コードギアスR2 ~去りゆく影~    作:三戦立ち

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第3話

「さぁ飲めアキラ!今日は俺のおごりだ! がっははは!」

 

イゴールの豪快な笑いにアキラは呆れた表情でいた。

あれから首都ヤールンへと帰還したアキラ達はジェノムを除いた4人で酒場にいた。イゴールは助けられたお礼としてアキラを強引に連れて来たのだ。

 

「どうじたアキラ? お前、全然飲んでねぇじゃなぇか。」

 

「……いらない。」

 

「ガキだなてめぇは。いいか、酒ってのはこうやって飲むんだ!!」

 

そういうとイゴールはグラスに入っているウォッカを一気に飲み干した。あ

 

「かあぁぁぁ~ うめぇ~ おい、もうないぞ追加だ! はっははは!」

 

イゴールの様子を見てアキラはため息を吐き、一緒にいるアレクセイは苦笑いをしていた。

 

「あいつは酒に酔うといつもこうなるんだ。 気を悪くしないでくれ。」

 

「いや……。」

 

アキラはこういったバカ騒ぎはあのアッシュフォード学園で生徒会の皆と過ごした時の事を思い出していた。 

 

「改めて、これからよろしく頼む、アキラ。」

 

アレクセイは右手を差し出した。

 

「あぁ…よろしく頼む、アレクセイ。」

 

「アレクでいい。」

 

「そうか……わかった、アレク。」

 

2人は握手をした。

 

 

「何、2人で青臭せぇことしてんだよ。」

 

すっかり酒がまわったイゴールがアキラに肩に手をまわした。

 

「おう、次の店に行くぞ。岸谷お前も行くだろ。」

 

「もう……帰る。」

 

そう言って岸谷は店を後にした。

 

「けっ、付き合いの悪い奴だ。 おう、お前ら行くぞ!」

 

アレクセイはやれやれと苦笑いをした。

 

「アキラ、すまないがもうしばらく付き合ってくれないか。 あの様子じゃあ酔いつぶれて店に迷惑をかけそうだ。」

 

「……わかった。」

 

 

 

 

 

次に入ったお店は女性が接待するキャバレーのようなお店であった。

 

イゴールは左右に綺麗なドレスを着た女性がいて両手に花のような状態であった。

 

アキラとアレクセイはというとアレクセイは1人の女性と楽しげに話しているがアキラはというと差し出された酒に手をださず女性とも話してなかった。

 

「おう、アキラ何しけた顔してんだよ。 もっと楽しもうぜ。もしかして緊張して硬くなってんじゃねぇのか、はっははは!」

 

アキラはすっと立ち上がった。

 

「どうしたんだアキラ?」

 

アレクセイが尋ねた。

 

「少しトイレに行く。」

 

 

 

 

 

顔を洗いアキラはふぅと息を吐いた。

 

妖艶な香りを出す香水、化粧をする女性を見てどうもあぁいう女性、店の雰囲気は苦手だとアキラは思った。 

 

だがイゴールの様子を見ればこの宴ももうすぐ終わるだろうと思いアキラはトイレを出た。

その時後ろから誰かがアキラの肩にぶつかった事に気づいた。

 

「す、すみません! 服汚れていませんか?」

 

ここの店の人間だろうか金髪でドレスを着た女性が頭を下げた。

 

「いや、大丈夫だ。」

 

「申し訳ありません。 余所見をしてまして……。」

 

女性が顔を上げアキラと目を合わせた時彼女はアキラの顔を訝しげな表情で見て大きな声をあげた。

 

「あっ!! あんた、あの時の日本人!」

 

「??」

 

何のことなのか、アキラはまだ分からなかった。

 

「思い出せないの? ほら外であんた、あたしのお金拾ったでしょ?」

 

「………あの時の女か。」

 

「へぇ、義兵団の連中が来てるって聞いてたけどあんたがそうだったんだ。 あんたも物好きだねぇ、義兵団なんか棺桶に片足入れるもんだよ。」

 

 

「話は終わりか、もういいか。」

 

去ろうとするアキラの片腕を女性は掴んだ。

 

「ちょっとあんた、あたしを指名してよ。」

 

「お前を?」

 

「今日、指名されなくて。だからお願い!じゃないと支配人から怒られちゃう。」

 

「………。」

 

「ねぇ、お願い。」

 

彼女の懇願にアキラはため息を吐いた。

 

「……ついて来い。」

 

彼女の顔はパッと明るくなった。

 

「レイナです。 ご指名ありがとうございます。 お客様は?」

 

さっきとは打って変わって丁寧な口調でアキラに接しだした。

 

「……流崎 アキラ。」

 

「ふふっ、じゃあ席までいきましょうかアキラ♪」

 

レイナはニッと歯を出し意地悪そうに微笑んだ。

 

 

 

 

「おっ!?アキラ、お前いなくなったと思ったら女捕まえていやがったのか。」

 

席に戻るとイゴールがまたボトルを1つ空にしていた。

 

「じゃ何飲む?」

 

「いらない。」

 

「え~何それ? 飲まないと楽しめないじゃない。」

 

「………。」

 

「もしかして、酒飲めないとか?」

 

「………。」

 

アキラの沈黙にレイナは大きな声で笑った。

 

「おかしい~ じゃあずっと酒飲まないままいたの。」

 

するとイゴールと一緒にいた店の女性がレイナに近づいた。

 

「ちょっと、もう少し静かにしなさい!うるさいのよ。」

 

他の客には聞こえないようレイナを叱った。

 

「す、すみません。」

 

「ったく、これだからイレブンは……。」

 

先輩の女性が去りどこか気まずい雰囲気となってしまった。

 

「ごめんなさいね。 え…っとじゃあ適当に何か頼むね。いい?」

 

「あぁ、任せる。」

 

 

 

しばらくしてウイスキーとフルーツの盛り合わせが運ばれてきた。

 

「心配しなくてもびっくりするような高いもんじゃないから。」

 

2つのグラスにウイスキーを注ぎ1つをアキラに渡した。

 

「じゃ乾杯~。」

 

レイナにあわせアキラもグラスを合わせ一口飲んだが渋い顔をしてすぐにグラスをテーブルに置いた。

 

「もう~、ホントに飲めないの?」

 

「好きに飲んでろ。」

 

「それじゃ仕事になんないの。」

 

頬を膨らませてつつレイナはウイスキーを口に運んだ。

 

「アキラっていくつ?」

 

「……18。」

 

「嘘~! あたしと同じ歳じゃん。 20くらいだと思ってた。」

 

レイナは先程のように明るい笑顔に戻った。

 

「ねぇねぇ、アキラが着ている服って黒の騎士団でしょ? どんなことしてたの?」

 

それからレイナは日本=エリア11が今どうなっているのか聞いてきた。

 

「はぁ……。帰りたいな。」

 

「帰りたい? 日本人がどんな扱いされてるか知ってるだろ。」

 

「でも…こんなところよりマシよ。」

 

レイナは持っているグラスを見つめていた。

 

 

レイナは神妙な面持ちで持っているグラスを見つめていた。

 

その時、誰かが倒れた音がした。よく見るとイゴールが眠ってしまいソファーに倒れていた。

 

その姿にアレクセイは苦笑いをした。

 

「ここで終わりだな。 アキラ、連れて帰ろう。」

 

 

2人でイゴールの肩を支えお店を出ようとした時、アキラはレイナから呼び止められた。

 

「アキラ、楽しかったよ。 また来てね。 それと…」

 

レイナは名刺を差し出した。

 

「またね~」

 

レイナは店の奥へと姿を消した。 アレクセイはフッと笑った。

 

「気に入ったかあの子を?」

 

「そんなんじゃない。」

 

「いいじゃないか、また来て楽しめばいい。」

 

「酒が飲めないのにか。」

 

「はっははは。そうだったな。」

 

アレクセイの笑いに釣られてアキラもフッと笑みをこぼした。

 

 

タクシーで宿舎に戻る途中信号で車が停まったところでアレクセイあるところに目が止まった。

 

そこある巨樹が雪化粧により葉一枚一枚に雪が被っている。

 

「大きな樹木だな。」

 

「もう、いつからあそこに植えられたか誰にも分からない。樹齢が100年は越しているらしい。」

 

アレクセイはその巨樹を見て悲しげな表情を浮かべた。

 

「どうした?」

 

「いや、少し昔を思い出してな。」

 

アレクセイは笑ってごまかした。 アキラも詮索するのは悪いと思いそれ以上聞かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキラ達が楽しんでいる時、義兵団基地にあるトラウトマンの私室にトニーは呼ばれ今度行われる作戦についてある指示を受けていた。

 

「あのアルダン高地を攻略ですか!?」

 

「あぁ、久しぶりに大部隊での作戦になる。 もちろんお前の部隊も参加する。」

 

「わかりました……しかし、要塞化されてあるあのアルダン高地を何故今?」

 

「不満か?」

 

「いえ、アルダンはビーシュナが豊富に採掘されている産地でもあります。あそこを奪還できればかなりの打撃を与えられると思われます。」

 

ビーシュナ=サクラダイトは少しの温度の変化により引火したりとかなり扱いが難しい液体である。 

 

気温の変化が激しいサドナ王国ではサクラダイトの交換が頻繁に行わなければKMFが動けなくなる。 

ブリタニアの極東にある軍港のウラジオストクからの補給では間に合わずブリタニアはサクラダイトの産地でもあるアルダンを侵攻しサクラダイトの採掘を独占しているのだ。

 

 

「それと流崎アキラを第1陣の部隊に入れろ。」

 

「流崎をですか……?」

 

「そうだ。奴が生きてるか逐一確認しろ。」

 

「はぁ~ わかりました……。」

 

一抹の疑問を浮かべながらもトニーは部屋を去っていった。1人になりトラウトマンはあるところへ連絡を取った。

 

「………はい、作戦は予定通りに。 例の男も参加させます。……………はい、私も今だ半信半疑ですがもしこれで…………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10日後……

 

トレーラーに収納されたKMFの中でイゴール達は待機していた。

 

『しかしよぉ、今回やけに大掛かりな作戦だな。』

 

『敵が要塞化しているアルダイ高地だからな。簡単にはいかないさ。』

 

『へへへっ、その分ギャラアップしてもらいてぇぜ。』

 

『だが…妙だ。』

 

ジェノムの一言は2人が思っていたことだ。

 

『何故、アキラと晋二が俺達とは別働隊なんだ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-アルダイ高地-

 

広大な大地に雪が降り積もりその地を大量のKMFが踏みしめていた。

 

雪とともに降り注ぐのは銃弾と砲弾。ここはアルダイ高地では一番高台にあり辺りが見渡せるほどでここに要塞基地がある。

 

アキラ達約600の第1陣が今要塞を攻略しようと戦闘の真っ最中である。

ブリタニアは主砲による砲撃、機関砲で政府軍の進撃を阻んだ。

 

アキラは物陰に移動しながら要塞に近づこうとしているが思うように進めなかった。

 

KMF、歩兵部隊がブリタニアの砲撃にやられ既にKMFの残骸、死体の山ができ雪が血と流体サクラダイトによって染まっていった。

 

状況確認しようと回線を開くが聞こえるのは怒号と悲鳴であった。

 

『足が!! 足があぁぁぁ!!』

 

『た、助けてくれ!』

 

『くそう、援軍はまだか!!!』

 

 

「岸谷、応答しろ!」

 

アキラは岸谷に連絡をとったが応答がなかった。

 

「岸谷!」

 

『うるさい!! 何度も呼ぶな!!』

 

声を聞くとかなり興奮しているように聞こえる。

 

「無事だったか。 今何処だ?」

 

『お、おそらく だいぶ端のほうに離れていると思う。』

 

「そうか……。」

 

後方にいるトニーから通信が入ってきた。

 

『流崎、応答しろ。』

 

「…こちら流崎。」

 

『貴様、生きていたのか!』

 

「はっ…… 岸谷も無事です。」

 

『もうすぐ援軍も来る。それまで少しでも敵戦力を減らしてみろ!』

 

「…………了解。」

 

敵戦力を減らす。 あまりにも簡易な命令にアキラは深いため息を吐いた。

 

その時、敵要塞から主砲が発射された。発射された砲弾が空中で破裂し中から小型爆弾が大量に散布された。

 

「クラスター弾!」

 

アキラはクラスター弾が散布された範囲の外まで出たためグラスゴーの左腕を損傷しただけですんだがクラスター弾の爆発により発生した雪煙が晴れて見たものは巻き込まれた味方機がやられ、歩兵は助かった者がいたが腕、脚が損傷したりかなりの損害がでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

-アヴァロン 大西洋上空-

 

中性的な顔立ちをした男がモニターにて何か確認していた。

 

「どうだい、サドナ王国のほうは?」

 

「はい、アルダイ高地の戦闘開始してから1時間経過するところです。 敵600は我が軍のトーチカの前で釘付けになっています。」

 

その話を聞いた男は目頭を指で押さえた。

 

「EUとの交渉を終えたばかりです。少し休まれたら。」

 

「そうだね。 では全て終わったら起こしてくれ頼むよカノン。」

 

「任せてください殿下。」

 

殿下、シュナイゼルは微笑み、自分の部屋へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキラはクラスター弾が発射されたトーチカを確認しそこへ近づこうとランドスピナーを降ろし走った。

 

雪の上を走っているが雪とは違う感触がありそれが雪によって積もり隠れた兵士の死体を踏んでいるのであろうとアキラはKMFの中でありながら理解できた。

 

アキラのグラスゴーはライフルが届く距離まで近づきトーチカに向けてライフルを放った。

アキラの攻撃によりトーチカが爆発を起こしトーチカを沈黙させることに成功できたがアキラが敵の射程内に近づきすぎたため敵の標的になってしまった。

 

 

早くここを離れようとしたアキラであったが敵の銃撃によりライフルは弾かれ手元から離れてしまい、敵KMF、機関砲の集中攻撃にさらされてしまった。

 

脱出装置を作動させ脱出したが先程の攻撃のためか射出されてパラシュートが開かずそのまま地上に激突してしまった。

 

アキラは自分の身体の状態を確認した。 先程、敵の集中攻撃で急所は外れてはいるが腕、脚、脇腹に銃撃による出血をしていた。

 

アキラは外に出ようと痛みに耐えながら体を動かそうとした時味方からの通信が入ってきた。

 

『アキラ、無事か?』

 

「はぁ、はぁ… アレクか……。」

 

『怪我をしたのか!? 今、どこだ?』

 

「はぁ……コックピットが転がっているだろ。」

 

『……あれか!?』

 

アレクセイが乗るグラスゴーがアキラのコックピットに近づいた。

 

『大丈夫か?』

 

「すまない、撃たれた。」

 

『もういい、 すぐに救護班を呼ぶ。あとは俺達にまかせろ。』

 

「たの…む。」

 

アレクセイは戦線に戻りアキラは操縦席に座り息を整えようとした。

 

 

 

 

第2陣の部隊によりアルダイ要塞も押されつつあった。

 

「チュリマン要塞、占領されました!」

 

「ネリュングリ要塞も占領!」

 

アルダイ要塞本部には思わしくない知らせを次々に入ってきた。

 

 

「司令官!」

 

ここの要塞の司令官は腕を組み思案したが厳しい顔つきでいた。

 

「戦闘が開始してからどれくらいたった?」

 

「……もうすぐ、3時間ぐらいです。」

 

「…………もう十分だろう。 あと20分、時間を稼ぐ。その間皆に撤退させるよう伝えてくれ。」

 

司令官は隣にいた1人の女性兵士と顔を合わせた。

茶髪のショートヘアに凛とした顔で軍服を着たまだ20代の若い女性である。

 

「君も皆と撤退するんだ。」

 

「し、しかし……。」

 

「マクシム閣下から君のことを預かってくれと頼まれたんだ。 その君を今ここで死なせるわけには行かないんだ。」

 

「………。」

 

「閣下を支えてやってくれ。」

 

「………わかりました。」

 

司令官に敬礼した女性は司令室から出て行った。

 

 

 

 

「へっ、なんだ思ったほどたいしたことねぇな。」

 

イゴールの言うとおりトーチカなどの攻撃に手は焼いたもののトーチカを沈黙させてから敵の数は少なく敵も撤退しつつあった。

 

「だがおかしい、KMFの数が少なすぎる。」

 

アレクセイの言うとおり要塞の防衛KMFが思ったほど多くはなくまた、どのKMFも自分達と同じ旧世代のグラスゴーであったりと敵にしてはどこかお粗末な感じがした。

 

『おいアレク、敵の捕虜を見たんだがよ。どいつもサドナ王国の人間だぞ。』

 

イゴールの言葉にアレクセイはあることが思い浮かんだ。

 

(もしやここの要塞はもう……。)

 

『おっ!?敵が逃げていくぞ。』

 

イゴールの言葉にアレクセイはその敵のほうをみた。

 

軍用ジープが斜面を駆け下りるのが見えた。

 

『へっ、捕まえてやるぜ!』

 

イゴールと共にそのシープを追い威嚇射撃をしようとした時1人の女がジープの窓から顔をだした。

 

「あれはカティア!?」

 

その女はバスーカらしきものをこちらへ構えた。

 

「っ!?」

 

『おっ!?』

 

バズーカから発射されたものは眩く発光しアレクセイ達の視界を奪った。

 

「発光弾か!?」

 

視界が戻った時には既にジープは遠くへと離れていった。

 

『っち、惜しかったな。』

 

 

アレクセイはそのジープに乗っていた女が気になっていた。

 

(あれはカティア………マクシムについて行ったがまさかここで……。)

 

 

しばらくしてここのアルダイ基地の司令官が降伏したことにより戦いは終わった。

 

 

 

「よぉ、アキラ生きてるか。」

 

アキラが休んでいるテントにイゴール達が入ってきた。

 

「命に別状がなくてよかった。」

 

「……他の奴等は?」

 

「ほとんど全滅だが岸谷は生きている。今はほっといたほうがいい。かなり参った様だ。」

 

ジェノムから聞き、アキラはそうかと一言呟いた。

 

 

「流崎アキラはいるか?」

 

トニーが入ってきて4人は敬礼をした。

 

「こいつと話がしたい。貴様らは出ろ。」

 

アレクセイ達はアキラのほうを見た。 アキラは黙って頷き4人はテントから出た。

 

「ふん、生きていたとな。 くたばったと思ったぞ。」

 

「…………。」

 

「くっくく、早く復帰しろよ。 将軍は貴様のことを買ってるようだからな。 将軍の為にも死ぬまで戦ってもらうからな。」

 

そう言うとトニーはテントから出て行った。

 

アキラはベッドに横になり自分の左右隣を見た。 どれもけが人ではなく遺体収納袋に入った遺体であった。

 

 

 

 

 

 

-ハバロフスク ブリタニア ハバロフスク基地-

 

「総督、アルダイ基地からの報告です。」

 

 

大柄ではないががっちりとした体型で物静かな面持ちの男性。 

 

デニス=ハン総督は部下から受け取った報告書に目を通した。

 

「撤退した部隊はアムール川下流にある基地まで撤退するように伝えてくれ。」

 

作戦室をでたデニスであったが不気味に顔を歪ませていた。

 

 

 

 

 

「……以上がアルダイ高地での戦闘の報告です。」

 

『マウスのほうはどうなってるの?』

 

「はっ、トラウトマンの報告によりますと生存しています。詳しい戦況はこれに。」

 

『わかったご苦労。』

 

「はっ、それと殿下はこのマウスを何故……。」

 

『あなたは余計な事は聞かなくてもいい!』

 

カノンは強気な口調で叱責した。

 

「はっ、申し訳ありません。」

 

『引き続き、監視せよ。』

 

「イエス・マイ・ロード。」

 

 

カノンとの通信を終えたデニスはある書類に目を通した。 どれもアキラに関するものであった。

デニスは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

-アヴァロン-

 

「何かあったようだね。」

 

「殿下、作戦は終了しました。 敵がアルダイ基地を占領しました。」

 

カノンの報告を聞いたがシュナイゼルは特に気にさわることなく穏やかな表情であった。

 

「味方の敗北ですが…?」

 

「予想通りの結果だよ。 だからこそあの基地にはマクシム達の配下をおいたんだ。」

 

シュナイゼルの言うとおりアルダイ基地にはマクシムの配下達がほとんどでKMFもグラスゴーと旧型しか配備されなかった。 

 

「確かにあそこでサクラダイトの採掘が行われましたが、産出量が少なくなり7ヶ月前には閉山して名ばかりの基地でしたから。」

 

「それで戦況は?」

 

「戦闘は約3時間で第1陣から3陣の部隊の攻撃によって陥落しました。」

 

「彼がいた部隊は?」

 

「奴がいた第1陣は数が600。ほぼ全滅し、生き残ったのは……4人。 その中に流崎アキラ、奴も含まれています。 確かにこの中で生存できたのはかなりの幸運ですね。」

 

その報告を聞きシュナイゼルは小さく微笑んだ。

 

「実験をした価値はあったようだね。」

 

カノンは紅茶の準備をはじめた。

 

「殿下、サドナ王国をブリタニアの新たなエリアに編入させる準備が整いつつあります。」

 

カノンから差し出された紅茶をシュナイゼルは一口飲んだ。

 

「力押しでエリアに編入させたところでエリア11の二の舞になるよ。 不安定要素は少しでも多く除かないとね。 それに実験場としてあの国は好都合なんだよ。」

 

「実験ですか……流崎アキラ。 この男ですがバトレーが調べた陽炎の資料にも陽炎の隊員として名はありますがたいした戦歴をお持ちではありません。 そこまでこの男に拘ることはないと思いますが?」

 

「僕もね、はじめは信じられなかったけど井ノ本寛司、彼が考えが真実ならば流崎アキラは奇跡の人間かもしれないよ。」

 

シュナイゼルは焦げた跡のCDを手にし微笑んだ。

 

「珍しい、あなたが誰かに興味をもつなんて。」

 

「ふふふっ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーラーで運ばれアキラは窓からアルダイ高地の戦場跡を見た。

 

-雪の上に染まる人の流血、KMFの残骸から流れるサクラダイト。 この地獄のような高地に雪が隠すように降り積もる。 この地獄から生き延びたとしてもまた次の地獄が続く。  俺にはわかる。俺が地獄で踠く姿を観察者がどこかで見ていると………カレン、お前もどこかで戦っているのか、終わりの見えないこの地獄で………-




シュナイゼルにアキラという猛毒が回りはじめた?

もしかしたらシュナイゼルが一番キャラが変わるかもしれません。

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