コードギアスR2 ~去りゆく影~    作:三戦立ち

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第31話

-蓬莱島-

 

饗団の殲滅作戦からアキラはルルーシュと共に蓬莱島へと戻った。

 

ルルーシュはアキラからの話で機密情報局は壊滅されたと聞き自分の記憶が突き止められると懸念するが皇帝のシャルルをCの世界へ閉じ込めたことでナナリーの身は安全である。

それ以外にアキラが井ノ本によって連れて行かれた謎の遺跡も気になるが今は合衆国日本と合衆国中華を中心に複数の国家から構成される連合国家超合集国の樹立が先決であった。

 

 

そんな中今日はゼロの私室にアキラが訪ねてきた。

 

「エリア11に行く?」

 

「あぁ、坂口がゲフィオンディスターバーのことで俺に手伝ってくれと頼まれた」

 

「何か不具合が?」

 

「人手が足りないようだ」

 

そうは言ったがアキラの真意は坂口からシャーリーの意識が回復したとの連絡を受けたからである。

 

「超合集国の式典に俺がいる必要は無い」

 

「そうか……。じゃあすまないがエリア11に戻っても構わない。シャーリーの件に続けて申し訳ないが……」

 

「ルルーシュ、シャーリーの事だが……」

 

アキラが近くにいるC.C.を見る。目が合ったC.C.は怯え物影に隠れてしまった。あれからギアスに関る前の奴隷だった頃の彼女に戻ってしまっている。

 

「シャーリーの事には感謝している。俺の正体がばれるところだったからな」

 

「それであいつは……」

 

その時、部屋のドア越しからロロの声が聞こえてきた。ルルーシュの許可をもらいロロは部屋へと入ってきた。

 

「兄さん、皆が今度の式典について話したいことがあるって」

 

ロロはアキラを睨むように見つめる。ロロは遺髪などアキラがシャーリーを殺した証拠を受け取ったがまだアキラを信用できずにいた。

そしてアキラもロロがいたことで自分が口に出そうとしたことを飲み込んだ。

今回の殲滅作戦は自分の行動が遠因になっていることで早くルルーシュに伝えようとした自分を責めた。

 

 

「準備でき次第すぐに出発する」

 

そう言うとアキラは早々と部屋から出た。

 

「あの男と何話してたの?」

 

「アキラがエリア11に行くことになった」

 

「そう……なんだ……」

 

ロロはアキラが1人でエリア11に戻ることに懸念に感じた。

 

「兄さん僕も……」

 

「ロロは捕らえたコーネリアの監視にあたってくれ」

 

「えっ……?」

 

「ん?どうした?」

 

「ううん、何でもない」

 

笑ってごまかしロロは部屋を出る。

 

ロロが出た後ルルーシュはアキラの事で考えていた。

 

(アキラとC.C.が互いに過去を見たと聞く。C.C.は……)

 

ルルーシュは笑顔でこちらを見るC.C.と目が合う。

 

(それと……コーネリア)

 

 

あの作戦終了直後ジェレミアによってコーネリアを捕らえたルルーシュは対面を果たすのであった。

 

「ルルーシュ様。ご命令は殲滅とのことでしたが、ブリタニア皇族を手にかけることは…」

 

「いやジェレミア、むしろよくやってくれた。さて……姉上、あなたには色々と聞きたいことがある」

 

「私がしゃべると思うか?お前は私にギアスをかけた。もう私にはきかない。それともあの流崎アキラをつかうか?」

 

「アキラ……?」

 

「ふっ、何も知らないのか。なら思い出すがいいユフィがどのように死んでいったのを」

 

 

ユーフェミアの死。それはルルーシュにとって忘れなれない忌まわしい記憶として残っている。そう、ユーフェミアはアキラと対峙しそして………

 

(ユフィが撃った銃弾が逸れてそれが彼女に………)

 

「ルルーシュ様……」

 

ジェレミアはコーネリアに聞こえないよう距離をとりルルーシュに耳打ちする。

 

「V.V.達饗団は流崎アキラを調べていました」

 

「何っ?」

 

「私は詳しく存じておりませんがV.V.達はあの男を異端者と言ってました」

 

「異端者……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの時、アキラは何も手を出していなかった。あれは偶然銃弾が………っ!?)

 

ルルーシュにある考えが過ぎる。

 

「ありえない!!」

 

机を叩くルルーシュに傍にいたC.C.はビクッと体を震わせる。

 

(あの偶然をアキラが引き起こしただと…ありえない!……だがV.V.達はアキラを警戒していた。V.V.は……あの男は何を知っているんだ)

 

ルルーシュはC.C.のほうを見る。C.C.は物陰からそっとこちらを見る。

 

(C.C.は記憶を無くした。対してアキラには何も異常が無い。……あの男は何故あの世界にアキラを閉じ込めようとしたんだ。………まさか、アキラは母さんの事と何か関係が!?)

 

だがルルーシュは頭を横に振る。それは飛躍しすぎか、だがシャルルがアキラに敵意を向けていたのは事実であった。それなら次にアキラと会うときに彼にギアスをかけ全て話させればいい、そしてその後……

 

 

 

 

 

 

 

 

搭乗する潜水艇に乗り込もうと格納庫へ向かうと先日の作戦に参加していた木下が朝比奈と話しているのを見た。

アキラに気づいた朝比奈はアキラに近づき話しかけた。

 

「流崎、お前はゼロの作戦に最初いなかったらしいね。それが作戦中突然現れた。木下からそう聞いたけどどういうことだ?」

 

「………極秘作戦で俺の事は伏せていた。木下達が知らないのは当然だ」

 

「その極秘作戦ってのはなんだ?新参者のロロは極秘だから言えないっていうが……」

 

「……言えないから極秘だ。それにもう終わったことだ。今更穿り返したところで意味は無い」

 

そう言うとアキラは潜水艇にて荷物を入れるのであった。

相変わらずだと朝比奈は舌打ちするが2人のやり取りを見ていた木下はアキラに不審の目で見ていた。あの作戦にてアキラが味方を撃ち殺していたのを目撃していた。アキラはあの作戦の本当の目的を知りゼロと共謀しているのではないかと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

蓬莱島に残っている咲世子はモニターにて監禁してあるヴィレッタの様子を伺っていた。

 

アキラと別行動で咲世子はディートハルトの指示でヴィレッタを捕らえたのであった。そして副指令の扇が彼女と接触を図ったことを咲世子はアキラに秘かに伝えたのだ。

それを聞いたアキラは…

 

「最悪、ルルーシュの事を漏らせばあの女を殺す」

 

その意見には咲世子も同意見であった。早めに手を打っておかなければならないがディートハルトは彼女を人質のようにしている。ゼロの正体を知っているヴィレッタをこのままにしてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

その後、エリア11へ戻ったアキラは坂口のコンテナ船が停泊してあるチバの港へと向かった。

シャーリーの意識が回復したことで彼女を自身のコンテナ船へと招いたのだ。

 

「おうアキラどうしたんだ?いくら連絡しても何も返事してこないでいつの間にか蓬莱島にいて何があったんだ?」

 

「すまん、色々あってな。シャーリーはどうしてる?」

 

「千鶴が相手してるよ。年も近いからいい話相手になってる」

 

シャーリーがいる部屋の前に来てアキラは軽くノックをする。

 

「俺だ。入るぞ」

 

部屋に入りそこにいたのはベッドの上で上半身を起こし千鶴と雑談をしているシャーリーであった。顔色は良く見え体調が回復しているようだがもう一つ、腰の辺りまで伸ばしていた長い髪は肩の辺りまで短く切られたミディアムヘアーとなり普段とは印象が変わっていた。

 

「ラッライくん……!」

 

「おかえり~!ライくん♪」

 

「…………」

 

「あれライくん、シャーリーに見惚れてるの~?」

 

「もう……やめてよ千鶴」

 

目が醒めてから日が浅いが何時の間にか仲良くなっている2人にアキラは口が半開きになった状態であったが

 

「……体調はどうだ?」

 

「うん、大丈夫……」

 

「……シャーリー、ほとぼりが冷めるまで坂口のところにいろ。全員日本人だが心配するな」

 

「ライくん!?」

 

「言ったからな」

 

そう言うとアキラはそのまま部屋から出て行った。

 

「なんか一方的で好きじゃないなぁ~」

 

「そう?逆にいつものって感じだったな。そんなライくんカレン相手だったら結構素直だったし」

 

「へぇ~、あのアキラの手綱を引いてたのか……ますます会いたくなったな。そのカレンに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまなかった」

 

そのカレンの独房にてスザクがカレンに頭を下げていた。先日の無礼を謝罪しに来たのだがカレンはムスッとした表情で椅子に座ったままスザクを見る。

 

「………それで今日は何?言っとくけど何も知らないから」

 

「いや……その件はもう………」

 

「自分から話振っておいて勝手にお仕舞い?頭下げればそれで済むって思ってるの?ホント嫌い!あんたなんか」

 

「………」

 

黙ったままのスザクにカレンは呆れた表情をする

 

「出てって」

 

「………」

 

「出てって!!もうあんたの顔見たくない!!」

 

「………っ」

 

黙って去るスザクの後姿を見送り1人になったところでカレンは深いため息を吐いた。

 

またここへ来たときこの手で殴ろうと思っていた。自分にあんなことしておきながら平然と姿を見せて……しかし、自分に謝罪している姿を見てカレンは殴る気が失せた。

 

この男を殴ったところで何が変わるのか。

 

それより身動きできずにいる自分の身に歯痒さを感じていた。

アキラにしろ、シャーリーの件と事態が動いている中自分だけが取り残されている。そのように感じ今のカレンには怒りの感情よりも焦りで心中穏やかではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽炎のヨコハマ基地にてエリスはバーネット兄妹との調整を終えたばかりでまだ眠っていたが兄妹が入ってきたと同時に瞳を開いた。

 

「お目覚めのようねエリス。少し運動でもしましょうか」

 

「合同の軍事演習が行われる。中にはナイトオブラウンズがいるみたいだ」

 

エリスは無言のままベッドから起き上がり部屋から出て行く。

その様子を2人はニヤニヤと見ている。

 

「兄さん見たさっきのエリスの顔」

 

「あの食って掛かるような眼。あの紅月カレンと会ってからずっとあんな感じだ」

 

「あの子すぐにでも紅月カレンを殺したくて仕方がないみたいね。ふふっ、PSに嫉妬、憎悪を与えるとここまで変えるなんて」

 

「演習相手が死なないことを願うばかりだ」

 

 

 

 

-私はあなたに教えたいの自分のモノにするとか支配するとかじゃない、本当の愛をー

 

 

 

 

カレンからの言葉はアキラとカレン2人が互いを信頼し愛しているもので自分が入れない、自分だけが置き去りにされることにエリスは憤りを感じていた。

 

カレンの言ってることが愛だというなら彼女を殺しアキラを自分のモノにすることで自分の愛を証明できる。アキラの傍にいるのは紅月カレンではないこの自分なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、予定通り合集国の憲章批准式典が行われた。合集国憲章を批准した国家は固有の軍事力を永久に放棄するがその代わり各合衆国の安全保障については人員・資金提供を条件にどの国家にも属さない黒の騎士団と契約し、黒の騎士団が安全保障を担うことになる。

 

これにより合集国連合軍という体裁も手に入れこれで名実共にブリタニア軍と真っ向からぶつかり合えることになったが式典終盤に会場に置かれていたモニターにCの世界に閉じ込めたはずのシャルルが映っていたことにアキラも驚いていた。

これまでの黒の騎士団の動きはシャルルがいなかった上でルルーシュも動いていたがここにきて彼自身にブレーキが掛かったのではないかとアキラは懸念するがここにきてブリタニアとの決戦は避けられないのは明らかで自分の成すことは一つだけだとアキラも動き出した。

 

 

「おいアキラ!KMF1機ぐらい用意できる。こいつだけはやめろ!」

 

アキラは今ある2機のKMFの前に立っていた。それはラクシャータ達が試作機として使用されるはずだったものであったがテスト中に事故を起こし廃棄処分になり備機廃棄依頼としてこちらへ運び込まれた予備機の無頼と暁の2機であった。

 

 

「死人を出したモンスターマシンだぞ。いくらお前でも……」

 

「スザクのランスロットやエリスのマシンもモンスターだ。モンスターにはモンスターがちょうどいい」

 

「でもよぉ……」

 

「俺は死ぬつもりはない。そのためにとっつあん、あんたに手伝ってほしい」

 

「俺に…?」

 

「頼む、カレンを……助けたい」

 

アキラと視線をぶつけ坂口は苦笑いを浮かべる。

 

「女のためか……っへ、いいぜ!その話乗ってやる!けどな中途半端なモンはつくらねぇからな」

 

「そのつもりだ」

 

アキラは微笑み早速2人は取り組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ブリタニア、エリア11での軍事基地では合同演習が今日も行われエリスが操るヘルハウンドも参加しており演習は終盤を迎えていたがいくつもあるKMFの残骸の上にヘルハウンドだけが立っていた。

 

「え……っと、これで終わりっでいいのですか♪ご心配なくエリスには操縦者の命は奪わないよう言っておりますので」

 

モニターで見守っていたドリーが聞くが幹部達の顔がしかめっ面になっており結果はエリスの圧勝なった。

 

「これじゃあ合同演習じゃなくてエリスのための実戦訓練ね」

 

「こらジョディ、皆様に失礼だろ。では僕らはこれにて……ん?」

 

その直後1機のKMFがエリスにヘルハウンドに向け実弾のミサイルが発射された。

それはエリスも気づき瞬時に回避した。

まだ残っていたのかと敵KMFを見ると先程戦ったKMFとは形状が違いパープルカラーを基調としたKMFで右腕にはドリルのようなランスが装着してあった。

 

「これを全部あの機体がやったのか……面白そうじゃないかパーフェクトソルジャー」

 

KMFパーシヴァルを駆りナイトオブテン、ルキアーノ・ブラッドリーは下卑た笑いを浮かべてヘルハウンドを見下ろす。

 

 

 

 

「ナイトオブテン、ブラッドリー卿!今回の演習には参加すると言っておきながら今まで姿を見せなかっったけど今頃!?」

 

「ジョディ、面白そうだ。せっかくブラッドリー卿がKMFに乗ってくれたんだ。そのご好意に甘えようじゃないか」

 

「っふふ、そうね」

 

 

 

『エリス、このまま戦闘を続行しなさい。くれぐれもナイトオブテンの命だけは……っね! あとで問題が発生したからでは遅いから』

 

 

ジョディからの連絡でエリスは迎撃の構えを見せる。

 

『パーフェクトソルジャー、貴様に聞きたいことがある。貴様の大切なものとは何だ?』

 

その問いにエリスは黙ったままである。

 

『それは命だ。そしてその命が最も輝く場所が戦場だ』

 

「………命など惜しくない」

 

『っ………?』

 

「私は誇りあるパーフェクトソルジャー。戦士として戦っている。」

 

『戦場に生きる糧があるか……くっくく、いい!嫌いじゃない。だが……何故相手の命を奪わない?演習とはいえ死ぬのはその者が弱いからだ。慈悲か?』

 

「そう命令を受けた……」

 

ルキアーノは白けた表情でがっかりしたようにも見える。

 

『それではただの人形だ。人形と命のやり取りをする気はない』

 

「人形……?」

 

『人形が誇りある戦士だと?おかしな話だ。まっ人形にはわからないだろうな。』

 

 

人形……その屈辱的な言葉にエリスはカレンが自分に向けて言った本当の愛を述べた時理解できない自分にカレンは悲しげな顔を思い出した。

まるでエリスを哀れむような………

 

その瞬間、エリスの心が殺意に満ちヘルハウンドは上空のパーシヴァルに接近する。

 

「ほう……」

 

パーシヴァルは横へと回避する。

 

「いいだろう。人形の相手では楽しめないが自分が人形であると教えてやる」

 

パーシヴァルの右腕に装備された巨大な4本のクローが高速回転させブレイズルミナスで形成されたドリル状となりパーシヴァルはヘルハウンドを迎え撃つ構えをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-チバ-

コンテナ船にある格納庫の一角にてアキラと坂口のKMFの整備が行われていた。

 

「さて問題はこのロケットエンジンだが……」

 

廃棄処分の原因となった問題の固体燃料ロケットエンジン

 

「2つとも使う」

 

「おい、正気か?」

 

「あぁ」

 

2人が作業を進める姿をトレーを持ったシャーリーと千鶴がゆっくりと近づき声をかけるが……

 

「2人共、食事ここに置いてくから食べなさいよ」

 

「バーニアスラスタを増やすか?」

 

「脚以外に肩の後ろに装着させる」

 

千鶴の呼びかけに2人は聞こえず作業に夢中になっていた。

 

「もういいや、シャーリー行こう」

 

「ふふっ」

 

2人の姿を見てシャーリーは笑みを溢す。

 

「どうしたの?」

 

「ううん、なんでもない。ちょっと思い出し笑い」

 

2人は静かに格納庫を後にし甲板へと出た。

 

「坂口さんって貿易商だけど意外とメカに強いんだ」

 

「そうなの。前、サドナ王国にいた時もアキラ達と一緒にKMFいじってたし、アキラもそうだけど男って一度やりだすと止まらないよね」

 

「ふふっ、そうだね」

 

「おやじさんだってそう。一度仕事やりだすと家事とかまったくやらないからあたしが全部面倒みないといけないのよ。この前だって同じ靴下を3日も使ってたのよ!ありえないでしょ?」

 

「ふっふふ、前から思ってたけどまるで親子みたいだね」

 

シャーリーから言われ千鶴の顔が真っ赤になった。

 

「何言ってんの!!やめてよ。あんなおっさん、あたしのお父さんはもっと…」

 

千鶴の表情が一瞬暗くなりシャーリーがハッとする。シャーリーは千鶴の家族について話は聞いていた。

 

「ごっごめん。私、そんなつもりで……」

 

「いいの、それはお互い様でしょあたし達。でもさぁ」

 

千鶴は手摺を掴み外の景色を眺めながらつぶやく。

 

「時々思うの。死んだお父さんが今生きてたらあんな風に加齢臭とか匂わせたりとかしてオヤジっぽくなってるのかなって」

 

「千鶴……」

 

「だからかな?ついおやじさんの事をお父さんって言いそうになるの」

 

「別にいいと思うよ。お父さんって言ってみたら?」

 

「よしてよ。それに何か恥ずかしいよ。シャーリーお願いがあるけど…」

 

「わかってる。これは2人だけの話」

 

シャーリーは人差し指を唇に当てる。

 

「うん……じゃあ、あたしたちも食事しようか」

 

 

 

 

 

軍事演習を終えたエリス、ドリー兄妹は陽炎の基地へと戻っていた。

 

「エリス、さすがの君もラウンズが相手なもんだから加減ができなかったみだいだね」

 

「2人がやりすぎて基地が巻き込まれて建物の被害が出ちゃって」

 

「けど、最後ヘルハウンドのエナジーフィラーが切れなかったら間違いなくエリスが勝ってただろうけど」

 

終盤から参戦したパーシヴァルに比べ連戦続きであったヘルハウンドのエナジーフィラーの残量が少なくなっており尽きてヘルハウンドが動けなくなったことが切欠で戦闘は終了となった。

 

「その問題も解消できるさ。エナジーフィラーをもう一つ補充できるようにして今までの稼働時間の倍は動けるようになる。その代わり脱出装置が外されるけど」

 

「もうすぐね」

 

「あぁ黒の騎士団がまた戦争を仕掛けてくる。面白くなりそうだ」

 

2人は愉快に笑い、新たな戦場という実験を行われるのを楽しみにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜

コンテナ船で1人KMFの整備を行っているアキラの背後から足音が聞こえてきた。

アキラにホルスターに収めているショットガンを取り出し振り返る。

 

「ごっごめん!私!」

 

そこにはポットを持ったシャーリーが立っていた。

 

「……お前か」

 

「坂口さんからまだやってるって聞いたから……一息どうかなって?」

 

シャーリーはカップに暖かいコーヒーを注いだ。

アキラは黙って手を止めシャーリーのところへ歩み寄るとカップを受け取り一口飲んだ。

 

 

「ふふっ、前にもこんなことあっとよね」

 

「っ?」

 

「ほら学園祭で使うKMFをライくんが夜遅くまで直しているところを会長やリヴァル達と見に行った」

 

「……そんなことあったな」

 

「せっかく直したけど本番、ピザ失敗したけど楽しかったな。それと……」

 

しゃべり続けるシャーリーにアキラは黙ってカップを渡して自分はまたKMFの整備を続けようとする。

 

「ラっライくん!」

 

呼び止められアキラはゆっくりと振り返りシャーリーと視線を合わせる。

 

「どうして…私を助けたの?」

 

その問いにアキラは視線を逸らし黙ったままKMFを見つめる。

 

「………どうしてだろうな。俺にもわからない」

 

「わからない…?」

 

「いや、理由は無いかもな」

 

シャーリーが血を流し倒れている姿を見てアキラは損得関係なしに彼女を助けたい衝動に駆られた。後から考えても自分の行動に理解できなかった。

 

「その……ありがとう」

 

「自分を半殺しにした奴にいうセリフか」

 

「それでもうれしいの。またあなたに会えて」

 

「俺に?」

 

「突然記憶が戻ってあなたやナナちゃんの事みんな忘れてていや、嘘付いてるように見えて怖かったの。世界中が私を見張っているような気がして。ルルはこんな世界で一人で戦ってたんだって」

 

「………」

 

「あなたもライ…っ!え……っと、流崎アキラだったよね……カレンを守ろうと戦っていた」

 

「……」

 

「アキラ……くん。私、学園でみんなと待ってるから。ルルーシュとカレンと一緒に戻ってくるのを」

 

「お前の親を殺した俺を?」

 

「それは……この前スザクくんにも言ったの。きっとそれは許したくないだけなんだって」

 

「許したくない……?」

 

「私、ルルが好きなの。お父さんを死なせたり私の記憶をいじったりしても嫌いになれなかった……やっぱりおかしいかな?」

 

シャーリーを苦笑いを浮かべるがアキラはそれが強がりのようには見えなかった。ごく自然の笑顔のようだった。

 

「それに……怨んでいた人を許すにはその人の髪が白くなるまでだって聞いたことあるけど私そんな長い時間、人を怨めないよ。 それに疲れちゃうよ私自身が」

 

 

 

 

 

-今まで俺が殺してきた人間、そしてその家族のことは気にも留めなかった。いや、そのような感情ははじめからなかった……。シャーリーが目覚めたと聞き俺は彼女とどう向き合えばいいのか正直わからなかった。だが……-

 

 

 

 

「だから帰ってきてよ。今度は流崎アキラと紅月カレンとして2人を迎え入れたいの」

 

「だったら、しばらく身を隠すんだ。生きてルルーシュに会いたければな。生きていることがばれるとまたロロがお前を殺しにくる。そうなる前に俺が始末する」

 

「そんなこと言わないで!!ロロはただ…」

 

始末、その言葉が殺す意味だと感じたシャーリーは声を荒げた。

 

「アキラくんはロロの事あまり知らないと思うけどルルの事本当のお兄さんとして見てるの。たぶん、私があんなこと言ったせいでロロ、自分の居場所が取られるんじゃないかって不安に思ってそれで……」

 

「あいつまで許すのか……おかしな女だ」

 

 

「そうかも……でも、もうあんな思いは嫌なの。私、ルルを撃とうとしたことあるの。お父さんの仇取ろうとしたけど……できなくてものすごく胸が苦しくて…それでかな?」

 

「そうか………明朝この船はエリア11を出る。お前は一緒に乗ってしばらく身を隠せ。あとの事は坂口に任せている。あの男は信用できる。いいな、勝手はゆるさん」

 

「ふふっふ、わかった。やっぱりアキラくんって優しいんだね」

 

シャーリーからそう言われアキラは苦虫を噛み潰すような顔をする。

 

「もう用が無いなら早く出ろ!」

 

顔を見られないようアキラは背を向けシャーリーはそんなアキラを見て微笑みながら部屋を出て行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

最後の調整を坂口と行いアキラのKMFが完成した。そのKMFを見ようと千鶴とシャーリーもいた。

 

「なんかこうして見ると無頼でも暁でもないヘンテコなKMFだよね」

 

千鶴の言うとおり、基本カラーは濃緑でKMFは暁をベースにしてるが随所に無頼のパーツを継ぎ接ぎに合わせており暁の形状を留めていない。コックピットの下には固体燃料ロケットエンジンが取り付けられており姿勢制御のためのバーニアスラスタが脚部に装着し、肩部分を無頼の肩を使いそのうしろにもスラスタを取り付けた。

 

そして暁の頭部部分通常のカメラではなく光角レンズ、狙撃用のオプティカルサイトを搭載したターレット式を使用している。

 

 

「ちょっと、脱出装置ないじゃん」

 

「しかたねぇんだ。このロケットエンジン使うには機体が重くなって邪魔になるんだ。」

 

「アキラ、よくこんなKMFつくったね。死んじゃうよ」

 

「俺は死なない」

 

千鶴の心配をよそにアキラは平然としている。

 

「結局、試運転なしで一発本番になっちまったな」

 

「構わん、あとは俺で何とかする。とっつあんのところの倉庫借りるぞ」

 

「おう、好きに使いな。武器も運んでる、派手にやってくれ」

 

坂口が用意したのは通常のライフルからガトリング砲までさまざまな武器が揃えられていた。

 

その時、アキラの携帯が鳴りアキラは携帯をとり話を聞いた。

しばらくして電話を切るとアキラはじっとKMFを見つめると黙って工具類を漁ると1つのスプレー缶を取り出した。

 

「アキラ、何の用事だったんだ?」

 

「星刻達の部隊が蓬莱島から出撃した。」

 

「だとすれば、もうすぐここも……」

 

「あぁ、ゼロ達がくる」

 

坂口はアキラが持ち出したスプレー缶を見て驚きの表情をする

 

「おいアキラ!それは!!」

 

アキラは黙ってKMFの右肩辺りによじ登りそこへスプレーをかけた。そして真紅の色が右肩を染めていくのであった。

 

「アキラ……」

 

千鶴はアキラの顔を見てたじろいだ。そう右肩を見るアキラ鋭い眼光に圧倒されたのだ。

 

「あんなアキラの顔久しぶりだぜ」

 

 

(あれがアキラくんの……私の知らないアキラくんの顔……)

 

染め終えた右肩は真紅に染め上げられ血にも見え怪しく光るのであった。

 

 

 

 

-過去との決着をつけるために俺はまた右肩を赤く染める……カレン……お前を取り戻すために俺はまた陽炎の名を背負う。-

 




アキラのカスタマイズした暁はよりスコープドッグに近い存在になりました。
いよいよトウキョウでの決戦が次回始まります

尚、この回は原作16話、17話までの話でルルーシュとスザクが枢木神社で会ったのは原作どおりです。


原作なら次はトウキョウ決戦が起こりフレイヤによって……っとなりますが果たして……?

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