ではどうぞ
天帝八十八陵の戦いでゼロと星刻により大宦官を抹殺されて以降は連邦制が事実上崩壊し今現在、星刻と黒の騎士団が地方各地で兵を上げている軍閥勢力の鎮静に努めている。
ここ黒の騎士団の拠点蓬莱島では各地の報告をゼロと幹部達が確認している。
「状況はわかった。ではこの通りに……んっ?」
会議が終盤に差し掛かった時にゼロが外に目を移した時、ここ本部前で十数人の人だかりができていた。
「今日もか……。」
扇が溜息を吐く。
「なぁゼロ、そろそろ決めるなきゃいけないんじゃないか?」
「どういう意味だ。朝比奈?」
「意味もなにも流崎アキラさ。ゼロ、あんたは彼をどうするつもりなのさ?」
集まっている人だかり、あれは陽炎に家族を殺された日本人の集まりであった。
黒の騎士団に陽炎だった人間がいる。それは噂の類いであって一般の日本人には確かな話ではなかったのが団員の何者かがアキラの事を周囲にバラしそれが蓬莱島の日本人に伝わったのだ。
ゼロ達は黒の騎士団にそんな人間はいないと誤魔化しているが…。
「……ゼロ、実は俺達の中でもアキラと……その、一緒に戦いたくないって言ってる奴らもいるんだ。」
扇の言うとおり黒の騎士団の中でもアキラに対する不審の目が日に日に強くなっている。
「……だが、アキラが我々に何かした訳ではない。あれはあくまで彼の過去の話だ。」
「もうそんなこと言ってられないだろ。いつか、藤堂さんが言ったけど現にあの男のせいで組織の中に不協和音で生まれてるんだ。」
朝比奈の指摘にルルーシュはゼロの仮面の下で苦渋の顔を浮かべていた。
(カレン…もし、君がこの場にがいたらあいつを全力で守るはずだろうな。)
だが今いない人間の事を考えたところで仕方がない。
「扇、アキラの体調は回復したと聞くが?」
「あぁ、軍医が言ってた。あの大怪我で回復が1ヵ月掛かるって聞いてたけど2週間も経たずにもう部屋から出てる。まぁ外の騒動で外出はさせないようにしてるが……。」
さて、どうしたらいいのか。アキラの処遇について思案するが斑鳩のデッキから通信が入ってきた。
「どうした?」
『はい、星刻からです。』
「星刻から?わかった、こちらへ回せ。」
巨大スクリーンを出し星刻の姿が映し出された。
『突然の事で申し訳ない。』
「構わない。またどこかで軍閥達が兵を上げたのか?」
『あぁ、彼らは独立を宣言し我々に敵対の意思を示した。それと厄介な事に旧サドナ王国、エリア15と接近しているらしい。』
「エリア15!? なるほどそれで私達にも協力を。だがそれだけではなさそうだな。」
『敵は満州の黒竜江省(こくりゅうこうしょう)の軍事基地を占拠、篭城をしているが敵はガンルゥの他サザーランドKMFを主力で黒竜江省南東の松嶺へ侵攻し我が軍と対峙している。KMFは…』
「エリア15からか……。いずれ何か仕掛けてくると思われたが…。」
別モニターで松嶺周辺の地図を出し地形を確認する。
『そこで新生サドナ王国とコンタクトを取り、リーダーのアレクセイ・ヤゾフが援軍を出してくれる。』
「……うむ、私も彼と一度会ってみたいと思っていた。 しかし、彼も簡単に兵を送るとは…。」
『彼とは知り合いで信頼できる人物だ。』
「だが…ゼロ、今俺達に雪中戦できる装備がない。」
扇は今の時期の現地の天候のデータを確認するが星刻の言うとおり天候の移り変わりが激しく吹雪も発生している。
『雪中戦いの装備や武器などは蓬莱島へ直接輸送させるよう彼らが既に発注してある。』
決して大きな規模ではない組織が広いルートを持っているとは思えなかった。
『心配するな。その業者は日本人で君達も知ってる人間だ。』
‐数日後‐
皆が集まる食堂にてアキラは1人で佇んでいた。あれからゼロから天帝八十八陵の戦いを乗り越え星刻と同盟を結んだ事を聞かされた。
それからというもの体が全快したがアキラは斑鳩から一歩も外から出ていない。
誰とも話さずただ1人コーヒーを口にしている時誰かがアキラに声をかける。
「ア~キ~ラ~!」
背後から聞いたことのある声にアキラは振り返る。
「はぁ~い!久しぶりアキラ♪」
そこにいるのはストレートの金髪にスーツを着て立っている女性がいた。
「
思いがけない人物との再会にアキラは驚いた。サドナ王国ではお店でドレスを着たりと色気があったが髪を後ろに束ねスーツを着ている彼女は大人っぽくみえ別の色気を匂わせていた。
「なぁに~、そんなに見とれて。アッハハハ!」
アキラとの再会に千鶴も喜びを隠せなかった。
「何故お前が?」
「この格好見てわからない?お仕事♪」
「仕事?……まさか。」
「おい、千鶴!どこいるんだ!!」
大きな声を出し現れたのは身嗜みを整えスーツ姿の坂口耕司とその後にはゼロの姿であった。
「おぉアキラ!元気にしてたか?」
「ゼロ、どういう事だ?」
「今度の作戦に必要な物資を彼が請け負ってくれる事になった。もちろん、君も出撃してもらう。」
「…わかった。」
「ねぇアキラ、カレンって子どこにいるの?一度会ってみたいな思ってたの。」
カレンの名を聞きアキラは黙って食堂から出て行った。
「えっ…ちょっと……。」
何か聞いてはいけないことを口にしたのかと思い千鶴は戸惑ったがそんな彼女の袖を坂口は引っ張る。
「おい、仕事の話はまだ終わってねぇんだぞ。行くぞ。」
「わっわかったって。」
千鶴にそう言ったが坂口も不安そうにアキラの背中を見つめるのであった。
‐エリア11 陽炎ヨコハマ基地‐
「エリア15へですか?」
アレクセイ達新生サドナ王国の抵抗が激しくエリア15の陽炎基地から援軍要請がありエリスも要請を受けているが…。
「閣下……ここへ残ってもよろしいでしょうか?」
「ほう…何か不都合な事でも……。」
だが井ノ本には心当たりあった。
「紅月カレン、彼女がここエリア11へと移送されるそうだったな。」
エリスの肩がビクッと揺れ彼女の反応を井ノ本は見逃さなかった。
「………まぁいいだろう。好きにすればいい。」
「……申し訳ありません。」
カレンがいるとなれば必ずアキラはエリア11へ戻ってくるはずだ。だがアキラがそこまで執着するカレンとは何者なのか?殺意を抱いている相手にエリスは会ってみたいと思うようになった。
出撃を翌日に控えアキラは格納庫にてKMFの整備を1人で行っている。
支給されたのは雪上戦補助装置アイスブロウワーで今、暁の脚部へと装備させているところである。
出撃前、1人で静かに整備を行うアキラに坂口が近づいてきた。
「ゼロから話は聞いた。悪かったな、アイツの事悪く思わないでくれ。」
特に答えることなくアキラは黙ったままであった。
「だがよあんな態度はないんじゃないのか!千鶴はお前に会えること楽しみにしてたんだ!」
だが顔をこちらへ向けず黙々と整備をするアキラに坂口は苛立ちを感じる。
「なんだ!触れられたくない過去を自分の女や仲間に見られてやさぐれて戦いで紛らわそうってつもりか!! 」
「………。」
「今のお前をアレクやイゴールが見ればガッカリするだろうぜ。せっか送り出した仲間が戦うだけの戦闘マシンに成り下がってるんだからな。」
「……やめろ。」
「誰かに命令されてただ戦うだけのお前はマシンだ!」
「やめろっ!!」
アキラは持っていた工具を坂口の足元へ乱暴に投げた。
「カレン、あの娘が一番お前を心配してるはずだぞ。だったらこんな所で腐ってないでやることがあるだろ。」
そう言うと坂口は格納庫から出て行った。何事もなかったかのように装いまた作業を続けようとするアキラであったが繋ぎの部分を間違えておりこんな凡ミスにアキラは唇をかみ殺した。
‐3日後 エリア11 政庁‐
政庁にある1室にガラスに囲まれた個室にカレンは収容されていた。そしてカレンと向き合っているのは。
「ありがとう、ナナリー。」
「いえ、カレンさんが捕まったと聞いて私…。」
捕虜になったカレンをここへ連れたのはナナリーであった。捕虜であることに変わりないがナナリーの元で手厚い保護を受けている。
「今までカレンさん達に私達の事を隠しててごめんなさい。」
「お互い様よ。」
微笑むカレンであったがふとナナリーの顔を見てあることに気づいた。
「ナナリー、少し痩せた?」
カレンの問いにおもわず頬に手を当てる。
「そ、そうですか?」
「やっぱりきつい?総督?」
まるで見透かされたように思えナナリーは苦笑いをする。
「はい……思っていた以上に…。」
痩せたと言ったがカレンの本音はやつれてると感じた。
政治の場は狐と狸の化かし合いだと言うがまだ幼いナナリーにはこの政の世界は自分の価値観が通用しないことを痛感させられた。
言葉では追従の意思を口にする官僚達であるが裏では自分を見下す態度、本音が目に見えないナナリーには敏感に伝わり心休まる時がなかった。
「でも、私は頑張ります。アキラさんから言われた夢物語を現実にしてみせます。」
「キツイ事言われたの?」
「はい、でもアキラさんから言い負かされたままは悔しくて。」
顔に似合わず図太い性格なナナリーにカレンはおもわず笑みをこぼす。
その時ナナリーの後ろから1人の人物が姿を現しカレンの顔色が変わった。
「あんたはっ!」
その人物を追って総督補佐のスザクが止めようとする。
「待つんだ!勝手に入っては…!」
スザクのその人物の肩を掴むが手首を強い力で握られ手首を返され肘関節を屈曲され体勢が崩れ倒されそうになるがスザクは瞬時に体勢を直し距離をとる。
背後の騒ぎにナナリーは振り返る。
「スザクさん!? 一体何が!?」
「……ナナリー総督、紅月カレンと2人で話がしたい。」
「誰ですかそんな話聞いていません!」
「君はどういう用件で…。」
「捕虜の面会に総督の許可が必要なのですか?」
第3者の顔を見てカレンが口を開いた。
「いいの。ナナリー、私の顔見知りだから。」
「でも……。」
「大丈夫だから。心配しないで。スザク彼女と話したいの、ナナリーをお願い。」
ナナリーの横を1人の人物が通り過ぎる。
「……お前にもう1度会っておきたかった。」
「そう、ちょうどよかった。私もあんたとまた会いたかったのよ………エリス。」
カレンとエリス、お互い視線を逸らさずだた真っ直ぐに見つめていた。
‐吉林省(きつりんしょう)‐
黒の騎士団と星刻達政府軍は黒竜江省の南部にあたる吉林省に集結した。 現在、吉林省は吹雪に襲われ朝方なのだが視界は良くなかった。
ゼロは廊下の窓から外の景色を眺めているアキラを見つけた。
「アキラ、もうすぐ星刻達も合流する。わかってると思うが星刻とは……。」
天帝八十八陵の戦いから星刻とアキラが顔を合わせるのは初めてであった。
「あれは俺の先走った結果あぁなった。……あいつを恨んではいない。」
「そうか……ならいい。それとアキラ……。」
少し間を置きゼロは口を開いた。
「この作戦が終わったら零番隊から除隊させる。……ディーハルトの下で咲世子と共に働いてくれ。」
最近の団員達や蓬莱島にいる日本人からアキラを守るために情報・隠密行動を主に行っている場所へと異動させるのがゼロの考えであるが実質、現場から追いやる左遷のような形であった。
ゼロはアキラの顔を伺うが特に表情には出ずいつものようなすました表情でいた。
「………わかった。」
「アキラ……俺はカレンから頼まれたんだ。」
‐アキラを守ってください!‐
「カレンはお前に何も言えなかった事を悔やんでいた。お前が陽炎の事で苦しんでいたのを見ている事しかできなかったと。」
「………。」
「あとカレンはお前に言いたい事が…。」
「ゼロ、もうすぐの敵地に着くぞ……。」
最後までゼロの話を聞かずにアキラはゼロの横を通り過ぎて行った。
周りに壁をつくりただ目の前の敵を撃つ。初めてシンジュクで会った時に戻ってしまったように見えた。
(カレン、すまない……。今のアキラにできることは……。)
廊下を歩いてると反対から来た星刻と顔を合わせた。
「………。」
「………。」
両者口を開く事なく張り詰めた空気が漂い2人は通り過ぎようとしたが星刻が重い口を開いた。
「この戦い、我々との合同作戦だ。……頼りにしている。」
アキラは無言のまま通り過ぎていった。
竜胆のデッキにてゼロ、星刻幹部達が集まり今の戦況を確認する。
「今、前線部隊と交戦中で状況は五分と五分といったところだ。敵はかつて使われた要塞を本陣に置いている。この要塞は断崖絶壁にあり上から見下ろせる。よって攻めるとすると南からもしくは北西のあたりといったところだ。」
「うむ…戦力に問題はないが……。」
ゼロが懸念しているのは黒の騎士団には寒冷地での戦闘経験が少ない者が多数、ゼロは事前に満州について調べているが満州という慣れない地形での戦闘であった。
「ゼロ、この戦い私達に任せてくれないか。」
「アレクセイと策を?」
「そんなところだ。君達はこの吹雪での戦闘は不慣れと見える。アレクセイ達は寒冷地での戦いのスペシャリストだ。」
「……いいだろう。またいつかみたいに地盤に足を取られることがあってはいけないからな。」
星刻は以前ゼロとの戦いで自分が仕掛けたトラップを思い出し苦笑いを浮かべる。
「ではアレクセイとこれからコンタクトを取る。ゼロ来てくれ。」
通信室へと入りモニターからアレクセイの姿が映し出され3人は対面を果した。
『ゼロ、初めまして、アレクセイ・ヤゾフです。』
出撃前、アキラは暁のコックピットの中で待機している。
‐「今のお前はマシンだ!」 マシンならどんなに楽だろうか。命令で目の前の敵を討つ。そこには何の迷いはなかった。それ以上に考える必要もなかった。だが…何故だ。何故俺は苦しんでる。周囲からの軽蔑の目、坂口らの失望の顔。昔の俺なら気にもしなかった。
気がつけば俺はカレンの事を考えていた。あいつがいてくれたら……、いや、何故カレンを求める?もう、あいつは俺を……。俺はカレンを忘れようと操縦席のトリガーに手を置いた。‐
ナナリーが出て行きガラスで囲まれた独房越しでカレンとエリス2人で対峙する。
「……なんか、改めて見てもは普通の人間っぽいね。」
「だが、脳神経、筋力、五感は常人の倍以上に強化された。」
「アキラから聞いてたけどPS…戦うためだけに生み出された兵士。」
「そうだ……私は誇り高いパーフェクトソルジャー…。だが……。」
エリスは独房に軽く手を触れる。
「アキラは私と何度も戦って生き残ってきた。」
ガラスに振れる手に力が入る。
「そしていつも私の前にアキラが現れる……。」
「……エリス?」
「アキラはお前を求めていた。…お前は一体何だ?」
「エリス………。」
カレンは困惑しながらも口を開く。
「逆に聞くけどあんたにとってアキラって何?」
「何?」
「私はあいつの事を大切に想ってるわ。あいつがいるから私は戦っていける。そして私に夢を与えてくれた。」
「夢だと?」
「本音言うと私、怖くて仕方ないの。捕虜になってわかった。アキラがいないと不安でしょうがない。エリス、アキラが私を求めてたって言ったけど私も同じよ。私もアキラが傍にいて欲しい、彼を求めてるって。」
「それだ……!」
互いの視線をぶつけエリスの表情は殺意に満ちている。
「私の心の中にいつもアキラがいた。アキラと戦えば戦う程アキラの事をもっと知りたい、触れたい、自分のモノにしたい。だが……どんなに近づこうとしてもアキラは遠ざかりお前のもとへと行く!」
独房に触れている手に力が入り僅かであるが独房が揺れだした。
「お前が憎い!会ったこともなかったお前を私は憎んでいた!こうして今も!!」
あっ…… カレンはエリスを瞳を見て朱禁城でエリスを対面した時の疑問の答えがわかりエリスを冷静な目で見ていた。
「エリス、あんた…いや、あなたと話してよくわかった。でもね間違ってるよ。」
「っ!?」
「アキラを自分のモノにしたいって言ったけどアキラは支配する者には従わない。例えゼロでもあいつの全てを従わせることはできない。アキラは自分を支配させようとする奴と戦う。」
「支配を拒む…?」
独房に触れていた手に更に力が入りヒビが入る。
「エリス、私はアキラを愛してる。だからもっとあいつの事を知りたい、触れたい。だからあなたの気持ちもわかる。でもね……あなたの考えは自分のモノにしたいって支配よ。アキラは絶対に受け入れない!それは愛じゃない! あなたもアキラの事愛してるなら…!!」
独房にできたヒビが広がりエリスはガラスを突き破りカレンの首筋を強く握った。
部屋にサイレンが鳴り響き、ガラスの破片が腕に突き刺さるがエリスは気にも留めず片腕でカレンの首を絞める力を強める。
カレンの表情が青ざめていくが彼女は抵抗する素振りはない。まるでアキラはお前を決して受け入れないと言っているかのような姿勢にエリスの腕の力が更に強まる。
「エリスっ!?君は!!」
サイレンで部屋へと入ってきたスザクは急ぎ2人のもとへと駆け寄りエリスの手首に手刀を叩き込み2人の間に割って入った。
カレンは膝をつき咳き込む。
「捕虜に手を出すことは…!!。」
カレンの様子を見てスザクが彼女のもとへと寄る。
「カレン、もうこれ以上は……。」
「ハァ……わかった。」
「エリス、出て行くんだ!」
カレンの首を絞めた手を見つめエリスは2人に背を向け出て行こうとする。
「エリス待って!」
カレンを声にエリスは振り返ることなく立ち止まった。
「陽炎のあなたにしか頼めないことがあるの……聞いてくれる?」
‐松嶺‐
雪で埋もれた平原にて両者の戦闘が始まった。
KMFに補助装置のアイスブロウワーを装着してあるが寒冷地での戦闘に慣れていない黒の騎士団達は足を取られてしまい撃破される味方機が増加していった。
寒冷地での戦闘を経験してあるアキラが視界が悪い中で敵機に狙いを定め撃破していった。
敵が本陣を構えている要塞からカノン砲などの遠距離砲撃がアキラ達を襲いアキラはKMFの残骸で身を隠しながら前進する。藤堂達は飛翔滑走翼で上空から攻撃をしたいがこの吹雪で飛行が難しく地を這いながらいくしかなかった。
だが今のアキラにはそんなの関係なかった。
‐忘れたい、陽炎の事も……カレンも……戦いで全て忘れることができるなら………‐
「全軍、このB地点に集結し一気に攻撃をしかけるんだ!」
「ゼロ、アレクセイ達はあと10分すれば……。」
ゼロは時計を確認する。
「見せてもらうぞアレクセイ・ヤゾフ。」
前線がアキラと交戦している中本陣である要塞の付近にて雪原迷彩を兵士達が吹雪に紛れて近づいていた。
「よし!行ってくれイゴール!!」
暗視用の双眼鏡で様子を確認したリーダーアレクセイが腕を振って合図に送る。
断崖絶壁には数機のKMFがランドスピナーでよじ登り待機していた。
アレクセイの指示が伝わりKMFが一斉に起動しランドスピナーのワイヤーを巻き上げ要塞へと近づく。
「もうすぐだ…耐えてくれ!アキラ……星刻!!」
アレクセイはライフルを持って要塞へと走っていく。
戦闘が開始されてから20分近く経過している。
ここ戦地から離れた敵の要塞の辺りから硝煙が上がり味方からの通信が入ってきた。
『たった今、味方が敵要塞の攻略に成功。繰り返す味方、敵要塞の攻略に成功。』
自分たちが交戦している間に味方が要塞の制圧に成功し敵機の動揺が見え後退していくのを見てアキラ達は追撃を行い要塞へと突入を開始した。
敵は撤退又は捕虜となり戦いは自分達の勝利となった。
アキラは他に敵が隠れていないか要塞の外へと出て様子を伺う。足下の近くは崖になっている。敵の影はなく味方と合流しようとした時背後から何か気配を感じ後を振り返ると廻転刃刀を構えた暁1機が襲ってきた。
「流崎アキラ!!死んだ仲間の仇!!!」
アキラは瞬時に回避し右腕を破壊された程度に済み左腕のハンドガンで暁のコックピッチを狙い撃ったが右腕を破壊された反動でバランスが崩れ崖から転落してしまった。
「っ!!?」
為す術べなくアキラが乗った暁は崖の下吹雪の中へと消えていった。
‐どこまでも俺を追いかける過去からの凶刃。俺が死ぬまで追い詰めるのだろうか……‐
坂口、千鶴、そしてアレク達の再登場となりどう動くか
そしてカレンがエリスに頼んだ事とは……お楽しみに