コードギアスR2 ~去りゆく影~    作:三戦立ち

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2年遅くなってしまい申し訳ありませんでは最終話です。どうぞ


第48話

シュナイゼルによってさら地となっていたペンドラゴンは更に大きなクレーターが形成されもはや首都だった面影はなくなっていた。

 

あれからどれくらい経ったのか、気がついたカレンは紅蓮の損傷がないか確認するとペンドラゴンにあるワイズマンの拠点であったドーム状の建造物が健在だとわかった。わずかに破損していた箇所は見受けられたが破壊には至ってないようである。

 

あの中にアキラが入って行ったのだと感じたカレンは急ぎ追跡を開始した。

 

 

 

 

 

「あっぶなかったぜ〜。 あと少し遅かったら御陀仏だったところだったぜ」

 

「死なずにすんだけど、どうするんのさこれから?」

 

坂口達を乗せた小型艇はフレイヤに巻き込まれなかったがその衝撃で小型艇が不時着し動けなくなった。

 

「シャーリー大丈夫?」

 

「うん、でも……」

 

先程まで敵味方が入り乱れた戦場が突如全て関係なく消え去ったこの場がシャーリーには不気味に見えた。

 

「あれ?おやっさんあれって……?」

 

千鶴は遠くからこちらへ向かってくる1機のヘリに気づいた。

 

「おっ……?ありゃ報道ヘリじゃねぇか!おぉーーい!!」

 

坂口は見つけられるよう腕を大手に振り大声で叫んだ。千鶴もつづけて腕を大きく振った。

こちらへ気づいたのかゆっくりとこちらへ近づき側へと降り立った。

急ぎ坂口達はヘリへと駆け寄った。

 

「艇が動けなくなったんだ。助かったぜ」

 

「あんたらどこのもんだ?女連れて……」

 

記者達も坂口達の身なりを見て軍の者とは思えなかった。

 

「シャーリー……??」

 

誰かから自分の名を呼ばれシャーリーはヘリの奥から降りてきた人物に気づいた。

 

「シャーリー……!」

 

「えっ……、会長??」

 

驚愕の表情でシャーリーを見つめるミレイは震える手で彼女の肩を掴んだ。

 

「本物よね…………!シャーリー…!!」

 

ミレイはシャーリーを強く抱きしめた。

 

「い、痛いです会長」

 

「バカ!もう会長じゃないわよ!今までどこに……」

 

「え……っと、それは……」

 

突如、近くで大きな爆撃音が聞こえ辺りは騒然とする。シュナイゼルの軍と黒の騎士団、ルルーシュ3軍の生き残りがまたも戦いを再開させていった。

 

「おっおい!こっちは軍から逃げてきたんだよ!乗せてくれよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーム内ではアキラとスゼクで一騎打ちを繰り広げていた。エナジーウイングの刃がティルヴィングのライフルを切断させるとMVSで斬りかかるが寸前で回避される。追撃しようとするがスザクの脇腹に激痛が走る。

 

「ぐっ!?」

 

フレイヤの衝撃によりアキラによって撃たれた傷口が再び開きスーツが血で滲み出してくる。

動きが止まったランスロットにアキラはティルヴィングの蛇腹剣を展開させるとランスロットの右腕と後方のエナジーウイングの片翼を切断させた。

 

「スザク…!」

 

アキラ止めを刺そうと蛇腹剣を振り下ろすが横から銃撃が襲いかかりアキラは距離をとる。

 

「カレン…!」

 

「アキラ、スザク!! これ以上行かせない!!」

 

「カレン! 僕の邪魔をするな!!」

 

カレンは紅蓮の体勢を整えると壱式衝撃砲を展開し2機に攻撃すると両機は散開するとアキラの蛇腹剣が紅蓮の左腕に巻きつこうとするがランスロットが片翼のエナジーウイングで攻撃する。衝撃砲の銃身を撃たれ使えなくなり銃身を折り畳む。全方位を注視ししながら戦闘を行う。それも3人共エース級。 少しでも隙を見せると一瞬でやられてしまう。

 

「ハァハァ…アキラ、スザク。 2人相手だとこの紅蓮だとキツイな」

 

 

攻撃へと持ちこもうとティルヴィングを動かそうとするアキラであったが屋内が突如揺れだした.

ただの地震ではない。まるでここの要塞そのものが動いてるようにも見える。

 

「ワイズマン!?」

 

 

 

 

 

 

「おい、何だアレ!?」

 

坂口はヘリからある物体を発見する。それは地中深く潜りフレイヤにてその姿を露にしたワイズマンの要塞が動きだし地表をから抜き出しその球体が宙へと浮いたのだ。

 

「カレン!! 今何処にいるの!? カレン!」

 

シャーリーは無線から呼びかけるが応答がない。

 

「今、あの中に…?」

 

ヘリが大きく揺れて機体が大きく傾いた。 近くでKMFが堕とされたようだ。

 

「もうこれ以上は危険だ!早くここから…」

 

すると撃墜されたKMFがこちらへ向かってくるのがわかった。

 

「うわぁ!!」

 

皆が巻き込まれると思ったがその機体は真っ二つに切り裂かれ爆発を起こしヘリは難を逃れた。

 

「そこのヘリ、記者達のものだな。ここは危険だ私が誘導するからついてくるんだ!」

 

トリスタンのジノがそう呼びかける。

 

「今は従ったほうがいいな」

 

記者達は素直に従うとトリスタンについていく。 誘導された場所にはヘリが1機ありその傍には誰が佇んでいるのが見えた。

 

「あれは…!?」

 

ミレイはそこで茫然と膝をついて戦場を見ているナナリーを見つける。

 

 

 

 

「あぁ……。こんな………。」

 

戦場が混乱する中今だに戦闘をやめない両軍。ルルーシュ、アキラは消息不明。シュナイゼルもナナリー自身が手にかけた今倒すべき敵が此処にいない中何故彼等は戦うのか? ただ目の前に敵がいるから? 最早此処は只の殺し合いの場と化してしまっている。

 

「ナナリー様……」

 

咲世子は彼女にどう言葉をかければいいか思案しているとヘリから降り立つミレイ、シャーリーの姿に気づいた。

 

「ナナリー…?」

 

「その声? ミレイさんですか?」

 

「ナナちゃん、あなた目が!?」

 

ミレイ、シャーリーはナナリーを顔を見て彼女の目が開いているのに気づいた。

そしてナナリーは自身に注がれる2人の視線に思わず目を背ける。

 

「私が……私のせいでこんなことに……」

 

「…………」

 

肩を落とすナナリーに2人はどう言葉をかければいいか迷う。

 

 

「ジェレミア卿!、アーニャ!」

 

「ジノか…。ご覧の通りだ。我々の旗艦も沈んだ。もう勝ち負けもない、互いの指導者を失い混沌としている」

 

「これが……貴方達が望んだ結末か!?」

 

「まさか。皇帝陛下はダモクレスを手中に収めるつもりだった。しかし陛下の思惑から外れこのような結果となった。それが流崎アキラの手によるものなのかわからないが何かの弾みで環境が変わった。それは事実だ」

 

「そうやって他人に責任を押し付けるのかあなたは!!」

 

詰め寄るジノにコーネリアが肩を掴んで止める。

 

「もういいジノ」

 

「しかし…!」

 

「ルルーシュや流崎アキラ異端者。結果はどうあれ今繰り広げられている惨劇これが現実だ。私たちはまた悲劇を繰り返した…」

 

既に勝ちも負けもない戦場でただひたすら行われている殺し合いに千鶴は涙を浮かべながら声を荒げた。

 

「もういい加減にして!!何がブリタニアだ!日本だ!何が異端者だっ!! あんたらが色々御託を並べて戦ってカッコ付けてるけどさ!結局一番貧乏くじ引くのはいつもあたしら下っ端の人間だ! あんたらこんなこといつまで繰り返すの!!えぇ!!言ってみなよ!!」

 

「千鶴……」

 

この中でルルーシュやアキラらの事情をよく知らない千鶴であったがそれ故に戦争に巻き込まれる当事者としての気持ちが赤裸々に伝わりシャーリーには胸に響いた。

 

千鶴の言葉を聞き俯いたナナリーは近くにあった鋭利な破片を見つけると自分の手首に押し当てようとする。それに気づいたシャーリーが慌てて駆け寄る。

 

「離してください!!」

 

「ダメだよ!!ナナちゃん!やめて!!」

 

「お願いします!!私の…私のせいで!!」

 

自ら死を選ぼうとするナナリーにミレイが近寄りナナリーを頬を平手打ちで強く叩いた。

 

「ミレイ…さん……」

 

「そうよ!!これも全てあなたやルルーシュ、ライ…アキラくんのせいでこんな事になったのよ!!」

 

ミレイからの糾弾にナナリーの瞳から涙が溢れてきた。

 

「でも今貴方がしないといけないことは死ぬ事なの!?違うでしょ!!」

 

ミレイはナナリーの肩を強く掴み顔を上げさせる。

 

「答えなさい!!今あなたがやるべき事は何かっ!!」

 

「ミレイさん……」

 

ミレイの強い眼差しにナナリーは視線を落とすことができなかった。これを見てコーネリアが口を開いた。

 

「ナナリー、彼女の言う通りだ。今することは死を選ぶことではない」

 

「………」

 

「お前や私にはこの戦争を起こした責任がある。それを途中で投げ出すことは許されない」

 

「責任………。今すべきこと……」

 

瞳を閉じたナナリーはゆっくりと深呼吸をした。今落ちついて何を優先にするのか自分に言い聞かせた。そして開いた瞳には強い意志が感じられた。

 

「この戦場を鎮静しなければいけません。……コーネリアお姉様、力を貸して下さい」

 

「……わかった。だが私だけでは難しい。ジェレミア、手を貸してくれるか?」

 

「いいでしょう。我が軍もほぼ全滅しました。これ以上貴方がたとも戦うのは無理です。今は事態の収束が最優先です」

 

上空からは黒の騎士団の旗艦斑鳩が現れた。損傷箇所が見受けられるが航行に支障はないようであった。

 

「前線にいた部隊はほぼ全滅……生き残った者は事態を飲み込めずただ目の前の敵と闘う……。これではただの殺し合いだ……」

 

混沌とした戦場を目にし藤堂は肩を落とす。

 

「藤堂さん、星刻が神楽耶様ら各首脳を連れて戻ってきました」

 

千葉の報告を受け玉城の肩をかりて星刻が現れた。

 

「星刻…」

 

「藤堂、戦局は……」

 

「見ての通りだ。もう勝ち負けもない……。負け戦より始末が悪い。だがもう終わりだ」

 

「いや、まだアキラがいる」

 

後ろからジェロムの巨体が現れる。

 

「彼は?」

 

「敵鑑の中で出会った。敵じゃない」

 

「……アキラが…奴がワイズマンと決着をつける……。それで世界が変わる……」

 

「流崎アキラ……」

 

すると監禁されていた扇が現れ今の惨状に項垂れていた。

 

「あぁ…こんな……」

 

藤堂が扇に歩み寄る。

 

「ここでの戦いは終わった。今行われているのは戦いではない。殺し合いだ!」

 

「………」

 

「今我々がすべきことは何か…!」

 

「今…すべきこと……?」

 

「最早、ワイズマンなどに拘ってる時ではない!!お前でもわかるはずだ!!」

 

「俺は……」

 

扇は戦場を横目で見る。藤堂の問い掛けに段々と頭が冷静を取り戻していく。

 

「この混乱を……止める」

 

その言葉に藤堂は深く頷く。

 

「藤堂、私に任せてください。あなたはKMFで事態の収束を」

 

「神楽耶様……承知しました」

 

 

 

黒の騎士団が事態の収束の手引きをしているのを見て坂口らは安堵の色を浮かべる。

 

ジークフリードに乗り込もうとするジェレミアにシャーリーが彼に歩み寄る。

 

「あの……! ルル…いや、ルルーシュの事で聞きたいことがあって…」

 

「君は…アッシュフォード学園の……」

 

「はい……。ルルが本当の気持ちが知りたくて」

 

「本当の気持ち…?」

 

「はい。これが本当に望んでいたことなのかって思って…」

 

「何故そう思うのか?」

 

「世界中を敵にしてまで……本当は別の目的があるんじゃないですか!? こんなの……一番ルルが嫌ってたことなんです!!」

 

黙って聞いていたジェレミアの端末から連絡が入り一通り話終えると口を開いた。

 

「君のその質問の答えがもうすぐわかる」

 

「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カレンは紅蓮の右腕の鉤爪を折り曲げ輻射波動と左腕の三式統合兵装と連結させると三式超電磁砲を撃つ構えをとる。

この紅蓮の動作を初めて見る2人は警戒する中カレンは2機に向けて撃つのではなく足元へと撃った。爆発を起こし地表はえぐられ地上への風穴ができた。

アキラは直撃することなく難を逃れるが爆煙から迫り来る紅蓮に対し反応が遅れた。

 

「アキラッ!!」

 

右腕の鉤爪がティルヴィングの右腕を掴むと力強く引き抜いた。スザクのランスロットも続けとばかりにMVSを振り下ろすが紅蓮の左腕のブレイズルミナスがそれを防いだ。

だが三式超電磁砲を撃った直後でパワーダウンした左腕からは警戒音のアラームが鳴り響くと紅蓮の左腕は爆発を起こしランスロットの右手を損壊させた。

 

「さすが カレンだ。2人を同時に……。っく!」

 

脇腹の痛みを抑えながら戦うスザクにルルーシュから連絡がくる。

 

「ルルーシュか、今どこに?」

 

「後で説明する。スザク、アキラは?」

 

「今戦ってる」

 

「わかった。スザク……よく聞いてほしい」

 

「??」

 

 

 

 

 

ランスロットのMVSを拾ったティルヴィングと残りのMVSで対峙するランスロットそして紅蓮。互いに損傷している。

ランドスピナーで急加速で接近するランスロットにティルヴィングはMVSで応戦しようとするがランスロットは宙へと浮きティルヴィングの背後をとった。アキラはすぐに振り向きMVSを突き出しランスロットは大きく振り翳した。

ランスロットの振り翳したMVSは空を切りティルヴィングのMVSはランスロットの胸部へ深く突き刺さり膝から崩れ落ちた。

 

沈黙したランスロットを見届けるとティルヴィングは紅蓮と対峙する。

 

「カレン……邪魔をするな!」

 

「アキラ…!」

 

カレンは紅蓮の右腕の輻射波動が残り1発と確認すると右腕を展開させティルヴィングへと振りかざす。片腕で止めるティルヴィングであるが紅蓮に押され壁へと激突する。

 

「私は皆んなと……あなたと一緒に……、ただそれだけなのに。ホントにこれがあなたの望んだことなのアキラ!!」

 

「………」

 

輻射波動が展開され熱を帯びるのを見てアキラは腕を横へとずらし輻射波動が壁に誤射し横穴ができティルヴィングの腰の裏に備え付けていたショットガンを持ち紅蓮の腰部へ撃ち左脚が損壊させる。

 

「しまった!!」

 

片脚を失った紅蓮は動けなくなりこれ以上の追撃はないと判断したアキラ紅蓮を放置しそのまま先へと進もうとする。

 

「くっ…アキラ!」

 

動かそうと操縦桿を動かすカレンであったがティルヴィングの背後を沈黙したはずのランスロットがMVSを構えていた。

 

「アキラ!!」

 

背後の気配に気づきアキラは振り向くとMVSを振りかざすランスロットに応戦しようとするがその2機の間にカレンの紅蓮が割って入りMVSが紅蓮のコックピットを貫通した。

 

「カレン!?」

 

「カレン、キミは!?」

 

沈黙したと思われた紅蓮であったが右腕がランスロットを掴んだ。

 

「はっはは……、体が勝手に動いちゃった……」

 

紅蓮は先程できた風穴へランスロットを巻き込んで落下していった。

 

「……………」

 

落ちていく紅蓮を見届けるとティルヴィングはゆっくりと歩みを進んでいく。

 

「どこだ、どこにいるワイズマン……」

 

『アキラ……私はそばにいる』

 

「ワイズマン!? どこだ!?」

 

『もうお前を止める者は誰もいない…。さぁこのまま進めるのだ。お前はもう既に世界を手にする手前にいる』

 

それを聞きアキラは奥へと進んでいく。数百年前の遺跡とは思えない構造の要塞。これが世界を裏から支配していた異端者、ワイズマンの力をヒシヒシと感じながらアキラは要塞の中枢へと辿りついた。

ドーム状の広い空洞の中心へと来たアキラはティルヴィングから降りるとワイズマンに問いかけた。

 

 

「来たぞ、ワイズマン。さぁあんたの姿を見せてくれ」

 

『アキラ…よくぞここまできた……我が後継者』

 

アキラの周りが動き出し見渡すと溶液のカプセルに入った脳髄が現れその数は百近くある。

 

「これがあんた達の正体なのか?」

 

『我らの肉体は既に滅んでいる。 だが我らが世界のシステムそのものと溶け込むことで支配してきたことで長く生きながらえた』

 

「世界のシステムそのものに?」

 

『そう…人間は互いを争うことで人類の進化、発達してきた。シャルル達によって引き起こされた戦争もだ』

 

「それもあんた達が裏で糸を引いていたのか?」

 

「そうだ……。私達はこの生命維持装置で数百年、この世界を支配してきた。この力がお前のモノとなる」

 

何本もあるケーブルに繋がれた装置がアキラの前へ現れる。

 

「これで今まで生き永らえてきた……」

 

『さぁ…アキラ我らのもとへ。世界はお前のモノだ』

 

「あぁ…………っ!!」

 

アキラは懐から小さなスイッチを取り押すとティルヴィングのスラッシュハーケンが射出されワイズマンの生命維持装置へ直撃した。

 

『アキラ何を!?』

 

装置が破壊されたことでカプセルに入っている脳髄の1つが機能停止した。

 

『どうしたというのだアキラ!?』

 

「俺はそう命令された。……ゼロから」

 

『何っ!?』

 

よく見るとアキラの瞳は赤くなっておりそれに気づいたワイズマンは驚愕する。

 

『ばっ馬鹿な!? アキラ、貴様ギアスに!? そんなハズは!?』

 

 

壁が破壊され姿を現したのはルルーシュの蜃気楼であった。コックピットから姿を晒したルルーシュ勝ち誇ったかのように高笑う。

 

「ふっはははは!! ワイズマン、俺の勝ちだな」

 

「ルルーシュ、貴様死んだはずでは!?」

 

「シュナイゼルのお陰でお前の目を一瞬潰すことができた。俺はダモクレスの自爆の直後、この一帯にジャミング発生装置を稼働させたのだ。その隙にこの要塞に侵入することができた」

 

「まさか、その間!?」

 

「そうだ。俺はギアスでアキラを支配下に置いた」

 

「そんな…そんなはずは…?」

 

「そうだ。ギアスが効かないはずのアキラが俺に操られている。それをどういう意味か、ワイズマンわかるだろ?」

 

「バッバカな!?」

 

狼狽えるワイズマンにルルーシュは

 

「そうだ。アキラはお前の後継者、異端者でもなかったのだ! 今のアキラが証明している」

 

アキラは黙ったまま遠隔操作でティルヴィングのスラッシュハーケンを射出しワイズマン達、脳髄を破壊していった。

 

「ヤ…ヤメロ、アキラ…!オマエは……私の後継者…ルルーシュなどに…。」

 

「ワイズマン、この世界の支配者はお前ではない。この俺だ!」

 

蜃気楼から相転移砲が発射され脳髄が破壊されていった。

 

「ヤ……メロ。アキラ……止めるのだ…。オマエは私の……。」

 

最後に残った脳髄を見つけルルーシュはアキラに拳銃を渡すとその銃口を脳髄に向ける。

 

「アキ…ラ……」

 

アキラは躊躇なく引金を引き脳髄が辺り一面に飛び散っていった。

 

「ヤ……メ…ロ…………。 アキ…………」

 

ワイズマンの声が止み静寂に包まれた中ルルーシュが口を開いた。

 

「終わったな……」

 

「あぁ……」

 

銃を降ろしたアキラと視線を合わせるが次第に顔色が悪くなりルルーシュの目から血が滴り落ち口からも吐血しその場で膝をついた。 それを見て蜃気楼に搭乗していたC.C.が駆け寄ってよくる。

 

「ギアスが通じない異端者に使ったんだ。」

 

「ハァ、ハァ、ハァ…。 ふふっ……、ワイズマンは失望しただろう。後継者のアキラが俺の手駒になったと……」

 

アキラの足元には飛び散った脳髄の破片が転がっている。

 

「こんなもの神でも何でもない……。ただのマシンだ!」

 

アキラは破片を踏み潰した。

 

 

ー数十分前ー

 

ダモクレス消滅直後、アキラは要塞の中を進む途中ルルーシュの蜃気楼が前方を立ち塞がった。撃破しようとライフルを向けるがルルーシュがその身を晒しているのを見て引き金を引く手を止める。

 

「………どういうつもりだ?」

 

「取り引きをしないかアキラ」

 

「……………」

 

「今、この一帯にジャミングをかけてある。時間がない。お前に有益なものでもある」

 

「………」

 

アキラはティルヴィングの動きを止めコックピットのハッチを開いた。

 

「妙な動きをすれば撃つ」

 

「構わない。俺はワイズマンを討つ。それはお前も同じ……そうだろ」

 

「………。何故そう言い切れる?」

 

「お前はそういう人間だからだ。誰からの支配を拒み、それを押し付けようとする者に対して抵抗し、お前は他者を支配するのを拒む。そんなお前がワイズマンの後継者になるとでも?だがワイズマンのもとへ行けるのは自分だけだ。だから奴の指示に従ってここまで来たそうだろ?」

 

「俺がワイズマンの力に魅入られていないと言い切れない」

 

「いや、お前は力など必要ないと感じている。お前が欲しているのは………。」

 

「………」

 

アキラはレバーから手を離す。

 

「……俺にどうしろと?」

 

「もうすぐ、待ってる人間が来る」

 

そう言うと背後からヨロヨロとC.C.のランスロットが近づいてきた。

 

「派手にやられたな」

 

「誰かに殺されかけたからな」

 

C.C.は苦笑しアキラを見つめる。 

 

「生きてるだけで幸運さ」

 

「ふっ、アキラ単刀直入に言う。俺のギアスにかかれ」

 

「っ!?」

 

この申し出にアキラは怪訝な表情をしC.C.は神妙な面持ちで視線を落とす。

 

「………どういう意味だ?」

 

「俺がお前にワイズマンのもとへ行き、ワイズマンを討つ。そう命令する」

 

「…………」

 

「理由はワイズマンはお前を後継者として選んだ。ここへはそれ以外の人間は排除される。その中で唯一ワイズマンと接触が許されるのはお前だ。それに……」

 

「それに?」

 

「見てみたいんだ。後継者であるはずのお前がギアスにかかっている姿を見て狼狽えるワイズマンを」

 

ほくそ笑むルルーシュを見てアキラは嫌悪感を感じた。

 

「相変わらず嫌な奴だお前は…」

 

「だがルルーシュ、奴にはギアスは効かない。効いたとしてお前の体がどうなるかわからない。ロロはこの男のせいで寿命が縮んだのだから」

 

「覚悟はしてるさ。既にゼロレクイエムは発動している。それが今になっただけだ」

 

「ゼロレクイエム……ふっ」

 

「笑うか…」

 

「あぁ…茶番だな。だが……付き合ってやる」

 

「………ありがとう。  ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…があぁぁぁ!!」

 

胸が締めつけるような苦痛にルルーシュは体を丸めて胸を抑える。

 

「C.C.、俺は……」

 

「本来、ギアスが通じないアキラにかけたんだ。お前の場合体に直接影響が及ぼしている。もう長くは……」

 

アキラは確かにギアスにかかったのだがその直後体が硬直したのみで意識が支配されることはなかった。その命令が常にアキラに命じていたのだがそれを跳ね除け自分の意思で此処までたどり着いたのであった。その反発の影響がルルーシュの体にダイレクトに伝わったのだ。

「ルルーシュ……」

 

声の主は出血している脇腹を抑えながらスザクが現れた。

 

「少し…遅れた……」

 

「いや…まだ大丈夫だ。ふっ…お互い不細工な姿だ」

 

「誰かのおかげでね、ルルーシュ、さっきの無茶振りには困ったよ。アキラに上手く負けてくれって。勝つより難しいよ」

 

戦闘の最中に入ったルルーシュからの通信のやりとりはアキラに撃墜されるようにとの連絡であった。

 

「スザク、最後のはワザとか?」

 

「まさか、君相手にそんな余裕なんてなかった。この体でなかったらもっと上手く誤魔化せた」

 

「だろうな。万全なお前であったら俺は勝てなかったかもしれない」

 

腹部に銃撃を受け重傷でありながらアキラ、カレンの2人を同時に相手にして戦ったスザクはやはりすごいと心の中で呟くルルーシュであった。

 

「スザク、カレンは?」

 

あの直後アキラはすぐにカレンを救出に向かいたがったがギアスの影響はなかったのだがワイズマンと接触するのが優先であり、またスザクがいることで助かっているはずだと

 

「彼女は無事だ。だが……」

 

すると奥から足を引きずりながらこちらへ近づく人影が見えた何者かと警戒するアキラだったが…。

 

「カレン!?」

 

彼女の姿を見て一目散に駆け寄るアキラであったが彼女の姿を見て愕然とした。

 

「カレン! お前!?」

 

カレンの左脚は膝から下が無くなっており戦闘服から血がポタポタと滴り落ちていた。

 

「墜落する紅蓮から助けることはできたけど……すまないアキラ、僕のせいだ」

 

アキラの姿を見てカレンは彼の体へと崩れ落ちるようになりアキラもそんな彼女を優しく受け止める。

 

「カレン、応急処置は済んだけど無茶をしたら…」

 

「スザク!! 助けてくれたことに感謝してるけどあんたの指図は受けない!」

 

「カレン……」

 

「馬鹿だよアキラも……ルルーシュも…」

 

「すまない…ワイズマンを騙すために……。だがお前がこんなになるまで……」

 

「私は構わない。こうやってまたあなたに会えたから……」

 

「…………」

 

今のカレンの体を見てアキラはやり切れない想いでいっぱいであった。

 

「何故だっ!?」

 

この光景に絶叫をあげる1人の男。井ノ本は脳髄が撒き散られたワイズマン達を見て血相を変える。

 

「流崎アキラ!!、何故…何故神になれる権利を捨てて……。恐怖したのか??支配することのあまりの大きな重さにお前は押し潰されたのかルルーシュと共謀して……」

 

「井ノ本……」

 

「世界が…いや、人類史が大きく変わるこの瞬間を……。シャルルやギアスでも不可能だった世界の変革をお前は潰したのだ!!」

 

井ノ本は懐から拳銃を取り出しアキラに向けて発砲した。銃弾はアキラの頬を掠め僅かに頬から血が滴り落ちる。

 

「アキラ!!」

 

カレンはアキラにショットガンを渡す。受け取ったアキラは井ノ本に向け発泡し井ノ本は銃弾によって倒れた。

 

「…っぐ、アキラ」

 

アキラは銃口を向けたまま井ノ本へと近づく。

 

「お前の……本当の目的は……?」

 

井ノ本はその言葉を最後に事切れた。

 

「この男もシュナイゼルと同じだった……。アキラ、これで……」

 

「陽炎と決着をつけた…………」

 

カレンとアキラ井ノ本の遺体を見つめ彼との因縁に終止符をうつことができたことを実感した。

 

「さぁゼロレクイエムのフィナーレだ。」

 

「ルルーシュ……」

 

「予定通り、ハァハァ…世界の憎しみは今この俺に集まっている。後は俺が異端者の象徴と共に消えることで、この憎しみの連鎖を断ち切るだけだ。黒の騎士団には……ゼロという伝説が残っている。これで世界は軍事力ではなく話し合いという一つのテーブルに着くことができる。……っぐ、明日を迎えることができる」

 

「……馬鹿」

 

アキラの腕に抱えられたカレンはそう呟いた。

 

「あんたの命一つで世界が変えられたらとっくの昔に誰かが変えていた。馬鹿よ…シャーリーが……残される人達のことを考えなよ……!」

 

「カレン……」

 

「でも……それでもあんた達はここまでやってきた。私もお母さんを…学園の皆を悲しませるようなことをしてきた……でも私は銃を降ろすことができなかった。ううん、これが今私がやらなければいけない一番の事…。そう信じてここまできた……。そうだよね……あんた達も」

 

「………」

 

「………ルルーシュ」

 

スザクはルルーシュに目を合し合図を送ると足早にこの場を後にする。

スザクを見送ったカレンであったが今まで我慢してきた足の激痛がはしりカレンの表情が歪む。

 

「カレン!!」

 

アキラ優しく抱きしめると彼女の足に腕を回すとそのまま起き上がった。

 

「お前の最期を見届ける気はない。後は勝手にしろ」

 

ルルーシュに背を向けこの場を後にするアキラにルルーシュは息が乱れるのを耐えながら最後に一言送ろうとする。

 

「アキラ……今まで共に戦ってくれたことに感謝する…………シャーリーを助けてくれたこと……本当にありがとう」

 

「…………」

 

これに振り返ることなくアキラはこのまま立ち去っていった。

 

「アキラ……」

 

抱えられたカレンの表情は暗いままであった。痛みによるものではない。世界の……アキラ自身の行く末に対してカレンは不安を憶えていた。

 

「今は何も考えるな。今は休め……今だけは」

 

 

 

「世界よ!今、私は裏から世界を牛耳っていたワイズマンの本拠地にいる。そしてこの要塞もワイズマンの死によって私のものとなった!」

 

全世界へ中継されているルルーシュの演説を他所にアキラはカレンを抱き抱えながら廊下を歩いていく。その2人の前にマスクにマントの格好をした人物、ゼロが姿を現した。

 

「…………」

「…………」

 

近づいていくアキラとゼロ、すれ違いざまにゼロが一言呟いた。

 

「もう…二度と会うことはない……。さよならだ、流崎アキラ……」

「………」

最期に一言ゼロではなく枢木スザクとして言葉を交わしたゼロは懐から長身の剣を取り出しルルーシュのもとへと向かう。

 

 

「ワイズマンの後継者であった流崎アキラも我らの手によって葬られた。黒の騎士団も私に抵抗する力は残っていない。我が覇道を阻む者はもはや存在しない。そう、今日この日、この瞬間を持って世界は我が手に落ちた。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。世界は、我に従え‼︎」

 

次の瞬間、要塞から大きな爆発が起こり要塞が大きく揺れた。C.C.によって仕掛けられた時限爆弾が作動したのであった。崩れゆく要塞を2人で歩いていく。

 

ーもう戦争も異端者もギアスも関係ない……誰にも縛られず静かな場所へと……ー




最後にエピローグがあります。近日投稿します

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