コードギアスR2 ~去りゆく影~    作:三戦立ち

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第33話

ゲフィオンディスターバーを搭載した列車が破壊され敵KMFが戦列復帰し黒の騎士団が押されつつあった。

 

「殿下、これで5世代目以前のKMFも戦線復帰できます」

 

「戦力的には逆転したね。ナナリーのほうは?」

 

「政庁の防衛システムは掌握されたままでナナリー総督の消息は依然不明です」

 

「敵の仕業にしてはよくわからないね。何故、政庁だけが……」

 

「………っ。殿下、もう一つお知らせが」

 

「何かな?」

 

「どうやら、現れたようです」

 

モニターに映し出された映像にシュナイゼルの目の色が変わった。

 

「そうか……」

 

赤く染めた右肩をしたKMFが自軍のKMFを次々と撃破していくのだがシュナイゼルは笑みをこぼす。

 

「待ってたよ。流崎アキラ、秩序をもたらすか。それとも混沌をもたらすカオスとなるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼロはナイトオブラウンズのルキアーノと対峙している最中である。彼の配下ヴァルキリエ隊により蜃気楼は拘束されてしまいルキアーノのKMFパーシヴァルのルミナスコーンをエネルギーシールド絶対守護領域で防いでいるが先のアーニャのモルドレッドとの戦いでエナジーフィラーを消耗してしまい突破されようとしていた。

 

「っく、これ以上…」

 

「さぁゼロ、お前の大事なものを飛び散らせろ!」

 

その時、蜃気楼を拘束していたヴァルキリエ隊が次々と撃破され蜃気楼が開放された。

 

「誰だ!?」

 

銃撃が今度は自分を狙っていることに気づきルキアーノはすぐに回避行動をとる。

すると1機のKMFが蜃気楼の前に立つ。

 

「赤い右肩っ!?敵か!?」

 

『ゼロ、生きてるか?』

 

「アキラ!? お前が乗っているのか?」

 

アキラのKMF晋電は左腕に持っていたロケット砲を捨てる。

 

『赤い右肩!そうか、お前が黒の騎士団のレッド・ショルダーかっ!!』

 

「この機体、ラウンズか!」

 

『お前に会って見たかったレッド・ショルダー、流崎アキラ! シンジュクを地獄に変えた悪魔』

 

「………」

 

『レッド・ショルダーに聞いておきたいことがある。同族の殺しをやったお前たちにとって戦場はなんだ?任務のためか?それとも戦場に快楽を求めてるのか?』

 

「………」

 

「戦場という極限状態の場で互いの大事な命のやりとり。これほど心が震えることはない」

 

「………」

 

ルキアーノの問いにアキラは黙って彼に背を向けゼロ退がらせる。

 

「お前はさがってろ」

 

『貴様、私を無視するのか?それに黙ってゼロを見逃すとでも』

 

 

2機の周囲を残存のヴァルキリエ隊が囲む。

 

「騎士様の無駄話に付き合いすぎたな」

 

『何……』

 

「だがあいつがあれを慣れるまでにはちょうどよかったな」

 

『貴様、何を言って…』

 

その時、アキラ達を囲んでいたヴァルキリエ隊次々と撃破され周りには赤い閃光のような物が高速で走り去っていく。

 

「あれはっ!?」

 

そこにはエナジーウイングを広げた紅蓮が立っていた。

 

「紅蓮!?カレンかっ!!」

 

「ゼロ、親衛隊隊長紅月カレン!ただ今をもって戦線に復帰しました」

 

「カレン、紅蓮の調子はどうだ?」

 

「とんでもないマシンになったわ。慣れるまで時間かかったけど……」

 

「問題ない。ゼロ、ここは俺たちに任せろ」

 

「あぁ、頼む」

 

ゼロの蜃気楼が後退していく。ルキアーノが後を追おうとするが2機が立ち塞がる。

 

 

「あのラウンズか……」

 

「知ってるのか?」

 

「ちょっとね」

 

「カレン、俺は奴らの相手をする」

 

アキラはルキアーノに背を向けるとそこには陽炎の部隊が藤堂達と交戦していた。

 

「陽炎……」

 

「お前はラウンズに専念しろ。ここから1機も通さない」

 

「でもアキラ……」

 

カレンはアキラが陽炎の事をまだ引きずっているのではないか心配した。

 

「今、俺はお前を救うために戦場(ここ)にいる!」

 

「っ!! わかった。すぐに済ませる。無理しないでね。」

 

「お前もな。生きて会わせるとシャーリーに約束したからな」

 

「シャーリーっ!?」

 

彼女の名前が出てカレンはハッとする。

 

「いくぞ!」

 

やっぱりアキラはシャーリーを助けてどこかで彼女を匿っている。

アキラの一言でカレンは喜びで頬が綻んでいる。

 

「えぇ!!」

 

両機は互いの相手に向かい飛び立った。

 

「貴様、あのレッド・ショルダーの本当の姿を知ってるのか?」

 

「……」

 

「イレヴンよ、戦場の真実を知っているか?日常で人を殺せば罪になるが戦場ならば殺した数だけ英雄となる」

 

「ふーん、ブリタニアの吸血鬼さんは英雄になりたいわけ?」

 

「いいや。公に人の大事なものを、命を奪えるとは最高じゃないかって話さ。レッド・ショルダー共は貴様ら同族の命を奪い、女共を攫い犯してきた。果たしてどちらが吸血鬼かな?」

 

パーシヴァルのシールドから発射されたミサイルを紅蓮は回避していく。

 

「ホント、無駄話が好きな騎士様だね」

 

「何!?」

 

カレンは改良された徹甲砲撃右腕部その右前腕部のみを単独で有線射出され輻射波動砲弾によりミサイルを迎撃しバーシヴァルを狙う

 

「時間が無い。すぐに済ませる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紅月くんが復帰した。今の内に」

 

藤堂達も戦力を整え陽炎を相手に挑み、アキラの参入により形勢を五分に戻した。

アキラのKMF晋電の左肩にあるミサイルランチャーにより陽炎のヒートヘイズを撃破し更に残りの敵に接近し腰の横に装着してあるナイフのハンドル部分を取りそこから折りたためられた制動刀を出し敵の背後にまわりコックピットに向け直接突き刺した。

 

「あれは流崎アキラか。癪だがやはり陽炎には陽炎か」

 

「そうだね…それにしてもまだ総督を見つけてないのか?木下、突入班から連絡は?」

 

陽炎の戦い方を熟知しているアキラの戦いを見て彼の力を認めざる得ないと感じる千葉と木下からの連絡ない。朝比奈は木下の位置を確認しそこへと向かった。

 

 

頭部のターレットレンズを狙撃用に回しカノン砲で遠方のヒートヘイズを撃破していく。アキラは1機高速でこちらへ向かってくる敵に気づき標準を定める。そしてその機体は……

 

「ヘルハウンド………エリス」

 

カノン砲の迎撃をかわしこちらへ来るエリスにアキラは狙撃をやめエリスと距離をとる。

 

 

「アキラ……」

 

アキラはライフルを構える。

 

「来ると思った。カレンがいるからな」

 

「………お前もここにいると思った。俺たちの邪魔をするなら討たせてもらう」

 

「できると思うか。私はカレンを殺してお前から全てを奪う」

 

その瞬間、晋電からライフルが発射されエリスはヘルハウンドの左肩の盾で防ぐ。

 

「やらさせない……お前がそのつもりなら俺はお前を殺す」

 

エリスの表情がカレンへの嫉妬で歪み臨戦態勢をとる。

 

アキラは晋電の左肩にあるミサイルランチャーをパージさせ機体を軽くする。

2機は互いの銃撃を回避しながら高速で移動する。

 

アキラの晋電よりスピードに勝っていると思われたが晋電はヘルハウンドを追いライフルの銃撃でヘルハウンドに命中した。

盾で防いだがエリスは驚きを隠せなかった。

 

一方、ヘルハウンドのスピードに追いつこうとするアキラであったがスピードかかる重力により狙撃で思う様に定められず直撃できずにいた。

 

エリスは接近戦に移行しようと蛇腹剣を構えてアキラに接近する。アキラは制動刀を逆さに構えてエリスを迎え撃つ。

 

エリスは左腕のクローで晋電を捕らえようとするがアキラは距離をとりライフルを持っている右腕からスラッシュハーケンを射出した。

 

エリスはすぐに回避するが空を切ったハーケンは回避したヘルハウンドを追うように回って来た。

ハーケンの先端を見ると武器のクナイのように鋭利なものであった。

 

ヘルハウンドのバックパックに装備してある長距離砲がハーケンにより切断されてしまった。

 

「ただのハーケンじゃない!?」

 

ハーケンに気をとられているエリスにアキラはカノン砲を撃ってくる。

ハーケンを回避しながらそしてカノン砲に対しても回避行動をとるが全てを回避できず1発右脚がカノン砲を掠め体勢が崩れた。

 

エリスは反撃を試みようとライフルでアキラを狙い撃つがその時、カレンの紅蓮が両機の間に割り込み輻射波動で銃撃を防いだ。

 

「カレン!!」

 

「アキラ、間に合ったね!あのラウンズは倒した」

 

「さすが隊長だ。」

 

紅蓮はエナジーウイングを広げヘルハウンドに迎え撃つ構えをとる。

 

「紅蓮、カレンか……!」

 

カレンの出現にエリスは歯軋りをする。

 

「エリス………」

 

「カレン、2人で行くぞ」

 

「待ってアキラ!」

 

「っ!?」

 

紅蓮は晋電から離れていきヘルハウンドもその後を追った。

 

「カレン、やはり出たか」

 

「エリス、これが最後。お願いだから退いて!」

 

「何?」

 

「これ以上やるというなら私はあなたを倒さないといけない」

 

「望むところだ。お前を殺して私は…」

 

「違う!!そうじゃない……あなたは!!」

 

撃ってきたヘルハンドにカレンはエナジーウイングで防ぐ。

 

「……くそぅ!」

 

 

 

 

 

「カレン!!」

 

アキラはカレンの援護に向かおうとした時崩れていた瓦礫の山から巨大な物体が現れた。

 

「っ!?」

 

物体から赤い閃光がアキラを襲いかかりアキラは急ぎ回避する。

砂塵が晴れ物体の姿が露になりオレンジのカラーリングの物体を見てアキラはある機体を思い出す。

 

「ジークフリート!?」

 

細部に違いはあるがこの球体の形は間違いなくジークフリートであった。

以前のジークフリートには巨大なスラッシュハーケンがあったがこの機体には見られずよりボール状になっていた。

 

『その陽炎……流崎アキラだな』

 

「……その声、高山だな」

 

コックピットからアキラの晋電を見て高山は苦々しく見る。

 

「カレンを使って俺を殺そうとしたのはあんただな」

 

『あの女とお前の関係はシンジュクの件からわかっていた。だがやはり直接私がこの手で』

 

 

「もういい。あんたとはもううんざりだ。これで最後にしてもらう」

 

「何!?」

 

「…俺たちの邪魔をするな」

 

「貴様ぁぁぁぁ!!!」

 

 

ジークフリートは機体から主砲らしきものを出しアキラを狙う。赤い閃光がアキラを襲い近くにいた味方機が巻き込まれ撃破された。

 

「ハドロン砲か!!」

 

アキラは晋電のロケットエンジンを吹かせ動きで翻弄させようとする。神経電位接続システムで上下左右の確認が常人以上となった高山であるが晋電の予想以上のスピードにハドロン砲の狙いが定められずにいた。

アキラは晋電には暁が頭部両側に装備してあるはずの内蔵型機銃を外し代わりにスモーク弾を撃てるようにしおりジークフリートに3発発射した。

 

アキラを見失った高山は辺りを探るがジークフリートが攻撃を受けコックピットが衝撃で揺れる。

 

アキラは制動刀をジークフリートに突き刺し密着した状態でいた。

このまま機体を墜落させようと更に制動刀を刺そうとした時ジークフリートの間接部が露になりジークフリートが変形を開始した。

 

アキラは機体から離れる。変形をしたジークフリートは機体が真っ二つに分離するが中から別の機体が現れた。

 

「っ!?」

 

割れた球体から現れたのは陽炎のヒートヘイズ。アキラはヒートヘイズに向け撃つが電磁ユニットをバリアにして防いだ。

 

別方向から大型のスラッシュハーケンが高山を狙いに跳んできて高山のジークフリートはまた球体となりハーケンを弾いた。

 

「そのジークフリート、高山昌克だな」

 

大破したジークフリートをサザーランドを用いて改良したサザーランド・ジークでジェレミアはアキラの横へ並び高山と対峙する。

 

「ジェレミアか。あの機体知ってるのか?」

 

「ナイトギガフォートレスとしての機能を残しつつKMFの部分を取り入れた機体。私と高山を乗せることを想定としてつくられている。神経電位接続が残っておりどの方位からの攻撃も読み取れる」

 

「奴を倒す方法は?」

 

「中のKMFに高山が乗っている」

 

「なら、機体を露出させた時が」

 

「バリアが働かない。流崎アキラ共に戦ってくれないか」

 

2機は二手に別れ高山を挟んだ。高山のジークフリートは回転しながらハドロン砲を撃ち2機を狙う。

 

 

ハドロン砲の弾幕を掻い潜りライフルを撃つがバリアで塞がれる。ジークフリートはアキラを追いそのまま機体をぶつける。

そのままアキラの晋電を政庁の壁へ押し付ける。

 

アキラの救援に向かおうとジェレミアが近づこうとするがハドロン砲がかすめ機体がバランスを崩し落下しいった。

 

「さぁ、死ね!死ね!死ね!!流崎!!!」

 

狂気の叫び声をあげ高山は機体を開きヒートヘイズが姿を現す。アキラは右腕のハーケンを射出するがヒートヘイズの頭上を掠める。

 

「悪あがきを」

 

ヒートヘイズの右腕が晋電の頭部を押さえる。

しかし、その時晋電がヒートヘイズの肩を掴んだ。

 

「んっ!?」

 

晋電の腕は肩を掴んだまま離さない。最後の足掻きかと思い空いた左腕に持っているライフルを晋電に向け止めを刺そうとした時背後に何か来るのに気づいた。

 

そう、アキラが放ったクナイ型のハーケンがこちらへ戻ってくるのだ。そしてジェレミアが乗るサザーランドがハーケンを使ってビルにぶら下っていた。

 

「彼が闇雲に投げたとでも?」

 

 

高山が撃ち落したサザーランド・ジークには既にサザーランドが分離しておりジェレミアが空を切ってビルへと刺さったアキラのハーケンを取って高山がいるコックピットに向け投げたのだ。

 

高山は急ぎヒートヘイズを守ろうと球体へ戻ろうとした時アキラが持っているライフルをヒートヘイズへと向けられる。

 

「ここからならバリアは張れないな!」

 

「ぬあぁ!!!」

 

挟み撃ちにされた格好となったヒートヘイズはライフルをアキラに向けるがアキラは引金を引きヒートヘイズの頭部を破壊し更に返ってくるハーケンがコックピットを貫通しヒートヘイズの動きが沈黙した。

 

高山のジークフリートの沈黙を見てハーケンを戻そうとアキラは背後にまわりハーケンのワイヤーを巻き引き抜かれた高山のジークフリートはゆっくりと地上へと落下するのを見て死亡したとアキラとジェレミアは思われたが突如、ジークフリートが動き出した。

 

「ああああああぁぁぁぁ!!!」

 

ライフルを片手に高山は神経電位接続の配線が背中に繋がれたまま潰されたコックピットから姿を現した。左肩から腕がなく鬼気迫る表情でアキラを睨みながらライフルを撃つ。

 

「殺してやる殺してやる殺してやる」

 

「………」

 

既にアキラの知っている高山の姿はどこにも見えない。

ジークフリートでアキラに近づこうとするが中破されたジークフリートにそのようなスピードは無くアキラは蹴りでジークフリートを地上へと落下させた。

 

落下したジークフリートを追いアキラはジークフリートの傍へと晋電を着地させた。

 

コックピットに銃弾が当たりよく見ると機体に挟まれた高山が自分に向けライフルを撃っているのである。

 

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!」

 

下半身がジークフリートに潰され体が動かない状態にも関らず高山はアキラに対する殺意を剥き出しにしている。いや、それが彼の今生きている原動力とでも言うのか。

アキラはライフルの銃身装備してあるグレネードランチャーに弾を装填し高山に向け引金を引いた。

 

 

 

 

燃えさかるジークフリートを背にアキラの晋電は飛立つ。

 

「流崎アキラ……」

 

「ジェレミア、まだやれるか?」

 

「私のジークフリートはまだ健在だ。」

 

「……あとは任せる」

 

そう言うとアキラはカレンとエリスのいる戦場へと飛んで行った。

 

 

 

 

「っく、なんて機体だ。木下どこにいる?」

 

先程の高山のジークフリートの弾幕に巻き込まれた朝比奈であったが直撃をもらうことはなかった。引き続き木下に会おうと連絡を取るが彼からはうめき声がし何かあったのではないかと急ぎ木下の場所へと向かうと彼の暁は弾幕に巻き込まれ機体は破損しコックピットが剥き出しになりそこから血を流した木下が見える。

 

「木下っ!?」

 

「じっ……自分はもうだめです……」

 

「………」

 

「き………聞いてもらいたいことがあります……」

 

「っ??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、カレンとエリスの戦闘は激しく繰り広げていた。

 

輻射波動砲弾を円盤状に収束させてヘルハウンドに投げるが回避され次に右前腕部を有線射出させ輻射波動砲弾を撃つがエリスは次々と回避し逆にカレンに近づこうとした。

 

右前腕部を有線射出させている間は無防備となってしまう。カレンはMVSへと改良され破壊力が大幅に上昇した呂号乙型特斬刀を構えるが蛇腹剣により払い落とされる。

 

蛇腹剣を収めた右腕が変形を開始し腕がハドロン砲のようになり紅蓮に向けられる。

 

「やばい!!」

 

右腕の主砲の蒼白い閃光が紅蓮を襲う。煤煙で前方が隠れエリスは手応えを感じたが直後左肩の盾が輻射波動砲弾の直撃をもらい破壊されてしまう。

 

「っ!?」

 

煤煙が晴れるとそこにはエナジーウイングで全身を覆い健在している紅蓮であったがエナジーウイングのエネルギー翼がいくつか機能停止していた。

 

「このエナジーウイングがなかったら………」

 

右前腕部を戻した紅蓮はヘルハウンドの追撃に備える。

 

「この紅蓮ならいけると思ったけど……」

 

まだ聖天八極式に自分が十分慣れてないのかそれとも彼女、エリスに対して自分が無意識に躊躇しているのか。

 

そうしている内にスザクのランスロットがカレンを挟み撃ちのように対峙する。

 

「スザク、あんたはいつも間が悪いときに……」

 

しかし、態勢を整えた。ゼロの蜃気楼がハドロンショットを2機に撃つ。

 

「カレン、咲世子からの連絡でナナリーを発見した。これで勝利条件は揃った。カレン、一気にスザクを撃て!」

 

「そうは言うけど……」

 

この2機を一緒に相手できるはずがなく、ゼロにスザクの相手はきつく、不利な事に変わりない。

 

その時、紅蓮とランスロットの間からカノン砲が飛び2機は距離をとる。

アキラの晋電は紅蓮の前に立つ。

 

「アキラ!!」

 

「この機体アキラ、君のか!?」

 

「スザク……」

 

アキラは機体を軽くしようとカノン砲をパージする。

 

 

「アキラ、スザクを撃てば邪魔ものはいなくなる」

 

「…………」

 

晋電の背部ロケットエンジンを急加速でランスロットと激突しそのまま上空へと連れて行った。

 

 

「アキラ!」

 

エリスがアキラの後を追おうとするがカレンの紅蓮が立ち塞がる。

 

「カレン!!」

 

「アキラのところへは行かせない!」

 

 

 

一方、藤堂達はシュナイゼルの部隊と交戦中であったが突如、朝比奈からの連絡が入ってきた。

 

「藤堂さん。木下副隊長の証言データを送ります」

 

「何だ、こんな時に」

 

「聞いてもらえればわかります。やはりゼロは信用できません」

 

「どういう事だ?」

 

「虐殺です。女子供も含めて全員殺すようゼロが指示をしたと」

 

「っ!?」

 

「僕はこれから流崎を捕縛します。奴も虐殺に加担しています。それどころか味方を殺したのです。奴はやっぱり陽炎なんです!」

 

「っ!? 待て朝比奈!」

 

朝比奈からの通信が切れこれ以上の追求ができず藤堂は止むを得ず目の前の敵に集中するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキラから押し出されたスザクは晋電を蹴って距離をとる

 

「アキラさがってくれ。今、僕は重戦術級の弾頭を搭載している」

 

「なら、尚更お前をここで叩く」

 

「っく、アキラ、君は!!」

 

アキラは晋電のブースターを作動させ猛スピードでランスロットの横を通り過ぎる。

 

「はやいっ!?」

 

スザクは直ぐに後を追いアキラは追ってくるランスロットを見て更にスピードを上げる。

ランスロットはついて行こうとするが

 

「フロートユニットじゃない………けど」

 

晋電に追いつくどころか逆に離されていく。

 

 

 

 

 

 

この様子をモニターから見ていたロイド、セシルも晋電のスピードに驚愕していた。

 

「あの陽炎のKMF……今、ランスロットは……」

 

「最大加速で敵機を追ってます」

 

「フロートユニットじゃなく時代遅れのロケットエンジン。あのラクシャータがつくったとは思えないけど……現時点でスピードに関してはKMFではトップクラス……」

 

「しかし、この加速以上のスピードですとあの機体に乗っているパイロットは……」

 

 

 

 

2人の言うとおり今の晋電のスピードでアキラには予測以上のGがアキラを襲い操縦レバーを握っているのがやっとの状態でいた。

 

ディスプレイからはこれ以上の加速は危険だとアラームが鳴り出しアキラは後ろのランスロットを確認しこのスピードのまま方向転換を行った。

 

 

「っ!!」

 

ランスロットはヴァリスで撃とうとするが晋電はスピードを落とさぬままこちらへと帰ってくる。

 

「間に合わない!!」

 

両機はそのまま激突しその衝撃がスザクを襲った。更に晋電は制動刀でランスロットの胸部へ突き刺した。

 

「しまった!?」

 

僅かであるが激突の衝撃で数秒間気絶していたスザクは我に返りヴァリス撃とうとするが晋電のグレネードにより破壊されてしまった。

 

晋電はランスロットの背後にまわりもう一つ用意してあった制動刀でスザクのいるコックピットを狙い投げる。それに気づいたスザクは上昇して回避したがエナジーフィラーの部分に刺さった。

 

「コアルミナス損傷!このままではランスロットは5分も持ちません!」

 

「逃げるんだ、枢木卿」

 

「今のランスロットじゃ……」

 

追い討ちをかけようとアキラは晋電の左腕にナックルガードを装着させると輻射波動を利用したシールド、輻射障壁をナックルに発生させ胸部に叩き込ませた。

 

普段なら回避できるのだが機動力が低下したランスロットは直撃を受けてしまった。

 

「マシンポテンシャルならこちらが……」

 

(いや、違う。性能の優越じゃない。アキラの動きに迷いが無い。他者を犠牲にしてでもやり遂げようとする覚悟が……僕はっ!)

 

ランスロットのコックピットの両側にあるMVSを奪い止めを刺そうとするがランスロットの腕が晋電の腕を押さえ両機は取っ組み合う形となった。

 

 

 

「よし…いいぞアキラ。お前はそのままスザクを止めていればいい。あとは俺が」

 

少し離れたところで様子を伺っていたゼロは拡散構造相転移砲の準備をはじめる。

 

ゼロ、ルルーシュはアキラを巻き込んでスザクを葬り去ろうと考えていた。

 

「アキラ、シャーリーへの罪を償ってもらうぞ」

 

 

 

 

「スザク撃ってよ!フレイヤなら!!」

 

スザクの様子を見てニーニャが絶叫するようにスザクを煽る。

 

「ダメだ。これはあくまで脅し。使ってしまったら」

 

晋電の腕を押さえるが出力の落ちたランスロットでは力が弱まりMVSがこちらへ迫ってくる。

 

「撃ってスザク!!」

 

 

(でも、それだけは…、例えここで死ぬとしても…………。そうだ、これが償いなんだ。受け入れるしかない、ここで。俺は…)

 

まるであきらめるかのようにランスロットの力が緩む。

 

「死ねスザク、アキラ」

 

MVSの刃が迫る時スザクの突如動きが変わった。以前ゼロにかけられたギアスがここで発動されたのだ。

 

スザクは前蹴りでアキラと離れた。追撃しようとアキラはMVSを振り下ろすが左腕の

ブレイズルミナスを発動させ防ぐが出力が低下しているため爆発を起こし左腕を損傷してしまうが構うことなく右腕と腰部のスラッシュハーケンを出した。

爆発で隙ができたアキラはランスロットのハーケンに対応できず持っていたライフルを払い落とされ右脚を損傷し更に回し蹴りをくらいビルに激突しそのまま地上へと落下した。

 

 

「っく。運がいい奴」

 

撃ち損ねてしまったルルーシュであるがランスロットがあるものを撃つ準備をはじめるのを目撃する。

 

 

 

地上へと落下したアキラはランスロットがどこにいるか見てアキラは再び浮上しようとするが体に違和感を感じ咳き込んだ。

 

口をおさえた手を見ると血がこびりついていた。晋電のスピードに自分の体がついていけていなかったのである。

 

「………っく」

 

それでも晋電を動かそうとするが背部のロケットエンジンから黒煙が発生し出力が低下し飛行できなくなった。それ以外の機関も故障が発生した。

 

そんなアキラのもとに1機の暁が近づいてきた。

 

「流崎アキラ……」

 

「朝比奈か」

 

「お前を拘束する!」

 

突然の通告にアキラは怪訝な表情をする

 

「お前、何言ってる……」

 

「木下が死んだよ……あいつが最後に残したものがある。お前、ゼロの極秘作戦に参加していただろ」

 

「…………」

 

「木下から作戦で何が起こったか聞いた。作戦は名ばかりで女、子供を無差別に虐殺していたと」

 

「…………」

 

「その沈黙は認めたと見ていいんだな」

 

「その話はあとにしろ。今は戦いに集中…」

 

暁の廻転刃刀が突き出される。

 

「お前が味方を殺したのを目撃していたと木下が言っていた!やっぱりお前は陽炎だな。もうお前を野放しにはできない」

 

「………」

 

「………」

 

「…………邪魔をするな」

 

晋電の左腕にナックルガードが装着される。

 

「抵抗するなら力づくでもっ!!」

 

2機が戦闘に勃発しようとした時上空から眩い光が発せられ2機の動きが止まる。

 

「っ!?」

 

「何だっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザクは腰に装備していたフレイヤを装填している専用のランチャーを取り出し引き金を引きフレイヤを撃ちだされた。

ブリタニア軍が撤退していくのを見てゼロはスザクの行ったことが事実だと感じた。

 

 

「まさか、あれがスザクの言っていた?……はっ、ナナリー!!!」

 

 

 

エリスと戦闘中のカレンもフレイヤの発射を見てただ事ではないと感じすぐに撤退しようとするが尚も戦闘をやめないエリスの蛇腹剣が紅蓮を襲う。

 

「っく、エリス!」

 

背部にあるミサイルを発射させエリスは蛇腹剣で打ち落とし爆煙が発生視界が悪くなった隙にカレンは右前腕部を有線射出させ破壊されているヘルハウンドの左肩に取り付いた。

 

「しまったっ!?」

 

有線が巻かれ紅蓮に取り付かれたエリスは輻射波動をやられると思われたがカレンはヘルハウンドを抱きかかえて戦線から脱しようとした。

 

「っ!? どういうことだ!! 離せっ!!」

 

カレンはアキラと連絡をとろうとするが

 

「アキラ、応答してアキラ!! こちらカレン、斑鳩、アキラは今どこに?」

 

『流崎アキラは現在、朝比奈さんと共に……政庁の付近に』

 

「そんなっ!? アキラ!!!」

 

カレンは戻ろうとするがその直後フレイヤが大きな爆発音と共に目を覆うような光を発し紅蓮はヘルハウンドと共にフレイヤの衝撃で飛ばされてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽炎のチバ基地にいた井ノ本からもフレイヤの爆発が確認された。

 

「たった今エリア11にてフレイヤの使用が確認されました。おそらく敵味方含めてかなりの犠牲が我ら陽炎の部隊からも連絡が途絶えおそらく……」

 

「エリスの消息は?」

 

「不明です」

 

「シャルルは神根島から動いていないか………」

 

(遂に始めるのだなシャルル、新しい世界を開くつもりだろうが……)

 

「艦の準備をしろ。場所は……神根島だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

政庁の周辺がフレイヤによって消滅し巨大なクレーターが発生し先程まで戦闘が行われたとは思えないくらい辺りが静寂に包まれていた。

 

蜃気楼の中でルルーシュは項垂れていた。

 

「ロロ」

 

『兄さん……』

 

「ナナリーと話をさせてくれないか?」

 

『………』

 

「咲世子に繋がらなくってさ。ナナリーの声が聞きたいだけなんだよ」

 

『……兄さん、間に合わなかったんだ。ナナリーはあの光の中に……死んだんだよ』

 

「違うっ!!!捜すんだ!!!!」

 

 

 

 

 

一方、カレンもフレイヤに巻き込まれずに済んだが

 

「アキラ……アキラっ!! 応答してアキラ!!!」

 

横で倒れていたヘルハウンドは起ち上がりエリスはこの事態の状況に戸惑いを浮かべていた。

 

「これは一体……カレン?」

 

紅蓮は空からアキラを探そうと上空へと飛行する。

 

「そんな、アキラ…………っは!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュナイゼルの艦では事態の把握で皆が動いているがシュナイゼルだけは冷静に振舞っていた。

 

「殿下、敵だけではなく我々のほうもかなりの損害が……」

 

「カノン、生存している者達がいればすぐに確認を」

 

「すぐに発見次第回収に……」

 

「カノン、僕が言ってるのは味方のほうじゃないよ」

 

「はっ……? まさか……流崎アキラは爆心地の中にいるのを確認されました。そしてご覧の通りです。奴が生存しているとは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ロロはふと爆心地の少し外れのところに目をやるとある光景に戦慄する。

 

『にっ兄さん……』

 

「ナナリーかっ!!」

 

ルルーシュはナナリーが見つかったのかと一瞬、歓喜の顔を浮かべたが

 

『兄さん……』

 

ロロから送られた座標を確認しその地点を見るがそれはルルーシュの期待を裏切るもので歓喜から絶望へと表情が一変した。

 

 

 

 

 

フレイヤを撃ったスザクも自分が引き起こした事態にただ呆然としている。

 

「これは……僕がやった……」

 

クレーターの上空を飛ぶランスロットであるがあるものを発見し驚愕する。

 

「そっ……そんなっ!?」

 

 

 

そこには1人歩くアキラの姿であった。

 

「アキラっ!!!」

 

アキラの姿を見てカレンは直ぐにアキラのもとへと向かう。

 

 

 

 

 

 

「うそ……フレイヤに巻き込まれて生きてるなんて………」

 

フレイヤの被害を見て罪悪感にとらわれていたニーナはアキラが健在の姿を見て驚愕した。

 

「まさか、ほとんど無傷で生存……これが……殿下?」

 

カノンはシュナイゼルがいた席を見るがそこには彼の姿はいなかった。

シュナイゼルはアキラの姿を見てデッキから出て私室へと途中、口を押さえ必死に感情を押し殺そうとしている。

 

「……ふっふふ…………ふっふふふふ。流崎アキラ、素晴らしい。まさに奇跡だ。僕は今奇跡を目撃した」

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキラ……」

 

カレンに保護されるアキラをスザクはただ見ているだけであった。

 

「そうだ……僕はアキラ殺されそうになってそれで………。じゃあ僕がフレイヤを撃つきっかけをつくったのはアキラ……!?」

 

「………ダメだ……みんな死んでしまう。異能生存体に…アキラにっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故…………お前が!!!アキラァァァーー!!!!」

 

ルルーシュは憎しみで歪んだ表情で絶叫した。

 




晋電のナックルガードはレイズナーのナックル・ショットをモチーフにしました。

高山のジークフリートは某四天王の内1機をモチーフにしましたw
それとカレンとルキアーノの戦闘は尺の関係で省略させてもらいました。



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