル。ペインよこせ。」
「あんたもってるでしょーが!」
ハヤマが突っ込む。
「だってあれ金策になるもの。」
「やっかましい! 戦えおめーら!」
「「へいへーい。」」
ペイン。ヒューナルとの戦闘後に極稀にヒューナルの剣の破片が見つかる事がある。素材をアークスが使用できるように改造したソードに埋め込むことで、『エルダーペイン』というソードができる。真の力、潜在能力を解放すれば切りつけた相手の体力を奪い、それをフォトンとして変換。自分の体力として奪う事が出来る。別名『奪命剣』とも言われている。そして作ったソードを他のアークスに売る事ができる。現在ではかなり高額な値段で取引されており、アークス業を行う為に必要不可欠なお金『メセタ』を一回で多額取得できる。
オキから怒られたハヤマとコマチは再びヒューナルの側面に回る。HPはそろそろ1ゲージを切るところだ。
「そろそろゲージが無くなるな。流石に俺たちだけじゃ時間かかるが、ここからの形態変化でこいつの動きが分かるだろう。」
「うむ。ハヤマ君、コマチ君、オキ君、削りきれ。」
アインスの号令で一斉に切りかかる3人。1本目のHPゲージが無くなった。
「よし! ゲージが無くなったぞ!」
ボス部屋の敵からの攻撃が来ない安全な端で様子を見ていたディアベル達からもやんややんやと声が上がる。
そしてヒューナルの形態変化が始まる。
『ぐう! …オオオオオオ! 応えよ深淵!』
力を貯め、体から赤黒いオーラが一気に立ち上る。そして両腕を振り上げる。
「やはりこうくるか!」
「ビックバンインパクトか! 避けろ!」
オキとハヤマが声をはる。
『我が力に!』
ドォン!
振り上げきった両腕を一気に地面へと叩きつけるヒューナル。衝撃破は壁付近にいたディアベル達にも届き、床を揺らす。
叩きつけた直後に反時計まわりに赤黒いオーラが地面を這い、オキ達に襲い掛かる。
「見飽きたよ! その技は!」
「本来ここのプレイヤー達は初見のはずなんだけどねー…。」
「チートもいいところだな。やっぱり。」
オキ、ハヤマ、コマチは這い回るオーラを同じく反時計に避けつつ、ヒューナルから離れる。
「コマッチー、はやまんはそのまま続きを! 隊長! ディアベルに奴の動きを教えてあげて! プレイヤー側! 動くぞ! 準備しろ!」
「了解。」
「まってました!」
オキの合図と共にオキはヒューナルへ駆け出し、アインスはディアベルにこれ以降の動きを説明に向かう。
ヒューナルは背中に背負っていた巨大な曲剣を取り出している所だった。
『遊びの由は幾百も…。』
ヒューナルはハヤマに狙いをつけ、巨大な剣を振り回す。
「いいかい、ディアベル君。奴の攻撃は大剣、そのあと予想される形態変化は剣が壊れた後にまた素手で殴ってくるが先ほどの攻撃を何度かやってくる可能性がある。また、スピードも上がっているだろう。」
「なるほど。あの剣壊れるのか。」
オキ達がヒューナルの相手をしている間にアインスがディアベル達にヒューナルの動きを教える。
「大剣と言ってもスピードは片手剣並みのスピードだと思っていい。また、剣は刃が伸びる。必ずガードしろ。それ以外は普通のエネミーと変わらん。」
「なるほど。聞いたな皆! イレギュラーズに負けないよう頑張るぞ!」
「「「おおおーー!」」」
自分の武器を掲げ、プレイヤー達も参戦していく。
「さて、俺も切るか。」
アインスもニヤリと微笑を浮かべながらヒューナルへと向かって行った。
『無為!』
「振り回しだ! ガードしろ!」
ヒューナルが剣にオーラを乗せ、振り回してくる。それを盾役であるプレイヤー達がしっかりと盾でガードで止めた。
『愚鈍!』
「くっそ…なんてパワーだ。」
「負けるな! 弱音を吐くな! 強気で行けば必ず勝てる!」
「重いなぁもう!」
3人掛りでようやく剣を弾き返しヒューナルが体勢を崩す。
「いまだ! 切りかかれ!」
ディアベルの号令で前線で火力役であるプレイヤー達が崩れきったヒューナルへとSSを放つ。隙が少ない動きをするヒューナルにはスキル発動後、硬直してしまうスキルストップ時間の長い大技は危険だ。ストップしている間に攻撃を喰らいかねない。
だからこそ攻撃力の低い技を出すしかないが、この人数での一斉攻撃だ。かなりの火力になる。
『脆弱!』
だが、ヒューナルは効いてないかのようにオーラを発し、それ自体に攻撃判定があったのか逃げ遅れた周囲のプレイヤー達が吹き飛ぶ。
「ぐぁぁぁ!」
「くっそ・・・。」
すぐさま後衛部隊が所持していたポーションを攻撃を喰らい、戦線を離脱してきたメンバーに渡す。
「ったく戦闘バカは相変わらずか。」
「オキさんも人の事言えないでしょ。バトルマニアさん?」
「ハヤマんにも言われたくないね。カタナバカ。」
オキ達は攻撃範囲外へ下がるプレイヤー達と交代し、再びヘイトを取る為攻撃を加える。
「ウラーナノダー!」
ミケも短剣のSS『クロス・エッジ』をヒューナルにガッツリと切り刻む。
HPは残り半分を切り、すでにわずかだ。
「やはり人数がいると減りも早いな。」
「いやいや、イレギュラーズがいたからこそ効率よく、且つ安全に攻撃ができる。感謝してるよ。」
ディアベルとアインスの指揮陣営も皆の指揮を執りながらしっかりと攻撃を加える。
『オォォォォ!』
「今度はオバエンか! 左右上下への攻撃往復! 来るぞ!」
オキは攻撃を回避しながら前衛に出ていたプレイヤーへ退避を指示する。
ヒューナルの剣は赤黒いオーラを纏ながら左右、上下の往復の攻撃をしてくるが、対応の早かったプレイヤー側はすぐさま攻撃範囲外に逃げており、最後の上からの攻撃をしっかりと盾役が防御する。
「ぐ! …今だ!」
「あいよお。」
盾役が剣を抑えた瞬間にコマチの横大振りの大剣SSがヒューナルの剣に向かって炸裂。その瞬間に剣の刃が砕け空中を飛んだ。
「よし! 後1ゲージだ!」
「ビックバンインパクトに注意しながら攻撃、つづけ。」
オキが叫び、アインスはそのまま攻撃の続行を指示、今の所問題なく攻略が出来ている。
『ぐう…オオオオオオ!』
壊れた剣を収めたヒューナルは拳に赤黒いオーラを乗せながら先ほどよりも早いスピードでハヤマに襲い掛かる。
だが、しっかり構えたハヤマにはそれは通じない。前方への右振り下ろしを横ステップでかわし、左アッパーを再びステップで避け、ヒューナルの懐に入る。
「行くぜ、フルボッコ!」
再度繰り出そうとした右腕をカタナで弾き、体勢を崩したハヤマはカタナを握り直し、その場ジャンプから下へ切り下しそのまま上へ切り返す。アークスのPA《ゲッカザクロ》。また上へ切ったと思ったらそのままの勢いでジャンプ、素早く下へ切りおろし、また上へ切り上げる。
「おおおおおお!」
『グ…ウウウ…。』
「お、ゲッカザクロの動きを利用し無限に切り刻むゲッカループ。久しぶりにハヤマ君のループを見た気がする。」
通称《ゲッカループ》。あるアークスが使用していたのを見たハヤマが使い出し、オキ達に広めたカタナの特殊な使用方法。
その動きが早ければ早い程攻撃力は比例して伸びる。ハヤマはオキ達の中では一番動きが早い。
ヒューナルは怯みから解除され、素早くハヤマを狙い攻撃を加えようとする。だが、盾役のプレイヤー達に阻まれ、がっちりと防御された。
『浅薄!』
「隙だらけよ。いくよ、キリト君。」
「了解!」
背中にアスナとキリトが自分の持っている最大攻撃を持つSSを放つ。
「よっしゃ! 俺らもフルボッコいくぜ!」
「「「おおお!」」」
ダメージが蓄積したヒューナルはまともな攻撃もできず、その場に膝を付く。その隙をついてオキを初めとするその他プレイヤー達が全力で攻撃を加えた。
『グゥ…オオオオ! 応えよ深淵!』
怯んだヒューナルは先ほどと同じく再び赤黒いオーラを体から放ち、腕を振り上げる。
「逃げて! みんな!」
アスナが叫び全員が壁へと走る。イレギュラーズを除いて。
『我が力に!』
ドォン!
再び床が揺れる程の力を振りおろし、ビックバンインパクトを放つ。だが、イレギュラーズはそれを軽く避け、攻撃後の隙を勝機とみた。
「いくぜ!」
「フルボッコ!」
オキとハヤマが叫び、足の速いミケ、コマチが初めにSS攻撃を加える。続いてオキ、ハヤマの順に止めを刺した。
HPバーから赤色のゲージが消え、完全にHPが消え去った。ヒューナルは膝を付きすぐさま空中へと浮く。
『良き、闘争であったぞ…。』
赤黒い粒子の中に消えていくヒューナル。そしてボス討伐完了のテロップが空中に現れた。
「…おわり、か?」
「え? 終わり?」
今までにない終わり方でプレイヤー達だけでなくオキ達も困惑する。
「だが、テロップは出ている。終わりなのだろう。」
ヒースクリフが剣を鞘に戻しながらいう。確かにその通りだ。
「…勝った!」
「いよっし!」
周囲ではプレイヤー達がそれを聞き、声が上がる。初のクォーターポイントにして特に問題という問題もなくクリアできたのだ。
「あ、ラストアタックボーナスはハヤマんだ。」
「まじかよ。えっと…ラッキーカタナだ。」
オキがラアストアタックの表示を確認し、ハヤマだと気づく。ハヤマは自分のアイテム欄に一本のカタナが追加されている事を確認した。
「なんだ、ヤシャか?」
「ぅんなわけあるか! …多々良長幸?」
コマチの言葉にツッコミを入れ、名前を確認するハヤマ。『ヤシャ』とはアークスの中でも名高い四本のうちの一本の刀だ。
これもヒューナルから偶然落とされた破片からアークス仕様に改造された特殊な一本のカタナだ。
「おめでとう。ラストアタックボーナスで手に入ったモノはレア度が高い。それでいてクォーターポイントで手に入ったのだ。大切にするといい。」
ディアベルが祝いの言葉とモノの説明を入れる。今まで、イレギュラーズがラストアタックボーナスを意図的にプレイヤー達に回し、戦力を強化してきた。よって今回初めてイレギュラーズが手にしたのである。
「さって、何とか乗り切ったな。まぁいろいろ思うところはあるだろうが、とにかく…突破おめでとう!」
ディアベルが締め、歓声が上がる。プレイヤー達は開いた上への扉を全力疾走で昇っていく。
イレギュラーズはゆっくりとその後ろを昇って行った。
26層の拠点。その日の夜は町中で突破記念の祭りがプレイヤー達で行われていた。
アークス達の数名はその祭りに挙って参加していたが、オキは1人宿の一室で街を眺めていた。
「珍しいね。祭好きのオキ君が祭りに参加しないのは。」
「…隊長か。」
アインスがオキの部屋へと入ってきた。手には飲み物と料理の乗せられた皿を持っていた。
「聞いたらずっと部屋に籠っていたそうじゃないか。どうだい? それとこの子も一緒に。」
「…シリカ?」
「あ、あはは…。なんだかずっと籠っていましたので声かけていいのかなーって。」
扉の陰からシリカが現れた。
「扉の前にいたんだがね。何時からいたかは知らないが。さぁみんなで食べようじゃないか。」
「…いただこうか。ほら、シリカもおいで。」
「は、はい!」
嬉しそうに部屋へと入るシリカに笑顔になるオキは座っていた窓際から立ち上がり、テーブルの上に置かれた飲み物を一気に飲み干した。
「…考えていたのは、ヒューナルの事かい?」
「んくんく…っぷは。やっぱ、わかります? なんであいつがここにいたのか。ずっと考えてた。」
この星にはダーカー自体いないはず。だから不思議だった。
「ヒューナル…って今日みなさんが戦ったエネミーですよね?」
シリカは今回の戦いに参加していないので巷で話を聞いてきたのだろう。
「そう。そして俺たちの因縁のある敵。実際にいるんだ。あいつは。」
「だが、奴はおかしかったな。」
アインスがオキの目をみる。やっぱこの人よく見ているな。
「さすが隊長。よく見てるね。そこなんだ。もし本当にあの【巨躯】(エルダー)であったなら、『人の子』と言わず、『アークス』と言うはずだ。それに…。」
「それに戦っていて姿形、言葉は一緒でもあれからの威圧感も違和感があった。初めは驚いたが、剣を交えてみればわかる。」
「えっと、つまり…別の方ってことでしょうか?」
シリカも考えに加わる。
「うむ…。多分そうだろうな。」
「…隊長。一つ言っておきたいことがある。多分正解は見えてる。」
「ん? なんだい?」
オキは立ち上がり窓際にあるタバコを持って火をつけた。
「ふぅ…。初めてこのSAOに降り立った日、隊長もこのデスゲームの始まりを宣言する場は見たよね?」
「ああ、君たちは中央広場にいたようだが。私とサラ君は一番西の広場にいたのでね。遠くからしか見えなかったが。」
「あのゲームマスターを名乗った茅場彰彦。あれからほんの少し、本当に少しだけ。…ダーカー因子を感じた。」
オキは少し息を貯め、あの時感じた事をアインスに説明した。
「なんだと?」
アインスの顔が険しくなる。それにつられてシリカもビクっとふるえる。
「つまり、オキ君は茅場晶彦が何かしらダーカーについて知っていると?」
「その通り。このゲーム。いろいろと裏がありそうだな。」
「ああ。」
黙り込む3人。
「はぐはぐ。」
「ん?」
静かになたった部屋に何かを食べるような音が響く。テーブルの上を見た3人がみたのはアインスが持ってきた料理をがっついているピナだった。
「…ははは。」
「あっはっは。」
「ふふふ。」
それを見た3人は顔を合わせつい吹き出してしまう。
「さぁ、私達も食べよう。じゃないとピナ君に全部食べれられてしまいそうだ。」
「きゅる?」
「そうですね。頂きましょう。」
「だーな。」
3人は外の騒がしく楽しい音を聞きながら料理を食べ始めた。
いやはや。ヒューナルの攻撃をイメージする為にPSO2内で何度も奴の攻撃を喰らいながらスクショ撮っては書いてを繰り返してました。
いくらよく知ったエネミーとはいえ長い時間戦ってみないと意識できないものですね。
さて、初のクォーターポイント戦。いかがだったでしょうか。
今後もずっとアークスの無双は続きますよ。
何故こいつがいたのでしょうか。それは物語が進めば解明されるでしょう。
では、次回もよろしくお願いします。
※現在PSO2での期間限定常駐クエで毎日が忙しい・・・。あ、もちろん投稿ペースは変えませんよ!