深夜、アキラ達が身を潜めている小屋から1人の男がこっそり抜け出しシートで隠している大型トレーラーに入り拳銃を手にしスノーモービルに乗りまだ暗い雪原の中へと駆け出していった。
「なんだ敵か!?」
スノーモービルの音で皆が慌てて起きイゴールがライフル片手に外へと出て行った。
周りを警戒して見回ったが敵らしき姿は見えなかった。
「なんだ気のせいか?」
「イゴール、大変だ!!」
小屋からアレクセイが大きな声でイゴールを呼んだ。
「アキラの奴1人で出て行った。」
「アキラが!? そういえばあいつがいねぇ。」
言われてアキラが寝床にいていた2階にアキラの姿はいなかった。
「おいまさか逃げたんじゃねぇだろうな?」
「あいつは逃げるような奴じゃない。」
「ジェノムの言うとおりだ。アキラがそんな奴じゃないのは俺達が知っている。だがどうして……。」
「その事なんだがな……俺は心当たりがあるんだが。」
坂口がどこか弱弱しい口調で言った。
「おい、おやじ知ってるのか?」
「あっいやその………。」
坂口のしどろもどろな喋りにレイナが声をあげた。
「もうおっさん、はっきりしなよ!!」
「わ、わかったよ。実はな……。」
1人出て行き数時間が経ちアキラは軍の監視を潜り抜けながらアムール川の上流まで来たが軍のいや右肩を赤く染めた陽炎のKMF2機と隊員数名の姿が見えアキラは見つからないよう隠れた。
アキラは懐からカレンの姿が写った写真を取り出した。
坂口の話によると3日前、中華連邦の東北部にあたる黒竜江省(こくりゅうこうしょう)のアムール川を渡る渡し船に乗る姿を偶然映し出されたものを坂口の協力者が見つけたと言っていた。
だとすればサドナ王国と中華連邦の国境をはさんであるこのアムール川の近辺、中華連邦と最も近い都市のチェンスクへ行けばカレンが乗っている船を見つけることができるかも知れない。
必ず会えるとは限らないだがもし会えたら……アキラはスノーモービルのレバーに手をかけた。
-中華連邦 黒河市-
アムール川を渡る水上バスにはたくせんの人でごった返していた。
そんな中1人の日本人が混んでいる中で人ごみを掻き分けながら入っていった。その日本人は乗船している防寒着のフードを深く被っている人物の肩に手をやった。
「おい、紅月。」
名前を呼ばれ紅月カレンは被っていたフードを取り顔を露にした。
「ト部さん、時間は?」
「この寒さでエンジントラブルが起こってるみたいだ。2~3時間ここで足止めだ。」
「……そうですか。」
「のんびりはできない。目の前のサドナ王国は既にブリタニアに吸収されエリアになっている。」
ここから1kmも離れていない川を渡って見えるサドナ王国の船乗り場には軍の装甲車が見える。
「ここは中華連邦だ。向こうが手を出すようなことはないだろうが俺達はお尋ね者だ。」
ト部の言うとおり自分達が中華連邦にいる限りブリタニアも簡単には手を出すことはないが中華連邦が守ってくれるとは限らないのだ。事実、前年中華連邦が介入し起こったキュウシュウ戦役では自分達黒の騎士団によってクーデターは頓挫してしまったのだ。
この亡命も密入国のような形でありカレン達は身を潜めながら今まで過ごしてきたのであった。
サドナ王国に逃げることも考えたがブリタニアとの長い戦争で困窮した状況で政府も近年ブリタニア恭順派の台頭が目立ち逃亡先には適さないと判断しカレン達は中華連邦に潜伏したのであった。
「予定の時刻まで時間がない。ここから支流の松花江(しょうかこう)を渡って旅順まで行けば港でラクシャータが用意してくれた船で日本にいける。紅蓮も用意してあると聞いている。」
「紅蓮……。」
日本に戻り例の作戦を実行する。この作戦を成功させなければ自分達にはもう後がない。
(アキラ………。)
今回、紅蓮にはブラックリベリオンにて破損した輻射波動の代わりに予備パーツの輻射波動の簡易型である甲壱型腕が使われるがこれは以前アキラが搭乗した月下の先行試作機に装備されていたものでアキラは外しそのままにされていたのであった。
「どうした?」
隣には緑の髪をフードで隠しているC.C.がいる。
「ううん、なんでもない。」
「流崎アキラがいてほしいって顔に書いてあるぞ。」
「なっ!?」
「嘘だ。」
「こんな時に……。」
相変わらずの態度にカレンは溜息を吐いた。
「だがお前の背中を時々見てると寂しそうな見える。」
「…………私の背中を預けられる人がいないから。」
「なんだ惚気か?」
「ゼロと同じよ……ゼロがいれば私達は勝てる、そう思える。あいつだけなの、私の背中を預けることができるのは。一緒にいてくれたら私は後ろを気にすることなく前へ進むことができる。………不安なのよ、あいつがいないと。」
「………生きてると思うか?」
「生きてる。私達が日本で動けば必ず来てくれる。」
今、アキラがどこにいるのかわからない。だが今度の作戦で自分達の存在が明らかになればアキラは必ず戻ってくる。カレンはそう信じていた。
-ブリタニア ハバロフスク基地-
エリスはドリー達から処置を受けており手術台に横になっているエリスにジョディは彼女の腕に注射を刺した。
「さぁ終わりよ。あとはゆっくりしてなさい。」
そう言われエリスは黙って治療室から出て行った。
「PSと言っても元は人間、治療を受けないとね。」
「これがPSの欠点だ。知力、体力が大幅に向上する一方その体は長くは持たない。だからこの薬を使わないと。」
PSという常人を超えた力を手に入れた反面各情報が脳へ送られ演算するにも限界があり長時間の戦闘がまだできないでいた。
「でも最近彼女何か考え事しているのよね。」
「流崎アキラとの戦闘を終えてからだな。」
「だんだん女の顔になっているっていうか……。」
「最初はお前の冗談だと受け流してたけどお前の言うことも正解かもって最近思うよ。さてどうしたものか……。」
1人で佇んでいたエリスはここを経った井ノ本との話を思い出していた。
(まだ軍でも知られていない。我々が入手した情報だ。)
(紅月カレンはどこに?)
(中華連邦のアムール川流域にある黒河市で撮影されたものだ。奴らはエリア11へと戻るつもりだ。おそらく流崎は彼女達と合流するためにここを目指すはずだ。)
(何故です!? この情報は奴には届いていないかも知れない。)
(情報というものはいかに網を巡らせようが小さい隙間を潜り拡散する。)
(だとしてもあの男が行くという確証が……。)
(いや、ある。彼女がいる。)
(紅月カレン……。)
(奴はこの女に惹かれている。必ずアムール川の近隣に現れる。)
生きて会いたい人がいる。
地下でアキラと話している時彼はそう呟いた。
(アキラ、会いたい人が彼女なのか………)
エリスの手にはある写真が握られていた。これは以前スザクからもらった写真であった。
(これは………。)
写真にはアキラ、スザクをはじめ数名の学生達の集合写真であった。
(僕と流崎が通っていた学園の文化祭の打ち上げで撮った写真だ。)
写真に写っているアキラの顔は仏頂面であるがどこか楽しんでるようにも見えた。そのアキラの隣に一人の女性が寄り添うように隣に写っていた。
(この女は……)
(紅月カレン、黒の騎士団の一員で彼女が流崎を学園へ入学させた。)
(紅月カレン……。この女とアキラはどんな関係なんだ?)
(あいつが学園に来た時は他人を寄付けず、僕らと違って雰囲気が大人びてるように見えた。けどカレンは僕らと打ち解けさせようと必死になって色々していた。
そのせいもあるけどカレンといる時は………何て言えばいいだろう、彼女といる時が本当の流崎アキラかも知れない。)
(本当の流崎アキラ………?)
(彼はカレンの事を愛しているかもしれない。)
「紅月カレン………。」
写真に写されているカレンの姿を見てエリスは思った。
(アキラはこの女に惹かれていると閣下は言った。だが何故アキラは……。)
エリスの脳裏にはアキラは右肩を赤く染めたKMFで駆って自分を追い込んだ戦士としてのイメージがあった。
だが実際、対峙した時のアキラは何かを求めて彷徨う1人の男であった。
(紅月カレンがいる場所に向かっているなら………!)
エリスはアキラに会いたいという衝動に駆られた。
しばらくしてドリー達は部下から連絡を受けた。
「どうした?」
『大変です。待機中のPSが突然基地から出て行きました。』
「エリスが!?」
『乗って行った雪上車の無線に呼びかけてますが切られておりどこに向かっているのか。』
まさかとドリーは通信で部下と連絡を取った。
「アムール川流域で待機している我々の部隊に連絡するんだ。PSを見つけ次第確保しろと。」
-エリア15サドナ王国 首都ヤールン-
ヤールンにあるオフィスビルにてシュナイゼルの側近のカノン以下数名の部下達が国内外の情報収集を行っていた。
「地方各地で小規模のテロが反乱を起こしているようです。」
「まぁ想定してことだしエリア11に比べたら楽なものね。」
「それとカノン様、陽炎に不審な動きが」
「なんですって?」
「エリア15と中華連邦の国境を挟んであるアムール川流域を中心に部隊が動いている模様です。」
「亡命者を捕らえるため……?だとしても陽炎が中心っていうのは面白くないわね。それとも……。」
まだ発見されない流崎アキラ、彼が何か事を起こすのだろうか……いやそんなはずはない。カノンは首を横に振った。
たった1人で何ができるのかシュナイゼルの話を聞き真に受けてしまったのだろうかとカノンは苦笑いをした。
アムール川の大きな支流の1つであるゼヤ川までたどり着いたアキラは周りを警戒しながら進んでいると後ろから銃声が鳴りアキラは瞬時に銃を抜き取り茂みに隠れたのだが弾は飛んでくる気配はなく代わりに悲鳴が聞こえた。
悲鳴が聞こえたほうを見ると母子2人の家族が川を渡ろうと走っている姿が見えその家族を見てアキラは気づいた。
(あれは日本人……)
その家族を追って2人の陽炎の隊員が狙いを定めライフルを撃った。 親子は悲鳴をあげ川の中へと倒れ隊員はもう1発撃ち止めをさした。
よく見ると隊員うち1人はブリタニア人であった。
(ブリタニア本国からも人を募っていたのは聞いていたがおそらく俺がいた時より倍以上に大きくなっているな。)
敵にばれないように隠れているアキラの前を先程殺された親子2人の死体が川に流されて行った。子供の顔はカッと目を見開いており恐怖に慄いている顔であった。
「ん?誰かいるのか!?」
隊員の1人が茂みから人らしきものが見え警戒をしアキラのほうへと近づいてきた。
アキラは瞬時に茂みから姿を現し銃で1人を撃ち殺した。
「っ!? こちら第7部隊、ゼヤ川流域にてあやしい者を発見!銃を所持」
『エリス、応答しなさい。エリス!!あなたの基地で待機と命令したはずよ!今すぐ戻りなさいエリス!!』
1人単独で基地から出たエリスはジョディからの通信を無視し各部隊の無線を傍受しアキラの居所を探った。
『現在、ゼヤ川にてあやしい男1人発見、現在アムール川流域へ逃走。難民かもしくは政府関係の亡命者のおそれがあり……。』
(アキラ、お前なのか?だとすれば黒竜江省へ?)
エリスは中華連邦との国境近くにあるブラゴヴェシチェンスクへ到着した。
エリスの目の前にはアムール川が流れておりその先には中華連邦が見える。
本当に井ノ本の言うとおりカレンがあの先にいるのか、エリスは近くにいた陽炎の部隊へと近づいていった。
「ここにあるボートを借りる。」
「おっおい待て!?」
その時兵士の1人はエリスの顔を見てハッとした。
「ハバロフスク基地からの命令でPSを発見次第確保しろとの命令だ。おとなしく我々と一緒に」
エリスはライフルを構えた4人の兵士に囲まれたが冷静に周りを見渡し落ち着いた口調で口を開いた。
「………そこをどけ。」
「命令に背くのか!」
その瞬間エリスは目の前にいる兵士の所持しているライフルを奪いストックの部分で1人を殴り後にいた兵士を後ろ蹴りで倒した。
左右にいた兵士もライフルで殴り倒した。
エリスは軍のモーターボートに乗り発進させた。
ここから1kmも離れていない中華連邦小さな港にエリスは近づこうとした。
「止まれ!ここからは中華連邦領内だ。許可無しの立ち入りは許さない。」
中華連邦の兵士数名が港からそしてボートに乗りエリスの前を立ち塞がった。
エリスは一言も言う事もなくただ水上バスのほうを睨んでいた。
外で軍が動き出し船内も騒がしくなりカレン達も何事かと外を様子を見ると中華連邦の軍とブリタニアの女性兵士が境界線で睨み合いをしているのを目撃した。
「ブリタニアがこんなところに!? まさか私達を?」
「まさか……。」
その時カレンはブリタニアの女性兵士と目が合い慌てて顔をフードで隠し船内の奥へと戻っていった。
赤い髪に自分とそんな変わらない歳の女性、自分と目が合った女性にエリスはハッとした。
(紅月カレン!)
カレンの姿を見たエリスはそのまま黙って引き返し中華連邦の兵士達はどうしたのかと顔を見合わせた。
(ここに紅月カレンがいる。アキラ、お前は彼女を探しここまで……。)
その頃アレクセイ達はアキラを追いアムール川の流域近くまで来ていた。
「おい、おやじ本当にアキラの奴はここらにいるのか?」
「信じられねぇなら戻れよイゴール。あいつはきっと来ているはずだ。」
「それにしても女に会いにいくなんざあいつもガキらしいところあるじゃねぇか。」
イゴールは豪快に笑った。
「だが会うのは難しいようだな。」
「おっ、どうしたジェノム?」
「今、軍の通信を傍受したがアムール川でアキラらしい男を見つけたと軍が探しているみたいだ。」
「くっ、見つかってしまったか。みんな、隠れていくのはもうやめだ。このまま一気にチェンスクへ行くぞ。」
運転をしていたアレクセイはスピードを上げ車を発進させた。
アキラは軍の目を掻い潜りながらチェンスクへとたどり着いたがここでも軍が配備されていた。とにかく中華連邦の黒河市が見えるところまで行かなければ行けない。
アキラは樹で身を隠しで行く方向を思案していたが上空から軍のヘリが周りを滞空しておりおそらく自分を捜索しているのであろうと思った。
今、見つかれば中華連邦への密入国は無理だ。アキラはスノーモービルを捨て徒歩で川岸まで目指そうと身を縮めながら歩いていった。
降り積もった雪に足をとられながらも川岸まで着いたアキラは中華連邦の領内を見渡した。
(どこだ?どこにいるカレン!)
その時アムール川から1艇のモーターボートがこちらへ向かってきた。
「お前は!?」
「流崎アキラ!」
エリスは片手に銃を持ちアキラに向けたままボートをアキラがいる岸まで寄せた。
「………やはりここへ来たのだな。」
「……どういう意味だ?」
「あの向う岸にある船があるだろ。」
向う岸、中華連邦領内の港に停まってある船1隻見える。
「あの船に紅月カレンが乗っている。エリア11へ戻るつもりだ。」
「っ!?………カレン達をどうするつもりだ?」
「何もしない。私達は紅月カレン達残党をエサにお前が来るのを待っていた。」
「俺を殺すためか?」
「そうだ。………だが。」
ゆっくりとエリスはボートから降りた。
「大人しく投降しろ。命を助けるよう閣下には伝える。」
「………何故俺にそんな拘る?」
「………わからない。だがお前を殺したくはない。」
心憂い表情を浮かべながらもエリスは銃を向けている。
「私のところへ来てくれ。この苦しみが知りたい!アキラ、お前がいてくれたら……。」
擦り寄るように来るエリスにアキラは後ずさりし銃を抜いた。
「悪いがお前に付き合う時間はない。」
「何故だ!紅月カレンにお前は何を求める!!あの女に何があるのだ!?」
エリスの悲痛のような叫びに一瞬戸惑ったアキラであったがその時向う岸のカレンが乗っている船のエンジンの音が聞こえ2人は音があったほうを向いた。
「カレン!!」
アキラはエリスがいるのを忘れ背を向け走っていった。
「くっ!? アキラ!!」
エリスは動きを止めようとアキラの足下を狙い銃を撃った。
銃弾がアキラの足下近くの雪に当たりアキラは懐から銃を取り出し応戦する。
「ん?チェンスクのほうで何かあったみたいだ。」
ようやく船が発進し外の様子を見ていたト部はチェンスクの港で監視を行っていた陽炎の部隊が急に慌しく動いている姿を目撃した。
「さっき銃声のような音も……?」
カレンも不安げに外の様子を伺っていた。
「ここが巻き込まれることはないだろうが様子を見ておこう。」
エリスから逃げるアキラであったがカレンが乗っている船を確認しながら追っていた。このまま川岸を進めばどこか船と接触できるポイントがあるはずだと思ったが背後からエリスが飛び掛り馬乗りの形でアキラを抑えた。
「アキラ、何故紅月カレンを!?」
「………そこをどけ。」
「お前は愛しているのか彼女を!?」
「…………そこをどけ!!」
無理矢理体を起こしアキラはエリスに目もくれず船を追い走っていった。
銃声の音で陽炎の部隊もアキラを見つけ装甲車部隊はエリスの横を通り過ぎアキラを追っていった。
「アキラ…………。」
走り去る背中をエリスはただ呆然と見つめていた。
(アキラ、お前は私と同じ戦う兵士だ。それなのに私とどこか違う。何だ……何だこの気持ちは。)
エリスは胸が締め付けられる苦しい思いがした。
「ハバロフスク基地からの命令であなたを回収に来ました。」
兵士の1人が近づいた。
「………わかった。」
はぁはぁはぁはぁ。
アキラはカレンが乗る船を追い猛然と走っていった。背後から敵の追跡があるがまったく気にも留めなかった。
船のデッキからはこの騒動で人がごった返していた。その中にアキラはある人物に目が留まった。
髪が少しハネた赤い髪、後姿から僅かに顔を覗かせアキラにはあれが誰なのかおもわず大きな声で叫んだ。
「カレン!!」
その時、背後から敵の銃弾が足下を掠り転倒してしまった。
「えっ!?」
銃声に振り返ったカレンであったが銃撃により発生した雪煙が見えるだけであった。
「どうした?」
一緒にいたC.C.は声をかけた。
「いや、別に………。」
「……心配するな。私達を狙ったわけじゃない。」
「うん………。」
誰かが私を呼んだ。
はっきりと聞こえなかったが自分の名前を呼んだ声をした。気のせいなのか、それとも……だがその声はいつも隣にいたあの人の声だったような気がしたとカレンは雪煙を見つめていた。
「くっ…。」
離れていく船をアキラは唇を噛み、立ち上がり後を追おうとしたが目の前を1機のサザーランドが立ち塞がりライフルを構えた。
どこか逃げられるところはないか周りを探った時雑木林を掻き分けこちらへ近づく1台の大型トレーラーが姿を現した。
トレーラーはサザーランドに体当たりをし川へと落下させた。
「おうアキラ無事か!!」
ライフルを構えイゴールとジェノムが出てきて軍に応戦した。
「お前達に迷惑かけたくない。俺の事は放っておいてくれ。」
「馬鹿野郎!!もうかけてるんだよ!!さっさととんずらするぞ!」
アキラはトレーラーを横切り船の後を追おうとした。坂口が慌てて運転席から出てアキラを引き止めた。
「アキラ、もういいだろ!あの子が生きてるってことがわかったんだ!またチャンスはある!!」
坂口からそう言われアキラは口惜しい表情で遠く離れた船を睨みトレーラーに乗り込み急ぎこの場から離脱した。
-旧サドナ王国現エリア15 首都ヤールン 総督府-
「中華連邦政府が?」
エリア15の総督となったデニスは部下からの報告を聞いていた。
「今から20分前に中華連邦の領内近くで陽炎が不審者を目撃したと戦闘を行い、また中華連邦領内に不法侵入しようとした陽炎の兵士1人いたと抗議の書面をこちらに。」
「ちっ、井ノ本の犬どもが。 亡命者を追跡した時に銃撃戦になったと伝えておけ。それと奴らは誰と戦っていたんだ?」
「はっ、おそらく義兵団から脱走した3人だと思われますが……。」
「まぁいい、これ以上陽炎に暴れまわれても困る。こちらも部隊を投入して脱走兵を捜索させろ。」
軍の追撃を逃れる中アキラは不貞腐れた顔をしていた。そんなアキラを見て坂口が声をかけた。
「まぁアキラそんな顔すんなよ。陽炎があの辺りにいたのを知ってたから助けにきたんだ。お前の気持ちもわかるが仕方なかったんだ。」
「だがお前が女のケツを追いかけるなんてな。人間わかんねぇもんだな。」
イゴールは笑いながら乱暴にアキラの肩を叩いた。
「アキラ、これからの事をついて話したい。……いいか?」
「…………わかったアレク。」
-カレンが生きていた。あいつの姿を見た時胸が躍る衝動に襲われた。再会はできなかったがこれで俺が行くべき道は見えた………-
話は逸れますが日曜17時のガンダムはかなりむせますね(笑)
あの戦車に一目惚れしましたww