今回はあーしさん
放課後の教室には2人しかいない。私ともう一人の男子。私はその人の落ち着いた雰囲気を感じていると口が滑ってしまう。これは私の独り言。
「あーしさ、こんな外見だから自然と周りにはチャラチャラした人しか集まらないんだ。別にいいんだけど何かうるさいのが嫌になってきたなーっていうか、最近はヒキオみたいに静かに過ごしてみたいんだよね」
私は馬鹿だから、頭のいいヒキオには多分何言ってるか伝わらないと思う。それでも黙って聞いてくれる彼に少しだけ私は惹かれていた。
総武高に入学してから好きになった葉山隼人。彼は誰にでも好かれていて尊敬される。私もファンの一人だった。2年で同じクラスになって仲良くなり、日を重ねるごとに私は好きになっていった。
でも日を重ねても隼人は偽りの笑顔を向けて、誰にでも好かれる人を演じている様に思え、それが分かるといつの間にか好きじゃなくなって、一人の友達としてみるようになった。
「だからその、明日から仲良くして欲しいというか、なんていうか……」
「あぁ、むしろ友達が出来て嬉しいな」
そう言って無邪気にはにかむヒキオはとても格好良かった。今までこういう事を言ったことがないため照れ臭さと少しの嬉しさで体が暑い。
「じゃあ親睦を深めるためにどっか小腹を満たせる所に行こうよ」
やってきたのは最近お店を出したクレープ屋。ヒキオは渋々といった感じでついてきて、財布を確認している。ま、しょうがないから奢ってあげよう。
「すいませーん、チョコバナナとブルーベリーください」
好きそうなものを選んだ。そういえば私はヒキオの事をよく知らない。これまであまり関わっていなかったから当たり前なんだけど。そのための親睦会だしね。
「……お前よく俺の好きなやつ知ってんな」
「へ? 嘘、あってた感じ? 何か嬉しいし」
ブルーベリーであっていたようだ。ちょっとだけ彼の事を知れた事に感謝する。そしてもっともっと知りたいという欲求が感情を支配していく。
注文の品を貰うと空いているテーブルを見つけてそこに行って座るとヒキオの方を見る。たった今もらった様だ。……店員さんの笑顔にニヤニヤしてるし、ダメだよヒキオ。
「お待たせ、じゃあ食べるかって何でそんな不機嫌そうな顔してんだよ」
「別に、ヒキオが店員さんの笑顔見てニヤけてるのがキモかっただけだし」
何で私もそんなことで不機嫌になってるか分からない。けど何か嫌な気分。
「……何つーか可愛いな、お前」
「は? な、なな何言ってるし」
手で持っている温かいクレープが温く感じる程体が暑い。否定はしているものの物凄く嬉しい。
「……やっ、あーし、そーゆーの慣れてないからっ」
「ふーん、意外に言われてそうだけどな」
そう言ってクレープを頬張る。それを見てか私もつられて口に運ぶ。味なんてものはしない。舌が麻痺してる感覚。こんな事は一度もなかった。
「ヒキオのくせに生意気だし」
いつもの癖で指で毛先をクルクルしたり巻いている部分を伸ばしたりする。それをさっきから黙ってじっと見つめてくるヒキオ。恥ずかしいじゃん。
そっぽを向きながら、でも指を止めない。ヒキオが見てくれるから。そう思ったらずっとやってしまいたくなる。
「うん、やっぱり三浦って黒髪のほうがいいな」
「そう? じゃあ黒に戻そうかな」
いつの間にか2人のクレープは無くなり、机の上には包んでいた紙しかなく、それを見て時間を気にせず話してたんだなと思う。
「黒かぁ、まぁヒキオが言うんだし黒に戻すよ、月曜日楽しみにしておいてね」
「お、おう、マジで黒にすんのかよ」
当たり前だしと強く言う。私は2人分の会計を済ませると店を出てすっかり暗くなった外を歩く。またもヒキオは渋々といった感じで奢られ、私の少し後ろを歩いていた。
今はこの距離でいい。いつかは並んで歩こう。それまではヒキオには私の隣に立てるくらいいい男になってもらうし。
私にそう思わせるヒキオはやっぱり生意気だ。
どうでしたか?
個人的にあーしさんは好きなキャラなのですが、賛否両論あるようですね。まぁどのキャラもそれな同じなのですがw
やはり高圧的な態度が受け入れられないという人もいるのではないでしょうか?
原作を読んでいないので(買う予定)よく分かりませんが、アニメでは見られないオカン属性とやらは小説では大活躍していますねw
ただまぁアニメ2期ではコンビニの雑誌コーナーでのやり取りにはちょっとだけあーしさんに苛立ちを覚えたのは内緒です←
さて、次回ですがいつになるかわかりませんが頑張りたいです。