GGOにてオキがデスガンを追い、BoBに参戦する少し前。まだSAO完全攻略打ち上げが開催される前の話。
各地ではSAO事件後の影響と、その直後に起きた星全体にかかわる、星外からのコンタクトに対して盛り上がっていた。
SAO事件は惑星スレアに多くの衝撃を与えた事件となった。
技術の発展が目に見えてわかるVR技術。その第一歩となるはずだった。
だが、起きたのは1万人のプレイヤー人質。そして更にはそれを利用しての人体実験計画。
実験を企んだのはSAO事件の首謀者とは違う、SAO運営会社から買い取ったレクト社の社員だったが、非人道的な事にも使われるということの認識が高まり、世間からはあまりよく思われる状態ではなかったという。
それでもVR技術は各方面で多くの進歩と貢献を果たした。そのうちの一つがVR世界での生活だ。
重病を患った人に対し、使用したこの技術は、ベッドから起き上がれない人でも、歩けない人でも、VR世界で自由気ままに生活ができるようになった等、医療関係への貢献が一番大きい。。
また、その他方面でも多くの技術貢献となり、再びVR技術の発展が望まれた。
その矢先だった。
「私たちは、オラクル船団。宇宙を旅している者です。」
宇宙からの来訪者。未知との遭遇。スレアの住民たちは大変驚いたという。
オラクル船団からの接触。そしてその原因となる『SAO事件』。数か月たった今でも彼らオラクル船団、アークス達の話題でスレア中は盛り上がっていた。
そんな盛り上がる話題の中、その張本人が報道関係者に追いかけられていた。
「ちくしょう。しまったな。こうなるのかよ。」
逃げるオキとお姫様抱っこされ、抱えられている圭子はある事件に巻き込まれ、偶然にもそこにいたアークスを一目見ようと、取材しようと追いかけてくる報道陣から逃げるべく大きくジャンプし、ビルの影へと逃げ込んでいた。
「大丈夫か? すまん。驚かせた。」
「あ、いえ…ちょっとびっくりしましたけど、なんだか楽しいです。」
笑顔を見せる圭子だが、高くジャンプし報道陣から逃げるというスリルよりも、いきなり抱えられ、お姫様抱っこ状態になっている現状にドキドキしていた。
「こんな状態じゃ、この付近を歩くのは無理だな。すこし遠くにいくから、また飛ぶぞ? いけるか?」
「はい。しっかり捕まってますね。ふふふ。まるで映画の世界に入ったみたいです。」
敬礼をしてオキの胸にしっかりと捕まるシリカの微笑む顔をみて、落とさぬよう、それでいて彼女に負担がかからないようにビルの隙間を縫いながらオキと圭子はその場から姿を消した。
時をさかのぼる事、数時間前。この日、オキはシリカこと圭子とのデートだった。
病院から退院し、はじめて彼女とまともに外を歩く日だった。
入院していたSAO生存者達はそれぞれ退院し、圭子たち学生はSAO生存者のために造られた学校へと通い、社会人の面々は仕事の斡旋を受け、職につき現在にいたる。
ちょくちょくオラクル船団を抜け出しては圭子やフィリアこと琴音、ハシーシュこと美憂の3人に合うために惑星スレアへと降りていた。
今日はSAO以外、つまり外のリアルの世界での初デート。琴音や美優の二人は
「今日は二人でいってらっしゃい! せっかくの初デートだもん。」
「後で、一人ひとりデートしてもらうから大丈夫。」
親指を立てながらドヤ顔する琴音と美優に呆れながらも二人は感謝しながらあれこれと回った。
途中までは特に問題なく平和なひと時を楽しんだ。そう途中までは。
事件は起きた。あるコンビニに飲み物を買いに入ったオキと圭子だったが、目の前で強盗事件が起きたのだ。
「金よこせ! じゃないと…こいつの命がなくなるぞ!」
近くにいた車いすの少女に銃を突きつける男。コンビニの店員はすぐさまレジを開け、有り金を犯人から受け取った袋に詰めていた。
「他の者は隅に座ってろ! 動くとか考えるなよ!」
強盗だという通報があったからか、すぐさま警察がコンビニを取り囲む。しかし、人質となってしまった少女は病人であり、ぐったりしていて、警察は突入したところで彼女を救える手立てがない。その場で硬直するほかなかった。
心配そうな圭子の顔を見たオキは頭の中で考え抜いた作戦がようやくまとまったので、実行することにした。
「ん? 座ってろ! こいつの命が…!」
「まぁまぁ…その、俺が代わりになっちゃだめっすか…。ほら、逃げるにも車いすの子じゃ抱えるわけにもいかないでしょ。おれ、足には自信あります。あ、逃げとかじゃなくて一緒に逃げますンんでその子は離してくれませんか? なんか、すげー辛そうだし。」
目を丸くする圭子だったが、すぐさまオキを信じる目になり、微動だにしなくなった。邪魔をしないようにと心がけてくれたのだろう。
犯人はというと、じっとオキを見た。オキの身体は一般男性からすれば細く、小さい。よって犯人のお眼鏡にかなったようだ。
「いいだろう。だが…。」
パン!
「「「きゃああああ!!!???」」」
「っ!」
オキの足に銃が向けられ、撃ちぬかれる。さすがのオキも顔をしかめ、膝をついた。足の太ももの内側をかすめただけではあるが、血が出ている。
「簡単に逃げられたら困る。悪いが、これが条件だ。ほれ、いきな。勇敢なにいちゃんに感謝しろよ。嬢ちゃん。」
腕を持たれ、引きずりあげられるオキに対し、ゆっくりと顔を上げた少女はオキの顔を見た。
「…!!!!」
何か驚いている顔をしている。オキは一瞬だけ眉を歪めた。しかしすぐににこりと微笑み、ウィンクで安心させる。
「大丈夫だ。安心しろ。ほら、向こうに行ってな。」
頭を撫でられ、コクリと頷いた少女はゆっくりとほかの客、圭子の所へとゆっくりと向かい、圭子によって囲われた。
一緒に来ていたと思われる看護師も彼女の容体を確認しながらも頭をこちらに下げていた。
「よーし。勇気あるな兄ちゃん。足がいてぇかもしれんが、我慢しろよ。」
「おうよ。」
「ははは! こいつは本当にヒーローだな。口も達者ときた。なぁお前ら。こいつに感謝しろよ! おらぁ! こいつの命が欲しくば! さっさと脱出用の車用意しろぉ!」
外へと向かって叫ぶ男はオキの頭に銃を突き付けている。警察も取り囲んではいるが、そう簡単に動けない。よって
オキの邪魔をする者はいなくなる。
「キンキン叫ぶなうっせぇ。」
「あ? …ごふぅ!!」
オキのひじ打ちが犯人のみぞおちにがっつり入る。腹を押さえながら膝をつく犯人だったが、オキを狙って銃を撃ち込んだ。
パンパンパン!!
銃を乱射した犯人の男。周囲からは悲鳴が聞こえる。しかし、オキの腹を貫くことはできなかった。
先ほどは油断させるためにわざと傷つけさせたが、今のオキはマッシブハンターで強化された身体になっている。
一般の銃程度では傷つくことはない。だが、衝撃は腹にくる。若干痛い。
「…ってぇなぁ! おら!」
オキの回し蹴りにより、犯人は横回転しながら地面に突っ伏したまま動かなくなった。直後、警察により取り押さえられそのまま逮捕となる。
オキはアークスである事を警察に伝え、シリカを抱きかかえてその場から逃げようとする。
しかしニュースということで駆け付けた報道陣に囲まれ、結果何とか脱出した。
その映像がニホン全国に流れ、その後惑星スレア中にその姿が知れ渡る事となった。
幸いにも、オキと圭子の顔は偶然にも映る事はなく、安堵のため息をついたオキだった。
ということが起きたのだ。
海に面した無骨な建物。その一室の大きな机に座る白い軍服姿の初老の男性と二人の女性が一緒にそのニュースを見ていた。
和装の丈の短いスカートに、お団子状にした髪を付けた茶髪ロングの美女。真っ白な肌に虚ろな目、しかしどこか暖かき感じを見せる微笑みをするショート髪に人とは思えない頭に大きな口の付いたクラゲのような変な帽子をかぶった女性の二人が、軍服の男に何か嬉しそうと声をかけた。
「ん? ああ。なに、本当に、来たんだなと…。」
彼の目線の先にあるテレビに映る画面には一人の男性が映っており、カメラに追い掛け回され、最後には大きくジャンプし、ビルからビルへと飛び移っている姿がカメラに収められていた。
テレビを見ながら優しい微笑みを見せる軍服の男に、周囲にいる女性たちが首をかしげる。
「この人は…いや、このアークスは。」
男がゆっくりとしゃべっている最中に、部屋の扉が大きく開いた。
「ただいま! 帰ってきたわ!」
「ただいまなのです。」
元気な声で入ってきた少女2人は軍服の男の机の前で並び、敬礼をした。
「ああ、ちょうどいいところに来たね。これを見てごらん。」
「「???」」
顔を見合わせた少女二人は何事かとテレビに映し出されたアークスの一人をみた瞬間、明るい笑顔を男に見せた。
「リーダーさんです!」
「元気そうで何よりなのです。」
ゆっくりと頷く男性は二人の少女の頭を撫でた。
「もう少ししたら、会いに行ってみようか。ミケ君も喜ぶだろう。」
嬉しそうな少女二人は大きく頷いた。
「何度も思うが、思ったより早かったのう。」
「そうですね。」
普通の、一般の家の部屋とは違う。豪華な家具のそろった一室に二人の少女と女性がテレビを眺めていた。
金髪の綺麗な小さな体の少女と、美しい薄い蒼色のロングヘアの女性はゆっくりとお茶を飲んでいる。
「嬉しいですね。シャルロットさん?」
「そらそうじゃ。もしかしたら会えぬかもしれぬと、夢見たほどじゃった。こうして実際に見ると現実であることが本当にうれしいものじゃ。」
お互いに予想していた期間大きく短縮し、スレアへと降り立ったアークス達。初めはもう二度と会えぬかもしれない。良き思い出としてと思わなかったと言えば、うそになる。それくらい彼女たちは離れていたのだ。
それがこうして手を伸ばせば会える距離となった。嬉しくないわけがない。
会いたい。でも会える距離ではない。だから元気でいてくれればそれでいい。
そう思い、夢であったと思う者も中にはいた。それでも、彼らは来た。
「カカ。これから楽しくなりそうじゃ。そういえば、そなたの国の反応はどうじゃ? フィアよ。」
蒼い髪の女性はふふと笑い、紅茶をすすった。
「幸いにも…。父は、すぐにでも挨拶に向かいたいと申しておりました。」
それを聞いて金髪の少女は再び笑い、再びテレビに目を向けた。
「そうじゃのう。近いうちに、我も向かうとするかのう。」
にんまりとほほ笑む少女とその後ろに
ALO、『アルヴヘイム・オンライン』某所。ここでも夢だと思っていた事が、現実であった。そしてまた会える可能性があると元気の出た少女がいた。
「ははは…あははははは!」
お腹を抱えて大きく笑う藍色の少女。それを後ろから見ていた仲間の一人が声をかけた。
「どうしたの? 急に笑い始めて。やっぱりさっき何かされた!?」
「ううん。大丈夫。何もされてないよ。だって…だって! 夢だと思っていたのが本当で、しかもそのまんまだったって! あーびっくりしたなー!」
「??」
声をかけた女性が彼女の目線の先を見ると、アークスの一人がテレビに映っており、報道陣から逃げて行った姿が映っていた。
「もうニュースになってるのね。…すごいジャンプ力。外でこれだけ動けるって、やっぱ人間と違うのね。で、この人がどうかしたの? もしかして、惚れた?」
ニヤニヤとする女性の前に座る、藍色の少女はすごくうれしそうな顔で喜んでいた。
「うーんとねぇ。ほら、前にいったじゃないか。戦って、僕が負けたっていう話!」
んーと考える女性は彼女の言っている言葉を思い返したようだ。
「ああ。そういえば言ってたわね。よくわからないところにログインしちゃって男の人と戦って、あなたが負けたって。夢じゃなかったの?」
「夢じゃなかった! この人がそうだよ! 名前は…オキ! 自分でアークスだって言ってたもん!」
女性が不思議そうに少女をみた。目の前にいる彼女は言う。間違いないと。
「それ本当?」
女性は少女が嘘を言っているようには見えなかった。ましてや彼女が嘘をいうことは今までにない。しかし言っている事が唐突すぎる。
偶然出かけた店で、偶然強盗に襲われ、偶然人質に取られたと思ったら、偶然アークスがやってきて?
「ありえないわー。絶対ありえないわー。」
「あー。信じてないなー? そっかー…。夢じゃなかったんだ。いつかあえるといいなー。」
藍色の少女、『絶剣』と呼ばれるALO内でも知る人ぞ知る剣士。
「絶対に次こそは勝ってやるぞ!」
ユウキは再戦の時を待ち望む。そして繋がった縁を彼は必ず紡ぐ。
約1か月後、ALO内某所。
白いコートを羽織った紅き槍の使い手と、藍色の剣士が向かい合っていた。
「そんじゃま、いきますかねぇ。」
「いつでもいいよー。」
SAOの不思議空間で出会った二人。その戦いが再び切って落とされようとしていた。
皆様ごきげんよう。今週分は番外編二本立て。
(もう一つは同時間に投稿しております)
こちらの番外編は一部フラグにするつもりだったものと、次回に続く繋ぎとしてかなり前に書いた番外編となります。
途中の一部フラグは後々に別作品で書こうと思っていたものですが、使えるかどうか…。最近更に別作品を書こうと思ってますので、そっちの関係でかけないかも。
次回に向けてのつなぎでは、ALO編に続くつなぎとなっております。
よって次回より再びSAO作品をベースに描いていこうと思いますのでよろしくお願いいたします。
それではまた次回お会い致しましょう。