SAO ~ソードアークス・オンライン~   作:沖田侑士

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第101話 「大橋での激闘」

BoB決勝が開始して、すぐにシシガネがクロに倒され、初参加にしてGGO内でも名の知れた東のマフィア『首領(ドン)・ペルソナ』の連れということで注目を浴びていた。

「さすがクロだな。銃の扱いは相変わらずだ。」

実況の画面が映し出されている大部屋にはハヤマをはじめアークスメンバーとサラ、SAOを生き延びたキリト、アスナ、シリカ、リズベット、クライン、リーファ達が勢ぞろいしていた。

ALO内のある田舎町。その一角にある巨大な和風の館。ギルド『アーク`s』の拠点だ。

SAOでオキ達がであった主要メンバー、キリト、シリカをはじめとする元オラクル騎士団の一部メンバー。

『アインクラッド解放軍』からディアベルにキバオウ。『ドラゴンナイツブリゲイド』からリンド等、元SAOプレイヤーのギルド連合『アーク’s』のメンバーがリーファ提案でALOに参入。相変わらず暴れまわるアークスメンバーを中心に、舞台を魔法と剣の飛び交うVRMMO、ALO(アルヴヘイムオンライン)へと変え、今度は一つのギルドとして猛威を振るっていた。

そのギルド拠点内、大部屋にてアスナら料理人達の料理を食べながら巨大モニターでオキ達のBoBの実況を皆で見ていたのだ。

実況はリアルタイムでフィールド上に数多く設けられた浮遊カメラにて好きな場面を好きな位置から見ることが出来るようになっている。また、観戦者からは誰がどの位置にいるかも確認が取れるように地図も表示されている。

「オキさん達は無事合流できたみたいですね。」

シリカが心配そうに画面を見ている。その隣ではハシーシュ、フィリアもオキの様子をはらはらしながら見ていた。

「安心したまえ。君達も知っての通り、彼はそんなやわではない。今回も大暴れしてくれるさ。」

飲み物を飲みながらゆっくりと優しく微笑むアインスに少しだけ肩の力が抜けるシリカたち。

「で? 結局このなかの誰がデスガンっちゅう奴か、オキはんまだわかっとらんのやろ?」

「みたいだな。結局、片っ端から倒していくのが早いのだろうか。」

「キバオウ、ディアベル。お前ら食いすぎだ。」

「「え?」」

観戦しながらアスナ達のつくった料理をもりもり食べていくキバオウとディアベルをとめるキリト。

「もー。ゆいちゃんの分がなくなっちゃうでしょ? 少しは自重しなさい!」

リズがペシリとキバオウの頭をはたいた。なにすんねんと怒るも、その横ではゆいが笑っているのをみて皆の緊張もなくなる。

とはいえ、心配しているのはスレアのプレイヤー達だけだ。アークス達はいつも通りの状態である。

オキが負けるはずがない。クロもいる。

「とりあえず、これからどうするの? マスター。」

これからの流れを確認するクロとシノン。オキはもう一度地図を開き、次の動きを予測した。

「ギャレットの旦那がこの島の唯一の橋を守っている。一番最北端にいたほかのプレイヤーはクロが倒したからしばらく来ないだろう。今の所一番近かったのはそいつ覗いてペイルライダーだったはずだ。こっちに来てくれるといいが。」

地図には現在は何も映っていない。次のプレイヤー位置表示まで15分以上ある。オキの頭の中では二つの構成が考えられていた。

一つはこのまま予定通り南下して一人ひとり倒していく。

もう一つは、ここで籠城して一本しかない橋の上でほかのプレイヤーと戦う。

「籠城するのはいいとして、そのリスクはほかのプレイヤーをデスガンが先に殺してしまう可能性がある。ならば打って出るほかないか。」

オキの提案にコクリと頷いた二人はさっそくギャレットと合流するためにオキの後をついて行った。

ギャレットは一人、仁王立ちで大橋に立っていた。

「時間的にそろそろほかのプレイヤーが来てもおかしくないか…。クロの嬢ちゃん、旦那と合流できてるだろうか。ま、大丈夫か。ここより後ろには誰もいないしな。」

タバコに火を付け、余裕を見せるギャレット。ふと上を見ると観戦用に浮遊しているカメラがふよふよと漂っていたので、ちょっとキザにポーズを決める。

ズシャ

「おぉっと。おいでなすったか。」

ギャレットの立っている反対側。そこにライダースーツにヘルメットで顔を覆い隠したプレイヤーが現れた。

「…ペイルライダー、か。旦那の予想通りに来てくれたか。さって、相手の獲物はっと…。」

最初はゆっくり、そして次第に速く走り出したペイルライダーへとギャレットのライフルが向けられた。

ガゥン! ガゥン!

まずは威嚇。ペイルライダーの若干右を狙い、左へと避けさせ誘い込む。だが

「はやい。」

一回のジャンプで予想よりも上空へと飛び上がったペイルライダーはギャレットへ日の光で黒光りするショットガンを向けた。

ドンドン!

「ちぃぃ! アーマライトAR17 ショットガンか…。」

後ろへ下がりながらショットガンの攻撃範囲外へと下がるギャレットは今度は本気で狙いに入る。

ガガガン!

3発連続の射撃を着地したペイルライダーへと撃ったが、そこからの瞬発力のスピードはさらに予想外の速さを持っていた。

「ちっくしょう! こいつ…旦那と同じで体術スキルでブーストかけてるな!? なら!」

ギャレットはコートの下に隠し持っていたプラズマグレネードを2個同時にペイルライダーへと投げた。

ドォォォン!

閃光と同時に強力な爆風が二人を襲った。ギャレットはそのまま後退。橋から離れ、森との境目まで下がった。

「死んでねーのはわかってるよぉ!」

振り向きざまに爆炎の中を飛び越えてきたペイルライダーへとライフルを向ける。

だが、ペイルライダーはギャレットとは反対に引き寄せられるように空を飛んだ。

「なに!? …ワイヤーか!」

ペイルライダーはワイヤーを橋を吊っている柱の一本にワイヤーを飛ばし、こちらの飛んでくると見せかけながら反対へと後退していった。

「っち…長引きそうだぜ。」

ショットガンは攻撃距離が短いとはいえ、近距離では絶大な攻撃力を誇る。

「ふふん。近づけさせなきゃこっちのもんよ。」

地面に着地したペイルライダーはギャレットへと目標を定め、睨み付けている。

「よおよお。そんなしんきくせぇヘルメットなんか脱いで、顔見せたらどうだい? それとも、顔見られるのは恥ずかしいってか?」

ギャレットはオーバーなリアクションでペイルライダーを煽った。

それが気に食わなかったのか表情が見えない以上判断が出来ないギャレットは微動だにしないペイルライダーに舌打ちをした。

「っち…少しはしゃべれってんだ…。あん?」

直後にゆっくりと前に倒れたペイルライダー。いきなりの状態に唖然とする。

「な、なんだぁ!? …っ!」

どこからともなく現れた黒い擦り切れたコート。目をこすり、もう一度確認するギャレットはそれがなんなのかを把握するのに一瞬間が空いた。

こちらを一度見た際に見えた顔。追っている奴の象徴、金属の骸骨のマスク。その目が赤く光っていた。持っていたライフルを背中に寄せ、ゆっくりと腕を動かし、自らの身体の前で十字架を切るジェスチャーをする。

「…まちがいない。貴様がデスガンか!」

ギャレットはライフルを構え、一点を狙う。デスガンの身体ではない。痙攣し、その場に倒れているペイルライダーのヘルメットの顔面部。

ガゥン!

バリンと音が鳴り、顔面部が割れる音、そしてペイルライダーの身体が一度ビクンと跳ね上がり、ゆっくりと消えて行った。

「目の前で殺人なんか起こされてたまるかってんだ…。後はここからどうするかだ。」

冷や汗を流すギャレットは自分の状態を瞬時に確認する。銃に入っている弾丸はあと少し。リロードする必要が出てくる。グレネードはさっき使ってしまった為、ライフルかサブウェポンのガバメントしか戦う手段がない。

先ほどのペイルライダーの様子はどうにもおかしな場所があった。

更にデスガンの姿、そして名前を見た。

「そうか。つまり…そういうことか。」

「ギャレット!」

オキが森の中から出てくる。それに続いてクロ。シノンは出てこないが、森の中で待機しているのだろう。

オキはクロを引き連れてギャレットを素通りしていく。

「デスガン! 見っけたぜぇぇぇ!」

「仕留める。」

オキがトンプソンを真正面に構え、乱射した。デスガンはそれを見て橋の側面へと移動。川の中へと落ちて行った。

「ち、逃がしたか。」

川の方へトンプソンを構えるも浮き上がってくる様子はない。再びギャレットの方へと近づいた。

「大丈夫かギャレットの旦那。」

「ああ。」

ギャレットは先ほどの様子、状況をオキへと共有した。

「音の出ない銃?」

「そんなのあるの?」

オキとクロが首をかしげた。

「あるわ。数は少ないけど、いくつか思い当たる物はあるわ。」

「しかもライフル型、ついでにいうとありゃ麻痺弾か、それの類も使ってるな。となると思い当たるのは一つしか聞いたことがない。」

ギャレットとシノンがコクリと頷き合った。

「もったいぶらずに教えてくれよ。どんな銃なんだ?」

L115A3。『沈黙の暗殺者(サイレント・アサシン)』の異名を持つ対人ライフル。

ペイルライダー、ギャレット共に気づかず、デスガンはペイルライダーを背中側から倒した。手に持っていたのはライフル。

音の出ない銃とわかる。そして撃たれた後に立ち上がらなかったペイルライダー。これは麻痺弾を撃たれた可能性がある。

それらを踏まえ、特殊弾を撃てる音の出ないライフルはこのゲームの中に一つしか存在しない。

「間違いないんだな?」

「音の出ない銃なんかレアすぎて逆に有名になっちまったもんよ。」

「一度市場に出たと聞いたことがあるわ。もう一つ音の出ないヤツはあるけど、ハンドガンタイプだし…。」

「しかも、あの銃は専用弾じゃないと撃てない。専用弾は麻痺や毒等のステータスデバフは付けれない仕様だ。」

オキ達は南下しつつ、先ほどの情報をまとめた。デスガンは間違いなくシノンとギャレットのいうライフルを使っている。つまりどこから撃たれても相手の位置がわからないということだ。

「ライフルは狙ったときに一発目だけ、予測線が見えない仕様になってるわ。」

「かなりやばい銃ってことだ。」

ふーん。と流すオキにギャレットは肩を落とす。

「ふーんってあんた…。旦那、事の重大さわかってんのか!?」

ギャレットのあきれた声に対し、オキは笑いながらギャレットの肩を拳で叩いた。

「なーに。奇襲闇討ち当たり前の戦闘を続けてきた俺とクロがいるんだ。大丈夫さ。」

親指立ててニカっと笑い、先を進んだ。

 

 

 

森から荒れ果てた風景から山岳に変わった。

「そろそろ他のプレイヤーと当たりそうな気がするが・・・。」

「そうね。」

ギャレットとシノンは周囲の警戒をする。オキは岩影に体を小さくして体重をかけ寄りかかった。

「そろそろ次の時間のはずだ。」

時計を見るとオキのいうとおり、光の点が地図上に現れた。

「ペイルライダーではなかった。となると可能性のあるプレイヤーネームはこいつか。」

スティーブンのスペルミスだと思われるなんて読むのか分からないプレイヤー。

「名前はステルベンだ。間違いない。」

表示されている『Sterben』の文字を睨みつけるギャレットがぼそりと呟いた。

「あれ? スティーブンじゃねーのか。」

「なにか違和感があったんだ。デスガンにしてはスペルミスだという凡ミスをやる相手ではない。こんな大掛かりなことをやるにはでかい計画が必要だ。しかも失敗は許されない。ドレイクはスペルミスだろうと言っていたが、それは英語の場合だ。あれはドイツ語だ。ステルベン。そう読むんだこれは。」

デスガン=Sterben(ステルベン)。ギャレット曰く、『死』を意味する。

ステルベンは山岳地帯の先にある市街地の入口に移動していた。市街地には銃士Xが。市街地を中心に、南側に闇風。更に南側に夏侯惇がゆっくりと北上している。

再び光がなくなる地図を閉じたオキはタバコに火をつけるギャレットに自分も横に座りタバコに火をつけた。

「旦那、なんでわかった。ドイツ語だったか? それだって。」

「あぁ。簡単なことさ。さっきも言ったようにあいつがミスを犯すような相手ではないというのと、たしかデスガン、シュピーゲルは医者の息子って言ったよな。そこからわかったのさ。」

シノンがそれを聞いてようやく理解した。

「そうか・・・。医学はドイツ語を使うんだったわ。シュピーゲルもドイツ語覚えるの大変って言ってたし・・・。」

白い煙を吐きながら地図を再び開くオキはこの先にある市街地を見た。

「ふーん。スレアのことはある程度勉強したけど、言葉が国によって違うってホント大変だな。めんどくせえしか相変わらず言葉でねーわ。で、名前が分かったならあとはあいつを追うだけだ。市街地に向かっていたな。このまま南下して市街地に入ろう。」

全員はオキの提案に頷き、行動を開始した。




みなさまごきげんよう。
今回は原作であっけなくデスガンに殺されたギャレットの旦那が大活躍してます。
ギャレットの旦那のCVは大塚芳忠でイメージお願いします。
次回は市街地戦ですね。なんか原作と比べるといろいろすっ飛ばしてるかもしれませんが、気にしないでください。というかここまで改変しといて気にするなもなにもないよね。

さてPSO2の方では無事エスカダブセ+35に強化できました。
これでようやくファイターのLV上限が80にできました。ずっとゲイルつかってたからね、シカタナイネ。

FGOでは羅生門再び。イバラギちゃんが前回苦労したマスター達から全力で仕返し食らってますね。初日のHP2兆が3時間で落ちるとか草生えますわ。

それではまた次回お会いしましょう。

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