それではどうぞ
―ブリタニア本国 首都ペンドラゴン―
ルルーシュは居間でC.C.と2人でいた。
「ルルーシュ、本当に大丈夫なのか?私と数人のSPだけで」
「こちらはお願いしに行く立場だからな。民主主義に参加させて欲しいって」
先日、ルルーシュはメディアを通してブリタニア帝国は超合衆国への参加を表明した。そしてその交渉の会談を翌日に控えていた。
「だが中立地帯とはいえ交渉の場を日本。会場も奴らに任せるのは危険じゃないのか」
「奴等は俺のことを信用していない。これぐらいのことをしなければ会談の承諾もしないだろ」
居間の電話が鳴りルルーシュが受け取る。
「私だ、ジェレミアか……。そうか、行方を眩ましたか………。いや、気にするな。会談は予定通り行う。お前は引き続きアーニャと捜索を続行するんだ」
「シュナイゼルか……」
「あぁ、カンボジアのトロモ機関がブリタニアから離反したと聞いたときシュナイゼルが手を引いていた。その後の行動を予測してジェレミアに手を打たせたが……。そう、うまくいかないか………」
「だが奴だけじゃない……」
「あぁ。
―アラスカ ―
一面が銀世界に覆われているアラスカ、この日は天候が良好で時刻は夜中であるが太陽が沈んでいなかった。千鶴はホテルの窓から顔を出し空を見上げる。
「そうか白夜だっけ……」
テレビのニュースを見て天候を確認しているとドアのノックの音が聞こえ千鶴はドアののぞき穴から覘くとカレン達の姿を見ると鍵を開ける。
「みんなおかえり。寒かったでしょ。はい、どうぞ」
千鶴は用意しておいたスープをカレン達に渡した。
「ありがとう千鶴」
カレンは早速、口へと運ぶと先程まで凍えていた身体に染みる。
「それでおやっさん、どうだった?」
「あぁ、色々調べてわかったこともあった。シャーリーがいてくれたおかげだ」
ブリタニア本国に日本人である坂口とカレンがいるとなるといくら本国から離れた辺境のアラスカであろうと軍が動く恐れがある。
「シャーリーを旅行者に見立てて俺らを使用人にしてうまく誤魔化せたな」
「それでおやっさん、アキラのこと何かわかった?」
坂口は飲んでいたスープを飲み干しふぅっと息を吐く。
「あぁ、2、3日前日本人らしき奴が別の町にいたらしいんだ。何の目的で来たのかわからなかったが本国で日本人がまずいないからな。アキラの可能性が高い」
「それ以外は?」
カレンは地図を広げてチェックの付いてある地点を見せる。ここから20km離れた場所でよく見ると山間部にあたる場所で車両、人の出入りがないような場所であった。
「ルルーシュは原住民が隠れ住んでいる場所を突き止めて一斉に摘発している。表向きはインディアンの摘発らしいけど軍は村から何か押収してたみたいなの」
「えっ?インディアンを何で今更?」
「わからない。でもルルーシュが目的なしでやるとは思えない。千鶴、私は明日軍がまだ軍が巡回していないこの村へ行こうと思うの」
「あまり時間がねぇ。いつ軍がそこに目をつけるかわかんねぇ。それにここも旅行者だとか誤魔化してるが余所者が2、3日ウロウロしてたら怪しく思われてもおかしくないさ。」
「坂口さん、なら隠してあるトレーラーも……」
シャーリーが言うトレーラーとはここの街から数キロ離れた場所へ隠してある紅蓮を収納しているトレーラーのことである。
「あぁ、トレーラーでここへ行く。そこの村はな……」
坂口が話す中シャーリーは部屋のテレビのニュースを不安げな表情で見つめていた。彼女の様子に気づいたカレンもテレビを見るとでルルーシュが近く超合衆国と会談をするとの報道をしていた。
「場所は日本…!? あいつ、何考えてるつもり」
「ルル……」
カレン達がアラスカにてアキラの痕跡を探っていた頃アキラはブリタニア領のカナダ、バングーバーの付近へといた。
「ジェノム、お前達の一族はアラスカにいるのじゃなかったのか?」
「ほとんどそうだ。だが少人数だが政府の目を盗んで隠れ住んでいる連中もいる。そこにいる長老が100歳を超えてるがお前の言った異端者、そして謎の遺跡。その長老なら何か知っているはずだ」
「そうか……だがいつまでここを登るんだ?」
今、アキラ達はある山へ登山しているが岩場の上を歩き続けて数時間経っていた。
「もうすぐだ。我慢しろ。政府から見つからないために彼らはここへ移り住み数十年外部からの繋がりを断っている」
アキラは一息をつき自分達が登った道を振り返る。確かに登山中誰ともすれ違っていなかった。
カレン達が辿り着いた村は住民や軍の人間の人影もなく不気味な静けさを漂わせていた。10数年前、一族全員で本国から脱出しため現在廃村となっていた。カレンと坂口は物陰に隠れて様子を伺っていた。
「ここの村には人一人住んでねぇはずだ」
「軍の連中もまだ手つけてないみたい」
「こんな山の中だ。見つからないはずだ。だがのんびりはできねぇぞ」
カレン達は遺跡の入り口前へと入っていく。
遺跡の中は暗く前方が見えず坂口が懐からライトを取り出し光を灯し奥へと進んでいく。
カレンは銃を構え警戒しながら進んでいくと広い空間へと辿り着いた。
ここに何かあると思われたが。
「何これ………?」
カレンの眼前に現れたのは神根島で交戦したレグジオネータの残骸が瓦礫の山となっていた。
「こりゃあ…KMFか?」
坂口がレグジオネータの残骸の上を歩き見渡す。
「あのKMFがこんなに……」
遺跡から数キロ離れた場所に隠れてシャーリーと千鶴がトレーラーの中で待機していた。
「そういえば新しい皇帝ってシャーリーのクラスメートだった人でしょ?」
「えっ!?あぁ…ルルね」
千鶴はシャーリーを見てニタッと笑う。
「へぇ~、ルルって呼んでたんだ。もしかして付き合ってたの?」
シャーリーは苦笑いを浮かべる。
「そこまでは……でも、好きだったよ。ううん、今でも好き」
「へぇ~、会いたい?」
その問いにシャーリーの表情が曇る。
「会いたい……。今何をしようとしてるのか。でも無理だよね……多分ルルは会おうとしないよ」
「どうして?」
シャーリーはニコッと頬を緩ませる。
「そういう人だからルルは」
「え~、会わないとわかんないよ。それってシャーリーの臆病なだけじゃないの?」
「ふふっ、そうかも」
「そうだって。じゃないと……」
次の瞬間、眩い光が2人を覆い突然のことで目を細め何が起こったのか戸惑った。
「なっ何!? おやっさん!?」
「違う!!上から!?」
上空から数機のヘリが車両を囲んでいた。
そして遺跡の中でカレンはあるものを見つける。レグジオネータとは形状のKMFらしき残骸が転がっており1つずつ確認するとそれはエリスが乗っていたヘルハウンドに似ていた。
「ヘルハウンド…?こんなものも……」
「おいカレン!」
坂口はカレンを呼ぶと彼は遺跡の天井ばかりを見ていた。
「俺ら、てっきり遺跡とばかりと思ってたが見ろよ……」
坂口はライトを天井に照らすとそこは遺跡とは程遠いコンクリートと金属の造りの天井となっておりそれ以外にここの遺跡そのものが現代の建物とそう違いがない作りとなっていた。聞いていた100年近く前の遺跡とはまったくそぐわないものであった。
「これが遺跡……?」
「今更だがよ、アキラとんでもない事に巻き込まれてないか……」
「……一旦シャーリー達と合流しよう」
2人は急ぎ遺跡から出ようと足を進める。 坂口は一度携帯で千鶴を連絡を取ろうとするが…。
「ちっ、圏外かよ。この田舎が」
「シャーリー、心配してるかも……っ!?」
出口に差し掛かった時、突如ライトが2人に照らされその場に立ち止まる。
数機のヘリ、そしてサザーランド、KMFがこちらへ向け銃を構えて大型トレーラーから兵士がライフルを構えて降りてきた。
「ブリタニアっ!?」
「カレン、逃げろ!!まだ間に合う!!」
撃たれる前にこの場から離れようとしたが……。
「待って!!」
逃げようとする坂口をカレンを止める。
「あれってまさか……」
兵士達が2人の民間人を連れてカレン達に見せつける。
「シャーリー!!千鶴!?」
そう。捕えられたシャーリーと千鶴が銃口を向けられカレンの前に現れた。
「ごめん、カレン」
「おやじさぁ~ん!!」
2人を見て坂口は舌打ちをする。
「あの2人捕まっちまったか……。おそらく紅蓮も……」
「………」
カレンは黙って懐から銃を取り出し放り投げ両手を上げる。
「…仕方ねぇか」
坂口も両手を上げ降伏の意思を出す。降伏の意思を示した2人をサザーランドが囲んだが更に奥からKMFが現れたが……。
「何あのKMF?」
カレンの前に現れたKMFは彼女が初めて見るKMFであった。10数機はあるそのKMFは余計な装飾はなくシルバーを基調としたカラーリング、右腕にはロングライフル。頭部はドーム状で2つのメインカメラが赤く怪しく光っていた。
アキラとジョノムは峠を越えると小さな集落が現れた。
「あそこだ。あそこにシジがいる」
「村の最長老か……」
2人が歩いていると村の入り口付近で3人の男が現れ2人を囲んだ。
「ヘタに動くな」
そう言うとジェノムは3人に話しかける。古い言語のためアキラには理解できなかった。
ジェノムの話を聞いた3人はそのまま村へと入っていく。
「話を通した。着いて来いと言ってる」
3人のあとについて村に入るアキラ。村の住民が物珍しそうにアキラを眺める者。怯えるように眺める者。
村の奥にある住居にたどり着き2人は家の中へと入っていく。
「ここの村の長の家だ」
しばらくすると40代後半であろう男性が4人の連れを引き連れてやってきた。
ジェノムがその男に話しかける。男は険しい表情でアキラを睨む。連れの者達も同様でやはり連中から歓迎していないようだとアキラは感じた。
「シジには会わせると言った」
家を出ると村の者の案内である一軒家へと辿り着く。
「シジは100を超えてる人間だ。あまり長話はできないらしい」
中へ入ると2人の女性に介護を受けている老人がベッドに横たわっている。
息も絶え絶えに老人シジは瞳を開き2人を見つめる。ジェノムはシジの耳元へ話しかけシジは女性2人に何か伝えると女性達は家から出て行った。
3人だけになるとシジは重い口をゆっくりと開く。
「………外の人間と話すのは……………何十年ぶりか…………」
「シジはお前の言葉はわかる」
「なら話がはやい。異端者、ワイズマンのことを何か知っているか?」
「会ったことはない……だが、私の父、祖父達から聞いたことがある。彼は神と名乗りブリタニアと戦ったと……」
「それは知っている。俺が聞きたいのは奴の手掛りがペンドラゴンにあるのか?先の皇帝があんた達一族を駆逐した時何か手に入れたのか?」
「それは……異端者が創造した人型の機械を……」
「KMF……!?」
シジはむせたのか咳を2回し息を整える。
「彼らは恐れていた。国を滅ぼされるところまで追い詰められた過去を繰り返させないよう……。そして異端者達はブリタニアを滅ぼすのではなく自分達の駒にするためnブリタニアに根を張った……」
「根を張った……?何のことだ??」
「わからない……それは、祖父も……」
イジは苦しそうに咳を繰り返しジェノムが背中を摩る。
「アキラ、これ以上は無理だ」
―根を張った。それはどういう意味なのか…俺がワイズマンを追うのをあざ笑うように奴は遠のくように感じた―
「まさか、こんな山奥に隠れ里があったとは……。まだ政府の目が届いていないはず……」
モニターに写された集落を見て男、ディートハルトは呟く。
「あいつ生きてたのかよ…」
共にモニターを見ていた玉城は集落へと入っていったアキラを見て驚愕する。
「ここ近辺に隠れ住んでいる部族がいるのは知っていたので辺りを探ってましたが流崎アキラ、彼にこんな早く見つかるとは…」
「んで、あいつを捕まえるのが扇からの命令だろ。今から行くか?」
「いや、やめておきましょう。あの集落の規模がどのくらいかわかりません。先住民達だからといって甘く見ない方がいいですよ。部隊を送り夜まで少し様子見してからでいいでしょう」
「あぁそうですかそうですか」
玉城はだるそうに椅子に座り込んだ。
「なんで、俺がブリタニアの本国に……」
―「はぁっ!?ブリタニアに行けってどういうことだよ!!」
「ディートハルトによると流崎らしき日本人が本国でいるとの情報があったらしい。お前はディートハルトと共に本国に密入国して彼を捕えるんだ」
「あいつ1人に構ってる暇あるのかよ?」
「彼を秘中に収めていればルルーシュと互角に渡りあえる材料になるんだ。玉城、うまくいけば日本をブリタニア以上の国になることも!!」
「お…扇、お前何言って…」―
その夜、アキラは村にある空き家にて体を横にしていた。陽が沈みかけていることもありこのまま下山するのは危険とのことでジェノムが部屋を提供したのだ。
明日、首都へと侵入する手段を考えなければと一眠りしていたのだが……。
扉を音が聞こえアキラは銃をベッドに隠し警戒するが入ってきたのはジェノムであった。
「アキラ、起きてるか?ここを出る」
「どうした?」
「何者かが
家を出た2人は静寂に包まれた村を駆け出し入り口に村人数人が立っていた。
アキラに警戒心を露にしジェノムに話しかける。
「お前が村に来たせいでおかしな連中まできたと言ってる。はやく出て行けと…」
「………」
村人達の視線を感じアキラは黙って村から出て行きジェノムもアキラに続いて行く。
岩場を歩いていくとジェノムがアキラを岩陰へと連れて行きアキラにゴーグルを渡す。
ジェノムが指差す方向を見ると黒装束の3人組のグループがこちらへ近づいているのがわかる。
「ジェノム、すぐに下山できるルートはあるか?」
「あるが崖を渡らないといけない最悪のコースだ」
「構わん」
「ターゲットが移動を開始。追跡を開始する」
ディートハルトは選伐隊からの報告を受ける。
「さぁ行きましょうか。彼を手中に収める。それで世界の行方を左右する」
―ワイズマンを追う俺。そして俺を追うルルーシュ、黒の騎士団。行くも地獄退くも地獄。これが俺のさだめなら俺は………―
読んでいただきありがとうございます。
最終章となり伏線を回収しようと過去の作品を読み直しながら執筆してたら半年も経ってしまいました。
必ず終わらせますので長い目で見ていただいたら幸いです。
さてカレン達の前に現れた謎のKMF。
これはボトムズのベルゼルガ物語で登場した無人ATウォリアー1を登場させました。
この作品での出目については次回紹介します。