SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第116話 「デビル・ザ・ファントム」

『シャァァァァ!!』

巨大な鋭爪が振り上げられ、オキの頭上へと下される。しかしそこにオキはおらず、突き刺したのは地面だった。

その隙をついて、オキは後方と連携して攻撃を叩き込む。

「おらぁ!」

大きく縦に振られた朱槍が真っ赤に燃える付け根部に突き刺さった。

『シャァァァ…!』

怯んだ瞬間を見計らって後方からの魔法攻撃。『デビル・ザ・ファントム』は表面は硬質の殻で身を守っているが、その付け根部や、背中側は隙間があり、巨体から繰り出される強力な攻撃、口から吐き出される溶岩弾を掻い潜って攻撃をすることで、HPを削ることが出来る。隙間への攻撃はオキ、ユウキが得意とするところ。二人の攻撃で怯ませたところに、上空から背中側へ魔法での攻撃を繰り出す作戦だ。

「ユウキ!」

「だぁぁぁ!」

怯んだボスへユウキがソードエフェクトを光らせ、離れるオキと後退でさらに攻撃を入れる。

顔面への攻撃はクリーンヒットし、ボスは真っ赤な溶岩を周囲に広げ、地面へと潜り込んだ。

「フェーズ2、いくぞ!」

今回のボスのゲージは3本。まず1本目は硬い甲殻と鋭い爪、口から吐き出される溶岩弾を凌ぎ削りきる。2ゲージ目からは溶岩で地面を溶かし、地下から攻撃を仕掛けてくる。さらに口から吐き出していた溶岩弾を上空に多数同時に放ち、逃げ場を失わせたところに上からの圧し掛かりと隙がなくなってくる。

オキが考えた対処法は一度固まり、360度周囲を見渡せるようにし、どこから来てもわかるようにする。次に、出てきた瞬間に放ってくる溶岩弾を弾き返し、ユウキ以下メンバー全員で攻撃を繰り出す。するとまた潜り、再び顔を出す。これを繰り返す。

初手の弾き返す行動がミスしただけで壊滅するこの戦法だが、普段からより巨大で、より強力なモノをはじいているオキからすれば、普段以上に容易である。

「こっち!」

出てきた方角へ構えたオキは片足を上げ、槍を大きく振りかぶった。

「バスター…。」

業火の巨大な溶岩がオキへと迫る。その間にメンバー全員が散開。攻撃に備えた。

「ホームラン!」

ガキン!

勢いよく振られた槍にクリーンヒットした溶岩弾はまっすぐに吐き出されたボスの顔面へと飛んでいき打ち返された。

『シャァァァ…!?』

打ち返され、顔面に自分の吐き出した溶岩弾を叩きつけられ怯んでいる最中にユウキ以下メンバー全員が総攻撃をかける。

「やぁぁぁ!」

「だぁぁぁ!」

後方からオキもダッシュで駆け付け、ボスの顔面に槍を突き刺した。

「はっはっはー!」

「楽しそうだなー…オキさん。」

「うん。わかる気がするー!」

スリーピングナイツメンバーは苦笑し、ユウキはキラキラと笑顔を輝かせながら、オキの指示に従い予定通りに二本目を削った。

『このくそ餓鬼どもがぁぁぁ!』

「3本目! フェーズ3!」

ユウキの攻撃でゲージが3本目へと変わり、もとより真っ赤な溶岩を体内で燻ぶらせていたボスがより真っ赤に燃えだした。

蜘蛛だったボスは尻の部分に収納していた巨大な針を持ち上げ、蠍へと変貌。周囲へとめった刺しした。

前回はこの攻撃に対処できず、オキユウキ以外は全滅。だが今回はそれも対応できる。3本目に入る直前にオキ、ユウキ以外は大きく離れ、針を使った全方位攻撃をスピードで避けた。

『シャァァァァ!!!』

大きく吠えたボスの口が真っ赤に燃えだした。地面がそれの呼応するかのように真っ赤に光る。

「インフェルノだ!」

「避けるよ!」

「そーれにげろー!」

メンバーが散り散りに広がる。直後に真っ赤に光った場所から爆炎と共に火柱が上がった。

「タルケン狙われてるよ!」

「まじか!?」

火柱で見え辛くなっているボスの口が真っ赤に光っている。明らかに溶岩弾を撃とうとしていた。だが

「させるか飲み込めぇ!」

上空へとジャンプし、ボスがこちらを狙っていないのをいいことに、真上からボスの頭へ槍を突き刺した。

その勢いで口が閉じてしまい、ボスの口の中で溶岩弾が暴発した。

『シャァァ…。』

「ユウキ!」

弱弱しく地面に突っ伏したボスと同時に槍を朱く光らせるオキと後方から火柱を避けてきたユウキが共にソードエフェクトを光らせ突っ込んできた。

後方にいるメンバーも魔法を唱え始めており、魔法陣が空中に浮きあがっている。

「だぁぁぁ!」

「おおおお!」

各自の最大攻撃。このタイミングで使わずしていつ使う。オキの槍、ユウキの剣。そして後方からの大魔法群が降り注ぎ、一気にボスのHPを削った。

『シャァァァア!』

このままやられはしまいとファントムは巨大な針を振り回しオキとユウキを攻撃し様と試みた。だがそれもかなわず

「どっちの槍が上か…勝負しよーっぜ!」

すでにその攻撃をオキは読んでいた。あれだけの攻撃でHPが一気に削れ、そのままやられる事が無いのは今までのエネミー討伐でわかっていた。来ればそのまま。こなけりゃその攻撃は無駄にならず相手の体力をさらに削ることが出来る。

オキは槍を針の攻撃に合わせ、思い切り針へ突き刺した。

針での攻撃はオキの槍に阻まれ、爪はユウキの攻撃ではじかれている状態だ。そのため弱点である顔面がフリーになっている。

「みんな!」

更なる追撃。多数の大魔法が降り注ぎ、ファントムの体力を削った。

「その心臓、貰い受ける…!」

針をはじいたオキは、ファントムの背中へと飛び乗り、針を収納していた甲殻の無い背中へ槍を向けた。

「ゲイ・ボルク!」

強力な槍の一突きが背中を貫き、勢い余って地面にまで貫通した。

『シャァァァ…。』

オキの槍で怯んだファントムが一声泣いた直後に、目の前で剣を光らせるユウキをオキは見た。

「これで…終わり!」

その攻撃はユウキの持つ最大の攻撃。オキは一度だけ見たことがある。

11発の刺突。スピード、パワー、狙い。どれをとっても最上級の一撃だろう。あの攻撃をはじくことはできたが、オキの腕はしばらく痺れが取れなかった。その攻撃の技名は…。

「マザーズ・ロザリオ!!」

『シャァァァ…!?』

綺麗に11発。すべてを顔面に叩き込み、HPを削りきった。

強力な攻撃を叩き込まれ、更に体を貫いている槍で悶えるファントム。

『グ…クソ…。キ、貴様…。ただモノじゃないな…。何者だ…。』

オキがファントムの前に立ちじっと見つめた。するとオキの横、誰もたっていないはずの場所に光る姿の男性と思われる何かが現れた。それを見たファントムは驚きを隠せなかった。ユウキもメンバー全員もそれを見た。

そしてオキはそれがなんなのかを察した。

『ま、まさか…伝説の光の剣士…ば、ばかな…。』

「懐かしいなその名前。鋭いな。本人だ。」

ゆっくりと消えていくSAO時代のオキのシルエット。そして弱弱しく声を小さくしていくファントム。

身体が燃え、そして結晶と化し、消えて行った。

『congratulation!』

空中に大きく文字が浮かび上がり、戦闘のMVP、ラストアタック等がひょうじされ 、ドロップアイテムなどが各自のインベントリへと投入された。

「やった…やったよオキ!!!」

「うわっと!?」

ユウキはジャンプしてオキへと抱きつき、勢いでそのままクルクルと回った。

危なく倒れるところだったが、なんとか踏ん張り、彼女を落とさないようにとゆっくり遅いた。

「よっしゃぁ!」

「やったわ!」

後ろに居たメンバー全員もユウキへ抱きついて喜んでいた。

少し離れてタバコに火をつけるオキ。

「ふー…。んお? こいつは…。」

一本の刀がオキのインベに入っているのを確認した。

「オキ! ありがと! これで名前、書かれたよね!?」

「あ? ああ。見に行けばわかるだろ。あぁこれ、手に入った刀だ。いい武器だ。使うといい。」

そう言ってオキが渡そうとすると、メンバーたちは首をふった。

「大丈夫。それはオキにあげるよ。というかアイテムもいらない。全部あげる! オキがいたから、倒せたんだから。」

「いや、しかし…。」

正直カタナは欲しがりそうなやつを二人知っているが、アイテム全部貰うわけには行かない。というかそんなにいらん。そういうと、メンバーたちは一瞬ショボンとしたが、それでも嬉しそうにはしゃいでいた。

 

 

 

黒鉄宮に確認しに行くとたしかにユウキ達の名前がたしかに記載されていた。

それを確認し、再度泣いて喜ぶユウキ達。

「よかったな。」

「うん!」

頭をぽんぽんと叩き、ユウキの笑顔をみたオキは小さく微笑んだ。

その後、スリーピングナイツメンバー主催の打ち上げ会が始まり、そのパーティーに今回助けてくれたシンキや、隊長も呼んだ。

シンキはユウキにちょっかいをかけて追いかけていたが、それでも楽しそうに見えた。

「どうたったかい? 今回のボスは。」

「光の剣士って呼ばれた。」

外で夜風に当たりながらタバコに火をつけていたところにアインスが飲み物をもってきた。

「ほう。50層のアレか。」

アインスも直ぐにわかった。49と50層でのグランドクエスト。

2年前ということもあり、懐かしむ二人。そういえばとオキが一本のカタナを取り出した。

「そういや、こんな武器手に入れたんだ。いる?」

「どれどれ。」

オキが取り出したカタナは『クモキリ』。今回のボスが大蜘蛛だったのもあっての武器だろう。ステータスは伝説武器クラスではないものの、それに近い強さとレア度だろう。

「ほう。これはなかなか…。」

アインスはすでに『和泉守兼定』を持っている。だが、興味はあったのだろうか。

じっとそれをみて軽く振った。

「いいね。手になじむ。いいのかい?」

「ああ。俺はコイツがあるからな。」

紅い槍。呪いの朱槍。SAO時代からオキのメイン武器となり、こちらでも早速ひっぱった伝説武器クラスの一本。

「使わせてもらおう。ありがとう。」

にっこりと微笑むオキのもとにひとつのメールが届いた。

「あん? メール? …アークス連絡かよ。」

こっちにいるあいだ、アークスの連絡も来るようにシャオにお願いしておいた。その業務連絡メールだった。

内容はスレアの調査依頼だ。

「スレアの調査依頼?」

アインスの顔がすこしだけ曇る。内容自体はただの業種調査だったので大丈夫だと伝えた。アークスが関わっている関係で、ダーカー等の可能性もまだ否定できない。

いつそのような状態になっても責任は取るのが大事だ。

「明日朝一でスレアの病院であれこれ調査してくれってさ。ふーん。ここならシリカ達も世話になってる場所だな。声かけりゃいろいろ教えてくれるだろ。」

メールを閉じた瞬間、背中に衝撃が走った。

「おーきー。たーすーけーてー。」

ユウキが涙を流しながら抱きついてきたのだ。彼女の体はシリカやハシーシュと違い、どちらかというとフィリアよりの良い体をしている。柔らかいものが背中に当たっている。

「どうしたんだよ…。げ、シンキ。」

「よいではないかーよいではないかー。」

どうやら追い掛け回していたらしい。仕方ないので追っ払った。

 

 

 

次の日、オキはスレアの病院に出向いていた。

「アークスのオキだ。先方から連絡はいってるはずだ。」

「はい。案内しますね。」

看護師の女性に案内され、オキは小さな会議室に入った。

今日はスレアの医療関係の調査を行いに出向いたのだった。

 




皆様ごきげんよう。
FGOで剣豪七番勝負が前回投稿直後に始まり、2日で終わらせました。(ダンゾウちゃんはしっかり引っ張りました)
いやー今回すごかったですね。小説に使えそうなネタがいっぱいあってインスピレーションダダ漏れでした。いつかあんなの書きたいな(むり
さて、今回のボスは初代DMCのファントムということで、蜘蛛モードと蠍モードを使い分けました。DMCシリーズの中でもボスの中で一番好きかな。
次回からマザーズロザリオの話が一気に進みます。
原作知ってる人はわかるんじゃないかな?
では次回にまたお会いしましょう。

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