SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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キリト:1層から一緒にいるプレイヤー。オキが追っている事件の中心人物の一人。ゲームの知識だけでなくシステム、プログラムの知識が強い。また瞬発力が抜群に高く、適応能力も高いため、オキ達のアークスとしての戦力差を着実に埋めてきている。最近では1層の時からペアを組んでいるアスナといい感じの雰囲気になっている(アルゴ情報)
今作では原作と違い、コミュ力があり、明るい性格。ただし『強くなりたい』という気持ちはそのままでアークス各位から戦い方を学ぶ日々。イレギュラーズの除けば現状『オラクル騎士団』のプレイヤーで一番の強さ。



第10話 「闘争」

25層、攻略組最前線拠点。宿の一室を使い、ギルドのマスター達がそろっていた。

『オラクル騎士団』マスター、オキと助言担当としてキリト。

『怪物兵団』マスター、アインス

『アインクラッド解放軍』マスター、ディアベル

『風林火山』マスター、クライン

普段は4つのギルドから成るギルド連合『アーク’s』メンバーでエリアボスの攻略をやってきた。理由はオキら『イレギュラーズ』による攻略の進みが早く、他のギルド達のレベル追いついてこないからだ。おかげで24層攻略まではオキ達の独壇場だった。

だが、今回は違う。25層、50層、75層と100層あるうちのクォーターポイントと呼ばれる特殊ポイント。

そこにいるエリアボスは通常のエリアボスとは違い、普段の何倍もの強さを誇ると言われている。

また、ボスの情報を得るためのクエストも通常の階層よりも多く、その分多くの情報が手に入る。

ボスの強さがどこまで強いか分からない以上、オキ達も下手に手出しができない。その為、前線にいる他のギルドの力も借りる事にし、今回の会議を開いた。

「では、各位ご参集感謝する。攻略会議を始める。」

ディアベルの挨拶から始まり、オキ達が持っている情報を全てその場にいる全員に展開した。

『血盟騎士団』マスター、ヒースクリフ。『ドラゴンナイツ・ブリゲード』マスター、リンド。

前線で現在勢力を持っているのはこの二つのギルドだ。ヒースクリフは10層まで一緒に戦い、11層以降は自分でギルドを作成している。リンドはオキ達より出遅れて前線に出てきたが、最近になって少しずつ勢力を拡大し、時々フィールドで出会っては共に戦っている。リンドが『騎士道』を重点に置いて活動している為か、ギルドメンバー全員が礼儀正しく、女性プレイヤー達からは『紳士ギルド』と別名で呼ばれているらしい。リンド本人がディアベルとかなり仲がいいらしく、25層での戦いで問題が無ければオキ達は連合に加えようかと話をしていた。

反面、ヒースクリフの『血盟騎士団』の方はヒースクリフがマスターにもかかわらず、ギルドの運営に手をほとんど出さずに、副団長である人物に丸投げしているようだ。副団長も定期的に変わっているらしく、ギルド内部で派閥が生まれており、定期的に副団長の座を巡って争いが絶えないらしい。

戦力自体は『ドラゴンナイツ・ブリゲード』以上なのだが、あまりいい噂を聞かない。

「ふむ…。なるほど。」

「今回は人型なのか。」

手に入れた情報では要約すると、人型で使用する武器は大剣。広い範囲を攻撃を行ってくる。

また、武器は破壊できるらしい。だが、素手での攻撃をしてくるという情報もあり最近発見されたSS、『拳スキル』を使用してくる可能性がでかい。

「人型という事だが、スケやゴブのようなモノか?」

オキがキリトに聞く。オキは今まで人型のエネミーはスケルトンやゴブリン等の獣人等しか見たことが無い。その為、人型と言われるとそっちをイメージする。

「どうだろうな。今回ばかりは今までの常識が通用しないかもしれない。まぁ、ドラゴン種とかの化け物じゃないようだから盾役もそこまで必要ないかもね。」

「となるとうちはそこまで人数は出さない方向か?」

リンドがギルドの戦えるメンバーを確認しながら聞いてくる。最近では彼のギルドメンバーが主に盾役として活躍している。

「ふむ。とはいえ、後衛の防御も必要だしまた頼める?」

「了解。いける奴を選抜して出すことにするよ。」

オキの頼みを快く受けてくれた。ありがたい。

「私の所からはどうする? アークス諸君」

ヒースクリフも聞いてきた。彼はギルド運営には無関心だがボスクラスになると話は別だ。彼の実力は計り知れない程で苦戦した所を見たことが無い。

「そうっすね。ヒースクリフのおっちゃんと、中距離で遊撃できる人を数名出してください。前衛は足りてるんで。」

「了解した。」

オキの申し出を受け、ヒースクリフはすぐさまコンソールをいじり始めた。たぶん副団長に連絡しているのだろう。

「うちからは安定のイレギュラーズ4人とキリアスペア。それと前衛と後衛で数名ずつかな。あと最近入ってきたセンターも今回から導入する。あいつの戦力は即戦力になる。」

センター。24層攻略時にオキと出会った男性のプレイヤーで何故か不思議なお面を付けており、初見時にオキが大爆笑した結果仲良くなりそのままオキのギルドに加入した。

「ああ、あのモアイの…。確かに強いのは否定しないが、あのお面は戦いの最中外さないのかい?」

「あれが自分のアイデンティティだと。」

ディアベルはオキの発言に頭を抱える。どうやらセンターのつけているお面の名前はモアイらしい。聞くところによるとスレア星のある島に大量に置かれている古代文明の遺産だとか。

「まぁ強いのは確かだよ。アークスなら日常だったしな。ああいう輩は。」

「あれで日常なのか…。アークスってなんなんだ?」

アインスも太鼓判をおす。アークスだから仕方がないと言い張るオキとアインス。

各ギルドから出す戦力を把握し、それぞれのPT分けが終わる。

「こんなもんか?」 

「だな。バランスは良いと思うが。」

クラインとオキが再度確認する。皆がそれに賛成した。

「うむ。問題はないだろう。今回はいつも以上に入念に戦力を整えたのだから。」

「アインスの言うとおりだが、クォーターポイントだ。油断せずにいこう。」

「しかし、ディアベル。肩の力は入れすぎるなよ。守りは任せろ。うちのカチ勢がしっかり攻撃を止めてやる。」

ギルドマスター達はそれぞれの思いを口にだし笑い出す。準備は必要だが、力を入れすぎてもダメになる。丁度いい加減が必要だ。

「そういえば、オキ君の所のハヤマ君がカタナを入手したと聞いたが?」

ディアベルが聞いてきた。

「ああ、俺と一緒にこの間、手に入れた。ラグオルのカタナみたいでな。手になじむ。」

アインスが腰につけた刀を見せる。2人して先日曲刀のスキル熟練度が振り切り、ようやくカタナを手にすることができたのだ。その時の二人は普段見せないような満面の笑みとようやく戻ってきた相棒と再会したような感覚に合ったらしい。

「ラグオルか。そういや、あの時は危なかったねぇ。隊長との初遭遇。」

アインスはラグオルというオラクル船団とは別の船団の出身だ。ある日にオキ、ハヤマ、コマチでナベリウスで任務中にニャウという超時空エネミーと呼ばれる特殊なエネミーと遭遇。普段なら大型エネミーを呼び出す奴なんだが、何故かそこに呼び出されたのはアインスで危なく切りかかるところだった。帰れる手段が見つからず、そのままオラクル船団のアークスとして活動している。

「いいよなー。俺なんかまだ曲刀のスキル取りきれてないからなぁ。」

クラインがそれを見ながらうらやむ。

「クライン君も、もう少しだろう? 頑張るといい。」

「ハヤマさんやアインスさんの戦ってる量とクラインの量は違うからな。差がでても仕方ないだろ。」

キリトの言う通りでアークスの疲れ知らずはこのSAOでも発揮していた。

「まぁまぁ。とにかく今回は戦力は十二分にある。なんとかなんべ。」

「十分はわかるとして、残り2はどこにあるか説明を貰いたいな。」

ヒースクリフがオキの言葉に疑問を持ってきた。

「2はハヤマんと隊長のカタナ復帰。この二人はアークス時はカタナメインだったからね。強いってもんじゃない。その動きもこのSAO内である程度再現できる事は実証できてるしね。今回の鍵はこの二人だ。」

「ははは。そういわれると、期待に応えないとね。」

「ふむ…。まぁそういう事にしておこう。さて今日はこれでいいかな? 私は先に上がらせてもらうよ。」

納得したのかヒースクリフは立ち上がり先に部屋を出て行った。

「ふぃ…。なんとかなればいいな。あ、そういえば。キリの字。」

クラインが何か思い出したようにキリトに話を振った。

「ん? どうした?」

「最近、アスナさんといい関係らしいじゃねーか。ちょっとは報告しろよ。」

「う…ノ、ノーコメントで…。」

キリトが逃げようと部屋の出口にオキが陣取る。

「に・が・さ・な・い。」

ニッコリと笑うオキ。後ろからはクラインが手をワキワキしながら迫ってくる。その場にいたその他のメンバーは全員でキリトに対して合掌した。

その日、結局キリトが解放されたのは現状の中々進まないアスナとの進展についてクラインが入れ知恵をし、オキはキリトにしっかりお返しと言わんばかりにシリカとの現状を暴露させられた。

25層迷宮区、エリアボス部屋扉前。

「ふー…。」

「ふぃ~…。」

廊下の隅でタバコを吸う喫煙者たち。今ではエリアボス攻略前の恒例行事である。

「オキさーん。今回楽にいけますかねぇ。」

センターが吸殻を消しながら聞いてきた。

「うーん。どうだろうな。今回は初のクォータポイント。何がどう出てくるか予想がつかん。」

「とにかく、油断、禁物。」

オールドも普段は落ち着いているが、今回ばかりは気が立っているようだ。周りを見ても同様だ。

「よし。全員吸い終わったな。おーい。こっちは準備オーケーだ。何時でも行けるぜ。」

「了解。では諸君。初のクォーターポイントだ。今までイレギュラーズのおかげもありボス攻略時には犠牲者は一人も出ていない。だが、今回ばかりはそうもいかないかもしれない。」

ディアベルの一言は重かった。だが、余計に気合がはいる。

「だからこそ、いつも以上に気合を入れろ! 無茶はするな! それでいて余裕を持て!なにせ俺たちには戦いの神様がついている!」

「「「おぉー!」」」

プレイヤー達の士気が上がる。アークス達は苦笑気味だが。

「神様…ねぇ。」

「ま、この星の人からすればお空の上に位置するからね。言いえて妙か?」

ハヤマとコマチは武器を取り出し集中に入る。だが、肩に余計な力が入っていない。

「まるで、初の防衛戦を思い出すな。」

「ああ。あの時は悲惨だったな。」

「いろんないみでなのかー。」

「おめーら…そろそろはじめっぞ。」

アークスメンバーはかつての戦場を思い出し、気合を入れる。そしてディアベルが締める。

「必ず、生きて帰るぞ!」

「「「おお!」」」

扉が重い音を立てて開く。

「ハヤマんと隊長は一番前へ。コマッチーはその後ろについて。ミケと俺は更に後ろへ。それ以外の前線メンバーはボスが出て着次第側面と後方へ回り込め。」

ハヤマ、アインス、コマチが前線に立ち、オキ、ミケ、サラとプレイヤー達の順で部屋へと入っていく。いつもの布陣だ。

「…なにか、いる。どこだ。」

コマチはその殺気立つ主を探した。

全員が部屋へと入り切った瞬間、入口の扉が閉まりボスが出てくる。だが今までと違った。

「…ようこそ人の子らよ。我ら同胞をよくぞ打ち破ってきたな。だが、ここからは私が相手だ。」

部屋の真ん中、空中に奇妙な渦が見える。声はそこから聞こえてきた。そして渦から出てきたその姿は、アークス達なら何度もみた姿の『化け物』だった。

「さぁ、始めるぞ! 猛き闘争をな!」

そのセリフを吐き、禍々しいオーラを発しながら立つ『化け物』に皆は純粋な恐怖を覚えた。

赤黒く光る人間の2倍はあるかと思われる巨体。ガッシリとした体。背中には曲がった大剣と思われる物。今までにないオーラを放っていた。

「…おーお。今までにないほどの禍々しさだねぇ。」

「やはり、クォーターポイントは伊達じゃないという事か…。名前は『ザ・ファルス・ヒューナル』。全て頭文字が大文字か…。」

頭文字が大文字で頭に『The』がついている。これは今までにない強さを誇る事を意味する。これは最近になって気づいたことだが、頭文字が大文字になっていればいる程、『The』のつく部分が頭になっていればいる程強くなる法則がある。

「だが、エネミーがしゃべったのは初めてだな。こいつ、別のAIが組み込まれてそうだな…。」

プレイヤー達は構える。何時でも攻撃をかわせるように。だが、そんなことをお構いなしにオキはそのエネミーに叫んだ。

「なぜ…。なぜここにいる! 【巨躯】(エルダー)!!!」

プレイヤー達は今までにないほどの声で叫ぶオキに驚き、アークス達が恐ろしい形相で睨みつけていたことに気づく。

オキ、ハヤマ、コマチはもちろん普段温厚なアインスは睨み付け、ミケですら尻尾を逆立てて威嚇している。

「エ、エルダー!? なんだそれ。」

クラインがサラに聞いた。

「エルダー、巨躯とも言うわ。私達アークスの最大の敵であり殲滅する対象であるダーカーの親玉、ダークファルスの一つよ。それの人型形態。とはいっても人間の倍は大きいけどね。その本体も途轍もなくデカくて…初めて見たときの大きさは星の半分はあったわね。間違いないわ。あの姿、背中にある曲がった剣。そして何よりこの威圧感。なんで? ここにはダーカーなんていないはずでしょ!?」

プレイヤー達は構えを崩さずじっと動かないヒューナルを見た。そしてその時にたった一人、サラの説明を聞いて眉を動かしヒューナルではなくアークス達を見るプレイヤーがいたことに誰も気づいていなかった。

「我の名は、エルダーではない。間違いではなかろうな? 我はここに住むすべてを統べるモノ。『ファルス・ヒューナル』。さぁ人の子よ。始めようではないか! 闘争を!」

「くそ…! ハヤマ! コマチ! 隊長! つっこめ!ミケ、サラはプレイヤー達の援護! すまんが、ディアベル。暫くイレギュラーズに場を貸してくれないか?」

「…了承した。皆もそれでいいな?」

全員が頷く。あのオキが今まで見せた事のない顔をしている。これは従った方がいい。全員がそう感じた。

オキはそれを確認したのちに全速力でボスへと向かった。

「オオオォォォ!」

叫びつつ構えるヒューナル。オキはそれに向かいながら敵のゲージを確認した。

『3本。ここにきてようやく増えたか。まずはゲージ1本削って様子を見よう。もし、もし俺の知ってるヒューナルと同じ動きならば。予想と対策が打てる!』

オキ達が戦った『ダーク・ファルス【巨躯】』の人型形態『ファルス・ヒューナル』と同じ行動をするのであれば、それを指示して倒すことができるからだ。

『問題はなぜ奴がここに? いや、俺たちを知らない? しかも人の子って言ったな。あいつなら、アークスというはずだ。一体なぜ…。』

疑問に思いながらも巨大な拳を振り上げ立ち向かってくる『ファルス・ヒューナル』とアークスの戦いが始まった。




皆様お疲れ様です。
今回は前後編の2つに分けました。前回長かったので、もう少し短くしようかと…。
さて、今回出てきたファルス・ヒューナル。PSO2では物語の中心のエネミーです。
なんでこんなところにいるんでしょうかね。アークスの知っている【巨躯】とは違うようですが。
また、今回から出てきたリンド。本来彼と彼のギルドは原作では「最強」を目指すために手段を選ばないあまりいいとは言えないギルドだったのですが、今作では紳士なギルドとして登場です。今後の彼の紳士振りに期待ですね。
ではまた次回にお会いしましょう。

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