恋愛物語集。   作:Aru96-

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初めまして、あるです。

pixivの方でも書いていて、こちらも両立して書いていきたいと思ってます!
主にこちらでは思いついた短編集を書いていこうと思いました。

短いですがお付き合いいただけたら嬉しいです。


甘い日

いつもの放課後、今日は雪ノ下と由比ヶ浜は家の用事やら遊びやらで帰り必然と俺一人になる。帰ろうかと思ったが次の日に某アラサー教師に何を言われ……もとい殴られるか分からんので渋々きてしまう。俺まじ社畜根性パネェ。

 

すると甘くてそれでいて何処か愛おしい。そんな声が俺の耳に届く。開かれた扉を見ると頬が緩み、自然と笑顔になってしまう。とてとてと歩いては後ろにある椅子を持ってきて俺の隣にちょこんと座りながら、右手で俺の指を遠慮気味に絡ませる。次第にそれは大胆になり掌が重なり合うと時折にぎにぎと揉んでくる。その行為によって胸のあたりが苦しく呼吸がしにくくなる感覚を覚えてしまう。

俺は顔に出さないように細心の注意を払いながら使われていない手でカバンから本を取り出すと栞を使いテコの原理で目的のページを開く。勿論手は繋いだまま読む。

 

お互いただ喋りもせず静かに時を過ごしている。チラリと視線を横に外すと端正な顔つきにほんのり頬を朱く染めている彼女が目に入る。次第にウトウトとし始め、此方に倒れてくる。肩に少しの重みとシャンプーの香り。何回も嗅ぎ慣れているのに未だにドキドキするのはきっと彼女だから。

 

いろんな行動、言葉に一喜一憂し心が躍ってしまう。暗いトラウマで塗られた中学時代の頃より単純になっている気がする。だがそんなものは過去のことで今こうしていられる事に凄くありがたみを感じ、ずっとこの時が続けばいい。そう思った。

 

心臓の音がやけに煩い。風に揺られる木の音がする。部活に勤しむ学生たちの掛け声、車のエンジン音。教室内の扇風機により流れてくる少しの潮風とシャンプーの香り。そしてこいつの寝息。

 

今日は珍しく快晴であり、窓に目をやると空には太陽がギラギラと街を照りつけ、真っ青な空には飛行機が雲を作る。それが窓により四角く切り取られ一枚の絵のよう。

 

「ん、んぅ……先輩」

 

身体をビクっとさせて頭をあげる寝ぼけ目の一色いろは。徐々に琥珀の瞳が俺を捉える。

 

「起きたか? 後輩」

 

「おはようございます、肩貸してくれてありがとです」

 

細く白い滑らかな指で目を擦りながら礼を述べる。擦るのを満足したのか次第に笑顔になり次は腕ではなく真正面に移動して首に手を回して抱きついてくる。そうして俺の太ももに座りだし、首元に顔を埋めすぅっと息を吸いふーと吐く。いや、深呼吸されても困るんですけど。

 

「はぁ、先輩の匂いがする、落ち着くなぁ」

 

一気に身体の体温が上がる。先程まで読んでいた本など等にカバンの上に落ちていた。こいつの表情は確認できないが少なくとも臭くはないらしい。それに少し安心しているとばっと勢いよく顔を上げる。

 

「キスマーク、付けていいですか? てか付けます。先輩は私のモノです、誰にも渡しません」

 

ちぅという音がする。首筋に少しの痛みが走るそして終わりそうになり最後に噛んでしっかりと跡を付ける。満足そうに満面の笑みを浮かべ首に回していた手を離し、ワイシャツで隠れていた胸元を開け始め、パタパタと扇いで風を取り込む。そうすると、

 

「じゃあ次は先輩の番です。首筋は嫌ですので心臓の近くにお願いします。要は左胸ですね。」

 

私はいつでも貴方と共にありたい。と囁かれたような気がした。多分卒業式の日に女共が異性の相手の第二ボタンを貰おうとするのと同じ理由。だがこれはただの思い込み、本当にそう思っているのかは本人しかわからない。が一色の表情を見ると思い込んでもいいような気もしてくる。

 

「んっ……」

 

キスマークはネットで少しくらい調べた事があるのだがいかんせん経験がないものでうまく付けられる自信がない。だから取り敢えず真似事のように吸って最後に甘噛みをする。

水音を立てて離れるとじんわりと赤黒い色に染まっていった。

 

「ふふっ、私も跡で心臓に近い所に付けますね。好きです、大好きですよ、せーんぱい」

 

そういった彼女はトロンとした瞳になって顔を近づける。最後の最後まであざとさを忘れないこいつは小悪魔だ。そんな小悪魔に溺れてしまう捻くれた俺もまた一人の真人間なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、蕩けるような切なく甘美な匂いが口いっぱいに広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?

少しでも楽しんでいただけたならとても嬉しいです。
もしかしたら中編や長編も書くかもしれませんw

その時はどうぞよろしくです、

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