SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第114話 「突破された先に見るモノ」

「オ~キ~。27層が突破されたよ~…。」

オキがスリーピングナイツメンバーのギルド拠点に入った途端、ユウキの泣声と突進がオキのお腹を直撃した。

「いや~ごめんごめん。僕もびっくりしちゃってさぁ。」

てへへと笑うユウキの笑顔にため息をつきながらお腹をさするオキ。なぜかダメージを喰らったような気がしてならない。

スリーピングナイツメンバーが先にログインした直後、彼女らがきいた情報では昨晩、正しくは早朝に27層のボスが突破されたということだった。

「まぁ突破されちまったなら仕方ねーさ。次のフロアいくべよ。」

「次のフロアこそ、倒すぞー!」

「「「おおおー!」」」

他の者に先を越されたものの、オキやユウキは前向きに気持ちを切り替え、次の層へと足を踏み入れた。

フィールド攻略はできるだけ最短距離を進み、ボスのみを目指す。前層は皆の動きを見る為もありフィールド上の敵を一掃しながら進んだため時間がかかったが、今回の層はそれが必要ないため最短での攻略を行った。

突き進むだけならば時間はそんなにかからない。幸いにも28層の迷宮区には他プレイヤーを大きく離し、最速での到達を達成した。2日かけてフィールドを突破し、3日目の朝からボス攻略に臨んだオキ達は順調のように思えた。

しかし…。

「28層のボスが突破されたぁ!?」

ボスに挑み、初見は様子見で次の日に決着をつけるつもりでいたオキだったが、再び朝一にて突破されたとユウキの突進攻撃で知ることになった。

「残るは29と30しかないよ…。」

「次は負けないようにしないと…。」

スリーピングナイツメンバー全員が顔色を悪くし、不穏な空気が漂っていた。

「ふーむ。まーたフィールド走るしかねーかなぁ。」

エネミーを倒すだけならまだいいが、場合によってはクエストでのトリガーやパズル形式のダンジョン突破とか来ると少々面倒くさい。

「にしても今回は早かったね。」

「そうだよなー。相当強いプレイヤーで固めたんだろうな。」

「ん? どういうことだ?」

先ほどから暗い顔をしていたメンバーの言葉がオキの耳に入ってきた。

「いえ、今回フィールドの突破、迷宮区の突破は間違いなく最速だったと思います。」

「そうだな。ダンジョンのフィールドボスの状態から見ても最速だっただろう。ワープでもない限り無理だぞ。」

オキやユウキ達がフィールド、迷宮区を突破するときにフィールドボスが幾度か立ちはだかった。

フィールドボスはエリアボス同様レアエネミー扱いであるため、討伐は一回しかできない。つまりオキ達が最先端にいた目印となる。

「最速で突破して、その直後に挑み、次の日。つまり今日の朝方にボスが倒されてます。」

「いくらなんでも早すぎるので、強いプレイヤーで固めたとしか思えないんです。」

「そんなに強い人って今あそこ登ってたっけ?」

SAOでもそうだったが、大体活躍しているプレイヤーは名前がすぐに噂で走り出す。

ALOでもオキ達をはじめ強いプレイヤーや伝説武器などの超高レア武器所持者はすぐに有名となり、それ故か有名になった者同士で繋がりやすい。少なくともオキが知っているメンバーの中で現在このアインクラッド城攻略をやっている者は一人もいない。

知らない強いやつがいるということだろうか。

「ふーむ。どこのどいつかしらねーけど、ちょっくら交渉してみるかねぇ。」

「え? どこ行くの!?」

「すぐ戻るー! ちょっくら対策してくるわ。」

オキはユウキ達と別れ、ある人物を探した。ログイン状態がちょうどオンライン状態であったので情報を引き出そうと考えたのだ。

「ういーっす。おはよーさん。」

「オ? 朝から頑張ってるネ。」

オキがする中でも一番の情報屋、アルゴだ。

オキはアルゴに現在アインクラッドで最も最前線を突き進んでいるギルドやプレイヤーを調べてもらうつもりだった。

「というわけで、28層突破した奴知ってたらおせーて。」

「そんなの石碑見ればわかるんじゃないカ?」

もぐもぐと朝ごはんをほおばるアルゴに言われて目が点になるオキ。その手があった。

一緒に石碑のある黒鉄宮へと向かったオキ。石碑にあった数十名に及ぶプレイヤーの名前を見る事となった。

「こいつらか。ん? こいつら27層も突破した奴らか。同じ名前があるな。」

27,28層共に同じ名前が刻まれていた。

「こいつら知ってる?」

「んんー?」

アルゴが眼をしぼめてその名前一つ一つを見ていき、そしてオキを向いた。

「こいつラ、最近変な噂が立っているメンバーダ。」

「噂?」

アルゴが言うにはここ最近になって頭角を現し始めたギルド連合らしい。アインクラッド城攻略、しかもボスとなるとその難易度はALO内でも最高ランクに値する。オキ達のような初見でボスを倒す奴らはそういない。

「というかALOに来てから初見ボス討伐なんて一回も聞いたことないネ。さすがアークス。」

半分あきれた顔になるアルゴだが、その直後に険しい表情を見せた。

「お兄さんも知っている通り、このアインクラッドボス討伐は情報を得て、何度も挑み続けることを想定されたバランス調整になっていル。だからおにーさん方が21層と22層、そして特に25層の初見突破で有名になったのはわかるでショ?」

21層はキリトの家を買うため。22層はそのパーティーの流れで。この2層連続突破はオキ達アーク’sの名前をALO内に大きくとどろかせた原因にもなっている。シルフ、ケット・シー、そしてサラマンダーの各領主もしくは副将の者達の声もあった為ではあるが。さらに拍車をかけるようにALOでも顕在していたクォータポイントの突破。

25層はオキ建にとってもかなり重要な場所だった。SAOでは『ファルス・ヒューナル』が待ち伏せており、そのエネミーのデータ内にはカーディナルであったルーサーの欠片としてダーカー因子が紛れ込んでいた。ALOでも同様の事が考えられ、もし万が一にもダーカー因子が紛れ込んでいるならば、オキ建はアークスとして討伐しなければならない。

結果は特に何もなかったので、オキ達の技量と、一度すでに戦った経験のあるアーク’sメンバー、更に興味津々についてきたサクヤ、アリシャ両名によりあっけなく撃破。強化とはなんだったのかと思われるほどである。

「だけド、このメンバー達はそこまで強くないらしいんダ。おにーさん並に強いなら納得するんだけド。」

どうやら各地で何かしらの裏ワザか何かで情報をかき集め、容易にボスクラスエネミーを討伐。手に入ったアイテムを売り払い莫大なゲーム内マネーを獲得しているとか。

「そこでおにーさんに少しお願いがあル。あ、今回の情報料はこれでタダにしてあげるヨ。」

オキがユウキと行動を共にした時点で、情報はアルゴの下に届いていた。そして今回アルゴへと情報を求めに来ることまで読んでいたようだ。恐るべしこの娘。

29層ボス部屋前通路。再びフィールドを突破し、最短での攻略で済んだオキ達は3度目の正直を信じて攻略へと挑む気持ちでいた。今回一人追加をして。

「今回は助っ人として我がメンバーの一人、クロを呼んだ。」

「よろしく。」

小さく頭を下げたクロにユウキが笑顔で歓迎した。その他メンバーも大きく歓迎し、攻略を再開した。

スリーピングナイツメンバーにはオキから今回はできるだけ様子を見る為に、できる限り手を抜いてほしいと依頼した。

最初は驚いた顔をしていたが、ユウキはオキの考えを尊重し、信用しているということで、今回の内容を承諾した。

大きな音を立てて閉まる大扉。クロがオキの背中で小さくオキの耳にしか聞こえない声で気づいたことを伝えた。

「二人。」

「あーよ。」

その光景にユウキは首を傾げるも直後に突如として天井から振ってきた巨大な化け物の方へと首を向けた。

硬質化した甲殻に身を包み、その身体の繫ぎ目からは真っ赤な溶岩がしたたり落ちている。

熱き溶岩で身を固めた巨大な蜘蛛はゆっくりと目の前にて構えるオキとユウキへ近づいた。

『なんだこのチビ共は? 大きな闘気を感じたと思ったが…。ただの人間じゃないか。』

「しゃべった!?」

しゃべるエネミーが珍しかったのか、さすがのユウキも驚いたのだろう。オキはすでに下階でのヒューナルで慣れている。

「んだよ化け物。お前こそ筋肉以外にちゃんと中身詰まってんだろうな。」

コンコンとオキよりも太いその脚の表面を叩くオキに対し、巨大な蜘蛛は青かった眼を真っ赤にして怒りをあらわにした。

『ほざいたな人間! 踏み潰してくれるわ! シャアアアアァァァ!』

巨大蜘蛛、デビル・ザ・ファントム戦はボスの巨大な脚の振り下ろしより開始された。

 

 

 

 

 

 

 

オキ達がアインクラッドボス攻略をやっている最中、シンキはある場所にいた『ヨツンヘイム』。ALO内のフィールド『アルヴヘイム』、その上空に漂う『新生アインクラッド城』とアルブヘイムの地下深くに存在するもう一つのフィールドがこの『ヨツンヘイム』だ。

ヨツンヘイムはグランドクエストクラスの専用フィールドであり、現在実装されているアインクラッドよりも難易度が高い。

そんなヨツンヘイムに入るには央都から東西南北に何キロも離れた階段ダンジョンまで移動し、最後に守護邪神ボスを倒してようやく入れる。

また《氷の国》とも知られており、フィールドは広く直径30km、天蓋までの高さは500mある。常に雪が吹き荒れ、湖や建物は凍り付いている。また地下世界であるため日光、月光を翅に浴びて回復することが出来ないため「新生アインクラッド内」同様、飛行は不可能である。ただし完全な暗闇というわけではなく、天蓋を覆う氷柱群が仄かに放つ燐光によって照らされており、雪景色に照らされる風景は実に綺麗なもの。フィールドは広大で森林、切り立った崖や城、等が散在し、中央の天蓋にはアルブヘイムを貫いて世界樹の根が垂れ下がり、逆4角錐の氷のダンジョンを抱えている。また、根っこの真下、ヨツンヘイムの中央には差し渡し約1.5Kmはあろうかという底なしの大穴、通称《中央大空洞》(グレードボイド)が口をあけている。この中央部から天蓋までは約1kmある。

そんな場所でシンキはゆったりと浮き、邪神モンスターを下目に見ながら、ある場所を目指していた。なぜ飛べるはずのない場所で『浮いているのか』。

それは彼女が持っている杖に関係があった。

『サイコウォンド』の原典の力。『空を自在に飛ぶ』力が備わっている。

そんな彼女が目指した場所は邪神モンスターでも届かないくらい遠い世界樹の根周辺からかなり遠い場所にある『空中遺跡』。

現在ではプレイヤーはヨツンヘイム自体には入ることができるが、この空中庭園は周辺に空を飛べるモンスター系統も居ないので、たどり着くことがシステム的には不可能になっている領域である。

 

SAOにオルガ・フロウが居て、そのサーバーデータのコピーと言う時点でシンキうすうす感づいておりその最深部に到達することで、予想が的中していたことを知る。

SAOではプロテクトで隠されていたデータではあったが、オルガフロウのダークフォトンの因子を遡る事でかつてのアリサⅢで顕現した『ヤツ』が再現され、既に配置され

このまま行けばクエストの自動生成システムで一般プレイヤーに配布され、憎悪の感染が予想される。

「久しぶりね。こんな場所でお前を見るとは思わなかった。」

ふふっと微笑み、片手に持つ杖『サイコウォンド』ともう片手に構える魔道書『モタブの原本』を光らせる。

かつて存在したアリサⅢの『コイツ』はシンキの『光闇乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』全力ぶっぱ3発でも死なないくらいタフ。(エアはアリサⅢでの仲間の支援補給で連発した)

かつ、天の鎖の拘束も物ともしないバケモノ。その為、最後は鎖の封印機構でシンキが自ら諸共後にラグオル遺跡になる場所に封印することに成功した。

そんなバケモノへ再び対峙する。

肩、腕、足にそれぞれ胴体にある巨大な顔とおなじ小さな顔がついた見るものに恐怖を与えるまるで『悪魔』のような姿。

エア封印、ゲートオブアルゴルの機能制限のゲーム内仕様での戦闘。今回ソロでの討伐だ。苦戦はした。それでも懐かしい感情がシンキの中に渦巻いていた。かつての英雄たち、仲間たち。まるで昔に戻ったような感覚だった。

「懐かしい思い出を感謝する。だが、眠れ。」

エネミー再現で劣化していたので討伐、自分の中の深遠に融合処理を行い、その場を後にした。

「さって、あの子達の下にむかいましょうか。そろそろ登場の時間かしらね。」

シンキはすでにオキたちの身に起きる事をしっている。

倒したダークファルス自体はデータとして残したが、再現された憎悪のエネルギーだけを奪い取ったので、憎悪が無いダークファルス【魔王(ベルゼス)】はただのエネミーとしてその内実装されるだろう。




みなさまごきげんよう。
最近、アズールレーン始めました。

はい。どうでもいいですね。
さて、今回は特に見所はありませんが、後半ラストのシンキの部分は彼女自ら設定を頂いたので、使用させてもらいました。
このダークファルスはPS(ファンタシー・スター)3のラスボスですね。
知らない方は調べてみよう!

SAO原作はアリス編がアニメ化みたいですね。うーんここに来て。
とはいえ、前にも書いたとおり描きたい内容が別であるので。なによりなげぇ。
次回は原作ではキリトが活躍したシーンをアークスたちでお送りいたします。
ではまたお会い致しましょう。

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